新型コロナウイルス感染症の影響により、資金繰りが厳しくなり借入を行う必要のある事業者もいらっしゃることでしょう。事業者が帳簿を作成するにあたり、借入金が預金に入金された際、借入金を返済した際、決算整理の際、それぞれの会計処理が必要となります。
今回は借入に係る会計処理方法について解説していきます。
借入金とは銀行や個人等から返済義務を負う資金を受けた債務のことであり、貸借対照表の負債に該当をします。
契約日から1年以内に返済期日が到来する借入契約を短期借入金、契約日から返済期日までの期間が1年を超える借入契約を長期借入金として貸借対照表に表示をします。
負債に該当をするということは、借入金の元金の返済金額は負債の減少をさせることであり、費用の発生とは異なります。
つまり元金の返済金額は経費には該当をせず、事業利益を減少させる法人税や所得税の節税効果はありません。
負債については下記コラムもご参照ください。
借入金が預金に入金された際の会計処理は下記のようになります。
例えば借入期間が10年の借入金600万円が普通預金に入金された場合は下記のように仕訳を行います。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
普通預金 | 6,000,000円 | 長期借入金 | 6,000,000円 |
借入金の入金の際には、借入の際に支払うべき諸経費が差し引かれて入金をされる場合があります。
借入先から借入入金の際の振込手数料を差し引かれることがあります。
例えば上記の借入金600万円が普通預金に入金された際に、振込手数料220円が差し引かれて入金された場合は下記のように仕訳を行います。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
普通預金 | 5,999,780円 | 長期借入金 | 6,000,000円 |
支払手数料 | 220円 |
借入を行う際に信用保証料の支払いを求められることがあります。信用保証料を支払うことで、万が一返済が出来なくなった際は、信用保証料を支払った信用保証協会等が本人に代わって金融機関に返済を行うことになります。
例えば上記の借入金600万円が普通預金に入金された際に、信用保証料6万円が差し引かれて入金された場合は下記のように仕訳を行います。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
普通預金 | 5,940,000円 | 長期借入金 | 6,000,000円 |
長期前払費用 | 60,000円 |
借入を行う際の金銭借用証書、金銭消費貸借契約書の作成には、借入金額によって異なる印紙税の納付が必要です。コロナ融資に対してはそれが非課税となることもあります。
例えば上記の借入金600万円が普通預金に入金された際に、収入印紙代1万円が差し引かれて入金された場合は下記のように仕訳を行います。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
普通預金 | 5,990,000円 | 長期借入金 | 6,000,000円 |
租税公課 | 10,000円 |
借入金を預金から返済した際の会計処理は下記のようになります。
例えば借入期間が10年の借入金600万円、月々の返済金額が5万円であり普通預金から返済した場合は下記のように仕訳を行います。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
長期借入金 | 50,000円 | 普通預金 | 50,000円 |
借入金の返済には多くの場合は支払利息の支払いが必要です。
支払利息の支払い方法には、大きく分けて元金均等返済と、元利均等返済があります。
元金均等返済とは月々に返済をする元金が均一であり、支払利息金額が変動し、毎月の合計支出額が異なる返済方法、元利均等返済とは月々に返済をする元金と利息金額は均一では無いが、毎月の合計支出額が一致する返済方法です。
この例では元金均等返済を前提としています。
例えば上記の借入金5万円を普通預金から返済する際に、別途支払利息500円を支払う場合は下記のように仕訳を行います。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
長期借入金 | 50,000円 | 普通預金 | 50,500円 |
支払利息 | 500円 |
決算整理では、長期借入金から1年以内に返済期日が到来する借入契約に該当する部分を短期借入金に振替を行う会計処理と、長期前払費用を当期分を費用化させる会計処理が必要です。
例えば借入期間が10年の借入金600万円の1年以内に返済期日が到来する借入契約に該当する部分は、60万円です。
これを短期借入金に振り替える会計処理は下記のように仕訳を行います。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
長期借入金 | 60,000円 | 短期借入金 | 60,000円 |
長期前払費用として計上をした信用保証料は、時間の経過と共に費用化をさせる必要があります。
上記の信用保証料6万円のうち、当期の費用として認識すべき金額は、6万円を10年間で除した6,000円です。
これを費用化させる会計処理は下記のように仕訳を行います。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
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支払手数料 | 6,000円 | 長期前払費用 | 6,000円 |
借入に係る会計処理方法について解説していきました。借入金の会計処理は、その借入期間に渡って必要となるものですので、間違いのないよう行うようにしましょう。