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税理士も実は知らない?印紙税について解説!

HUPRO 編集部
税理士も実は知らない?印紙税について解説!

税務調査で指摘されると、大きなペナルティが発生する「印紙税」。大手企業でも印紙税の申告漏れ事案は多く発生しています。税務調査で指摘されると、大きなペナルティが発生するのです。でも、印紙税って実は税理士の担当じゃないってご存じでしたか?今回は身近なようで知られていない「印紙税」について解説します。

「印紙税」ってそもそも何?

高い買い物をした時などに、収入印紙が貼られた領収書を見たことがある人は多いのではないでしょうか?
これは、領収書が「売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書」に該当するためです。印紙税とは、このような「課税文書」を作成したときに課される税金。必要な金額は文書ごとに定められています。領収証の場合は、5万円以上の金額を受領した際に収入印紙を購入して貼り付けなければなりません。
また、収入印紙は再利用を防ぐために、消印(割り印)を押す必要があります。収入印紙をせっかく貼っていても、消印を忘れた場合はペナルティとなるので注意が必要です。

なお、印紙税の対象となる金額は売上代金のみとなり、消費税は含まれません。

「印紙税」は実は税理士の職務ではない

税理士と言えば税金のエキスパートであり、「印紙税」についても当然知っているはずだと思う方がほとんどでしょう。

ですが実は、税理士試験だけでなく公認会計士試験においても「印紙税」の科目は存在しません。つまり、税理士試験に合格しても、印紙税に関する知識は勉強していないのです。

さらに、税理士法においても印紙税は税理士の職務から除外されています。

(税理士の業務)
第二条 税理士は、他人の求めに応じ、租税(印紙税、登録免許税、関税、法定外普通税(地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第十条の四第二項に規定する道府県法定外普通税及び市町村法定外普通税をいう。)、法定外目的税(同項に規定する法定外目的税をいう。)その他の政令で定めるものを除く。第四十九条の二第二項第十号を除き、以下同じ。)に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。

出典:税理士法(昭和二十六年法律第二百三十七号)

ちょっとわかりにくいですが、この条文には「税理士が担当しない税務」が掲げられています。とはいえ「試験科目ではない」「職務ではない」と言われたところで、商習慣と結びついている印紙税について答えられない税理士も頼りないですよね。

印紙税の担当は、法律上では本来は弁護士となるのですが、それだけを弁護士に依頼するというのも現実的ではありません。

そこで、顧客の求めに応じて印紙税についても税理士や公認会計士が相談に乗るというのが慣例化しています。

印紙税を払わなかった場合のペナルティとは

収入印紙が必要な文書であるにも関わらず、収入印紙を貼り忘れることは、違反行為です。
違反行為としてあげられるのは3点あり、それぞれ罰則が異なります。

①収入印紙を貼ってはいるが消印もれ
②収入印紙を貼っていないことに気づき、自主的に印紙税を後日納付
③収入印紙を忘れている
①の場合は、納付すべき印紙税と等倍の過怠税が課されます。200円の収入印紙に消印を忘れたら200円を払うのです。

②の場合は、納付すべき印紙税×1.1倍の過怠税が課されます。印紙税は文書の作成時までに収入印紙を貼り付けることが定められているため、発覚前田としても法的に事後貼付は認められていません。200円の収入印紙を貼り忘れたことに後で気がついたら、220円支払う必要があるのです。基本的には税務調査を受ける前の社内検査などで発見され、不納付事実の申出を自主的に行うことで賦課徴収されます。

③の場合は一番重いです。納付忘れは、税務調査などで発覚します。納付すべき印紙税×3倍の過怠税を納付しなければなりません。税務署から「印紙税不納付事実確認証」に基づいて、「過怠税の賦課決定通知書及び納税告知書」が送付されます。

過怠税に関しては、経費算入できません。支払っているのに、法人税や所得税に影響するというやっかいなペナルティです。

印紙税が必要な文書については、第1号文書から第20号文書まで国税局のWEBサイトに掲載されています。重要なのは、契約書などの表題ではなく、その中身です。税務調査においては、書面の内容までチェックされます。

出典:国税庁 タックスアンサーNo.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで
出典:国税庁 タックスアンサーNo.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで

電子文書の場合印紙は不要?

実は、印紙税は「文書」にかかる税金です。印紙税法第2条で示されている「課税文書」とは紙ベースで作られたものを指していて、電子文書は含まれていない、という法律の見解がなされています。明治時代の制定であり、電子契約やクレジットカードの支払を想定していない法律のため、一般的に、電子メールやFAXなどの電子データで送付された「電子契約」に対しては課税されないという解釈です。

コロナ禍によるテレワーク拡大のために、政府が積極的に電子化を進めています。電子化することで、紙を減らすことで、コスト削減だけでなく、印紙税を節約することが可能なのです。
最近では、銀行が通帳を電子化するという話題がありました。これは、実は印紙税の節約が大きな背景にあります。銀行は、毎年4月時点での紙の通帳数に応じて1冊200円の印紙税を納めているのです。
通帳をなくすことは、口座数分の印紙税節約につながります。銀行が通帳をなくしたい理由には事務手続きや管理コストの負荷だけでなく、節税という背景もあったのです。

ただし、印紙税の税収は毎年3千億規模にのぼります。大きな財源である印紙税を電子契約にも導入するしくみを整えたいという政府の思惑もあり、今後の税制改正は注目です。

税理士との顧問契約には印紙税が必要?

最後に、税理士と顧問契約を結ぶ際の印紙税について解説しましょう。
実は、税理士との顧問契約書に貼る印紙は、個人で開業している会計事務所の税理士と税理士法人の場合では取扱いが異なります。

実は、個人で開業している税理士は、印紙税法上の「営業者」には該当しないのです。

顧問契約書は、本来であれば継続的取引の基本となる契約書(第7号文書)に該当します。しかし、第7号文書に該当するには「営業者間取引であること」が条件です。個人の税理士であれば、そもそも営業者間取引に該当しないと言うことで、契約書に印紙税がかからないのです。

これに対し、税理士法人は「法人」として営業者に該当します。そのため、税理士法人との顧問契約書は第7号文書に該当。契約書1通につき一律4,000円の印紙を貼る必要があります。

出典:国税庁 税理士法人が作成する受取書

この記事を書いたライター

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