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上場廃止とは?上場廃止の概要からその理由、株式への影響を解説!

岡山 由佳
上場廃止とは?上場廃止の概要からその理由、株式への影響を解説!

一般的には信頼のおける会社であるという認識がある、上場会社。このような認識から上場をすることを目指す会社は多くあります。これに対して上場廃止とはどのような意味を持つ言葉なのでしょうか。今回は上場廃止という言葉の意味と、上場廃止となる理由やその影響等について詳しく解説してきます。

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上場廃止とは

まず初めに上場廃止とは、上場している会社の株式の証券取引所での売買ができなくなることを意味しています。通常は会社が上場することにより、その会社の株式を証券取引所を通して一般の人でも売買できるようになります。最近ではインターネット上で売買することが一般的になったため、投資初心者の人でも気軽に株式投資を始めることができるようになりました。

ところが会社が上場廃止することにより、証券取引所でこれまで売買できていた会社の株を売買することができなくなってしまいます。上場廃止することのデメリットとして会社は不特定多数の投資家から直接資金調達ができなくなったり、会社の信用度や知名度が下がる可能性があります。では、一体なぜ上場廃止する会社が出てくるのでしょうか?

上場廃止となる理由

上場廃止は下記のような理由をもって行われます。

上場廃止要件に該当をした場合

上場廃止要件に該当をした場合は、上場廃止となり売買対象から除外されます。
上場廃止要件は、証券取引所の一部、ニ部では下記のように定められています。

・株主数…400人未満(猶予期間1年)

・流通株式数…2,000単位未満(猶予期間1年)

・流通株式時価総額…5億円未満(猶予期間1年)

・流通株式比率…5%未満

・時価総額…10億円未満である場合において、9か月以内に10億円以上とならないとき、又は上場株式数に2を乗じて得た数値未満である場合において、3か月以内に当該数値以上とならないとき

・債務超過…債務超過の状態となった場合において、1年以内に債務超過の状態でなくならなかったとき

・売買高…最近1年間の月平均売買高が10単位未満、又は3か月間売買不成立

・有価証券報告書等の提出遅延…監査報告書又は四半期レビュー報告書を添付した有価証券報告書又は四半期報告書を法定提出期限の経過後1か月以内に提出しない場合

虚偽記載又は不適正意見等…有価証券報告書等に虚偽記載を行った場合であって、直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかであると当取引所が認めるとき、又は監査報告書又は四半期レビュー報告書に不適正意見、又は意見の表明をしない旨等が記載された場合であって、直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかであると当取引所が認めるとき

・特設注意市場銘柄等…特設注意市場銘柄の指定要件に該当するにもかかわらず、内部管理体制等について改善の見込みがないと当取引所が認める場合、又は特設注意市場銘柄に指定されている間に、内部管理体制等について改善の見込みがなくなったと当取引所が認める場合、又は特設注意市場銘柄に指定されたにもかかわらず、内部管理体制等について改善がなされなかったと当取引所が認める場合

・上場契約違反等…上場会社が上場契約に関する重大な違反を行った場合、新規上場申請等に係る宣誓事項について重大な違反を行った場合又は上場契約の当事者でなくなることとなった場合、又は上場会社が新規上場の申請に係る宣誓書において宣誓した事項について違反を行い、新規上場に係る基準に適合していなかったと当取引所が認めた場合において、1年以内に新規上場審査に準じた上場適格性の審査に適合しないとき

・その他…銀行取引の停止、破産手続 、再生手続、更生手続、事業活動の停止、不適当な合併等、支配株主との取引の健全性の毀損、株式事務代行機関への不委託、株式の譲渡制限、完全子会社化、指定振替機関における取扱いの対象外、株主の権利の不当な制限、全部取得、株式等売渡請求による取得、株式併合、反社会的勢力の関与等
出典:日本取引所グループ 上場廃止基準

MBO、TOBが行われた場合

MBO、TOBが行われた場合は、いずれも市場から株式を買い取る経営策であることから、上場廃止の対象となります。

MBO

MBOとはManagement Buyoutの略語であり、経営陣が既存株主から自社の株式を買い取り、オーナー経営者となるものです。
MBOの目的は、長期的な経営、迅速な意思決定であるといわれています。
長期的な経営を目的とした上場廃止は、株主に還元されやすい短期的な利益等を経営陣に求めることがあるため行われます。
迅速な意思決定を目的とした上場廃止は、上場をすることで多種多様な株主が経営に意見をすることが出来ることから、その経営意思決定がまとまらないことがあるため行われます。

TOB

TOBとはTake-over Bidの略語であり、不特定多数の株主から株式を買い取る市場外での株式公開買取をするものです。
TOBの目的は、対象会社の経営権や株主総会における特別決議の拒否権の取得等であるといわれています。
TOBには、2種類のものがあり、それは友好的TOBと敵対的TOBです。
友好的TOBとは、株式の買付けについて対象会社の経営陣から了承を得て行われる買収のことです。グループ会社の完全子会社化などを実施する際に用いられます。
一方、敵対的TOBとは、対象会社からの了承を得ずに行う買収のことで、敵対的TOBを仕掛けられた場合は直ちに仕掛けられた会社は対応策を取らなければなりません。

MBOやTOBについては下記コラムをご参照ください。

会社が倒産をした場合

倒産とは、企業が債務の支払不能に陥ることや、経済活動を続けることが困難になった状態をいいます。
上場廃止要件に含まれる、破産手続 、再生手続、更生手続、事業活動の停止等が行われるため、上場廃止の対象となります。

上場廃止後の株式

上場廃止を受けた株式への影響は下記のようになります。

上場廃止要件に該当をした場合

上場廃止要件に該当をした場合は、まず上場廃止基準に該当しそうであることが判明した時点でその銘柄は、監理銘柄に指定され上場廃止になる恐れがあることが株主に通知されます。

上場廃止が決定すると整理銘柄に分類され、売買猶予期間が与えらた後に上場廃止となります。整理銘柄の期間で株主は保有銘柄を売却処分することができるので、保有銘柄が通知なく上場廃止になることはありません。
上場廃止は取引所に流通をさせることが出来なくなるということであり、上場廃止後も会社自体は存続をし、株式も存在をします。
しかし取引所を介して取引できないことから、個人間で売買をする必要があり、流動性が取引所を介する場合よりも低く、売却が非常に難しくなります。

上場廃止になった会社の株がどうなるかについてはこちらのコラムでも詳しく解説しています。
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MBO、TOBが行われた場合

MBO、TOBが行われた場合

MBO

MBOが行われた場合は、MBOの代理人証券会社に株式を移管し買取依頼を行う、又は株式市場で売却する又は会社に強制的に取得されるのを待つ、のいずれかの方法を株主はとることになります。
いずれの方法にしても、株が最終的に経営陣に買い取られることになり上場廃止になりますが、経営陣が提示をする買取価格は株価に利益を上乗せしたものであることや、MBOが発表をされることで株価が一般的には上昇することから、MBOによって株を売却することは株主とってメリットの大きいものです。

TOB

TOBが行われた場合は、TOBに応じて株を売却をする、又はTOBに応じず株を保有し続ける、いずれかの方法を株主はとることになります。
しかしTOBの目的が全株取得による完全子会社化であり上場廃止になるものである場合には、株を保有し続けることは上場廃止要件に該当をした場合と同様に流動性が低くなるというデメリットがあります。

会社が倒産をした場合

会社が倒産した場合は、その倒産によって清算が行われるものであれば、持ち株数に応じて株主は現金等の分配を受けることが出来ます。
会社更生法や民事再生法が適用されるものであれば、その後1カ月に限って株式市場で取引を行うことが出来ますが、会社更生法や民事再生法を発表した直後より大きく株価は下落するため、株主は売却することが出来てもその価値は非常に低いものになります。
いずれにしても、会社が倒産をした場合には株主にはデメリットが多く、収益を期待して株式を保有する場合には、倒産の予兆の無い銘柄を選択することが重要です。

上場廃止をしない銘柄を選択するには

MBO、TOBを受けて上場廃止の対象となる場合においては、MBOやTOBに応じることで株式による利益を株主は期待することが出来ます。
しかし、MBOやTOBによらない上場廃止要件に該当をする銘柄や倒産が見込まれる銘柄を保有していることは株主には利益が見込めません。
上場廃止要件に該当をすること、倒産が見込まれること等は、前兆があるといわれてます。

例えば倒産の前兆として、重要な役員や経営幹部の突然の退職、交替、採算度外視の安売り、税金や社会保険料等の滞納や差押等があるといわれています。
このような前兆は上場しているような会社であればニュースで報道される等、注意深く株主が投資家としての情報収集をしていれば耳に入る機会があります。
また、会社の業績や財務状況、キャッシュフローの状況が記載をされている刊行物に目を通すことも大切です。

このように情報収集を怠らずにいることが、上場廃止をしない銘柄を選択する、言い換えれば損失の少ない銘柄を選択するための最も重要なことであるといえます。

株の売買と譲渡所得

上場廃止の通知を受けたこと等により、株の売買を行って得た利益は譲渡所得に該当をします。

下記に該当をする場合は確定申告書の提出が必要です。

・特定口座以外で株式等売却し、所得を得た人
・特定口座の譲渡損失を、他の上場株式等の譲渡益から差し引く人
・上場株式等に係る譲渡損失の金額を、上場株式等に係る配当所得等の金額から差し引く人
・前年以前の上場株式等に係る譲渡損失の金額を、当年の上場株式等に係る譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る配当所得等の金額から差し引く人
・当年の上場株式等に係る譲渡損失の金額を、翌年以後に繰り越す人
・その他株式等に係る譲渡所得等の各種特例の適用を受ける人

確定申告については下記コラムもご参照ください。

まとめ

上記のように、上場廃止とは株式や債券等について市場の売買対象から除外されることをいい、その上場廃止となる理由は、大きく分けて上場廃止要件に該当をすること、MBOやTOBが行われること、会社が倒産をすることの3つが挙げることが出来ます。
MBOやTOBが行われる場合以外は、保有銘柄が上場廃止を受けることは株主に良い影響を与えません。
上場廃止を受けない銘柄を保有することが、株主が損失を受けないために必要です。
また上場廃止を受けて利益が生じたり、その損失を他の利益と相殺する場合には確定申告が必要です。

この記事を書いたライター

大学在学中より会計業界に携わり10年超の会計事務所、税理士法人での実務経験を経て独立。各業種の会計業務に関するフォローのみならず、ライターとして税務、労務、経理の話題を中心に、書籍やWebサイトに数多くの寄稿を行う等の様々な活躍をしている。
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