不動産の収益化や物件売却の問題となるのが、「不動産の担保としての価値がいくらあるのか?」です。所有する不動産やこれから購入する不動産がどの程度の担保価値を有しているかは、金融機関との融資交渉や事業の資金繰りに影響を与えます。この記事では不動産の担保価値が、どのように評価されるのかを解説します。
投資家などにお金を貸す金融機関は、「貸したお金が確実に返ってくるにはどうしたらいいか」を常に考えています。
そのため、不動産の担保評価は「その物件を売ったときに、どれだけのお金が回収できるか」によって判断されるのが大原則です。
具体的には「買い手がたくさんいるため、高い値段で売れる不動産」が、担保としても高い評価を受けることになります。
また、土地や建物といった不動産は、他の担保資産(株式などの金融商品、手形や売掛金など)と比較して現金化しにくいという特徴があります。
「短期間で売却でき、お金に換えることができるか」も不動産の担保評価価値を決定する重要な要因になります。
たとえ購入価格がとても高い物件であったとしても、様々な制約があって売却のしにくい土地などの場合には、担保としての評価は下がる可能性があることを理解しておきましょう。
不動産の担保としての評価を知る上では、以下の4つの要因を理解しておくことが大切です。
・土地の評価方法
・建物の評価方法
・掛け目
・現地調査
それぞれの内容について、順番に見ていきましょう。
土地の評価方法には、いくつかの基準があります。
実際の不動産取引では、これらの評価基準の中からどれかを選択し、土地の面積を掛け算して土地の評価額を算出します。
よく使われる評価の基準は以下のようなものです(いずれも1平方メートルあたりの価格として設定されます)
例えば、土地の面積が150平方メートルで、その土地の路線価が20万円だったとすると、土地の評価額は以下のように計算できます。
土地の評価額=面積150平方メートル×路線価20万円=3000万円
建物の評価方法は、「同じ建物を新しく建てたとしたら、どのぐらいの費用がかかるか」という考え方のもとに担保評価を行うことが多いです。
(他にも、周辺の同じタイプの物件の市場価値をベースに計算を行う方法もあります)
具体的には、1平方メートルあたりの「建築坪単価」を設定し、それに建物の面積を掛け算することによって計算されます。
建築坪単価は、建物本体の工事費を、建物の延床面積で割り算して求めます。
また、建物は建築から時間が経つほど価値が下がっていきますので、経過年数を減価償却して「現在の価値」を算出することも重要です。
建物の現在の価値は、経過年数を耐用年数で割り算し、1から引き算することで計算できます。
例えば、建物の床面積が100平方メートル、建築坪単価が10万円、耐用年数22年で築11年の建物だったとすると、以下のように評価されます。
建物の評価額=建築坪単価10万円×延床面積100平方メートル×(1−11年÷22年)=500万円
掛け目とは、「その資産の流動性(現金化のしやすさ)」を評価額に反映させるための割合のことです。
掛け目は資産の種類ごとに掛け目の相場が決まっていて、具体的には以下の通りです。
例えば、路線価と土地面積から計算した評価額が3000万円の土地があったとすると、掛け目を考慮した評価額は下記のようになります。
土地の評価額=3000万円×掛け目70%=2100万円
不動産の掛け目が、別の資産と比較して低く設定されているのは、不動産が特に現金化しにくい資産であるからです。
不動産というのは「不動の資産」という名前が付いているだけあって、売却がしにくくお金に換えるまでに時間がかかる資産です。
そのため、掛け目を低く設定し、その分だけ担保としての評価を低く見積もることにしているわけです。
ここまで説明した内容に従えば、不動産の現物をみなくても評価額を計算することが可能です。
しかし、不動産は「現実にどのような使われ方をしているのか」がとても大切な資産です。
登記簿上はさら地になっているはずなのに、誰かが勝手に建物を立てているようなこともありますし、登記簿上の権利者と本当の権利者が異なるようなケースも考えられます(不動産の登記をすることは義務ではありません)
そのため、実際の取引で不動産の現況を確認するために現地調査が行われるのが一般的です。
多くのケースでは、金融機関から委託を受けた不動産鑑定士が現地におもむき、現況に合わせて不動産の調査を行います。
書類上の評価と、現地調査によって判明した情報があいまって、最終的な不動産評価額(そして融資実行金額)が決定することになります。
今回は、土地や建物といった不動産を、担保として評価するときの方法について解説いたしました。
不動産投資においては、金融機関からの融資を利用するケースが極めて多いため、保有不動産(あるいはこれから投資対象とする不動産)にどの程度の担保価値があるのか?を知ることは極めて重要です。
金融機関の融資担当者がどのような視点で物件の価値を見極めているのか?を知っておくことは、融資交渉において強力な武器になります。
ぜひ参考にしてみてください。