小規模事業者は、経営改善のための融資を受けづらい状況にあります。そんな時に役立てたいのは、商工会議所・商工会からの推薦で受ける「マル経融資」。今回は「マル経融資」について概要とメリット・デメリットについて解説します。
「マル経融資」は、小規模事業者が受けられる国の融資制度です。正式名称は「小規模事業者経営改善資金」。融資元は国が100%を出資する株式会社日本政策金融公庫、融資を受けるには、商工会や商工会議所の経営指導を受けていることが条件となります。
経営改善に必要な資金を無担保・無保証人・低利で融資を受けられることが特徴です。
借り入れした資金は、仕入資金、手形決済資金、給与の支払いなどの運転資金、工場・店舗の改装資金、設備や備品の購入などの設備資金として使うことができます。
商工会議所は、明治11年に日本の資本主義の父といわれる渋沢栄一を中心として作られました。地域の商工業の改善発達を図るための組織です。
日商簿記検定でおなじみの日本商工会議所は、全国の商工会議所の中央連合体。法律に基づいて設立された特別認可法人ですが、れっきとした民間組織です。「日本経済団体連合会(日本経団連)」、「経済同友会」とともに財界三団体の一つとなっています。
マル経融資(小規模事業者経営改善資金)の内容は、以下の通りです。
■貸付限度額:2,000万円
■返済期間:
・運転資金:7年以内(据置期間※:1年以内)・設備資金:10年以内(据置期間:2年以内)
■担保・保証人:不要(保証協会の保証も不要)
■利率:年利1.21%(2021年4月現在)
※「据置期間」とは、利息のみを支払えばよいとされる期間です。元本返済は、据置期間後にはじまります。
※なお、返済が遅延した場合は、損害金が発生します。遅延損害金の割合は年8.80%です。(令和3年4月1日から令和4年3月31日までの貸付け)
マル経融資は、地震や台風などの天災によっても特別枠が設けられることがあります。2020年からの銀型コロナによって、影響を受けた小規模事業者の資金繰りを支援するためにも新たに枠が設けられました。
■対象者:新型コロナウィルス感染症の影響により最近1か月の売上高が5%以上減少した小規模事業者
■貸付限度額:別枠として1,000万円を措置
■貸付金利:別枠1,000万円の範囲内で、当初3年間、通常の金利から▲0.9%引下げ(1.21%⇒0.31%)
■措置期間:設備資金を4年以内、運転資金を3年以内に延長
※商工会議所、商工会または都道府県商工会連合会の実施する経営指導を受けており、商工会議所等の長の推薦が必要です。
どうしたらマル経融資を受けられるのでしょうか。具体的には以下の5つの条件があります。
①常時使用する従業員が20人以下の法人・個人事業主であること
(ただし、商業または、宿泊業および娯楽業を除くサービス業は5人以下)
②最低1年以上、商工会あるいは商工会議所の同一地区内で事業を行っていること
③商工会あるいは商工会議所の経営指導を6ヵ月以上受けていること
④税金を滞納していないこと
⑤商工業者であり、日本政策金融公庫の非対象業種に該当していないこと
非対象業種は以下のような業種が該当します。
マル経融資におけるメリット・デメリットを見ていきましょう。
マル経融資は商工会議所を通し、日本政策金融公庫から融資を受ける制度。公的な融資制度のため安全・安心なのが一番の特徴です。
通常、金融機関から融資を受けるためには、経営者個人で相応の担保や保証人の用意が必要です。担保の設定や保証協会の保証が不要なマル経融資は、経営者の負担が少なく受けられます。
他の金融機関の融資に比べて低金利であることも、マル経融資のメリットです。
マル経融資の利息は、2021年4月現在で年利1.21%。
仮に100万円を3年間返済で借りたとしましょう。
元利均等方式で、返済月額は28,298年となり、3年間の総額で1,018,746円です。3年間借りても利息分は18,746円。
マル経融資を受けるためには、商工会・商工会議所に加入していなければなりません。
加入は無料ではなく、入会費や年会費などのコストがかかります。
さらに、加入してればすぐに受けられるわけではなく、商工会・商工会議所の経営指導を半年以上受けていることが条件となっています。
マル経融資の用途は、運転資金と設備資金。デメリットは、創業資金として使用できないことです。商工会・商工会議所の地区内で1年以上事業を行っていることが条件となっているため、すでに創業している個人事業主・法人に限られます。条件を満たしていなければ、緊急で事業資金が必要になっても利用することができないことが、マル経融資のデメリットといえるでしょう。