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相続税がかからない財産とは?申告が必要なケースについて解説

HUPRO 編集部
相続税がかからない財産とは?申告が必要なケースについて解説

故人の財産を相続するうえで発生するものが、相続税です。しかし、個人の財産すべてに相続税がかかるとは限りません。つまり、相続税がかからない財産もあるのです。しかし、相続税がかからなければ申告をしなくていいかというと、そうではありません。今回は相続税がかからない財産や申告が必要なケースについて解説していきます。

相続税がかからない財産とは

相続税がかからないとされている財産には、以下のようなものがあります。

生命保険金や退職手当金

被相続人の死亡により支払いが行われる生命保険金や退職手当金は「みなし相続財産」とされます。被相続人が生前より所有していた財産ではないため、民法上の相続財産には含まれません。被相続人により保険料が支払われていた生命保険金などについては、相続財産の対象とはなるものの、一定金額(500万円×法定相続人の数)を超えていない場合は相続税がかからないことになっています。

花輪代や弔慰金

お悔やみとして遺族に渡る花輪代や弔慰金は、世間一般の常識としての範囲であれば、相続税はかからないとされます。ただし、この「世間一般の常識の範囲」という言葉はあまりにも曖昧なので、相続税法では次のように金額が定められています。

被相続人が業務上での理由で死亡した場合は「普通給与の3年分」、被相続人が業務上での理由ではない死亡の場合は「普通給与の半年分」を基準とするのです。ちなみにここでいう普通給与とは、被相続人の死亡時における賞与以外の給与を指します。

墓地、仏壇、仏具、墓石、神棚など

これら墓地などは慣習や国民感情が配慮され、相続税がかからないとされています。ただし、金の仏像などの骨董品を被相続人が所持していたような場合は、相続税がかかる可能性もあります。

国や地方公共団体に対して寄付をした財産

被相続人が相続した財産を、相続税の申告書提出期限前に国、地方公共団体、認定NPO法人、特定の公益法人などに寄付をした場合は相続税がかからないことになっています。ただし、特定の公益法人に対する寄付については、すでに設立されている公益法人であること寄付を受け取った公益法人が2年以内に公益事業に使用すること寄付をすることで寄付をした本人や親族の税金が低くなりすぎないことという3つの条件があります。

事故などによる損害賠償金

被相続人が交通事故などで死亡をした場合には、生命保険と損害保険金以外にも、損害賠償金というものが支払われます。この場合の損害賠償金は広い意味をもちますが、遺族の精神的苦痛に対しての慰謝料をする範囲においては、相続税はもちろん所得税もかからないようになっています。しかし、事故による医療費などの賠償請求権や逸失利益などについては相続財産となると判断されますので注意しましょう。

相続税がかかっても申告が不要なケースとは?

相続税には基礎控除と呼ばれる非課税枠があります。つまり、相続税の課税価格がこの基礎控除よりも低ければ、申告をする必要がないということです。基礎控除は計算式により求めることが可能です。その計算式とは「基礎控除=3,000万円+600万円×相続人の数」となります。

例えば、相続人が配偶者と被相続人の子どもふたりの合計で3人だとすると、「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」となり、課税対象となる金額は4,800万円であると割り出せます。つまり、相続財産の価格が4,800万円未満であれば申告の必要がなくなるのです。

相続税がかからなくても申告義務があるケースとは?

ただ実は、相続税がかからない場合でも、申告をする必要があるケースがあります。相続税が0円なのに申告が求められる時とは、以下の理由によって相続税が0円となった場合です。

配偶者控除(配偶者の税額軽減)によって相続税が0円となった場合

「配偶者控除(配偶者の税額軽減)」とは、配偶者が得た遺産額が配偶者控除を適用することにより1億6千万円以下である場合、相続税が0円になるという仕組みのことをいいます。ただし、この配偶者控除(配偶者の税額軽減)は特例であるため、税務署に「配偶者の税額軽減を適用する」ということを申告しなければなりません。

地積規模の大きな宅地の評価により相続税が0円となった場合

「地積規模の大きな宅地の評価額=路線価×規模格差補正率×各種補正率×面積(平方メートル)」で求められた評価額を、「地積規模の大きな宅地の評価」といいます。この特例が適用することができるのは、以下の2つのケースに当てはまる場合です。

・宅地の面積が、三大都市圏においては500平方メートル以上、三大都市圏以外においては1,000平方メートル以上であること
・宅地の地区区分が、普通商業・併用住宅地区または普通住宅地区であること

ただし、対象となる宅地が地区区分による条件を満たしていたとしても、以下の地域にある宅地の場合は、この特例を適用することはできません。

・工業専用地域
・市街化調整区域のため宅地開発をすることが不可能な地域
・容積率が400%(東京23区内は300%)以上となる地域

小規模宅地等の特例によって相続税が0円となった場合

被相続人と同一生計親族の住居用や事業用として使われている宅地に関しては、一定の条件を満たすことにより、評価額を減額させることができるという特例があります。この特例は「小規模宅地等の特例」と呼ばれ、不動産評価額を80%も減額することができるのです。ただ、評価額の軽減を受けるには、事前に申告することが求められます。そのため、相続額が0円となっても申告が必要なのです。

相続税の申告義務があるのに申告しなかった場合は?

相続税の申告をしなければいけない相続人が申告をしなかった場合は、延滞税無申告加算税を支払わなければいけない可能性がでてきます。また、相続税の対象となる財産には、相続が開始される3年以内の間に贈与された財産も含まれますので、注意が必要です。知識不足などで申告ができえおらず、税務署より通知が来たら、すみやかに対応するようにしてください。

まとめ

このように、相続税がかからない財産とかかる財産があります。また、相続税が0円であっても、申告はしなければいけない場合もあるのです。税法上の仕組みがややこしいので、知識が豊富でなければ間違って認識をしてしまうこともあるでしょう。万が一、税務署より相続税に関する問い合わせがきたら、できるだけ早く対応し、手続きや納税に応じるようにしてください。

この記事を書いたライター

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