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日商簿記1級の勉強法を詳しく解説!2級との勉強時間の違いは??

HUPRO 編集部
日商簿記1級の勉強法を詳しく解説!2級との勉強時間の違いは??

日商簿記1級は簿記の資格のなかでは最高峰の難易度を誇る試験です。合格率は10%程度で推移するなど極めて合格が難しい試験として認知されています。日商簿記1級に合格することができれば職業会計人としての道も開かれます。そこでこの記事では、そんな日商簿記1級の難易度と勉強法について詳しく解説します。

日商簿記1級の難易度

日商簿記1級とは

日商簿記1級は、簿記系の資格のなかでは最も高い難易度を誇る試験です。日商簿記試験を主催している日本商工会議所では、日商簿記1級を「極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算を修得し、会計基準や会社法、財務諸表等規則などの企業会計に関する法規を踏まえて、経営管理や経営分析を行うために求められるレベル」と定義しています。合格すると税理士試験の受験資格が得られることから、日商簿記1級は、公認会計士、税理士などの国家資格への登竜門とも言われています。

したがって、日商簿記1級は、誰でも簡単に手にできる資格ではありません。日商簿記1級を受験している人のほとんどが、今後、税理士や公認会計士といった職業会計人として生きていこうと思っている人たちです。もちろん、中には企業に勤める人がキャリアアップのために取得することもあります。

日商簿記1級の合格率/難易度

記事執筆時点における最新の試験第165回(2023.11.19)の合格率は16.8%(合格者数1,722名 / 受験者数10,468名)となっています。それ以前の試験の合格率は、第164回12.5%、第162回10.4%、第161回10.1%、第159回10.2%となっています。なお、第163回と第160回の情報は公開されていません。

このことからわかるとおり、日商簿記1級試験の合格率はおよそ10%程度となっています。10人受験して1人程度しか合格することができない試験となっているので、日商簿記1級がいかに難易度の高い資格試験であるかがわかります。

日商簿記1級に合格するために必要な勉強時間

日商簿記1級試験は、上で説明したようにかなり難易度の高い試験です。独学で勉強することももちろん可能ですが、多くの人が予備校に通って合格を目指しています。

したがって、十分な勉強時間を確保するしないと合格まで至ることができません。一般に、日商簿記1級試験に合格するまでに必要となる時間はおよそ500時間〜700時間程度と言われています。

これは、日商簿記2級試験に合格できるレベルの人が日商簿記1級に合格するまでに必要な時間です。日商簿記1級の試験を受けるために特別な資格などは必要ないことから、いきなり日商簿記1級を受けることもできますが、簿記を始めたばかりの人が1級に合格できることはまずありません。日商簿記3級から順を追って合格を目指すのが一般的です。

日商簿記1級に合格するまでにはおよそ500時間以上の勉強時間を確保しなければなりませんが、500時間というのはどれくらいの時間でしょうか?仮に、1日5時間勉強した場合、100日間の勉強が必要となることがわかります。これは毎日5時間程度の勉強を3ヶ月間続ければ合格できる計算となります。当然、1日5時間も勉強できないという人もいるでしょうから、3ヶ月以上の勉強を継続しなければならないことがわかります。学生ならともかく、社会人として働きながら勉強時間を十分に確保することは大変困難です。

したがって、合格のためには限られた勉強時間を有効に活用していかなければなりません。そこで以下では、日商簿記1級に合格するための効率的な勉強方法について詳しく解説していきます。

日商簿記1級に合格するための勉強法

満遍なく勉強しよう

日商簿記1級では、配点が4科目それぞれに均等に割り振られています。いずれの科目にも10点のハードルが設けられ、科目間で偏った点数の取り方では合格することができません。学習範囲がとても広い中で合格するための知識を効果的に得るためには、やはり効率の良い学習が必要です。

日商簿記3級・日商簿記2級に比べ日商簿記1級は学習範囲がとても広いうえに、難易度が高い問題が出題されることもあります。したがって、すべての学習論点を均一に学習するのではなく、強弱をつけて合格するための知識を会得することを優先しなければなりません。1級の問題の出題形式は多岐にわたります。定型的な出題パターンのときもあれば、初見の問題が出題されることもあります。ただやみくもに学習をしたところで、使える知識をすぐに習得できるとはかぎりません。暗記のみに頼った学習ではどうしても限界が出てきます。

したがって、単に知識や出題パターンを暗記すれば合格できる日商簿記3級や2級と違って、日商簿記1級では、なぜそのように仕訳をするのかを理解するための勉強が必要となります。すなわち、財務会計と呼ばれる分野の知識です。

どれを使って勉強すればいいの?

1級より下位の級では、単に問題集の問題を解き、その仕訳の意味がわかっていなくても、解答パターンさえ知っていればなんとか解答することができました。しかし、日商簿記1級では、単に解答パターンを暗記するだけでは回答できない問題が出題されるばかりか、出題範囲が広すぎてすべての範囲を暗記することは困難です。そのため、きちんと自分で財務会計の教科書などを使って、どうしてそのように仕訳をするのか、理解重視で勉強を進めていくことが大切です。

当然、問題集を使ったアウトプットの訓練も非常に重要な意味を持ちます。しかし、日商簿記2級では合格までにアウトプットを十分にこなすだけで良かったものの、日商簿記1級では、それに加えて、仕訳の理由を自分の頭で整理しておくような勉強が必要となります。

日商簿記1級の効率的な勉強例

日商簿記1級の効率的な勉強例

問題集を使おう

日商簿記1級を効率的に勉強するためには、まずは教科書レベルの例題を自分の力で解けるようにしていくことが大切です。次に、問題集を使って、基本的な問題の解き方を理解します。このとき、大手の予備校などが出版している問題集などを活用すると、出題されやすい優先度の高い論点をおさえることができるのでおすすめです。

問題集は、これまでの過去問を研究したうえで作成されたものなので、出題される可能性の高い問題を効率的に解いていくことができます。おおよそ試験本番の1ヶ月半〜2ヶ月前となった時点で、教科書と問題集だけではなく、過去問を使って問題演習をすることが大切です。日商簿記1級の出題範囲は広いので、すべての出題範囲について、過去問を使って十分に出題パターンを理解しておかなければなりません。

苦手な部分から目をそらさない

勉強していくうちに、自分の得意な分野と苦手な分野がはっきりと分かるようになるはずです。そんなとき、人間は弱い生き物なので、得意な分野ばかりの問題を解いてしまいがちです。しかし、必要なことは全範囲をとにかく網羅して問題を解けるようにしておくことです。一つでも理解していない論点があると、その分野の問題が出題されたときに、問題を全く解けなくなって合格の可能性が著しく低くなってしまいます。したがって、全範囲をできるだけまんべんなく勉強しておくことが、日商簿記1級に合格するうえでは大切です。

試験前の対策方法

そのうえで、日商簿記1級に合格するために、試験本番のおよそ2週間程度前となったら、予想問題集というものを購入するのをおすすめします。予想問題集では、最新の試験傾向を踏まえて、様々な問題の解き方が示されている良書です。予想問題集はあくまでも予想なので外れることも当然あります。したがって、全範囲をきちんとさらっておくことが必要なのです。

日商簿記1級の試験に出題されるパターンはおおよそ決まっています。そのため、教科書と問題集をきちんとマスターして、その回答パターンを過去問を使って行なうようにすれば、かなり合格に近づくことができるはずです。予想問題集は長年日商簿記試験を研究してきた実績のある大手予備校の講師陣が作成したものなので、信頼度も高いことが特徴です。もっとも、近年では、YouTubeなどの動画配信サイトなどで簿記を説明していることもあるので、積極的に活用することが大切です。

日商簿記1級に合格するメリット

日商簿記1級で学習する論点は実務に直結したものばかりです。簿記1級の商業簿記・会計学では、2級の学習内容をさらに発展させて「キャッシュ・フロー計算書」「連結会計」といった大企業の会計処理を学習します。工業簿記・原価計算では、2級の工業簿記をベースにより深く厳密な原価計算や管理会計を学習するので、経営管理や経営分析に役立ちます。経理職であれば、1級を取得することで資格手当などを得られたり、社内の上位職への昇進に繋がることもよくあります。こういったことで「年収1千万以上」を目指すことも十分可能です。また1級に合格すると税理士試験の受験資格を得られます。試験範囲が受験科目である「簿記論、財務諸表論」に重なっていることから税理士試験合格につながっています。

日商簿記1級を生かせる職場

会計事務所とは

会計事務所は、主に税務・会計に関する専門知識が多くある公認会計士や税理士が運営していることがほとんどです。なので税理士が専門的に行える税務代理、税務書類の作成あるいは税務相談など特権を活かした業務を運営しています。また公認会計士が独占して行える財務諸表監査なども行っています。会計事務所で働いていると専門知識を学ぶことができるため、そこから資格取得を目指す方も多く見られます。簿記1級を取得していると日常経理や決算業務などで活躍できます。

経理職

経理職は、主に会社内部のお金を管理しています。1日あたりの現金の出納状況の確認、経費精算、伝票整理、また月次・年次決算なども業務として任されています。簿記1級の知識のある人はこれらとプラスして財務諸表、決算報告資料の作成も任されたりします。会社で必要な手続きを行うため、単純な入力ミスがきっかけで大きな影響を与える可能性があります。仕事として専門性が高く人材としてニーズが高い職業となっています。

簿記を転職に活かすなら簿記1級まで取るべき?

簿記1級を取得すれば、就職や転職で大きく重宝される存在となります。経理や会計は近年人材不足でニーズも高く、簿記の最難関である1級は転職に有利に働くでしょう。また転職以外にも企業内で年収アップを期待して取得するのもオススメします。資格手当が出る場合などは積極的に1級を目指していきましょう。

ただし、すでに2級を持っている場合は転職でキャリアアップをオススメします。簿記2級を持っているだけで企業で役立つことができますし、転職でも重宝されます。無理に簿記1級を取るよりも簿記2級で素早く行動することが大切です。
また1級を持っている方より実務経験の長い人材が欲しいという企業も多くあります。単純に給与アップのために簿記1級を取得しようとしている方は、まず実務経験をすることで貴重な人材として重宝されること間違いないです。

まとめ:試験範囲で苦手を作らないように勉強しよう!

職業会計人として働くか否かに関わらず、日商簿記1級は、極めて高度な会計知識を有し、経営管理や分析を行う能力を持ち合わせた会計に関するスペシャリストとして扱われるため、就職や転職に非常に有利となります。それだけの高い難易度の試験を合格できるだけの知識を有していることの証明となるわけです。難易度の高い試験であるため取得には努力が不可欠ですが、その分、合格した際には合格できた達成感が自信に繋がりますし、職場や転職先に対しても「努力ができる人材」であることをアピールできます。

日商簿記1級の試験を突破するためには、およそ1年程度の勉強時間が必要と言われています。ただし、闇雲に1年間勉強してもなかなか合格に近づけないという人も少なくありません。日商簿記1級に合格するために最も重要なことは、試験範囲の中に苦手な分野を作らないということです。日商簿記1級の試験範囲はとても広いことから、勉強時間が足りずに試験範囲をすべて勉強できずに試験当日を迎えてしまう人もいます。その場合、日商簿記1級に合格することは大変難しくなります。日商簿記1級に合格するためには、苦手分野をできるだけ作らずに、全範囲を満遍なく勉強を進めることが大切です。

この記事を書いたライター

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