税理士には、所属する税理士会および日本税理士会連合会等が行う研修を年間36時間以上受ける義務があります。実は、2019年10月から日本税理士会連合会のサイトで、税理士がちゃんと研修を受講しているかを確認することができるようになっているのです。今回は、税理士の研修義務について解説します。
税理士試験を合格してからも、勉強はずっと必要です。
そこで、税理士会では毎年36時間の研修を受講するよう呼びかけてきました。
税理士法にも「税理士は、所属税理士会及び日本税理士会連合会が行う研修を受け、その資質の向上を図るように努めなければならない。」と定められています。
「努めなければならない」あるように、税理士法の上では、研修を受けて資質向上を図ることは「努力義務」でした。しかし、研修を受講する人数があまりにも少なかったため、2015年には税理士会の会則変更により研修受講が義務化されました。
現在、日本税理士連合会で行われている研修は以下のものがあります。
税理士業務の改善進歩と資質の向上を図るため、全国15税理士会の協力を得て、各地域において研修会を実施しています。
高度情報化社会にふさわしい研修制度として、より多くの税理士が研修に参加できるよう、マルチメディアを活用した研修会を行っています。
税理士の業務の改善進歩と資質の向上を図るため、税理士の登録を受けた日から1年内の税理士を対象として研修を実施します。
税制及び税務行政等の改善合理化と税理士の資質向上を図るため、全国15税理士会を7グループに分け、税理士の日頃の研究結果の発表と質疑応答を行う研究討論会を実施しています。
研修を受けなかったり、36時間に満たなかった場合はどうなるのでしょうか?法令違反ではありませんが、税理士会の会則遵守義務違反になります。
日本税理士会連合会のサイトには、全税理士が登録されており、自分の近くの税理士などが検索できるようになっているのですが、ここに研修受講状況も加わりました。
2019年10月からは研修の受講時間や達成率が公表されているため、誰でも研修を受けているかどうかを知ることができるようになっています。
■日本税理士会連合会の税理士情報検索サイトで全公開される内容
税理士の方々は、基本的に勉強家です。
それなのになぜ研修の未受講が多かったのかというと、以下のような理由だったと言われます。
・忙しいので研修スケジュールと合わせられない
・研修内容の問題
研修回数は地方の税理士会ほど少ないという問題があり、どうせなら日程を押えた日に一気にやってしまおうという状況があったようです。
研修の日は拘束時間が長くなります。そのために仕事ができないという状況です。例えば1コマだけ受けるということをしていたら、研修よりもお客様優先になるのは当然といえるでしょう。
会場での集合研修は、時間と場所の制約があるため、現在では税理士向けのオンラインサービス「日税フォーラム」を利用したインターネット研修(オンデマンド研修)、ライブ配信など、会場受講型以外の研修方法が確立されています。
ライブでオンライン研修に参加できない場合は、日本税理士会連合会のホームページにストックされた過去の研修動画をいつでも視聴可能です。
配信数は十分な数がありますので、研修ホームページからのWeb受講だけでも、義務化された年間36時間の受講は達成できます。
今後も時代の変化に合わせて、新たな研修スタイルが生まれていくでしょう。
税理士の研修義務は、あくまで税理士会則に基づくものですが、免除要件もあります。
詳細については研修規則に定められており、具体的には以下の5つです。
以上の5点のいずれかに該当するときは、所属する税理士会に対して受講義務の免除の申請をすることができます。
免除申請書の提出期限は、免除を受けようとする事業年度終了日より3か月以内、受講義務の免除は一事業年度ごとです。
例えば、新型コロナウイルス感染症の影響は②にあたります。研修受講義務を果たせない場合は、申請手続きをすることで免除が可能です。