「会社都合退職」という言葉に対してポジティブな印象はあまりないと思いますが、その影響が転職活動にも働き、不利になってしまうのでは、と感じているもいるのではないでしょうか?本記事では、様々な理由で発生する会社都合退職が転職において不利な条件となるのか、自己都合退職との違いなども踏まえて解説します。
会社都合退職は、所属している会社のやむを得ない理由によって退職することを指します。その「やむを得ない理由」として、主に以下が挙げられます。
経営破綻などによって会社が倒産してしまっては、当然所属する従業員は働くことができなくなるため退職せざるを得ません。このような場合は会社都合退職に該当します。
解雇にはいくつかの種類がありますが、そのうち整理解雇が「やむを得ない理由」として当てはまります。整理解雇は、不採算部門の整理や事業方針の転換を行うにあたって、余剰となった人員を削減する目的で実施されます。
なお解雇の中でも認知度の高い懲戒解雇(社内ルール違反や犯罪を犯したことによる解雇)については、会社都合退職ではなく自己都合退職に該当します。
特に会社の経営成績が振るわない場合などにおいて、早期退職を募る場合があります。従業員が希望して定年前に退職する場合と違い、「希望退職制度」などの固有の制度に基づいて実施されます。この場合についても会社都合退職に含まれます。
会社都合で辞めると「転職で不利になるのでは?」との懸念もあります。応募先の人事担当者が会社都合で退職した人をどう捉えるのかという問題です。
会社都合で辞めた人の採用を躊躇するかどうかは人事担当者の考え方次第なので一概にはいえませんが、会社都合の中でもどんな理由で辞めたのかによって変わると考えられます。
経営悪化にともなう倒産や事業所廃止などの理由であれば労働者側に問題はないため、採用にあたり不利になるとは考えにくいでしょう。不景気により倒産や解雇が多い社会情勢であればなおさら理解を得やすいはずです。
問題は勤務態度不良などを理由にした普通解雇のように、労働者にも一定の非があって辞めたケースです。この場合は人事担当者が気にする可能性があるため、面接でしっかり答えられるようにしておくのがよいでしょう。普通解雇を真摯に受け止めて反省している点、解雇から何を学び、今後はどのように活かすつもりなのかといった点を伝え、応募先では気持ちを入れ替えて頑張りたいという意欲を見せることが大切です。
「会社都合退職」という事象自体が、採用側にマイナスな影響を与えることもあり得ます。例えば整理解雇での退職であれば、「他の事業での活躍が期待できるポテンシャルがあると判断されなかった人」なのではないか、という印象を持たれてしまう可能性があ。るのです
そのようなリスクも想定して、面接でどのように懸念払しょくするのか面接対策などによって考えておくことも、転職成功には重要な要素です。
会社都合退職や自己都合退職は法律用語ではありませんが、一般的には雇用保険上の扱いを区別する言葉として使われています。
会社都合退職とは、会社側の都合で一方的に労働契約を解除され、労働者が退職を余儀なくされることをいいます。雇用保険上では特定受給資格者に該当する人をいい、一般的には倒産や事業所の廃止、経営悪化にともなう人員整理(整理解雇)などのケースが多いでしょう。会社から退職勧奨を受けて辞めた場合やいじめ、ハラスメントなどを理由に辞めた場合なども会社都合退職に含まれます。
一方で自己都合退職とは、労働者側の都合で労働契約を解除することです。キャリアアップの転職のため、病気療養のため、結婚・出産などのさまざまな理由があります。
労働者としては会社の都合で一方的に退職させられるのですから、大きな不安を抱えるでしょう。しかし会社都合退職は自己都合退職と比べて金銭的なメリットが多くあります。
もっとも大きなメリットは、ハローワークから受け取れる基本手当(いわゆる失業保険)の条件が2つの点で有利になることです。
1つは、所定給付日数が長いことです。所定給付日数とは基本手当を受け取れる期間を指し、長いほどトータルで受け取れる額も大きくなります。自己都合退職の場合は被保険者であった期間に応じて90日~150日であるのに対し、会社都合退職の場合は被保険者であった期間および年齢に応じて90日~330日です。
もう1つは給付制限がないことです。自己都合退職の場合、基本手当の受給が開始されるまでには、求職の申し込みから通算して7日間+3ヶ月間は給付されません(令和2年10月1日以降に正当な理由のない自己都合退職した場合は5年間のうち2回まで2ヶ月)。
この3ヶ月(または2ヶ月)を給付制限といいますが、会社都合退職では適用されないため、求職の申し込みから7日間が経過すると受給できるのです。基本手当がすぐに受け取れるため転職活動中の生活が安定するでしょう。
出典:基本手当の所定給付日数
退職の理由が解雇だった場合、会社から解雇予告手当を受け取れる可能性があります。
労働基準法第20条1項によると、会社が労働者を解雇するときには、少なくとも30日前までに予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。つまり解雇の30日前までに解雇予告がなかった場合には解雇予告手当を受け取れるわけです。
出典:労働基準法 第20条1項
一般的に、自己都合退職の場合には退職金が減額されるケースがよくあるので、結果的に会社都合退職のほうが多く受け取れることになります。
もっとも、退職金の有無や金額は会社によって大きく異なるため、事前に退職金規程などを確認しておくのがよいでしょう。
金銭的なメリットが多い会社都合退職ですが、よく確認しないとメリットを享受できない場合があるため注意が必要です。
会社を退職するときには退職届を提出するのが当たり前だと思っている方も多いですが、退職届の提出は法的な義務ではありません。むしろ会社都合で辞める場合は提出しないほうが賢明です。
というのも、会社は国からの助成金を受け取りたいなどの理由から自己都合扱いにしたいと考えるケースがあり、退職届を提出すると「自分の意思で辞めた」と主張されかねないからです。
退職にあたり会社から受け取る離職票には、離職理由を記載する欄があります。この離職理由によってハローワークが基本手当を決定するのですが、会社都合にもかかわらず離職理由欄に自己都合と記載されているケースがあるため注意が必要です。
離職票が手元に届いたら必ず離職理由欄を確認し、納得がいかない理由に○がつけられていたら会社側に訂正を求めましょう。会社側が訂正に応じない場合は本人の判断欄を「異議あり」としてハローワークの窓口で相談してください。
悪い印象を与えたくないがために、退職理由をうまく言い換える方もいらっしゃいますが、絶対にバレるというわけではないものの、会社都合退職であることを素直に伝えるのがオススメです。
最もバレるリスクが高いのが、内定後のリファレンスチェックのタイミングです。リファレンスチェックとは、内定を出した会社側が求職者の過去の職務経験や人柄などについて知ることを目的に、求職者の前職の同僚などに対して行う調査です。
このチェックにおいて、退職理由に齟齬が無いかも確認されることもあるでしょう。面接官は数多くの求職者と面接をしているため、虚偽の発言をしているか曖昧な部分というのは、特に印象が鮮明に残るそうです。そのため、リファレンスチェックでその真偽を確認し、確信を得ることもあるでしょう。
当然その場合は内定取り消しとなることが想定されますので、注意が必要です。
他にも、退職理由の記載がある離職票の提出を求められた場合や、失業保険の給付日数が自己都合退職よりも多いことなど、バレるリスクは至るところにあります。
また、もし嘘の退職理由で転職できたとしても、その職場では隠し続けなければならないだけでなく、職場とのミスマッチも起きやすくなりますので、退職理由は正直に伝えるのが良いでしょう。
上記の通り、会社都合退職であることは素直に伝えるのが無難ですので、履歴書の「職歴」の欄にも記載しておきましょう。
書き方については、所属していた会社名の隣に「会社都合により退職」と書いておきましょう。
倒産や解雇などの会社都合で退職する場合は、生活の基盤を突然に失うことになり不安が大きいものです。しかし基本手当の受給をはじめとする金銭面で支援が受けられますし、転職活動の際にも必ずしも不利になるわけではありません。気持ちを切り替えて前向きに転職活動を始めてみてはいかがでしょうか。