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勤務間インターバル規制とは?制度や助成金についてわかりやすく解説

HUPRO 編集部
勤務間インターバル規制とは?制度や助成金についてわかりやすく解説

勤務の終了から次の始業時刻の間に一定のインターバル(休息)時間を確保する「勤務間インターバル規制」。働き方改革では勤務間インターバル規制が2019年から努力義務になりました。本記事では、勤務間インターバル規制の内容やメリット、助成金についてなど説明します

勤務間インターバル規制とは?

「勤務間インターバル」とは、勤務終了後一定時間以上の休息期間を設けること
ヨーロッパなどでは古くから導入されていて、EU では仕事の終わり時間から翌日の始業時間までは11時間以上あけるのが決まりです。
もし、前日の終業が遅くなった場合は、翌日の始業時間を繰り下げることで対応します。

午前9時から午後5時までが定時となっている会社では、本来の勤務間インターバルは16時間あります。
しかし、残業時間によってこの時間はどんどん短くなります。
仮に午後11時までの残業があったとすると、インターバルが10時間となってしまうため、これを翌日の始業時間を9時から10時に繰り下げることによって、インターバルを11時間確保するというのが、勤務間インターバル規制です。

日本では従来長時間労働が問題視されており、働く方の生活時間や睡眠時間を確保するために、 2018年6月に成立した「働き方改革関連法」に基づき「労働時間等設定改善法」が改正されました。そして2019年4月からは、前日の終業時刻から翌日の始業時刻の間に、一定時間以上の休息を確保することが事業主の努力義務として規定されることになりました。

出典: 厚生労働省 勤務間インターバル制度 特設サイト

勤務間インターバル規制の導入は進んでいるのか

2019年より義務化された年間5日以上の有給休暇取得とは異なり、勤務間インターバル規制があくまで努力義務です。
努力義務ということで、勤務間インターバル規制を導入しない、あるいは仮に導入していてもその規制を守らなかったからといって罰則に問われることはありません。

さらに 前述のEU の例は11時間となっていますが、日本におけるインターバル時間は特に規制があるわけではないので、例えば9時間でも問題ありません。

実際に、もともとこうした従業員の休息を確保して生産性を上げる取り組みを積極的に行っていた企業の中には、その状況に応じて時間を変更したりしています。

四角四面に決まりを守るというよりも、自社に合った運用方法を考え、取り入れていこうという姿勢が重要だと気づかせてくれる事例を取り上げてみました。

事例1:本田技研工業

例えば、1970年代から勤務間インターバルを設けていた本田技研工業株式会社においては、22時以降までの残業を行う場合において

・本社・営業は12時間
・研究所では10時間
・工場では9時間30分~11時間30分

と事業領域ごとに異なる規定を設けたりしています。超えた時間については、次の出社までの15分単位で遅らせることができるのが特徴です。

勤務形態によって長時間労働が避けられない状況にある場合、 インターバル時間を設定することによって休息時間を確保しています。

出典: 厚生労働省 勤務間インターバル制度 特設サイト 参考事例 本田技研工業株式会社

事例2:株式会社岩田屋三越

福岡県の百貨店である株式会社岩田屋三越においては、2017年より11時間のインターバル制度を設けています。
同社は2010年より10時間のインターバルを設けていたのですが、これを拡大した形です。
百貨店においては、元々シフト勤務が多いこと、クリスマス・年末年始などの繁忙期や、季節ごとの催事やディスプレイ変更など、どうしても閉店後に準備が必要なことが多くなり、その勤務形態が変則的になりがちです。

そこで、勤務間インターバルの拡大と並行して、勤務シフトの固定化と、勤務時間の厳守を徹底する取組を進めました。長時間労働の大きな要因であった「遅番の翌日に、早番で出社」がなくなるようにしたことにより、一日の実労働時間は、2016年度が平均7.45時間(7時間27分)だったのに対し、2017年度では平均6.65時間(6時間39分)と短縮化に成功しています。

特筆すべきは、どうしてもインターバル時間を確保できないような状況が生じてしまう業種でありながら、できる限り守るべく取り組む姿勢を崩さないことです。
結果的には、制度をきっちりと運用している実績が、働きやすい職場として人材の流出を防ぎ、採用活動にも功を奏しています。

出典: 厚生労働省 勤務間インターバル制度 特設サイト 参考事例 株式会社岩田屋三越

時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)について

事例で取り上げたのはいずれも大企業。中小企業においてはこうした取り組みを実施したくとも難しいという現状があります。
しかし、労働者にとって働きづらい環境をそのままにしておくと、 いずれは求人しても人材確保が難しくなり、働き手がいなくなってしまうでしょう。

そこで、中小企業を対象に、厚生労働省より時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)という助成金が創設されました。

2019年度の交付申請受付はすでに終了していますが、次年度以降の参考までにご確認ください。

助成金支給対象

助成金の支給対象となる事業主は、以下のすべてを満たす中小企業事業主です。

(1)労働者災害補償保険の適用事業主であること
(2)次のアからウのいずれかに該当する事業場を有する事業主であること
 ア 勤務間インターバルを導入していない事業場
 イ 既に休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場であって、対象となる労働者が当該事業場に所属する労働者の半数以下である事業場
 ウ 既に休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場

(※)中小企業事業主とは、以下のAまたはBの要件を満たす中小企業となります。

助成金支給対象の取り組み

助成金の支給対象の取り組みとしては、以下のいずれか1つ以上の実施が必要です。

1労務管理担当者に対する研修
2労働者に対する研修、周知・啓発
3外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング
4就業規則・労使協定等の作成・変更(計画的付与制度の導入など)
5人材確保に向けた取組
6労務管理用ソフトウェアの導入・更新
7労務管理用機器の導入・更新
8デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
9テレワーク用通信機器の導入・更新
10労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
(小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など)
※研修には、業務研修も含みます。
※原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象となりません。

助成金支給額

実施の取り組みに要した経費の一部が、成果目標の達成状況に応じて支給されます。

対象経費の合計額に補助率3/4(※)を乗じた額を助成します(ただし次の表の上限額を超える場合は、上限額とします)。

(※)常時使用する労働者数が30名以下かつ、支給対象の取組で6から10を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5

詳しくは、働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)をご確認ください。

まとめ

長時間の労働を防止し「過労死防止の切り札」とも言われる「勤務間インターバル規制」。生産性を上げるためには、労働者の休息時間を確保し、健康を維持することは非常に重要なことです。

実際に働いていたら、前日の残業によって、翌日になっても疲れが取れず、その日はあまり仕事ができなかったと……いう経験は、ほとんどの方が持っているのではないでしょうか。
睡眠時間8時間と、通勤時間や準備を加味するとEUの基準である11時間というのは理にか
なった休息時間であるといえます。

「勤務間インターバル規制」は、有給休暇の取得日数と共に働き方改革の要ともなる制度す。これからより注目されてくるでしょう。2019年現在は努力義務ですが、そのうち強制化されることも視野に入れ、仕事の効率化に取り組む必要があります。
これからの企業は、社員の仕事量・業務負荷、そして業務自体の内容について改革できる、本来の意味でのマネジメント力がある人材が求められるでしょう。

この記事を書いたライター

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