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日商簿記1級と行政書士、資格取得の難易度や将来性を徹底比較!

HUPRO 編集部
日商簿記1級と行政書士、資格取得の難易度や将来性を徹底比較!

日商簿記1級と行政書士は、同程度の難易度の試験として、何らかの資格が欲しいという人が良く比較する資格試験です。しかし、日商簿記1級と行政書士を単純な難易度で比較することはできません。この記事では試験内容・合格率・将来性など様々な視点から日商簿記1級と行政書士という2つの試験を比較検討します。

試験内容の比較

まず最初に、日商簿記1級と行政書士の試験内容についてそれぞれ説明していきます。

日商簿記1級の試験内容

日商簿記試験を開催している日本商工会議所は、日商簿記1級を「極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算を修得し、会計基準や会社法、財務諸表等規則などの企業会計に関する法規を踏まえて、経営管理や経営分析を行うために求められるレベル」と位置づけています。日商簿記1級は、民間資格ではあるものの、簿記関連資格のなかでは最も難しい試験で、合格すると税理士試験の受験資格が得ることができます。したがって、公認会計士、税理士などの国家資格への登竜門として位置づけられ、会計専門職を目指す人なら誰もが受験を考える試験となっています。

日商簿記1級は、商業簿記、会計学、工業簿記、原価計算という分野について問う試験です。「商業簿記」は、購買活動や販売活動など、企業外部との取引を記録・計算 する技能で、企業を取り巻く関係者(経営管理者・取引先・出資者等)に対し、適切、かつ正確な報告(決算書作成)を行うためのものです。一方、「工業簿記」は、企業内部での部門別や製品別の材料・燃料・人力などの資源の投入を記録・計算する技能で、経営管理に必須の知識となります。

商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算の4科目(配点は各25点)の試験の合格ラインは100点満点中70点以上です。ただし、4科目のうち1科目でも40%に満たない(10点未満)科目がある場合は合計が70点以上でも不合格になる「足きり制度」があります。試験は毎年6月11月に実施されます(年2回)。日商簿記試験の下位級である2級と3級については2月にも試験が行われているものの、日商簿記1級の場合、2月の試験は行われません。

行政書士の試験内容

行政書士は、1951年(昭和26年)に成立した「行政書士法」により誕生した「国家資格となります。同じ法律関連の資格としては、司法書士や弁護士などがありますが、行政書士は、国民にもっとも身近な「街の法律家」とも言われています。

行政書士の仕事は大きく分けて、① 官公署へ提出する書類、権利義務や事実証明に関する書類を作る「書類作成業務」、② その申請を代わりに行う「許認可申請の代理」、③ クライアントからの相談を受け、アドバイスを行う「相談業務」の3つに分類されます。近年では、「行政書士」は国民と行政のパイプ役を担う法律の専門家として活躍することが期待されています。

行政書士試験は、筆記試験によって行われる試験です。試験は毎年1回、11月第2週の日曜日に実施されています。

試験内容としては、「行政書士の業務に関し必要な法令等」が46題出題されます。行政書士の業務に関し必要な法令等とは、具体的に言えば、 「憲法、行政法(行政法の一般的な法理論、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法及び地方自治法を中心とする。)、民法、商法及び基礎法学」の中からそれぞれ出題されます。試験で出題される法令については、令和2年4月1日現在施行されている法令に関して出題されます。つまり、最新の法令に関して出題されると理解しておけば間違いありません。これに加えて、「行政書士の業務に関連する一般知識等」が14題出題されます。具体的には、政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解について出題されます。

問題の出題の形式は、「行政書士の業務に関し必要な法令等」については、択一式及び記述式、「行政書士の業務に関連する一般知識等」については択一式で出題されます。記述式は40字程度で記述するものが出題されます。

難易度の比較

難易度の比較

次に、日商簿記1級と行政書士の難易度について、その合格率を比較していきます。

日商簿記1級の難易度

記事執筆時点における直近の日商簿記1級試験は、第156回(2020.11.15実施)試験ですが、総受験者数10,078名、総実受験者数8,553名、合格者数1,158名、合格率13.5%となっています。日商簿記1級は近年易化している傾向にあり、総じて合格率は10%程度で推移しています。ただし、日商簿記1級が易化しているのは、試験範囲の変更があり、当時日商簿記1級だった試験範囲が、日商簿記2級の範囲に含まれることになり、日商簿記1級の試験範囲が少し狭くなったからです。

行政書士の難易度

行政書士試験は日商簿記試験とは異なり、民間の試験資格ではなく、国家試験資格です。国家資格とは、国の法律に基づいて、各種分野における個人の能力、知識が判定され、特定の職業に従事すると証明される資格のことを言います。つまり、行政書士は、国から認められている資格ということになります。一般に、民間資格よりも国家資格の方が難しいというイメージがあるので、行政書士の方が日商簿記1級よりも難しい試験と考えるかも知れません。

記事執筆時点における直近の行政書士試験は、2019年11月10日に実施されており、総受験者数は39,821となっており、合格者は4,571となっています。合格率は、11.47%(合格者数/総受験者数)です。したがって、合格率だけで考えると、行政書士の方が簡単な試験であると考えることができます。ただし、行政書士試験は、本格的な法律系国家資格試験の中で登竜門のような位置づけにある資格試験です。弁護士や司法書士のような法律系国家資格試験のなかでは比較的簡単な試験として認知されています。

将来性の比較

最後に、日商簿記1級と行政書士の将来性について考えていきます。

日商簿記1級の将来性

日商簿記1級は、基本的には、その資格を持っているからと言って特別有利に働くわけではありません。大企業の経理部などで働いている場合や、転職をする場合には、高く評価される資格ではあるものの、税理士や公認会計士など、職業会計人として活躍する人が取得を目指すことの多い資格となっています。

簿記は企業の業種や形態、規模を問わず経営状況や財政などの日々の経営活動を記録・整理・計算するスキルです。会計ソフトをはじめ、近年ではAIの発展によって経理の仕事は縮小することが叫ばれて久しいものの、経理の仕事の中心が記帳業務から、経営戦略の立案に移ることになるので、各企業から経理の仕事がなくなるわけではありません。むしろ、高度な簿記の知識を活かして、会社の経営者を資金調達面や経営戦略面で支えていくのが、経理の仕事には求められるようになります。そうなれば、日商簿記1級は、高度な会計知識を持っていることの証明となるので、どんな企業でも活かせる資格となりえます。

行政書士の将来性

行政書士は、行政書士として登録後、独立開業することが可能となります。一般に、行政書士の扱う分野は広く、許認可申請をすべてに精通することは困難です。そこで、多くの行政書士は自分の得意とする専門分野を持ち、スペシャリストとして活躍する道を選んでいます。開業前に培った人脈やネットワークを活かし仕事を展開していくケースが多く、独自の人脈やネットワークを活かすことで、自分にしかできないサービスを提供できる仕事です。また、近年では、企業法務の重要性が高まっていることより、企業内で法律知識を活かすことも可能となっています。その場合も、自分の専門分野をいくつかに絞り、その分野の専門家として活躍していることが多いようです。他の国家資格に比べて、法改正などによって新しい業務分野が生まれやすいのも魅力の一つとなっています。

この記事を書いたライター

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カテゴリ:資格試験

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