中小企業において特に重要な短期借入金。短期借入金とは1年以内に返済期日を迎える借入金のことを言います。長期借入金と違い、短期間で返済しなければならず、企業の資金繰りを考えるうえでは非常に重要です。この記事では、そんな短期借入金の考え方について、詳しく解説していきます。
短期借入金とは、1年以内に返済しなければいけない短期的な借金のことを言います。企業の行う資本調達のうち、他人資本 (負債) に属する調達源の一つで、他人資本のうちでも社債や長期借入金と異なり、通常は支払期限が1年以内の借入金が短期借入金と呼ばれます。貸借対照表上では、負債の部の流動負債の区分に記載されます。金融機関や役員、従業員などから借入れた1年以内返済予定の資金であり、用途としては運転資金及び季節的な運用が一般的です。借入金は銀行などの金融機関から行うのが一般的ですが、株主・役員・従業員など企業内部の者や親会社から借入をする場合もあります。
未払いの短期借り入れという意味では、未払金勘定というものもありますが、未払金勘定との大きな違いの一つは、短期借入金には利息の支払があることです。
具体的に、短期借入金は、金銭消費貸借契約書を締結して借入れを行う「証書借入」、約束手形を借入人が振出して借入れを行う「手形借入」、金融機関との間で当座貸越限度額を定め、その限度内であれば当座預金がマイナスとなっても支払が可能な「当座貸越」などを挙げることができます。
外部からの調達資金を意味する借入金については、自己調達資金と異なり基本的に利息が生じるものです。借入金の利息額はその借入金の絶対額に比例するので、絶対額となる借入金は少ないことが望ましいと考えられます。この短期借入金については、商品の仕入代金などといった日々の営業活動の根本となる運転資金を主な用途とし、返済は1年以内ということからも金額が多い場合には、調達先の方針でその後の資金繰りが厳しくなることも想定されます。
したがって、長期借入金を含めた借入金のバランスを十分に考えることが必要です。借入金額の多さは、銀行等が与信判断の際に最も重視する項目です。短期借入金は、基本的に運転資金を想定して活用されるものなので、たとえば、売掛金をすべて回収できれば返済できる程度の金額を借り入れるのが普通です。経営が健全であれば、無理なく返済できる金額を設定します。したがって、短期借入金は長期借入金より金利が低いところが第一のメリットとなります。一般的に、長期借入金と比べると、短期借入金の金利は低くなる傾向にあります。長期の融資は、貸し出す銀行側にとってリスクがあるためです。たとえば、融資先企業の経営が、数年後にどうなっているかは、わかりません。また、世の中の経済状況を予測するのも難しいことです。したがって、これらのリスクを加味して、長期の融資では金利が高く設定されています。そのため、結果的に、短期借入金の方が金利が低く設定されます。また、手形貸付が多いので収入印紙代も証書より安くなり、諸経費が抑えられるメリットもあります。
短期借り入れはどちらかというと運転資金の中でもスポット的なニーズに対応する資金です。そのため、短期借入金が多くある企業は、短期に返済しなければならない資金がたくさんあるということを意味しています。したがって、短期借入金が多額にある場合には、資金繰りに注意が必要です。本当にその借入金を短期間の間に返済できるかどうかを考えなければなりません。
短期借入金は、借り換えという方法で活用されていることがほとんどです。短期借入を行って期日に返済してから、またすぐに短期借入を行うという短期借入を繰り返している企業も少なくありません。手形貸付の返済期間は3ヶ月から長くても6ヶ月が一般的で、返済期間が来れば、事業者から返済の意思が示されない限り、行内で融資の再審査を受け借り換えてそのまま延長することが多いです。事業者は、借り換えができる限り、元金を返済する必要はなく、また支払いが必要なのは借入期間に対する利息だけなので返済負担も少なく、資金繰りにもそれほど影響しません。
ただし、会社の経営状態が悪くなり、返済が危ないと思われれば借り換えができる保証はありません。この場合、短期借り入れを断られた際に、一気に運転資金に大きな不足が発生する可能性がありえるということです。短期借入金を借り続けていると、途中で業況の悪化等の理由から取引金融機関に突然借り換えを拒否される場合があります。すると期日に一度に大きな金額を返済しなければならなくなり、他にも支払いが多かったとき、資金繰りが立たなくなります。
このような理由から、借り換えができる前提で短期借入を使って資金を確保しているのはとても危険なことです。中小企業では大抵の場合、借り入れを行うにあたって経営者個人が連帯保証をしているケースが多いため、何かのはずみで資金繰りが悪化して会社が倒産すれば経営者が個人的に返さなければなりません。特に大きく会社を成長させる為に短期借り入れで無理やり大きな運転資金で経営を行ってしまうと、いざ失敗した時のリスクはとても高くなってしまうので注意が必要です。
さらに、短期借入金を複数他行で何本も同時に借りている企業もあります。しかし、取引銀行が多数あると短期借入金の返済期日が金融機関ごとバラバラなので、事業者は個別の借入金の期日管理も大変な上に、それに合わせた資金繰りにも余計な配慮をしなければならなくなります。また、支払期日が来るたび、経営者は個別の銀行との対応に追われる可能性が高くなるので注意が必要です。
経営者には、短期借入金が借り換えできなくなったときに備えて必ず別の資金調達方法を持っておくことをおすすめします。
取引金融機関がこれまで短期借入金の借り換えに応じてくれたからといって、今後もそのままである保証は何もありません。様々な事由や背景から突然借り換えを拒否してくることもあります。そこから慌てて別の金策に走っても遅い場合が多いので、短期借入金はできる限りしないという姿勢で経営を行うことが重要です。
短期借入の返済原資は売上代金の回収金によって賄われるのが普通です。モノやサービスは提供したものの、その代金の回収までにはタイムラグがあります。代金の回収までには時間がかかるということです。時間を要する場合、その資金ギャップを埋めるために利用されるのが短期借入金です。短期借入をすることによって、このタイムラグによって資金繰りが悪くなり、倒産することを防ぐためのバッファとして利用されています。したがって、短期借入金の返済は回収した売上代金によって賄われます。赤字の会社でも短期融資を受けられることがあるのは、返済原資が利益ではなく売上代金の回収金であるためです。資金繰りの観点から考えると、毎月発生する資金ギャップ(経常運転資金)は短期借入で調達しますが、それ以外の目的がある場合には、長期借入金で対応するのが普通です。一方、長期借入の返済原資は利益と減価償却費です。よって、赤字、かつ将来も利益がでる見込みがない場合は、返済原資がありませんので銀行からの長期借入は困難となります。
短期借入金は、1年以内という短期間に返済日を迎えることになる借入金のことを言います。したがって、短期間で返済しなければならないことをきちんと認識しておく必要があります。返済日までに返済原資を用意しなければなりません。したがって、経営者は、短期借入金を計上する際には、きちんと資金繰りを考えておく必要があります。通常、短期借り入れが行われるのが、売上代金の回収のタイムラグによって資金繰りに窮しないようにするためです。それ以外の目的で短期借入金を計上するのは望ましくありません。したがって、多額の短期借入金が計上されている企業があった場合には、資金繰りが大丈夫か、きちんとチェックすることが大切です。