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会社更生法の適用とは?どのようなことが行われているの?

岡山 由佳
会社更生法の適用とは?どのようなことが行われているの?

新型コロナウイルス感染症の影響により、企業の経済的な困窮についての報道を耳にする機会が多くなりました。
そのような状況にある会社に適用することが出来る会社更生法ですが、会社更生法の適用がされると、どのような手続きが行われるのでしょうか。
今回は会社更生法と、その手続きについて解説していきます。

会社更生法とは

会社更生法とは、会社更生法第一条では、下記のように記されています。

この法律は、窮境にある株式会社について、更生計画の策定及びその遂行に関する手続を定めること等により、債権者、株主その他の利害関係人の利害を適切に調整し、もって当該株式会社の事業の維持更生を図ることを目的とする。出典:e-Gov法令検索 会社更生法

端的に表現をすると、経済的危機にある会社を倒産させることなく事業再建をするための法律です。

会社更生法の適用手続き手順

会社更生法の適用により事業再建をするためには、下記の手順で手続きを行う必要があります。

①更生手続開始申立て

申し立てを行うことが出来る人は、株式会社、株式会社の資本金の額の10分の1以上に当たる債権を有する債権者、株式会社の総株主の議決権の10分の1以上を有する株主です。

債権者や株主も申し立てを行うことが出来る

上記のとおり、株式会社そのものでない、債権者や株主も申し立てを行うことが出来ます。
債権者や株主はその債権の回収等に不利益を生じないよう、申し立てを行うことが出来る権利をもって、その立場が保護されています。

債権者や株主が申し立てを行うためには

債権者や株主が申し立てを行うためには、株式会社に破産の原因となる事実の生ずるおそれがあることが必要です。
この事実を明らかにするために、申立書に被申立会社の資産、負債その他の財産の状況や破産原因前兆事実が生ずるに至った事情等を記載する必要がありますが、債権者や株主はそれらの情報を取得出来ない場合があるため、情報の取得が著しく困難な事項については申立書に記載しないことが出来ます。

②保全管理命令を受ける

保全管理命令とは、被申立会社から財産の管理処分権を剥奪し、保全管理人に専属させることです。
申立てをしてから会社更生開始の決定がされるまでの会社の経営や財産の管理処分をする権利は全て保全管理人がもつことになるため、それまでの会社経営陣は経営から退くことになります。

③裁判所からの調査

裁判所は債権者、株主、担保権者、会社役員、従業員等から聞き取りを行い、更生の見込みの有無について調査を行います。

④更生手続開始の決定

上記③の調査により、裁判所が更生の見込みがあると判断した場合には、更生手続開始決定がされます。

⑤裁判所から更正管財人の任命

更生管財人は、会社財産の管理処分権、経営権を持つだけでなく、更生計画案を作成しその実行を担当する重要な職務です。
会社や債権者と協議を行い、その人選について積極的に裁判所に意見を上申することが必要です。

⑥各種権利の届け出

債権者は指定された期間内に更生債権や更生担保権等の権利の届出を行う必要があります。
届出を行わないと、更正後の会社に帰属するそれらの権利は失われてしまいます。

⑦第1回関係人集会

関係人集会とは、更生債権者や更生担保権者および株主などが更生手続の遂行について協議決定する機関です。
第1回では管財人により経過等の報告がされます。

⑧債権調査

管財人が届け出られた各種債権を調べ、これを認めるかについての調査が行われ、債権調査期日に、その可否が明らかになります。

⑨財産評定と更生計画案の作成提出

財産評定では資産の時価への評価替え、圧縮が行われます。
更生計画案では 会社更生手続 を裁判所に申し立てた会社が提出する、事業を建て直すための案です。

➉第2回関係人集会、第3回関係人集会

一般的に第2回関係人集会と第3回関係人集会は同日に行われます。
第2回関係人集会では更生計画案の審理、第3回関係人集会では更生計画案の決議が行われます。
更生債権は議決権総額の2分の1以上の同意によって可決され、更生担保権は期限の猶予を定める場合は、議決権総額の3分の2以上の同意、減免その他期限の猶予以外の方法による権利変更を定める場合は議決権総額の4分の3以上の同意、事業全部の廃止を内容とする場合には議決権総額の10分の9以上の同意によって可決されます。

⑪更生計画の遂行

更生計画が認可決定されると、その計画を遂行します。この遂行をもって一連の更正手続きが完了します。

会社更生法を適用した会社

会社更生法を適用したことがある会社には、意外にも現存する誰もが名前を知るような有名企業があります。
1980年代には吉野家、1990年代には日活、2000年代にはNOVA等がありますが、最も有名なのは2010年代の日本航空(JAL)ではないでしょうか。
日本航空は、2010年1月19日、経営不振・債務超過を理由に、日本航空、子会社の日本航空インターナショナル、ジャルキャピタルの3社は東京地方裁判所に会社更生法の手続を申請、受理されたことを受け、株式会社企業再生支援機構を支援者に、経営再建の道を図ることとなりました。
負債額は3社で約2兆円を超え、再建の一環として大幅な人員整理が行われました。
人員整理等の経営再建を経て、日本航空は今でもなお大手の航空会社として存続しています。

まとめ

上記のように、会社更生法の適用は、事業の再建を図るために、数多くの手続きを踏む必要があります。
非常に骨の折れる道のりではありますが、新型コロナウイルス感染症の影響が長引く現代において、適用を選択する企業は今後増えていくかもしれません。

参照元:会社更生法|株式会社東京商工リサーチHP

この記事を書いたライター

大学在学中より会計業界に携わり10年超の会計事務所、税理士法人での実務経験を経て独立。各業種の会計業務に関するフォローのみならず、ライターとして税務、労務、経理の話題を中心に、書籍やWebサイトに数多くの寄稿を行う等の様々な活躍をしている。
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