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人事・経理担当者必見!テレワークの在宅勤務手当事例と経理処理について

HUPRO 編集部
人事・経理担当者必見!テレワークの在宅勤務手当事例と経理処理について

新型コロナウイルスの影響で、テレワークを推奨する会社が増えています。そこで企業によっては、通勤手当に代わるものとして「在宅勤務手当」を支給するところもでてきました。自宅で仕事をするための環境整備や、業務時間中の水道光熱費を補填するものです。今回は在宅勤務手当について、企業事例を交えながら解説していきます。

在宅勤務手当とは

在宅勤務手当とは、在宅勤務を実施している企業が、従業員に対して支給する手当のことです。以下のような意味合いで支払われます。

在宅勤務にあたって、自宅での業務環境を整えるための支給金
自宅での業務にあたって水道光熱費の補填

なお、業務用のPCやインターネット通信の整備、ICTデバイスなどについては、セキュリティや通信速度の問題もありますので企業から支給されるケースもあります。

在宅勤務手当のケースと経理処理

使用用途としては、机や椅子、モニターや支給されないPC関連機器などの、働く環境を向上させるためとして位置づけられています。しかし、企業によってその支給パターンは主に3つに分かれます。

(1)在宅勤務環境を整えるための実費を含む一律支給

自宅での環境整備にかかった実費を含む一律の手当を支給します。
この場合、支給された在宅勤務手当がどのように使われるかは各人によって異なりますので、住宅手当、残業手当などと同じ意味合いの手当となり、所得税の課税対象です。

例えば、これまでの給与に月に1万円の在宅勤務手当がプラスされたら、その分税金や社会保険料がアップします。

(2)実費のみを支給する

自宅での環境整備について、実際に購入した費用分のみ支給するケースでは、実費については、立替金と同じ意味合いになるため非課税です。

ただし、経費精算と同じ取り扱いになるため、購入したものの領収書を回収し、適切な支出であったかどうかを確認する必要があります。

労働基準法では「労働者に食費や作業用品などを負担させる場合には、就業規則に定めなければならない」と定められています。一時的な立替精算ではなく、持続的に手当支給と言うことになると、就労規則の見直しも必要でしょう。

(3)実費とは別に一律で支給

実費にかかった費用は別途精算(PCなどは現物支給)し、それとは別に一律で手当を支給するものです。
実費分は(2)と同様に課税対象外ですが、一律支給については課税されます。

企業がこの支払方法をする際は、原資として通勤手当を使うケースが多いのですが、通勤手当とは異なり課税される点に注意が必要です。

ただし、一律手当分は通勤手当と違ってその用途は自由です。基本給や残業手当と同じ意味合いなので、自由に使うことができます。

在宅勤務手当の企業事例

企業はどのような在宅手当を実施しているのでしょうか、ケース別に具体的な事例を見ていきましょう。

(1)在宅勤務環境を整えるための実費を含む一律支給

2020年にいち早く在宅勤務を導入した企業では、作業環境を各自で整えてもらう必要があったこともあり、一時金として数万円~の支給を行っています。

株式会社メルカリ

メルカリでは、在宅勤務や会議のオンライン化をすすめており、勤務環境構築やオンライン・コミュニケーション(チーム・ビルディング)などのために6万円(半年分)の在宅勤務手当の支給を行っています。

出典:メルカリCEOから緊急事態宣言を受けてのメッセージ

株式会社カオナビ

カオナビでは、机や椅子、モニター、PC周辺機器、インターネット環境等、一人ひとりが必要な用途で就労環境を整備できるように、「在宅勤務支援金」という形で一人当たり5万円を一括支給しました。

出典:カオナビ、With/Afterコロナを見据えた新しい働き方へ在宅勤務の環境整備支援を拡充

株式会社grasys

株式会社grasysでは、手当の支給などを通して在宅勤務の環境を整える補助までフォローするため、10万円を正社員・契約社員に関わらない全従業員に支給しています。

出典:クラウドインフラの導入・運用サポートを手がけるgrasys新型コロナウイルス対策強化において全従業員に10万円支給を決定

(2)実費のみを支給する

非課税であり、実態に即した補助ができることが魅力なのですが、全従業員の実費対応をするとなると、計算が複雑になり、経費精算の手間がああります。
そのため、このケースで実施している企業事例はほとんどないようです。
特に人数の多い大企業では「実施が難しい」との声が上がっています。

(3)実費とは別に一律で支給

支給の負荷を考えた場合、一番多いのが一律で支給するケースです。

株式会社日立製作所

株式会社日立製作所では、全従業員に対して、在宅勤務に必要な費用や出社する場合のマスク・消毒液など感染予防対策に必要な費用に対する補助として、1人当たり3,000円/月を支給しています。
そのほか、福利厚生の「カフェテリアプラン」にて、在宅勤務のために購入した、情報機器(モニター、Wi-Fi*1ルーターなど)や作業机・椅子などの物品購入費用を補助を行っています。

出典:在宅勤務を変革のドライバーとする働き方改革を推進
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NTT

NTTでは、国内約18万人の全従業員に1日あたり200円を在宅勤務手当として支給しています。在宅勤務率が5割以上の部署では通勤定期代の支給を廃止し、通勤にかかった交通費を支払うようになりました。

出典:NTT 10月から在宅勤務手当 通勤費は実費支給

株式会社ドワンゴ

株式会社ドワンゴでは、対象となる従業員は在宅勤務を基本とし、必要に応じて出社する勤務形態に変更しています。
対象の正社員・契約社員には、在宅勤務手当として月額2万円を支給(アルバイトは日額1,000円、上限月2万円)。出社時の交通費は、定期代ではなく経費精算での支給に変更されました。

出典:在宅勤務制度を7月1日より本格導入、恒久化へ対象者へ毎月2万円の手当を支給決定

富士通

富士通では、製造拠点を除く国内約8万人のグループ社員を対象に、自宅や最寄りのオフィスで働くテレワークを勤務形態の基本とし、定期代に代わる在宅勤務費用として月5000円の「スマートワーキング手当」を支給。通勤定期券代の支給を廃止しました。

出典:富士通、8万人テレワーク 通勤定期廃止、単身赴任削減

パナソニック

パナソニックでは、2021年4月から、在宅勤務手当として月3000円の支給を開始。対象は、パナソニック本体の従業員約6万人です。一定の基準を満たした希望者に支給するとし、手当の受給者には定期券代を支給せず、通勤や業務上の移動による交通費は実費精算となりました。対象に子会社の従業員を含むかは明らかにしていません。

出典:パナソニック、在宅勤務手当を月3000円 4月から

アデコ株式会社

アデコでは、2021年4月から、派遣社員を対象とする在宅勤務手当を開始。これまで通り6か月もしくは1か月の定期券代相当分を通勤手当として支給するとともに、主な就労場所が自宅の場合は在宅勤務1日につき200円の在宅勤務手当を支給することを発表しています。

出典:派遣社員を対象とした「在宅勤務手当」の導入を決定

在宅勤務手当の新設・見直しを求める企業も

新型コロナウイルス感染症の収束が見えない現在、今後のリスクも踏まえて在宅勤務への移行を進める動きは強まっています。
2021年春の春闘においては、大手企業の労働組合が在宅勤務手当の新設・見直しを求める声が相次ぎました。

例えば、NECの労組は、在宅勤務時の電気代や通信費の実費相当分を経費精算できるように要望しています。電気代も値上がりしているので切実な問題です。
ただし、前述の通り実費精算については会社側の負担も大きくなるため、それであれば一律支給額をアップさせるという方策を求めることになるのではないでしょうか。

しかし、在宅勤務手当が増えると、それに伴って所得税や社会保険料もアップします。在宅勤務にかかる課税についても、企業から改定が求められています。在宅勤務手当については、今までになかった、新たな手当のため、2021年1月に国税庁から「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ」(源泉所得税関係))
が公表されました。

今後も新しい規定が生まれる可能性があるので、人事・経理担当者はチェックしておきましょう。

この記事を書いたライター

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