テレビCMを始めとして、クラウド会計という言葉を日常で耳にする機会が増えてきました。それでも実際に使用したことはないという方も多いはず。今後個人事業主の方にも必須となるクラウド会計の概要と将来性を解説していきます。
クラウド会計ソフトを使用した会計のことを、クラウド会計と呼びます。そしてクラウド会計ソフトとは、クラウド上で会計処理を行うことができるソフトのこと。インターネットを介して会計ソフトにアクセスし、伝票情報を入力したり、帳簿の作成を行ったりすることができます。
従来のデスクトップインストール型会計ソフトとの大きな違いは、データが全てクラウド上にあることと、様々な電子データと連携が可能なこと。前者のメリットは、自社でデータ保全にかかる対策を打たなくて済むこと。また後者のメリットは、ネットバンクやクレジットカードの入出金データを連携させることで、手作業での仕訳作成時間を大幅に削減できることです。
クラウド会計ソフトが世に出て早数年が経過しました。現在、クラウド会計ソフトの大手企業への普及率は伸び悩んでいます。大手企業には、既に企業内で長年使用されてきた会計ソフトがあります。その既存システムから乗り換える費用や手間を上回るだけのメリットがないと感じられていることが普及率の低い大きな原因としてあげられます。
一方、クラウド会計ソフトはスタートアップ企業や個人事業主の間では順調な普及をみせています。クラウド会計ソフトがスタートアップ企業や個人事業主に受け入れられている大きな理由に、初期費用の安さがあげられます。会計ソフトを独自開発したりデスクトップインストール型のソフトを購入したりする場合、導入時に初期費用がかさんでしまいます。
それに比べ、クラウド会計ソフトは月額、または年額でシステム使用料を支払う精算方法のため、初期費用がぐっと抑えられます。この導入のしやすさから、クラウド会計ソフトは新しい会社や個人事業主を中心に普及の兆しをみせているのです。
クラウド会計が個人事業主の間で広まっているもう一つの理由に、税金がお得になるということがあげられます。
個人事業主が確定申告をするときに受けることができる、青色申告控除。この控除の制度は、2020年度から変更が予定されています。紙の申告書で確定申告を行った場合上限は55万円となりますが、一方電子申告を行った場合は65万円まで控除が可能となるのです。10万円分控除額が増えるとあって、今から電子申告へ移行している個人事業主の方が多くいらっしゃいます。
この電子申告を行った場合の控除がなぜクラウド会計ソフトの普及に関係があるのかというと、クラウド会計ソフトは電子申告がしやすいように作られているからです。電子申告用のサービス内容はクラウド会計ソフトの種類ごとに異なりますが、e-taxで確定申告を電子申告する際に利用できるエクスポート用ファイルが出力できたり、申告書類の作成から提出まで一貫してクラウド会計上で行うことができたりするサービスが提供されています。クラウド会計ソフトは、確定申告を電子で行うことを見据えたサービス展開がされているのです。
クラウド会計ソフト以外を利用してe-taxで電子申告を行うことに比べると、台帳の作成や集計など面倒な作業を大幅に減らすことができます。そのため、クラウド会計は個人事業主を中心に将来更なる普及が予想されます。
現在日本政府は、日本の電子化を推進しています。消費税のキャッシュレス還元もそのうちの一つ。そして、前述した控除額の話もここに繋がっているのです。上記控除額の差は、確定申告を「紙」で行うか、「電子」で行うかという点から発生しています。政府が推奨しているe-taxという電子納税システムを利用して電子申告した場合のみ、上記優遇を受けることができます。
また2020年より、大法人の電子申告義務化もスタートします。大企業には、紙の申告書を利用しての税務申告ではなく、e-taxを利用した電子申告が義務付けられます。このことからもわかるように、日本はますます電子化社会へと進んでいきます。クラウド会計がさらに普及しやすい社会へと移行が始まっているのです。
クラウド会計ソフトは、一定期間無料で使用できるお試し期間が提供されているソフトがあります。今までクラウド会計ソフトを利用されたことがない方は、この期間を利用してシステムがどのようなものか、実際に体験してみるといいでしょう。