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監査法人を辞めたい人が多い理由とは?辞めて後悔しないためにやっておくべきことや、退職後の選択肢は?

Hupro Magazine編集部 川辺
監査法人を辞めたい理由とは?辞める前に考えるべきことを解説!

監査法人の業務は社会的に非常に重要度の高い役割を果たしている一方で、「辞めたい」と考えている人や実際に退職した人も一定数存在するのが現実です。本記事では、監査法人を辞めたい理由や、辞めた場合のメリットとデメリット、退職後のキャリアなどについて解説します。

監査法人を辞めたい理由

少し前のデータにはなりますが、株式会社PCPが発行している「公認会計士白書」の2019年度版には、監査法人を辞めた理由が示されていました。この中で多かった理由は以下の通りです。

1位:経験の幅を広げたかったから
2位:他にやりたい仕事があったため
3位:仕事内容にやりがいを感じられなかった
4位:独立するため
5位:良い転職先が見つかったため

ただし、これはあくまで既に退職した人の理由であり、「働いているけど辞めたい」という人は含まれていません。
当社ヒュープロは、士業特化の転職エージェントとして監査法人で働いている方の転職活動をご支援しておりますので、実際に監査法人からの転職を希望されている方々の生の声も踏まえて解説していきます。

①仕事が忙しすぎる

監査法人は常に忙しいというより、特定の時期に非常に忙しくなるという傾向があります。それが1年の中の4,5月であり、この時期は繁忙期と呼ばれることもあります。繁忙期については以下の記事で詳しくご確認いただければと存じますが、3月決算を経たクライアントからの依頼が殺到するため、残業時間の増加休日出勤の発生が避けられない法人もあります。

働き方改革などによって、そのような監査法人は減少傾向ではあるものの、どうしても無くなることが難しいというのが実情です。そのような多忙な状況についていけないと感じ、「辞めたい」と考え始める方も多いようです。特に入所からの歴が浅い新人にとっては、この多忙さが耐え難いと感じる場合も多く、入所から2年や3年で辞める方もいらっしゃるようです。

②仕事にやりがいを感じられない

また、「仕事へのやりがいを感じられない」と感じる方も多く、その理由として、仕事に対して感謝を伝えられづらいということが挙げられます。
監査業務は、クライアントのミスや不正を未然に防ぐためにチェックをするという役割を果たしますので、「ありがたい」と感謝されることは勿論あるものの、時にはミスを指摘するなどといった嫌われ役に回ることもあります。

当然、監査は企業の成長や存続にあたって必要不可欠な業務であることは間違いないのですが、目の前のクライアントの担当者から直接感謝を伝えられることが多い仕事ではないため、「何のために仕事をしているのだろう…」と思い悩み、「辞めたい」と感じてしまうようです。

③キャリアの幅が広がらない

監査法人で働いていると、年単位の仕事が大きく変わるわけではないので、何年か繰り返すうちにルーティーンワーク化していきます。監査法人の行う監査業務は高度な専門知識やスキルを必要とするため、身につける過程で大きくスキルを伸ばすことができるものの、ある程度慣れてくると、新たな刺激やさらなるキャリアアップを求めて他の環境で働きたいと考えるようになるのです。

④裁量権を持った仕事がしづらい

特にBig4監査法人のような大規模な法人では、スタッフ・シニア・パートナー・マネージャーなどのように役職が分かれています。ただでさえ役職が上がるのに年数がかかるのに加え、公認会計士には定年がないことからパートナーやマネージャーなどの上級の役職枠が空きにくく昇格のチャンスがかなり限られています
一方で、公認会計士資格を活かせる会計事務所やベンチャー企業のCFOなどのポジションであれば、マネジメントを含めた裁量権の大きい仕事ができるため、そういった環境を求めてキャリアチェンジを検討しているという人も一定数いらっしゃるのです。

⑤独立したい

監査法人で働くにあたっての不満が無い場合でも、「辞めたい」と感じている人もいます。それが、公認会計士として独立開業したいというケースです。

公認会計士になるためには、公認会計士試験の合格に加えて実務経験を3年積む必要があり、多くの試験合格者や試験受験生が監査法人においてその実務経験を積んでいきます。そのため、資格取得の条件を満たした人は会計士として登録するわけですが、もともと独立志向があった人は、当然辞めて公認会計士事務所などを開業したいと考えるのです。

監査法人の実際の離職率

上記のように、様々な理由で監査法人からの退職を検討している方がいらっしゃる中で、実際に退職に踏み切った人はどれぐらいいらっしゃるのでしょうか?

役職 離職率
全体 約7%
パートナー 約1%
マネージャー 約7%
シニア 約12%
スタッフ 約9%

上の表はBig4監査法人での役職ごとの離職率をまとめたものになっており、全体での離職率としては7%程となっていますが、一般的な監査法人では20%~30%と言われており、入所3年で30%を超えることもあるようです。こうして見ると、平均離職率が10%前後と言われている一般企業と比較しても非常に高い離職率と言えるでしょう。

監査法人を辞めるメリットと考慮すべきデメリット

上記のような「辞めたい理由」をお持ちの方にとって、実際に辞めることによって一定数得られるメリットがありますが、一方でもちろんデメリットもあります。以下では、監査法人を辞めることによるメリットとデメリットを見ていきましょう。

監査法人を辞めるメリット

1つはキャリアの幅を広げられることでしょう。公認会計士資格は非常に高度な専門知識やスキルが必要な資格で、取得難易度も高いため、様々な場所で重宝されます。「今の自分には監査法人は合っていない」と感じている方にとっては、キャリアの幅を広げる大きなチャンスとなるでしょう。
また、やりがい裁量権を持てる職場に転職できれば、それも大きなメリットとなるはずです。何にやりがいを感じるかは人それぞれですし、異なる環境に身を置くことで新たな発見があるかもしれません。

監査法人を辞める前に考慮すべきリスク

監査法人を辞めようとする際、まずはじめに考えるべきなのが年収についてです。監査法人は公認会計士の資格と仕事の関連性が最も強い職場であるため、資格を活かせる職場の中でも平均年収がかなり高いです。
そのため、転職によって他の懸念点を解消できたとしても、年収が下がってしまうリスクがあることを考慮しておかなければなりません。

また、公認会計士を取得しておらず試験勉強をしながら働きたいという場合、監査法人以外の職場では勉強に対する理解がされず、学習時間が確保できない可能性もあります。

そして、監査法人は公認会計士の独占業務である監査のスキルや経験を最も積める職場です。そのような環境から離れることでスキルアップの機会が減少し、公認会計士としてキャリアアップしにくくなるリスクも考えられます。

このような想定されるデメリットも踏まえた上で、辞めるかどうかの決断をすべきといえます。

後悔しないために、監査法人を辞める決断をしたらやるべきこと

メリットとデメリットを天秤にかけた上で辞める決心をしたら、独立する場合を除いては転職活動の準備をしておく必要があります。具体的なやるべきことについて解説しますが、辞めた後に後悔をしないためにも、辞める前からしっかりと準備を進めておくことを強くオススメします。

これまでのキャリアを棚卸しする

まずはこれまでの監査法人でのキャリアの棚卸しをしましょう。採用側が経験を評価するにあたって重視するのは、年数とその内容です。特に監査法人の経験であれば、監査をどのくらいのレベルまでできるのか、またこれまでにどのくらいの規模の監査を何件担当したことがあるのか、といった部分が重要です。
転職活動を始めるにあたっては、これらのスキルや経験を具体的にしておく必要があります。
実際にこの棚卸しをしている中で、「今の自分には何が必要なのか」、「本当に今辞めるべきなのか」、「なぜ辞めたいのか」、「それは現在の職場では実現できないのか」をなど改めて客観的に整理することができ、極力後悔のない転職活動を実現することができます。

志望動機を明確にする

なぜその職種を希望しているのか、その中でもなぜその企業に応募したいのか、という志望動機は選考における非常に重要な合否の判断材料になります。ある程度「建前と本音」をわきまえて作成する必要がありますが、全くのウソを書いてもミスマッチを引きおこす要因となりかねません。具体的な志望動機の書き方については、以下の記事をご参照ください。

転職エージェントへ相談する

就職・転職活動にあたって、自分で応募する求人を探したり面接の日程調整をするのは骨が折れるものです。特に、多忙な監査法人で働きながら転職活動をしたいという場合はなおさらでしょう。

そこで活用すべきなのが転職エージェントです。希望の条件やご自身の経歴などを伝えることで効率的に求人を提供され、日程調整もエージェントが実施してくれます。内定を複数社もらった際に断りをいれてくれるなど、心理的負担のある対応もする必要がありません。また、前述のような過去の棚卸しや志望動機の明確化、面接対策なども一緒に行ってくれます。そういったサービスを無料で受けられるエージェントが多いのも特徴です。

監査法人を辞めるべきタイミング

どうしても激務になる繁忙期のタイミングでは、監査法人を辞めるのは難しいでしょう。時期としてオススメのタイミングは、繁忙期明けの3ヶ月、つまり6月~9月です。この時期は求職者の動きだけでなく、採用側の動きも活発になります。ただし、応募をすべきタイミングについては、応募する職種によってまちまちです。
職種による転職のタイミングについては、以下の記事もご参照ください。

監査法人を辞めた後のキャリアの選択肢

監査法人での経験が活かせる職種としては以下が挙げられます。

・事業会社の管理部門(企業内会計士)
・税理士事務所・会計事務所
・コンサルティングファーム
・FAS
・その他のキャリア

事業会社の管理部門(企業内会計士)

「組織内会計士」や「企業内会計士」と呼ばれるポジションで、一般企業の職員としてその企業の会計業務全般を請け負います。基本的に企業は監査法人からの監査を受ける立場にあるため、監査業務経験者が組織内にいることは企業にとって非常に心強い状況となります。
また、企業にもよりますが監査法人よりも業務量が少なく、福利厚生が充実している可能性が高いため、よりワークライフバランスを意識した働き方が期待できます。さらに、監査法人での業務や資格試験で身に着けた会計知識とスキルを活かして、企業のCFO(最高財務責任者)に就くことができれば、より好待遇を望むことも不可能ではないでしょう。

税理士事務所・会計事務所

公認会計士資格を持っている方の転職先として会計事務所や税理士事務を検討することも可能です。監査と税務では業務内容が異なるものの、監査業務の中では専門的な会計知識が必要となるため、会計事務所や税理士事務での会計業務にもスムーズになじむことができます。将来的に独立を視野に入れている方にはオススメの転職先の1つです。

コンサルティングファーム

企業の経営に関して総合的な分析やアドバイスを行うコンサルティングファームでも、公認会計士資格は活かすことができます。ただし、各コンサルティングファームによって得意とする領域は異なるため、どの領域に強みを持っているファームなのかは調べた上で転職するべきと言えます。いずれにせよ、企業経営にとって必要不可欠な会計に関してのプロフェッショナルである公認会計士は、企業の経営支援を行うコンサルティングファームでも重宝されるでしょう。

FAS

FAS(Financial Advisory Service)とは企業の財務に関してサポートを行うサービスです。財務に特化したコンサルティングファームと言えばイメージしやすいかもしれません。特にM&Aやデューデリジェンス(M&Aや投資の際に行う分析業務)など、財務に特化した支援サービスを提供しており、監査知識に加えた専門知識が求められます。

その他のキャリア

その他にも金融機関やM&Aアドバイザリーなど、会計知識を活かせる選択肢は幅広くあります。公認会計士資格の取得や監査法人への勤務は大変な分、その知識や経験は様々な場所で活かすことができます。

これらの職場の特徴については、以下の記事で詳しく解説しております。

まとめ

今回は、なぜ多くの方が監査法人を辞めたいと考えるのか、そして退職に際してのメリットデメリット、退職後のキャリアについて解説しました。
監査法人を辞めたい理由は数々ありましたが、監査法人で働き続けることでしか得られないメリットがあるのも事実です。そのメリットとデメリットをきちんと意識して、ご自身の意思と天秤にかけた上で監査法人を辞めるか否かを検討することが、後悔のない転職を成功させるために非常に重要なポイントとなります。

もちろん、その上で退職を決心された方は、士業・管理部門特化の転職エージェントである当社ヒュープロのキャリアアドバイザーが、転職活動を成功に導くために徹底的なご支援をさせていただきます!
もし転職をご検討中の場合は、まずはご相談から、お待ちしております。

この記事を書いたライター

株式会社ヒュープロにてオウンドメディア「Hupro Magazine」のディレクション、セミナーの運営を担当。年間500本以上の記事を監修しています。アドバイザーとして多くのご登録者様から伺った転職に際しての悩みや不安、疑問を解消する記事をご覧いただけるよう、日々奮闘中です!士業や管理部門、FASなどの業界に就職・転職をご検討されている方は、ぜひ業界特化の転職エージェントである、「ヒュープロ」をご活用ください!
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