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企業経営を変える?モノ言う株主(アクティビスト)とは

HUPRO 編集部
企業経営を変える?モノ言う株主(アクティビスト)とは

「アクティビスト」とも言われる「モノ言う株主」。株主の権利を行使して企業経営に影響を及ぼそうとする株主のことです。欧米では当たり前の概念ですが、長らく株式の持ち合いを続けてきた日本においては、2000年代前半から注目されるようになりました。本記事では、モノ言う株主について解説します。

モノ言う株主とは

2021年4月、東芝は、シンガポールの投資ファンドである筆頭株主のエフィッシモ・キャピタル・マネジメントと、アメリカのヘッジファンドで第2位株主とみられるファラロン・キャピタルの要求により臨時株主総会を実施。その結果、車谷社長のCEO退任が決定したというニュースが報じられました。この一連の動きは「モノ言う株主」によるものと言われています。

「モノ言う株主」とは、一定の株式を保有することによって、企業経営に積極的に関わる株主のことです。彼らは、投資した企業の価値を向上させ、より大きな利益を上げるように経営の見直しを求めます。彼らは「アクティビスト」ともいわれ、経営戦略や資本構成の変更、事業の買収や売却など「エンゲージメント活動」と呼ばれる働きかけを行うのです。

マスコミなどメディアを通じて報じられる「モノ言う株主」は、経営者と対立して自らの意見を表明し、時には法的手段を講じて企業と対決する姿勢を見せます。経営者からしてみれば、企業内の情報も知らずに口出しをしてくる彼らは、目の上のたんこぶのような存在に思えることもあるでしょう。本来は、経営者と「モノ言う株主」は必ずしも対立する存在ではありません。同じ目的を持って企業経営に当たるケースも多くあります。

モノ言う株主の種類

「モノ言う株主」が台頭するまでは、日本企業の大口株主は、保険会社・信託等の機関投資家や、株式持ち合いを目的とした銀行などでした。企業と金融機関はお互いに株式を持ち合っている状態だったため、株式を保有していても会社の経営方針には特に意見しないことが当たり前だったのです。これは逆に「モノ言わぬ株主」(サイレントパートナー)といわれています。

「モノ言う株主」の代表例は、投資家から資金を集めて高い利回りを狙う「投資ファンド」です。特に、M&Aに関わる投資ファンド会社の中で、積極的なアクティビストとして活動するファンドは「アクティビストファンド」と呼ばれています。

多額の資金を運用する「年金基金」や保険会社・信託銀行などの機関投資家、電力会社株を保有する地方自治体も「モノ言う株主」です。また、会社の創業者が自社株を多く保有し、引退後に結果的に「モノ言う株主」になるパターンもあります。例えば、大塚家具のお家騒動は、会長と社長の経営上の衝突から生じました。

モノ言う株主は何をするか

「モノ言う株主」が企業経営者に対して行う活動を、具体的に見てみましょう。

(1)議決権行使

議決権とは株主の権利の一つ。株主が株主総会で議案に対する賛否を投票することをいいます。株主は議決権を行使することによって、企業の経営に参画することができるのです。
株主総会では、企業の将来を決める決議が行われます。具体的には、役員の選任・定款変更や会社の利益の配分方法などです。
「モノ言う株主」は、多くの割合の株式を取得しています。株主総会における企業からの提案に対して、投票で意思を表明することができるのです。

(2)株主提案

株主自らが株主総会において議題ないし議案を提案することです。
ただし、会社法上の公開会社においては、原則的に議題提案権を行使できるのは、総株主の議決権の1%以上の議決権、または300個以上の議決権を有する株主に限られています。

大株主である「モノ言う株主」の提案は全て取り上げられるわけではありません。市株主の提案できる議案数は10までとされています。また、過去に提案された議案と実質的に同一の議案については、その時から10%以上の賛成を得られなかった日から3年を経過していない場合には、取り上げる必要はないとされています。

個別の議論・提案

(3)個別の議論・提案

株主が、個別に企業経営者と経営戦略や資本構成などに関する議論や意見の提案を行うこともあります。株主提案を行ったり、株主総会での議決権を行使するなど、公の場での直接的な対決は避け、非公式な場での経営陣との個別での対話を申し出ます。

(4)株主間の調整

モノ言う株主は、一企業に一つではありません。株式取得割合が拮抗している他の株主がいる場合、互いの利害が一致しないこともあります。そのような時に、株主間で意見を調整したり、方針が異なる株主を説得したりすることで、議題のスムーズな解決を目指そうとする働きかけです。

(5)経営・業務執行

取締役・執行役の選任および送り込みを行ったり、事業再編計画を立案するなど、より経営に立ち入った方策を取ります。
投資家に向けての対応や、コーポレートガバナンスの観点からも、モノ言う株主が取締役に就任するケースは増えていますが、日本企業では根強い抵抗があるのも事実です。

モノ言う株主との協調がカギ

企業と株主は本来対立するものではありません。一口に「モノ言う株主」といっても、全てが自分の利益だけを考えているわけではなく、本当に会社の未来を考えて味方となってくれる株主も多くいます。

今後は、株主との対話を重要視し、会社の中長期的な経営方針を理解している「モノ言う株主」と協調路線を取ることで、従来の対立姿勢のアクティビストファンドとの対応を行うことも経営の重要な舵取りとなるでしょう。

この記事を書いたライター

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