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監査法人を辞めたい・・・。辞める前に考えるべきことを解説!

HUPRO 編集部
監査法人を辞めたい・・・。辞める前に考えるべきことを解説!

監査法人は比較的離職率の高い職場です。しかし、その実態はあまり良く知られていません。この記事では、そんな監査法人の離職状況などについてデータやアンケートを用いて説明していきます。そのうえで、監査法人を辞めたいと思ったときに考えるべきことを解説していきます。

公認会計士の状況

監査法人に所属するためには、まずは公認会計士にならなければなりません。それが監査法人で働くための最も近道です。

公認会計士となるには、公認会計士試験に合格し、一定の要件(業務補助、実務補習等)を満たした上で、日本公認会計士協会(以下「協会」という。)に備えられている名簿に登録を受ける必要があります。(法第3条、第 17 条、第 18 条)。

公認会計士・監査審査会が公表しているモニタリングレポート(「令和元年版モニタリングレポート」)において、公認会計士登録者数は、ここ数年緩やかに増加しています。監査法人所属者数も増加しているものの、登録者全体に占める割合は平成 27 年3月末の 49.3%から年々低下し、平成 31 年3月末は 44.8%となっています。

なお、監査法人所属者のうち大手監査法人(上場国内会社を概ね 100 社以上被監査会社として有し、かつ常勤の監査実施者が 1,000 人以上いる監査法人)所属者は約8割を占めており、公認会計士登録者のほとんどが大手の監査法人に所属していることが示されています。

監査法人の数は2017年3月末から増加傾向にあります。2019 年3月末は 236 法人の監査法人がありましたが、2018年4月から2019年3月までの間に、3法人が解散又は合併により消滅し、10法人が設立されました。

したがって、前年同期比で7法人の純増となっています。

加えて、このレポートでは、「公認会計士の地域会別の所属人数」も明らかとされています。公認会計士は、協会の会員とならなければならず(法第 46 条の2)、全国の各地方に設けられた協会の支部である地域会(平成 31 年3月末現在 16 地域会)に所属しなければなりません。

地域会別の所属人数をみると、公認会計士の約7割が首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)の地域会に所属しており、公認会計士の多くが東京に集中して業務にあたっていることが示されています。

監査法人の組織構造

昨今、大手上場国内会社を中心とする企業活動の複雑化・国際化に対応して監査法人の大規模化が進展し、大手上場国内会社やこれに類する大企業の監査の大部分を担う大手監査法人は、所属する人員が数千人を超え、また、それに続く準大手監査法人でも 100 人を超える規模となっています。

また、監査法人の規模が大きくなると、職員の能力や経験等により、監査法人の内部に職階を設けて組織運営を行うことが必要となるので、監査法人は一般企業と同様に階層化されています。監査法人で働く職員(公認会計士)は、スタッフ、シニアスタッフからマネージャー、シニアマネージャーを経て、選考の上、社員(パートナー)に登用されることが一般的です。

監査法人による採用状況

大手監査法人では、一般的に公認会計士(公認会計士試験合格者を含む)の中途採用割合は低く、公認会計士試験合格者を論文式試験の合格の直後に採用するのが一般的です。採用された公認会計士試験合格者は、同じ法人で公認会計士となり、その一部が法人内部での選考によりマネージャー等に昇進し、更にその一部が社員に登用されることになります。

その一方で、準大手監査法人及び中小監査法人では、公認会計士試験合格者の採用が困難な法人が多く、中途採用者の割合が高くなる傾向にあります。準大手監査法人及び中小監査法人では、主に大手監査法人を退職した公認会計士を中途採用するなどして、監査業務等に必要な人員を確保するように努めているのが実情です。

監査法人で働く構成員の状況

先に紹介した「令和元年版 モニタリングレポート」では、監査法人で働く構成員の状況も明らかとされています。

このレポートによれば、社員・常勤職員数の推移を監査法人の規模別にみた場合、大手監査法人及び準大手監査法人では2016年度以降増加傾向にあることが明らかとされています。

つまり、大手監査法人及び準大手監査法人において、監査法人で働く人は増えているのです。一方、中小監査法人では2015年度以降減少傾向にありましたが、業務収入上位の法人が人員採用を拡大していることや、みのり監査法人など、新しい監査法人が設立されるなど状況が変わったことで2018年度は増加に転じています。

ここで、人員構成別に監査法人で働く構成員の状況をみると、公認会計士試験合格者等の人員数は、大手監査法人及び準大手監査法人では横這いで推移していると言えますが、中小監査法人においては、大きく減少しています。

その一方で、監査法人で働く公認会計士(公認会計士試験合格者を含む)以外の人員は、全ての規模の監査法人において近年増加していることが示されています。

直近のデータにおける総人員数に占める公認会計士以外の人員の割合は、大手監査法人では 31%、準大手監査法人では 28%、中小監査法人では 16%となっており、それぞれ2017年度と比較して 25%、19%、15%と上昇しています。

監査法人で働く公認会計士以外の人員が増加しているのは、近年、監査法人は、被監査会社の IT 化の進展への対応や業務の効率化、人手不足の緩和や公認会計士を判断業務へより注力させることなどの要請に答えなければならなくなっているからです。

この目的を達成するために、監査法人は、被監査会社の IT 領域に関する監査の実施や監査チームが実施する IT を活用した監査手続のサポート等を行う IT 専門家、残高確認状の発送及び受取、各種報告書類の準備、データの整理等の監査補助業務を行う監査アシスタント等を積極的に採用しています。

監査法人を辞めた理由

ここからは、上で説明してきた監査法人の実情を踏まえたうえで、監査法人の退職事情について説明していきます。公認会計士の転職を支援する事業を行っている株式会社PCPは「公認会計士白書」を発行しています。この公認会計士白書は、毎年異なる特集が組まれており、2019年度の「公認会計士白書」には、監査法人を辞める理由が示されていました。

この白書のなかで、監査法人を辞めた理由として最も多いのは、「経験の幅を広げたかったから」という理由を回答者(会計士598人)の約半数(324名)が挙げています。他にも、「他にやりたい仕事があったため」(213名)、「仕事内容にやりがいを感じられなかった」(207名)、「独立するため」(136名)、「良い転職先が見つかったため」(103名)と続きます。

この調査からわかるのは、監査法人を辞める人の多くがネガティブな理由で監査法人を辞めているわけではないということです。

監査法人で働いていると、監査業務を行なうなかで様々な監査対象企業のビジネスをみることになります。そうしたなかで、自分の経験不足に直面することが多くなります。その結果として、経験の幅を広げることの必要性を痛感するようになり、監査法人を辞めていくのがほとんとであることをこの調査は示しています。

その他の理由として、「他にやりたい仕事があったため」や「仕事内容にやりがいを感じられなかった」などの理由が挙がっていることから、公認会計士試験合格後、自分が考えていた仕事内容と実際の仕事内容のギャップに悩まされて監査法人を辞めていく人も多くいることがわかります。

あまり回答者は多くないものの、「待遇・評価に満足できなかった」(93名)、「労働環境(労働時間や出張等)が悪かった」(69名)といった理由も挙げられています。こうしたネガティブな理由も監査法人を辞めた理由には挙げられているので、監査法人での業務がいかに大変なものであるかが理解できるはずです。

また、監査法人で働く人の約半数が、監査法人から転職を意識し始めた時期として4年半を挙げています。つまり、約半数が監査法人からの転職を4年半以内に考えているということです。

監査法人を辞める前に考えたいこと

ここまでは、過去に行われたアンケートや公表されているデータを用いて、監査法人の実態を明らかとしてきました。こうした実態を踏まえて、監査法人を辞める前に考えたいことについてここからは解説していきます。

監査法人で働いていても、入社してからおよそ半数以上の人が4年半以内に転職するか辞めるかをしています。こうした実態はあるものの、同調査において、監査法人を辞めた結果、転職先での給与が下がっているという実態も明らかとされています。したがって、監査法人を辞めると、給与は下がると考えた方が良いでしょう。

もちろん、監査法人を辞めても給与が増えるということは考えられます。給与が増えるケースとしては、監査法人を辞めてアドバイザリーサービスを提供するグループ会社に転職する場合です。

アドバイザリーサービスの提供には、監査法人で働いていた経験を活かすことができますし、給与水準も監査法人で働いていたときよりも高くなるケースが多いです。

その理由は、アドバイザリーサービスには高度な専門知識が必要とされ、そういった専門知識を有している人は限られるからです。

また、監査法人で働くことで得られる経験というのは、他の企業では得られないものばかりです。専門性と実績を備えたうえで監査法人を辞めてアドバイザリーサービスに転職すれば、給与水準はあがりますが、そうでない場合には、監査法人以外に転職しても給与水準は下がるのが一般的です。

まとめ: 監査法人を辞める前にしっかり考えよう!

監査法人は比較的離職率の高い職場です。監査法人で働く人の約半数が転職する職場ですし、能力がなければ監査法人に長く留まることはできません。年齢を重ねるうちに監査法人での業務に身体がついていかなくなるという人も少なくありません。

ただし、監査法人は他の企業と比較すると給与水準は高い傾向にあります。したがって、給与の高い仕事に就きたいと考えている場合には、よく考えて監査法人を辞めるようにしなければなりません。監査法人よりも給与水準の高いところはそれほど多いわけではありません。そのことをきちんと意識して、監査法人を辞めるかいなかを検討することが大切です。

この記事を書いたライター

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