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公認会計士試験受験者には簿記1級は必要?

HUPRO 編集部
公認会計士試験受験者には簿記1級は必要?

公認会計士試験と日商簿記試験1級はどのような関係にあるのでしょうか?どちらの試験にも簿記が関わっているものの、試験で問われる内容には大きな隔たりがあります。そこでこの記事では、公認会計士試験合格を目指す人にとって、日商簿記1級の試験がどのような位置づけにあるのかについてわかりやすく解説していきます。

公認会計士と日商簿記

公認会計士試験と日商簿記試験は試験制度上はまったく別物です。したがって、公認会計士試験の合格を目指す人がわざわざ日商簿記試験の合格を目指す必要はありません。しかし、公認会計士試験に合格する人の多くは、日商簿記試験を受験した経験を持っており、その多くが日商簿記試験1級に合格しています。

公認会計士を目指そうとする人の多くが最初に行なう勉強は簿記です。公認会計士の合格を目指す人の多くが所属する専門学校では、日商簿記2級からレベルから勉強を開始します。その後、勉強をすすめる過程で日商簿記1級レベルの問題を解くようになります。そのようにして、公認会計士試験に合格できるだけの力を身に着けていきます。

つまり、公認会計士試験に合格するだけの力をつける過程で、日商簿記1級レベルの問題は当然のように解けなければなりません。日商簿記試験1級の合格を目指していなくとも、公認会計士試験を受験するのであれば、勉強をした結果として日商簿記試験1級は合格できるようになると言えます。

公認会計士試験の受験機会は年に1度しかなく、模擬試験の数も限られています。したがって、試験に慣れる機会も当然限られてしまいます。そうした事情もあって、公認会計士を目指す多くの人が、試験に慣れるために日商簿記試験1級を受験しています。つまり、日商簿記試験1級合格が目的ではなく、公認会計士の本試験前に試験の雰囲気に慣れることを目的に多くの人が試験を受験しています。

もちろん、公認会計士試験に受かるような人は、日商簿記試験にも問題なく合格します。日商簿記試験1級に合格できない人が公認会計士試験に合格できることは稀です。逆に、公認会計士試験に合格できる程度の力が身についていれば、日商簿記試験1級は難なく突破することができます。日商簿記試験1級に合格できるだけの力があっても、公認会計士試験に合格できるとは限りません。公認会計士試験の方が試験科目も多いですし、試験範囲も広く、難易度も高くなります。

したがって公認会計士になる多くの人は、日商簿記試験1級を受験して試験の雰囲気に慣れるように勉強しており、その過程で、結果として日商簿記試験1級に合格しているというのが実情であると考えるべきです。

日商簿記試験1級の難易度

それでは、日商簿記試験1級の難易度はどの程度のものなのでしょうか?

日商簿記試験1級は税理士試験の登竜門的な位置づけになっていることから、税理士になる人は必ず突破しなければなりません。日商簿記の公式サイトでは、日商簿記試験1級の難易度を「極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算を修得し、会計基準や会社法、財務諸表等規則などの企業会計に関する法規を踏まえて、経営管理や経営分析を行うために求められるレベル。合格すると税理士試験の受験資格が得られる。公認会計士、税理士などの国家資格への登竜門」と位置づけています。

2020年現在において、日商簿記試験の受験者の多くは税理士や公認会計士になることを目指している人です。キャリアアップのための日商簿記1級の合格を目指す人は案外多くありません。大企業でキャリアップを目指す経理部の方や会計事務所で働いている人など、専門的な会計の知識が求められる人が受験する試験です。したがって、中小企業などではあまりその知識が役立つということはありません。日商簿記試験1級はそれだけ高度の会計知識が問われる試験ということになるので、会計専門職として活躍したいと思う人だけが基本的には受験するものだと考えておきましょう。
日商簿記試験1級は、その試験範囲が公認会計士試験と大きく重なっています。日商簿記試験1級の資格取得を足がかりとして公認会計士や税理士を目指せば、より高度な会計知識を身につけることができます。日商簿記試験1級は、特に、簿記と管理会計論について公認会計士講座の内容を先取りで学習することと同じ効果があります。1級を取得することで公認会計士試験の内容の多くを把握することができるなど、会計士試験の合格を目指す人にとっては受験するメリットがたくさんあります。ただし、日商簿記検定の試験範囲・試験傾向の一部には、簿記検定特有の出題のものもあります。そのため、日商簿記試験の合格を目指して過度に時間を使ってしまうと、公認会計士試験の合格を目指す上で遠まわりとなる可能性もあるので注意が必要です。たしかに、「日商簿記試験1級」と「公認会計士試験」は、とても親和性の高い試験です。公認会計士試験の科目に「会計学」があり、簿記1級の範囲がすべて含まれています。しかし、日商簿記試験1級に合格できても、公認会計士試験に合格できるとは限りません。これをきちんと認識して勉強を行なうことが重要です。

日商簿記試験1級を受けるべき人はどんな人?

ここまで説明してきたように、日商簿記試験1級は、公認会計士や税理士のような会計専門職として将来活躍したいと考えている人が受験すべき試験です。したがって、単にキャリアアップしたいという人は別の資格試験を目指した方がコスパは高いと言えます。それでは、日商簿記試験1級はどんな人が合格を目指すべきでしょうか?

それは、将来公認会計士や税理士になりたいけれど、まだ悩んでいるという人です。公認会計士試験の試験科目は財務会計論、管理会計論、企業法等多岐にわたります。しかし、この中でも学習の中心となるのは「簿記」です。したがって、簿記を勉強することで、計算科目で必要となる計算力を高めることができます。しかも、会計士試験や税理士試験において、計算科目は他の科目よりも合格レベルに達するまでに時間がかかります。その理由は、計算をしなければならず、ある程度慣れが必要であるからです。条文などを暗記・理解しておけば問題を解けるというわけではなく、正確に計算問題を解く力が求められているからです。日商簿記試験1級の勉強をすれば、その延長線上に公認会計士試験や税理士試験の合格を目指せます。したがって、日商簿記試験1級の勉強をする過程で、自分が会計専門職に向いているかどうか、その適正を判断することができます。日商簿記試験に合格することも大変難しいですが、公認会計士や税理士試験はそれ以上に難易度は高くなります。したがって、日商簿記試験1級の勉強がおぼつかないような人は、公認会計士や税理士は向いていないと言えるかもしれません。公認会計士や税理士は、膨大な勉強の先に合格がある試験なので、この意味でも、日商簿記試験は登竜門的な位置づけにあると考えるべきでしょう。

まとめ: 公認会計士になるならまずは日商簿記試験1級を!

公認会計士試験になるなら、まずは日商簿記試験1級を受験してみるのも良いかも知れません。公認会計士試験受験者にとって、日商簿記試験はまさに登竜門的な位置づけにあると言えます。日商簿記試験1級に合格できる程度の力が身につけば、公認会計士試験合格にも近づいていると判断することができます。ただし、日商簿記試験1級に合格できたからと言って、公認会計士試験に合格できるかどうかはわかりません。公認会計士試験は日商簿記試験よりも範囲は広く、簿記という計算問題だけではなく、会計基準などルールや法令に関する理解も必要となるからです。こうしたことをきちんと理解したうえで、日商簿記試験1級の合格を目指すことが大切です。

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