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社会保険労務士の難易度とは?勉強時間は?わかりやすく解説!

篠原 夏紀
社会保険労務士の難易度とは?勉強時間は?わかりやすく解説!

国家資格である社会保険労務士は、難易度が高い試験として知られています。試験は年に1回。2020年の試験は合格率は6.4%。1000人受験しても64人しか合格できないのです。この記事では、社労士試験について、どのような試験なのか?なぜ難易度が高いのか?解説します。

社会保険労務士資格を取ると何ができる?

社会保険労務士(社労士)とは、労働法や社会保険に精通したプロフェッショナル。
社会保険労務士及び社会保険労務士法人の業務については、以下の通りです。

1.労働社会保険諸法令に基づく申請書等及び帳簿書類の作成
2.申請書等の提出代行
3.申請等についての事務代理
4.都道府県労働局及び都道府県労働委員会における個別労働関係紛争のあっせん手続の代理
5.都道府県労働局における男女雇用機会均等法、パート労働法及び育児・介護休業法の調停の手続の代理
6.個別労働関係紛争について厚生労働大臣が指定する団体が行う裁判外紛争解決手続における当事者の代理(紛争価額が120万円を超える事件は弁護士との共同受任が必要)
7.労務管理その他の労働及び社会保険に関する事項についての相談及び指導

出典:社会保険労務士試験オフィシャルサイト 社会保険労務士及び社会保険労務士法人の業務

このうち、1~3の業務(例えば、就業規則や社会保険の手続きなど)については、社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者は、他人の求めに応じ、報酬を得て、業として行ってはいけません。「独占業務」といいます。

独占業務の中でも、就業規則や雇用契約書の作成を「1号業務」、社会保険などに関してハローワークや年金事務所などで行わなければならない書類手続きの代行を「2号業務」と言います。

また、4~6の業務については、社労士試験にプラスして「紛争解決手続代理業務試験」に合格し、社会保険労務士名簿への登録が必要です。

また、7.の仕事はいわゆる「人事コンサルタント」的な仕事。「3号業務」と呼ばれます。実は、人事における相談・指導については、社労士の独占業務ではありません。登録していない方でも行うことが可能です。

ただし、無資格で自身の経験のみの方や、民間資格のみの方より、国家資格である「社会保険労務士」資格がある方が信頼性が格段に高くなります。
そのため、社労士としての独占業務ではなく、コンサルティングや労務相談、執筆、講師業などをメインで行って高い報酬を得ている社会保険労務士の方も多いのです。

社会保険労務士試験の合格者数と合格率

社労士になるためには、社労士試験に合格する必要があります。試験の合格率を、厚生労働省の発表資料よりまとめてみました。

引用:厚生労働省 社会保険労務士試験の結果について

受験者数は平成22年から比べて2万人近く減っています。また合格率・合格者数も減少。社労士試験は相対評価のため、合格率を調整しているのです。
そのため、社労士の難易度は依然として高く、10%を上回ることは基本的にありません。

社会保険労務士試験の合格平均年齢・職業は?

引用:社会保険労務士試験オフィシャルサイト 第52回(令和2年度)社会保険労務士試験についての情報

過去10年の合格者の年齢階層別・職業別割合です。
他の難関国家資格として知られる公認会計士や税理士については、20代などの若年層も比較的多いのですが、社会保険労務士は、学生の割合がとても少なく1.0%となっており、他の年代については年齢ごとの差がほとんど見られません。

職業別ですと「会社員」が6割近いです。おそらくこれは「人事」という問題に対して向き合い、社労士としての仕事を意識するのが実際の社会人になってからということがあるのではないかと考えられます。

社会保険労務士試験が難しい理由

働く上で必要不可欠な役割を果たしている社労士。その試験の難易度の高さについては、代表的な2つの理由があります。

試験時間が長い

引用:社会保険労務士試験オフィシャルサイト 第52回(令和2年度)試験「受験案内」

社労士試験は年に1回、8月の日曜日を1日使って試験が行われます。
試験時間を見ていただければわかるように、選択式と択一式にわかれ、試験時間は80分と210分です。

80分の試験を10:30~11:50でこなすのはまだ良いのですが、問題は午後の択一式のパート。試験時間は210分と、3時間半もあります。
午前に試験を終え、さらに昼の休憩を挟み、午後にはより長い時間の試験をこなすという長丁場。集中力を持続させるというのは至難の業です。

範囲が広く問題数が多い

引用:社会保険労務士試験オフィシャルサイト 第52回(令和2年度)試験「受験案内」

さらに、試験範囲が広く問題数が多いのも、難易度の高さの原因となっています。
試験科目は7つ。それぞれについてまんべんなく問題が出題されるのです。

例えば、簿記検定であれば1問を捨てても別の問いでカバーし、トータルで基準を満たせば合格できますが、社労士試験はそうはいきません。
それぞれの問い別に合格基準が決まっているからです。
1科目だけでも合格基準を満たさない場合は、他の科目が全部満点でも合格できません。つまり、不得意分野を作ることができないのです。合格基準が厳しいことも難易度を押し上げています。

社会保険労務士試験の合格ライン補正

社労士試験の社労士試験の合格ライン(合格基準)については、毎年一定ではなく変動しています。
しかし、国家資格であることから、国民に分かりやすい簡易なものとすることが望ましいということで、平成12年度(2000年度)より、下記の目安が示されています。

引用:厚生労働省 社会保険労務士試験の合格基準の考え方について

この目安を基準として、実際の合格ラインは変動します。
全体で7割以上得点であれば、不得意分野の問題を捨てることができますが、本試験では各出題科目において7割以上得点しなくてはいけません。前述の通り、不得意分野を作ることができないのです。

また、試験の水準を一定に保つため、各年度において総得点及び各科目の平均点及び得点分布等の試験結果を総合的に勘案して補正を行うことになっています。

具体的に見てみましょう。

(1) 総得点の補正

まず総得点の補正は前年度の平均点との差によって行われます。
ただし、あくまで合格率は10%が目安。補正した結果、合格率が高くなるような場合は、基準点は高いままとなります。

① 前年度平均から補正

選択式試験、択一式試験それぞれの総得点について、前年度の平均点との差を少数第1位まで算出し、それを四捨五入し換算した点数に応じて前年度の合格基準点を上げ下げする(例えば、差が△1.4点なら1点下げ、+1.6点なら2点上げる。)。

※ 前年の平均点との差により合格基準点の上下を行うが、前年に下記③の補正があった場合は、③の補正が行われなかった直近の年度の平均点も考慮する。

② 補正した端数の点の処理

上記①の補正により、合格基準点を上下させた際、四捨五入によって切り捨て又は繰り入れされた小数点第1位以下の端数については、平成13年度以降、累計し、±1点以上となった場合は、合格基準点に反映させる。ただし、これにより例年の合格率(平成12年度以後の平均合格率)との乖離が反映前よりも大きくなった場合は、この限りではない。

③ 補正した結果合格率10%を目安に調整

下記(2)の各科目の最低点引き下げを2科目以上行ったことにより、例年の合格率と比べ高くなるとき(概ね10%を目安)は、試験の水準維持を考慮し合格基準点を1点足し上げる。

(2) 科目最低点の補正

各科目の合格基準点(選択式3点、択一式4点)以上の受験者の占める割合が5割に満たない場合は、合格基準点を引き下げ補正する。
ただし、次の場合は、試験の水準維持を考慮し、原則として引き下げを行わないこととする。

ⅰ) 引き下げ補正した合格基準点以上の受験者の占める割合が7割以上の場合
ⅱ) 引き下げ補正した合格基準点が、選択式で0点、択一式で2点以下となる場合

出典:厚生労働省 社会保険労務士試験の合格基準の考え方について

つまり、社労士試験は、合格ラインギリギリの場合は運によって合否が決まってしまうのです。合格ラインを確実に突破するためには、全ての分野において合格ラインを上回る勉強をこなさなくてなりません。

「難しい」と思われるかもしれませんが、実際に私たちが社労士に相談することを考えてみたらどうでしょう。
「労務管理には詳しいけど、年金は苦手で……」こんな社労士に仕事をお願いしたいでしょうか。そう考えると、社労士試験の制度設計は、難易度が高いと言いますが信頼できる社会保険労務士を輩出することに役立っているのではないでしょうか。

この記事を書いたライター

東証一部上場の人材会社を経て、現在は株式会社ヒュープロにて、全国の税理士・社会保険労務士の転職サポートを中心に行っています。一人一人にあわせた丁寧なキャリアプランのご提案で、常に高いお客様満足度を頂いております。
カテゴリ:資格試験
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