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棚卸資産回転期間ってなに?考え方から計算式まで丁寧に解説します!

HUPRO 編集部
棚卸資産回転期間ってなに?考え方から計算式まで丁寧に解説します!

棚卸資産回転期間は棚卸資産が仕入れてから販売するまでにどれくらいの期間(日数)がかかっているかを示す指標です。棚卸資産を販売したときにその対価として現金を受取るので、棚卸資産回転期間が長いほど棚卸資産を現金化するまでに時間がかかっています。この記事ではそんな棚卸資産回転期間について詳しく解説します。

棚卸資産回転期間の考え方

棚卸資産は、いずれは顧客に販売されることで収益を上げるものです。棚卸資産を仕入れるためにはコストがかかります。通常、現金を棚卸資産に換え、それを販売し、その対価を現金で得ることで企業の営業活動は成り立っています。つまり、現金→棚卸資産→現金という流れが、企業の営業活動というわけです。

ここで、現金を棚卸資産に投下するということは、会社から現金が流出するということになります。そして、棚卸資産が販売されると、会社に現金が流入してくるということになります。したがって、棚卸資産をうまく販売していかないと、どんどん会社から現金が流出してしまうばかりではなく、会社にどんどん在庫が増えていってしまうということになります。

会社を経営するうえでは、「在庫は売れる分だけ置いておく」つまり「売れる商品を効率的に仕入れて販売する」という状態にしておくのが理想です。余計な在庫を長期間抱えてしまうと、もちろん在庫回転率は悪くなってしまいます。さらに回転率が悪くなるだけでなく、長期間在庫を保管することで在庫自体が劣化してしまい、結果不良在庫となり破棄しなければいけない事態も招きかねません。

したがって、棚卸資産を仕入れてから販売するまでの期間がどれくらいなのかは会社の資金繰りを考えるうえで非常に重要です。棚卸資産が販売できないとその対価として会社に現金が流入してこなくなってしまいます。そこで、棚卸資産回転期間を見ることで、会社が棚卸資産を仕入れてから、それを販売するまでにどれくらいの日数(期間)がかかるかを判断しなければなりません。そこで使われているのが棚卸資産回転期間です。

棚卸資産回転期間とは、棚卸資産が1回転するのにどれだけの期間がかかるのかを表す指標です。簡単に言えば、商品をすべて売るのにどの程度の期間が必要かを表します。

棚卸資産回転率の計算

棚卸資産回転率は、「在庫回転率」とも呼ばれ、「純売上高÷期首・期末平均棚卸資産」で求めることができます。年に棚卸資産の何倍の売上高があったか、すなわち棚卸資産 (商品,製品,材料,仕掛品,貯蔵品など) が年に何回転したかということで、回転率が高いほど売行きも順調で、資金繰りもよく、反対に低いことは売行きが低調で在庫が多く、資本が固定化して資金繰りが悪いということになります。

棚卸資産回転率では1年間の売上高を棚卸資産で割って計算します。1年間の売上高が棚卸資産の何回転分になるのか、1年間で棚卸資産が何回転するのかをみて、棚卸資産の金額が適正なのか、棚卸資産が有効活用されているのかどうかを判断していきます。

棚卸資産回転率が低いすなわち棚卸資産が多すぎると資金の圧迫につながるほか、商品の陳腐化の危険性も生じます。逆に棚卸資産の回転率が高いすなわち棚卸資産が少なすぎると注文への十分な対応がとれず販売機会を逃す可能性があるので注意が必要です。棚卸資産回転率はその数値が高ければその分、商品が早いスパンで出入りしていることになります。しかし、棚卸資産の種類により在庫回転率は異なるため、一概に在庫回転率の数値が低いからといって売上に悪影響を及ぼしていると判断するのは、早計な場合もあるので注意が必要です。

棚卸資産回転期間の計算

棚卸資産回転期間が短ければ短いほど、在庫(原材料・部品・半製品・製品・商品)がすぐに回転している(販売されている)ことを表し、在庫管理の効率が良いことが分かります。逆に、在庫回転期間が長ければ長いほど、過剰在庫や滞留在庫が存在している可能性をあらわし、在庫管理の効率が悪いことが分かります。棚卸資産回転期間を商品別に見ることで、売れ筋商品や死に筋商品を判別することもできます。

棚卸資産回転率が1年間に棚卸資産が何回転するのかをみる指標であるのに対し、棚卸資産回転期間は棚卸資産が1回転するのに何日かかるのかをみます。

棚卸資産回転期間の計算式は日にちで表すものと月単位で表すものの2種類があり、計算式は以下の通りです。日にちで表す場合は売上高を365日で割り、それで棚卸資産を割って求めます。月単位で表す場合は売上高を12で割り、それで棚卸資産を割って求めます。

棚卸資産回転期間(回転日数) = 棚卸資産 ÷(売上原価÷365)

棚卸資産に関する会計基準によれば、棚卸資産は、「商品、製品、半製品、原材料、仕掛品等の資産であり、企業がその営業目的を達成するために所有し、かつ、売却を予定する資産のほか、売却を予定しない資産であっても、販売活動及び一般管理活動において短期間に消費される事務用消耗品等も含まれる」とされています(棚卸資産会計基準3)。つまり、貸借対照表に表示されている棚卸資産という勘定科目には、様々な資産が含まれており、事務消耗品等も含まれていることがわかります。ここで、棚卸資産回転期間の計算にあたっては、売上高と比較して販売の効率性を分析することになるので、販売活動及び一般管理活動において短期間に消費される事務用消耗品等は除いて計算する方がより正確に計算することができます。

棚卸資産回転期間の解釈

棚卸資産回転期間の解釈

製造業においても、商業においても、棚卸資産は売上債権と並んで重要な資産です。
棚卸資産回転期間は、その期間が短ければ短いほど商品を仕入れてから販売されるまでの時間が短いことを意味します。棚卸資産は在庫のことで在庫は一定数は必要ですが、多すぎる場合は問題があります。棚卸資産が多すぎると、倉庫の保管費や税金、人件費などのコストがかかりますし、売れなかった場合のリスク(在庫リスク)も増大します。例えば流行遅れによる陳腐化や食料品などの品質の低下などです。

棚卸資産回転期間は、商品や製品などの棚卸資産の販売が効率よく行われているかを見るための指標です。仕入や製造を行ってからどのくらいの期間で販売されたかを表しています。早く現金として回収されるため、資金繰りも楽になります。逆にその期間が長い場合は余剰在庫や滞留在庫が存在しているということになります。

在庫管理の観点では、できれば商品別に棚卸資産回転率を把握することが大切です。売れている商品と売れていない商品が分かれてくるため、売れていない商品をどう改善していくのかなどの方針が立てやすくなります。合わせて回転期間も把握することで、今ある在庫が過剰にありすぎる状態なのか、少ない状態なのかを判断しましょう。棚卸資産回転期間や回転率を把握することで、どの商品がどの程度効率的に売上を挙げているのかを把握することが可能です。在庫回転率のデータを過去のものと比較したとき在庫回転率が落ちていれば、その分余計な在庫を仕入れてしまっていることに気付くことができます。在庫管理は、事業の経営にも関わる重要な業務のひとつですから、棚卸資産回転期間に関する正確な理解は非常に重要です。

まとめ: 棚卸資産回転期間から資金繰りを考えよう!

棚卸資産回転期間はあくまでも相対的な指標です。したがって、同業種や過去の実績との比較が重要になります。過去のデータと比較して、棚卸資産回転期間が長くなっているということは、それだけ棚卸資産として企業に滞留している期間が長くなっているということになりますし、逆に、棚卸資産回転期間が短くなっているということは、それだけ棚卸資産が素早く売れているということになります。棚卸資産回転期間は、棚卸資産(在庫)がどれだけ効率的に販売されているかを表す指標ですので、在庫を抱えることの多い小売店では特に重要な指標となります。特に、棚卸資産回転期間が長いほど、会社の資金繰りが悪化しやすい傾向にあるので注意が必要です。

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