「経理に転職したい」「人事異動で新しく経理に行くことになった」という方はたくさんいますが、その中でも「簿記を持ってないけど大丈夫なのか?」という不安を抱えている人も多いでのはないでしょうか。今回は経理が簿記を持っておくべき理由や、簿記を持ってなくても転職を成功させる方法などについてご紹介します。
前提として、簿記を持っていなくても業務を行うことは可能です。理由としては、「簿記資格を持っていないと対応できない業務」というものが存在しないためです。
同じ会計系の資格として税理士や公認会計士などがありますが、どちらの資格も有資格者にしか行えない独占業務が存在します。しかし一方で、簿記にはそのような独占業務がありません。
そのため、簿記を取得できる知識がありながらも、取得せずに経理として働いているという方も実際にいらっしゃいます。つまり、経理業務を行う上で簿記資格は必須ではないということになります。
とは言え、「簿記資格を持っておくべきかどうか」という点では、「間違いなく持っていた方がいい」と言い切れます。その理由を1つずつ見ていきましょう。
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経理業務は大きく「日次業務」「月次業務」「年次決算業務」の3種類に分けられます。日次業務は基本的に単純な作業が中心であるため、簿記の知識がなくても問題なく取り組むことができます。しかし、毎月の月次決算処理や四半期ごとの期末決算処理、年次決算のような重要度の高い業務はより複雑な知識が必要となるため、簿記の知識がない状態だと非常に苦労します。
もちろん、「簿記を持っているから重要な仕事ができる」という訳ではありませんが、簿記の資格取得を通して身につく知識は、経理職でより重要な業務を行う上では必要な基礎知識となります。
①の内容にも関係しますが、簿記の知識は経理が業務を行う上で基盤となるため、その知識がないまま業務に取り組んでいても、「自分が今やっている業務が何のために必要なのか」という根本的な業務への解像度が曖昧になってしまう恐れがあります。
また、経理は営業とは異なり「間接部門」と呼ばれる部門で、自分がやっている業務が会社にとってどのように役に立っているのかが直接的な数値として表れにくい職種でもあります。そのため、業務への理解が浅いと、ただただ単調な作業を繰り返すだけだと感じ、モチベーションの維持が難しくなる可能性も考えられます。
転職で不利になるというのは、経理で簿記資格を持っていないことによる1番のデメリットと言えるかもしれません。
特に、簿記資格を持っていないと応募可能な求人の数が少なくなるという大きなデメリットがあります。その理由は、書類選考の時点で応募者のスキルを判断するのに、簿記資格の有無が判断基準とされることが多いためです。実際に経理の求人では「日商簿記2級以上」が必須資格とされているものが多く、簿記資格を持っていないとそもそもスタートラインに立つことができないという事象がしばしば起こります。
中には「日商簿記2級に相当する会計知識」を応募資格としている企業もあるため、そのような場合は日商簿記2級相当の知識があることをアピールできれば、選考を通過する可能性もあるかもしれません。
また、未経験から経理への転職を目指す場合、簿記が無い状態で選考に臨むと、「簿記の勉強もしてないで、本当に経理で働きたいのか?」と転職意欲の面でマイナスイメージを抱かれることがあります。
さらに未経験の場合は経理に関する実務経験が全くないということなので、経験もない上に知識もないとなると、採用側にとってはゼロから教育するための時間と労力が必要になることを意味しています。そのため、経理未経験の場合は最低限の知識を身につけている証明として、日商簿記2級が必須資格とされやすい傾向にあります。
実際に弊社ヒュープロへご相談いただく転職希望者の方にも、未経験の場合は選択肢を広げるためにも日商簿記2級の取得をオススメしています。
人事異動や総合職として新卒入社した後に経理へ配属になった方や、簿記資格を持っていない状態でも経理への転職に成功した方にとっては、今後のキャリアや評価面で簿記資格の有無が影響するのかは気になるポイントではないでしょうか。
結論からお伝えすると、簿記資格の有無が直接的に評価に影響することはあまりないです。
評価制度が曖昧になりがちな経理では、任されている業務レベルに応じて評価が決まる可能性が高いため、簿記資格がなくても長年の経験により重要な業務を任されている場合や、役職に就いている場合は十分に評価されます。
しかし、実務経験が浅い方は簿記の知識がないことで業務のキャッチアップが遅くなり、結果として昇給や昇進が遅れてしまうという可能性は一定数考えられます。
簿記資格が直接評価に影響しない理由として、経理業務で求められる簿記と資格取得のための簿記の違いがあります。
簿記資格を取得するためには、会計について多くの知識を学び、理解する必要があります。とは言え、ここで身につけることができるのは「簿記に関するルール」のみである場合がほとんどです。一方で、実務ではリアルタイムで動く会社の資産や書類などの、簿記の試験内容には含まれていない問題が次々に舞い込んできます。そして、実際の現場ではこれらの問題を正確かつスピーディーに処理をしていくことが求められます。
つまり、簿記の資格試験では問題があり、決まった答えがありましたが、実際の現場では、それまでのやり方を踏襲しながら、自ら問題を見つけ出し、答えを導いていく必要があるのです。1つ1つの業務に「解答のページ」は存在しないのです。
「現場でのやり方」を知っていくためには、まずは書類について理解をしていきましょう。その会社で扱われているものを控え、資格取得で使った参考書などで復習をする方法がおすすめです。どうしてその書類が必要なのか、どの点に気を付けて作成しなければいけないのか。このような視点で見ることができれば、あなたの理解はより深いものとなるでしょう。
次は、書類と書類のつながりを理解することが重要です。複式簿記の原理として考えられているように、仕入台帳と売上台帳、仕入台帳と受取手形帳といった書類は、必ずつながりをもっていることを実感できるでしょう。そうすれば、どのような状況の時にどの書類が必要となるのかといった実務に近いことが判断できるようになります。そして、この頃には、あなたの頑張りが評価されているはずです。
少し話が戻りますが、前述の通り、経理への転職を目指す場合に簿記の資格は必須です。しかし、「簿記資格」と一口に言っても、いくつか種類があります。その中で転職に必要な簿記資格についてご説明します。
簿記資格には日商簿記・全経簿記・全商簿記の3種類がありますが、一般的に経理の転職で必要とされているのは、日商簿記です。全経簿記と全商簿記は日商簿記よりも難易度が低く、採用にあたっての評価基準にはなりにくい傾向があります。転職のために簿記の資格を取得するのであれば、日商簿記がおすすめです。
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前述でもお伝えしましたが、経理未経験で転職を目指すのであれば、日商簿記2級は取得しておきたい資格です。日商簿記2級の内容には経理の実務における基礎知識が多く含まれているため、「実務経験がない状態でもすぐに戦力になれるための準備が整っている」ということを証明する意味でも、日商簿記2級の取得は有効です。経理の求人で求められている簿記の資格は日商簿記2級がほとんどなので、転職先の選択肢を広げるためにも、日商簿記2級の取得を目指しましょう。
日商簿記2級は持ってないけど日商簿記3級なら持っているという方も多いでしょう。しかし、実は日商簿記3級は、経理の転職であまり高い評価にはつながりにくい傾向があります。あくまでエントリーレベルの資格であり、日商簿記3級を取得していても、採用の判断で有利になるほどではないようです。
とは言え、日商簿記3級しか取得していない場合でも、2級を目指して勉強していることをアピールすれば、採用される可能性はあります。多くはないですが、日商簿記3級の保有を応募の要件としている求人もあるので、注意深く求人を探してみましょう。
すでに経理で働いていて、経理職としてのキャリアアップを目指すのであれば、日商簿記1級の取得を目指しましょう。将来、公認会計士や税理士を目指す場合にも役に立ちます。
ただし、未経験から経理を目指す場合には、無理に日商簿記1級の取得を目指す必要はありません。実務経験がなく日商簿記1級レベルの知識だけがあっても、そこまで評価が変わらないためです。日商簿記1級を目指すより、日商簿記2級を取得して実務経験を積む方がおすすめです。
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ここまで経理の転職における簿記資格の重要性を散々お伝えしてきましたが、簿記資格がなければ転職は全くできないという訳ではありません。経理で簿記資格がなくても転職の成功率を上げる方法をお伝えします。
実務経験の有無は応募者のスキルを判断する上で非常に重要な要素の1つです。ある程度の実務経験があれば簿記資格がなくても即戦力と判断されやすいため、転職では有利に働きます。
もちろん、経験が1年未満の人と10年以上の人では天と地ほどの差があるため、「経験が何年あるか」という点も見られます。そのため、現在簿記を持っていない状態でも経理に就けているという方は、まずは今のポジションでしっかりと実務経験を積みましょう。
もし後から簿記資格も取りたいとなった場合でも、既に実務経験があればある程度その経験を活かして勉強を進めることができるため、より効率よく勉強を進めることができるでしょう。
特に未経験や実務経験が浅い方の場合、応募可能な求人は非常に限られています。
その中でも、20代前半の「新卒」や「第二新卒」と呼ばれる層であれば、ポテンシャルを優先されることもあり、資格取得を目指しているという勉強意欲をアピールできれば、採用されるチャンスは十分にあります。
特に経理のような専門職に近い職種では、年齢が上がれば上がるほど即戦力になるかどうかを重視されるため、求められる経験やスキルのレベルも高くなります。そのため、もし未経験で簿記資格なしでも経理をやってみたいという方は、できるだけ早いうちに動き出すことを強くオススメします。
ここで気になるのが、「結局転職には簿記資格と実務経験のどちらが有利なのか」という点かと思います。そこで、経理に特化した転職エージェントである弊社ヒュープロが、これまで数多くの希望者の転職をご支援してきた経験から答えをお教えします。
結論からお伝えすると、簿記なし経験者の方が経理の転職においては採用率が高いです。
前提としてケースバイケースではありますが、経理の転職市場においては「資格=知識」というイメージが強く、「実務経験=簿記2級相当の知識を生かした経験」と判断されることが多いです。何度もお伝えしている通り簿記2級の知識は経理業務の基礎であるため、ある程度の実務経験がある人は簿記2級の知識を持っているのと同等だと判断されるのです。
では、「実務経験があれば簿記資格がなくても余裕で転職できるのか」と言われると、そういうわけでもありません。実務経験はあくまでも「実践的な会計処理ができる」というだけで、思考力や論理性などの、いわゆるポテンシャルの面では評価ポイントとして少し弱くなってしまうことがあります。
そのため、「人を一から育てる余裕がなく今すぐ即戦力が欲しい」という中小企業やベンチャー企業では実務経験が重視されやすい傾向にありますが、「人材育成に力を入れており、将来的に戦力となる人材を育てたい」という大手企業では、年齢や資格が優先されることも多いです。
とは言え、世の中の90%以上が中小企業であることを鑑みると、簿記なし経験者の方が転職先の選択肢は多いと言えます。
いずれにせよ、転職の際には転職エージェントの活用がオススメです。
未経験者向けの求人や資格なしでも応募可能な求人は、あったとしても福利厚生やエリアなど、何かしらの点で希望に合わないことが多いです。そんな中でもあなたのご希望条件に限りなく近い求人を紹介してくれるのが、転職エージェントです。
弊社ヒュープロでは業界トップの求人数を誇っているため、あなたのご希望条件に近い求人が見つかりやすく、アピールの難しい未経験や資格なしでも最大限にアピールできるように手厚くサポートいたします。もし経理での転職活動をお考えであれば、まずはご相談からお待ちしております。
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同じ経理業務経験者であっても、さまざまな意見の方がいらっしゃると思いますが、最終的には簿記の知識は業務に携わる際には多ければ多いほど良いという考えにたどりつくでしょう。また、直属の上司や社長のサポートが手厚く、細かく処理を教えてもらえるような環境が整っていれば、簿記の知識はあまり豊富でなくても支障がないかもしれません。しかし、そのように他力本願で携わるような業務ではないことは、肝に銘じておきましょう。簿記の資格を取得できない場合であっても、ある程度の知識は身につけておくようにしてください。
職場によって教育体制は大きく異なるものです。手取り足取り教えてくれるところもあれば、失敗から学べとでもいえるような放任主義なところもあるでしょう。また、上司のフォローが手厚いかどうかにもよります。あなたがたとえ業務で間違ってしまった箇所があったとしても、このような再確認してもらうことが可能な体制が整っていれば、自然と実務で学んでいくことができるからです。
また、今は会計ソフトが充実しており、ある程度の簿記のルールさえ把握できていれば、あとはソフトに入力をするだけという仕組みができあがっているため、簿記の知識が必須ではないという声もあります。ただ、これは「会計担当者」の立場だからこそ言えることです。複雑な業務も理解しておかなければならない管理者の場合は、簿記の知識はある程度のレベルは欠かせません。そうでなければ、管理者として務まらないためです。
経理に役立つ資格一覧については下記のコラムでも詳しく紹介していますので、あわせてご覧ください。
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