監査法人は高年収が実現でき高いスキルを積めるという点などから、魅力的な仕事です。また監査法人の行う監査の重要性は社会的にも高い一方で、「辞めたい」と考えている人や実際に退職した人も一定数存在するのが現実です。この記事では、そんな監査法人を辞めたい理由や辞めた場合のデメリットなどについて解説します。
少し前のデータにはなりますが、株式会社PCPが発行している「公認会計士白書」の2019年度版には、監査法人を辞めた理由が示されていました。この中で多かった理由は以下の通りです。
ただし、これはあくまで既に退職した人の理由であり、「働いているけど辞めたい」という人は含まれていません。
当社ヒュープロでは、監査法人で働いている方の転職をエージェントとしてご支援しておりますので、その中で伺うことの多い「辞めたい理由」も踏まえて解説していきます。
監査法人は常に忙しいというより、特定の時期に非常に忙しくなるという傾向があります。それが1年の中の4,5月であり、この時期は繁忙期と呼ばれることもあります。繁忙期については以下の記事で詳しくご確認いただければと存じますが、3月決算を経たクライアントからの依頼が殺到するため、残業時間の増加や休日出勤の発生が避けられない法人もあります。
働き方改革などによって、そのような監査法人は減少傾向ではあるものの、どうしても無くなっているわけではないというのが実情です。そのような多忙な状況に耐えられず、「辞めたい」と思う人も多いようです。
「仕事にやりがいを感じられない」理由として、仕事に対して感謝を伝えられづらいということが挙げられます。
監査業務は、クライアントのミスや不正を未然に防ぐためにチェックをするという役割を果たしますので、「ありがたい」と感謝されることは勿論あるものの、時にはミスを指摘するなどといった嫌われ役に回ることもあります。
当然、監査は企業の成長や存続にあたって必要不可欠な業務であることは間違いないのですが、目の前のクライアントの担当者から謝意を伝えられることが多くはないため、「何のために仕事をしているのだろう…」と思い悩み、退職を検討してしまうようです。
監査法人で働いていると、年単位の仕事が大きく変わるわけではないので、何年か繰り返すうちにルーティーンワーク化していきます。監査法人の行う監査業務は高度なため、身につける過程で大きくスキルを伸ばすことができるものの、ルーティーンとなった後はキャリアを広げるために他の職場で働きたいと考えるようになるのです。
特にBig4監査法人のような大規模な法人では、スタッフ・シニア・パートナー・マネージャーなどのように役職が分かれています。上の役職に行くまでに年数がかかるだけでなく、公認会計士に定年がないことからパートナーやマネージャーの枠が空く機会も少ないため、キャリアアップができる可能性はかなり限られています。
一方で、公認会計士資格を活かせる会計事務所やベンチャー企業のCFOなどのポジションであれば、マネジメントを含めた裁量権の大きい仕事ができるでしょう。そういった環境に転職するために、監査法人を辞めたいという人も一定数いらっしゃるのです。
監査法人で働くにあたっての不満が無い場合でも、「辞めたい」と感じている人もいます。それが、公認会計士として独立開業したいというケースです。
公認会計士になるためには、公認会計士試験の合格に加えて実務経験を3年積む必要があり、多くの試験合格者や試験受験生が監査法人においてその実務経験を積んでいきます。そのため、資格取得の条件を満たした人は会計士として登録するわけですが、もともと独立志向があった人は、当然辞めて公認会計士事務所などを開業したいと考えるのです。
上記のような「辞めたい理由」をお持ちの方にとって、実際に辞めたら一定数のメリットがあります。
例えば、監査法人でしか働いていない場合は、別の職種に転職できればキャリアの幅を広げられますし、やりがいや裁量権を持てる職場に転職できれば、それもメリットとなるはずです。
しかし辞めてしまうことで、これまで監査法人で享受できていたものを失う可能性もあります。本当に辞めてしまうべきなのか、次の章で考えていきましょう。
監査法人を辞めようとする際、まずはじめに考えるべきなのが年収についてです。監査法人は公認会計士の資格と仕事の関連性が最も強い職場であるため、資格を活かせる職場の中でも平均年収がかなり高いです。
そのため、転職によって他の懸念点を解消できたとしても、年収が下がってしまうリスクがあることを考慮しておかなければなりません。
また、公認会計士を取得しておらず試験勉強をしながら働きたいという場合、監査法人以外の職場では勉強に対する理解がされず、学習時間が確保できない可能性もあります。
そして、監査法人は公認会計士の独占業務である監査のスキルや経験を最も積める職場です。そのような職場から離れることで成長の幅が小さくなっていき、キャリアアップが遅くなるリスクも考えられます。
このような想定されるデメリットも踏まえた上で、辞めるかどうかの決断をすべきといえます。
メリットとデメリットを天秤にかけたうえで、辞める決心をしたら独立する場合を除いては転職活動の準備をしておく必要があります。具体的なやるべきことについて解説しますが、これらの準備はできれば辞める前から始めておくのがオススメです。
まずはこれまでの監査法人でのキャリアの棚卸しをしましょう。採用側が経験を評価するにあたって重視するのは、年数とその内容です。特に監査法人の経験であれば、監査をどのくらいのレベルまでできるのか、またこれまでにどのくらいの規模の監査を何件担当したことがあるのか、といった部分が重要です。
転職活動を始めるにあたっては、これらのスキルや経験を具体的にしておく必要があります。
なぜその職種を希望しているのか、その中でもなぜその企業に応募したいのか、という志望動機は選考における非常に重要な合否の判断材料になります。ある程度「建前と本音」をわきまえて作成する必要がありますが、全くのウソを書いてもミスマッチを引きおこす要因となりかねません。具体的な志望動機の書き方については、以下の記事をご参照ください。
就職・転職活動にあたって、自分で応募する求人を探したり面接の日程調整をするのは骨が折れるものです。働きながら活動したいという場合はなおさらでしょう。
そこで活用すべきなのが人材エージェントです。希望の条件やご自身の経歴などを伝えることで効率的に求人を提供され、日程調整もエージェントが実施してくれます。内定を複数社もらった際に断りをいれてくれるなど、心理的負担のある対応もする必要がありません。そういったサービスを無料で受けられるエージェントが多いのも特徴です。
どうしても激務になる繁忙期のタイミングでは、監査法人を辞めるのは難しいでしょう。時期としてオススメのタイミングは、繁忙期明けの3ヶ月、つまり6月~9月です。この時期は求職者の動きだけでなく、採用側の動きも活発になります。ただし、応募をすべきタイミングについては、応募する職種によってまちまちです。
職種による転職のタイミングについては、以下の記事もご参照ください。
監査法人での経験が活かせる職種としては以下が挙げられます。
これらの職場の特徴については、以下の記事で詳しく解説しております。
今回は、なぜ監査法人を辞めたいと考えるのか、そして本当に辞めるべきなのかといった点を解説しました。
監査法人を辞めたい理由は数々ありましたが、働いたままでいることでしか得られない利点があるのも事実です。そのことをきちんと意識して、監査法人を辞めるかいなかを検討することが大切です。
もちろん、辞めることを決心した方の転職のご支援は、士業・管理部門特化の転職エージェントである当社ヒュープロのキャリアアドバイザーが、徹底的にさせていただきます。まずはご相談から、お待ちしております。