特恵関税制度についてご存知でしょうか?特恵関税制度は1971年から実施された税制度になります。今回は輸入を行う事業者にとって関係の深い特恵関税制度について解説をしていきます。
特恵関税制度とは、一般の関税率よりも低い税率を、開発途上国等を原産地とする一定の輸入品について適用を行い、開発途上国等の輸出額の増加や促進により経済発展を支援するためのもので1971年から実施をされています。
特恵関税制度が適用される国や地域には、開発途上国である特恵受益国と、後発開発途上国である特別特恵受益国があります。特別特恵受益国に該当をする国からの輸入品については、ほぼ全ての物品について関税が無税になります。特恵受益国、特別特恵受益国に該当する国とは、特恵受益国であるインドやベトナム、フィリピン、ペルー等と、特別特恵受益国であるアフガニスタンやネパール等の合計128ヵ国と5地域です。
特別関税制度の対象となり特恵税率の適用となる物品とは、農水産品と鉱工業産品が該当をします。
農水産品については関税が課されると定められている物品約1,900品目のうち、約400品目について個々の品目毎に一般の関税率より5~100%の税率が引き下げられています。
例えばトマトを輸入した場合、一般の関税率は9.6%ですが、特恵税率では7.6%、特別特恵税率では無税と定められています。
鉱工業産品については関税が課されると定められている物品約4,300品目のうち、約3,150品目が原則として無税、一部の品目について一般の関税率の20~80%とされています。
例えば練炭を輸入した場合、一般の関税率は4.6%ですが、特恵税率及び特別特恵税率では無税と定められています。
一般の関税率より低い税率である特恵税率や特別特恵税率の適用を受けるためには、特恵受益国や特別特恵受益国を原産地とする物品の輸入であることを証明する、原産地証明書を輸入申告の際に提出を行う必要があります。
原産地証明書とは原産地からの物品の輸出の際に輸出者の申告に基づいて、原産地の税関やその権限をもつ商工会議所等が発行するものです。
原則としては上記の手続きが必要ですが、輸出者の申告の課税価格の総額が20万円いかの物品や、物品の種類や形状によってその原産地が明らかであると税関長が定める一定の物品については、原産地証明書の提出は必要ありません。
特恵関税制度は開発途上国等の輸出額の増加や促進により経済発展を支援するためのものであるため、経済が発展したとみなした場合は、特恵受益国から除外をされます。この除外対象となることを卒業といいます。卒業には全面適用除外措置である全面卒業と、部分適用除外措置である部分卒業があります。
全面卒業とは特恵受益国のうち、国際復興開発銀行が公表する統計において3年間連続して高所得国に該当した場合、又は高中所得国に該当してかつ全世界の総輸出額に占める高中所得国の輸出額の割合が1%以上となった場合に、その国を原産地とする全ての品目が特恵関税制度の適用から除外をされます。
部分卒業とは特恵受益国のうち国際復興開発銀行が公表する統計において前年に高所得国に該当した場合、又は高中所得国に該当してかつ全世界の総輸出額に占める高中所得国の輸出額の割合が1%以上となった場合に、一部の品目が特恵関税制度の適用から除外をされます。
部分卒業の対象となる品目とは、前々年の貿易統計においてその国を原産地とする品目の輸入額が10億円を超え、かつ同一品目の全世界からの日本の総輸入額に占めるその国の割合が25%を超える品目です。
また卒業とは別に国別、品目別特恵適用除外措置というものもあります。国別、品目別特恵適用除外措置とは特恵受益国を原産地とする品目のうち、3年間の総輸入額が45億円を超え、かつかつ同一品目の全世界からの日本の総輸入額に占めるその国の割合が50%を超える品目について、特恵税率の対象品目から3年間除外されるというものです。
平成31年度には128ヵ国と5地域中国、メキシコ、タイ、マレーシアが全面卒業をして特恵受益国から除外されました。令和2年度は新たに全面卒業の基準に該当をする特恵受益国は無いため、変わらず128ヵ国と5地域が、特恵税率、特別特恵税率の対象となる国となります。
国別、品目別特恵適用除外措置は平成31年から令和4年の間にアルゼンチンを原産国とするグレーンソルガムが特恵税率の対象品目から除外をされています。
以上のように特恵関税制度について解説をしました。この制度の対象となる特恵受益国、特別特恵受益国や対象品目は、その国や日本の情勢により年度毎に変化をします。
特恵税率の対象ではなくなると、関税の税率が上がるため、輸入を行っている事業者にとっては仕入の金額の上昇に繋がり、経営状態を圧迫しかねません。卒業国ではなく特恵受益国からの輸入に切り替える、輸入品目を変更する等の対処が必要となってきます。
よって長年同一の原産国、品目を輸入している事業者であっても、特恵税率に関して今後も常に意識をしておくと良いでしょう。