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農地を相続・贈与された場合、相続税や贈与税の納税猶予が受けられる!?

公認会計士 大国光大
農地を相続・贈与された場合、相続税や贈与税の納税猶予が受けられる!?

相続税や贈与税は他の税金と比べて高額になることが多いです。せっかく相続や贈与を受けたのに納税資金が足りなくて困ってしまったという話もよく聞きます。
そこで今回は、農地を相続や贈与された場合の納税猶予について現役税理士が解説します。

納税猶予とは?

まず、納税猶予について説明します。納税猶予というのは、納税を猶予される、つまり支払うべき税金を先延ばしにできることを言います。しかし実際は納税猶予を受けると納税そのものが免除されるケースが多い為、実は納税免除と言ってもそれほど意味合いは変わりません。

納税猶予を受けるための要件は?

では、納税猶予を受けるための要件にはどのようなものがあるでしょうか。
贈与者は農地を贈与した日まで3年以上継続して農業を行っていたことが必要となります。

また、過去に相続時精算課税を適用して農地の贈与をしたことがないことが必要となります。これ以外にも、贈与対象年に今回の農地以外で農地の贈与を行っていないこと、過去に農地の贈与税の納税猶予の適用が受けられる一括贈与をしたことがないことなどが要件となります。

一方受贈者においては、贈与者が死亡した時に相続人になることが必要です。また、農業を行うことが農業委員会に証明されることが必要となります。
この他、農地の全部、採草放牧地の3分の2以上又は準のうちの3分の2以上を農業の後継者に一括して贈与することが要件となっています。

贈与税の納税猶予の特例を受けるための手続きは?

贈与税納税猶予の特例を受けるためには、贈与された翌年の2月1日から3月15日までに申告を行わなければなりません。これと同時に担保提供も求められます。

また、この申告書には相続税の納税猶予に関する適格者証明書や担保関係書類など定められた書類を添付します。
納税猶予を受けてから、納税猶予期間中は相続税の申告期限から3年目ごとにこの特例の適用を受ける旨及び特例農地等に係る農業経営に関する事項等を記載した届出書を提出します。

農地等納税猶予税額を支払わねばならない場合

最初にお話した通り、基本的には納税猶予は納税免除と等しいです。しかし、納税猶予と言っているのは、税額を支払わなければならないことがあるためです。
次に掲げるいずれかの事由に該当することとなった場合は猶予されていた税額の一部または全部を納税しなければなりません。

・特例農地について譲渡があった場合、転用、贈与等今までと同様の使い方をしなかった場合
・特例農地について農業経営を廃止した場合
・3年目毎に提出する継続届出書の提出が無かった場合
・差し出している担保の価値が下がったことで、担保を積み増すことや変更を求められながらもその求めに応じなかったとき
・特例農地等が特定市街化区域農地等に該当しなかった場合や、都市営農農地等について生産緑地法の規定による買取の申し出または指定の解除があった場合等
・特例の適用を受けている準のうちについて、申告期限後10年を経過する日までに農業の用に供していない場合

つまり、農地としてそのまま農家を続けていれば猶予=免除と言えるのですが、途中で用途が変わったり手続を怠ったりすると納税猶予は受けられなくなり納税しなければならなくなります

猶予と言いながら利子が付く!?

先ほど納税猶予が受けられなくなる場合があると言いましたが、納税が発生した場合はその税額に利子税がつくため注意が必要です。しかも、その利子税は相続税の申告期限の翌日から納税猶予の期限までの日数に応じて次のような利子税が賦課されます。

・特例農地等のうちに相続又は遺贈により取得をした日において都市営農農地等であるものを有する農業相続人・・・年3.6%

・特例農地等のうちに相続又は遺贈により取得をした日において都市営農農地等であるものを有しない農業相続人
①特例農地等のうちに相続又は遺贈により取得をした日において市街化区域内農地等であるものに対応する部分の金額を基礎とする部分・・・年6.6%
②①以外の部分・・・年3.6%

ただし、特例基準割合が7.3%に満たない場合は以下の計算式で計算されます。
6.6%又は3.6%×特例基準割合÷7.3%
少々わかりづらいですが、特例基準割合が2%と仮定すると、後者の計算では0.72%となります。どちらにしても最近の金利の低さを考えると結構な高さの利息となることがわかるでしょう。

まとめ

農地の相続の場合はそのまま農業を続けてもらいたいと国が考えている為納税猶予の措置があることがわかりました。基本的に免除となるため、納税猶予を受けることはとても納税者にとって有利なことだと思います。

しかし、手続を怠ったり農地に変化が起きたりすると納税を行わなければならないどころか、納税猶予されていた期間分の利子を支払わなければならず、その分の蓄えが無いと支払いもできません。
よって、農地を譲り受ける場合は今後も農業を行うかどうかを慎重に判断して納税猶予を選択するかどうかを検討しなければなりません。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
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