税理士事務所や会計事務所への転職活動を成功させるポイントとなるのが履歴書です。ポイントを押さえた適切な履歴書を用意できれば、書類選考だけではなく採用面接さえも有利に進められるでしょう。特に、税理士試験科目合格者が会計事務所に転職するには、より自分のスキルを効果的にアピールする必要があります。
そこで、この記事では、税理士事務所・会計事務所への転職成功率をアップさせる履歴書の記載方法を中心に説明します。科目合格者や科目免除を受けた人などが留意すべきポイントも紹介するので、ぜひ最後までご一読ください!
一般事業会社への転職活動の際にも「履歴書の書き方」は重要だと言われますが、特に税理士事務所・会計事務所への転職時には履歴書の書き方に気を配る必要があります。そこで、具体的な記載方法の注意点を説明する前に、まずは税理士業界にチャレンジする際に特に履歴書が重要とされる理由を簡単に紹介します。
一般事業会社とは異なり、税理士業界は人材の動きが活発な業界です。原則として一つの税理士事務所で数十年勤務を続けるというキャリア形態は想定されておらず、数年あるいは十数年で独立、あるいは、ランクアップした税理士事務所・会計事務所に転所するのが当たり前の業界です。一つの事務所で経験を積んだ税理士が事務所を退所するに伴い、税理士業界に新しく入ってきたキャリアの浅い税理士や科目合格者が代わりに当該事務所に入所して再びスキルを磨くというサイクルの中で、各税理士事務所は社会に貢献する税務サービスを提供しているのです。
つまり、一般事業会社に入社する際には、今後数十年当該企業に勤めることが前提とされていますが、税理士事務所では、数年間の間に実務経験を積み上げてスキルを磨き上げることが重視されます。入所後数年間で効果的に成長を遂げられる人材こそ、各税理士事務所が欲する人材です。そのような人材には、転職活動時に自分の鏡となる履歴書もきっちりと仕上げてくるでしょう。
したがって、常日頃転職活動で人材が行き来するという特徴のある税理士業界の中では、他の転職志願者が手を抜くはずのない履歴書作成には特に注意を払うべきと考えられます。
社会活動の中で、税務を専門に取り扱うことが許されているのは税理士だけです。どの税理士事務所も、顧客に提供するサービスの正確性や質の高さには常にこだわっています。そして、このような重責を前提としたとき、各税理士事務所は、税理士としての社会的使命を全うできるだけの人材、高度な専門性を有する税務業務を任せられるだけの信用に値する人材を欲していると言えるでしょう。
したがって、税理士事務所が果たす社会的役割や顧客への責任を考慮したとき、入所希望者が履歴書から本気で仕上げるだけの気概をもっているかは大きな判断材料となります。
税理士業界への転職時には、一般企業と比べて、より業界に即したスキルを有しているかが重視されます。これは税理士が担う専門性の高さによるものです。つまり、一般企業の転職時に問われるような、いわゆる自己アピールや学生時代の社会貢献活動などはあまり重視されません。あくまでも、客観的に証明できるスキルや技術の高さ、今後の成長可能性が問われるのです。
ここで重要なのが、このような客観的に証明できるスキルは、履歴書に記載しやすいということです。その結果、「税理士試験に最終合格しているのか」「科目合格数及びどの科目を合格しているのか」「どの規模の税理士事務所で何年業務をこなしてきたのか」等、転職希望者がアピールしたいポイントを自ら設定し、採用面接時に聞いて欲しい流れさえもあらかじめ想定することさえ可能となります。したがって、税理士事務所への転職活動を効果的に進めたいのであれば、履歴書の記載に力を入れるべきなのです。
履歴書を作成するにあたってまず真っ先に迷うのが、手書きかPCかという観点でしょう。ご状況にもよりますが、まずはPCで作成するのがオススメです。その理由として、何度でも直すことができることが挙げられます。手書きでも、訂正印を利用するなどして修正は可能ですが、見栄えとしてはあまりよくありません。かといって書き直しを繰り返すのもかなり時間がかかるでしょう。
また複数社に応募する際に、手書きだと全て一から作成しなければなりませんが、PCで作成していれば、氏名や学歴・職歴など、変える必要のない部分はそのままコピーして作ることができます。この面でも時短の効果が見込めます。
そのため、履歴書は一度PCでExcelなどを使用して作成し、面接で書類を持参するよう求められた際にはPDF形式にした上で印刷するのがよいでしょう。
かつては手書きの方が「熱意が伝わる」とか「人柄が伝わりやすい」という意見もありましたが、IT化やペーパレス化が進んだ直近の日本社会では、そのような判断が書類選考で行われることは全くと言ってよいほどありません。実際、当社転職エージェント「ヒュープロ」のご登録者様の中でも、約97%もの方がPC上で作成し、ご転職にも成功されていますので、よほどの拘りや応募先からの指定が無ければ手書きは控えましょう。
まずは、履歴書を作成するにあたっての基本的なルールをご紹介します。PCでの作成を前提に解説しますが、手書きでも同様です。
なお記入項目については、厚生労働省から展開されている下図の「履歴書様式例」に基づいて紹介します。
出典:「履歴書様式例」厚生労働省
作成日には書類を出す当日の日付を入れるようにしましょう。提出に先んじて履歴書を作成するなどして、作った日と提出する日が異なる場合でも、提出する日を入力するように注意しましょう。
ここで迷うのが「令和〇年」という和暦で書くか「20XX年」という西暦で書くかという観点ですが、決まりはないものの西暦がオススメです。
税理士の就職先の中ではごく一部ですが、外資系企業もあることを考えると、世界的な記載方法である西暦の方が無難といえます。
氏名は姓と名の間にスペースを空けます。現住所についてはふりがなの記載も忘れないようにしましょう。現住所の欄の下に連絡先という欄があることがありますが、現住所以外への連絡を希望する場合以外は「なし」とだけ記載しましょう。
当社ヒュープロでも、よく「顔写真なしでの提出は可能ですか?」という質問をいただきますが、企業に応募する際は必ず顔写真を添付しましょう。一般的には清潔感や親しみやすさなどの印象を与えられるのが良いとされています。最低限、スーツやオフィスカジュアル程度の服装を着用し、髪は整え、証明写真機などで撮影するのがよいでしょう。
なお、PC上で作成する際は、撮った写真を電子データにして添付するようにしましょう。くれぐれも作成した顔写真をスマートフォンのカメラで撮影して添付することはしないようにしてください。
左半分で最も作成の手間がかかるのが、この部分でしょう。
まずは最上部に「学歴」と記載した上で高校卒業から大学・大学院などの卒業まで記載します。その下の行に「職歴」と記載した上で、新卒入社した会社からの職歴を記載します。直近の職場を退職していない場合は現職への入社を記載した次の行に「現在に至る」と記載した上で、その下の行に「以上」と書きましょう。
税理士の履歴書で、最も失念してはならない項目です。取得年月と資格名を書く欄がありますが、ただ「税理士資格」と書くのではなく、税理士を取得した年月と併せて各科目の名称とそれぞれの取得年月も記入しましょう。
税理士資格の特徴として、様々な科目の組み合わせで取得できることがあります。同じ税理士でもどのような分野に強いのかを気にする企業や事務所も多くあるので、忘れず記載しましょう。
また、税理士資格をお持ちの方にありがちなのが、より低次の日商簿記2級などの会計資格の記載をしないというケースです。それらの資格も着実にスキルアップしてきたというアピールに繋がりますので、簿記などの資格も欠かさずに書きましょう。さらに、運転免許やTOEICなどの語学系の資格についても記載します。
経歴・資格と併せて重要視されるのが、この欄に記載する志望動機です。どのような内容を書くべきかは重要なポイントですので、次の章で改めてご紹介します。
この欄はある程度の幅が設けられており、自由に記述できるようになっていますが、このほとんどのスペース、もしくは全てを志望動機に使用しても問題ありません。他の点はそこまで選考要素には入らないからです。強いて言えば、趣味などを記載しておくと採用側の趣味とマッチして親しみを感じてもらいやすくなるなどの効果はあるかもしれません。
転職するにあたって、何も希望が無いという方はいらっしゃらないでしょう。ただし、ここに記載するのは控えましょう。なぜならアピールポイントにならないだけでなく、マイナス評価に繋がる可能性もあるからです。
例えば、「年収800万円を希望します」と記載するとします。その履歴書を採用側が見た際に、「この経歴と資格の状況などから鑑みて800万円の年収を払うのは難しい」と考えて「お見送り」という判断をするでしょう。
ただ、それを記載せずに書類選考を通過すれば、面接でのアピールや書類では分からないスキルを評価されることで、その金額が実現する、そして採用側も内定を出す可能性が十分にあります。
このように、選考の結果を悪い方向に変えてしまう可能性があるため、記載しないことをオススメします。
とはいえ、希望が叶う職場なのかどうかは、選考前に知っておきたいと考えるのが一般的でしょう。そのような場合は、人材エージェントを活用いただければと存じます。人材エージェントは、応募先の求人だけでは把握できないリアルな情報を持っていますので、希望とマッチしているかの事前の確認が可能です。また、作成した履歴書・職務経歴書の添削も実施してもらえます。
士業・管理部門特化の転職エージェントである当社ヒュープロでは、業界特化だからこそ税理士の転職活動を良い結果に導くノウハウが蓄積されています。全てのサービスを無料でご利用いただけますので、お気軽にご相談ください。
ここでは、税理士が履歴書を作るにあたって押さえておくべきポイントを紹介します。
税理士の就業先として一般的な会計事務所は、業務内容が大きく異ならないため、「なぜうちの事務所に入りたいの?」に対しての答えを、履歴書内に明記しておく必要があります。それを記載するのが志望動機です。税理士の志望動機は以下のプロセスで作成しましょう。
まずはどうして税理士になろうと思ったのか、税理士業界で何をしたいと思ったのかから棚卸ししましょう。「手に職をつけたい」、「開業して経営者として活躍したい」など目指した理由は様々ですが、しっかりと将来のキャリアプランから逆算し、軸を持って取得したことをアピールできるような内容にしましょう。
次になぜその事務所に応募したのかという理由も落とし込みましょう。会計事務所の求人は沢山ある中でなぜその企業を選んだのかは、書類選考でも面接でもほぼ必ず選考基準に入っています。
志望動機の完成度が低かったり他でも通用するような内容だと、志望度が低いもしくはもし入社してもすぐ辞めてしまうかもしれないという懸念に繋がってしまいますので注意が必要です。
上述したように、会計事務所は行っている業務内容や事業が似ているため、企業ごとの志望動機を作る難易度が高い業界といえます。企業情報や求人を仔細に確認し、相手に熱意が伝わるような内容を作ることが、志望動機作成のカギです。
最後にその応募先において自分自身がどのような役割を果たせるのかを考えましょう。こちらはいわゆる自己PRのようなものですが、今までのキャリアや実績をなんでも書けばいいというものではなく、あくまで税理士の仕事、さらにその応募先で活かせるとアピールできるものでなくてはなりません。
繰り返しとなる部分もありますが、税理士資格をお持ちの方は、以下の記載を忘れないようにしましょう。
③は対応可能職務の幅を広げるものなので、税理士事務所の主幹業務次第で高評価を得られる可能性があります。また、④を記載するだけでどのような規模の税理士事務所でどの程度の経験を積んでいたかを示すことができ、実績評価を得られやすくなるでしょう。
ここまで税理士の転職活動についての話をしてきましたが、税理士取得に必要な5科目のうち一部に合格している人を科目合格者と呼び、この科目合格者は税理士業界への転職において有利に働きやすいです。
どの程度有利に働くかを考えるにあたってまず重要なのは、科目合格数です。多くの会計事務所では、2科目以上の合格者の評価が高くなる傾向にあります。
また、どの科目に合格しているか、という点も重要です。簿記論・財務諸表論の必須科目に合格していれば、決算書類などの作成をする力があると認められるので、科目合格を必須要件としている多くの会計事務所の
採用基準を充たすことができるでしょう。所得税や法人税の選択必須科目に合格していれば、法人クライアントとの折衝も期待できるという評価を得られます。選択科目の中で言えば、例えば相続税法合格者が、資産管理や成年後見業務を取り扱っている税理士事務所への転職で強みを発揮するように、選択科目の合格は、税理士事務所が力を入れている業務へのアピールに役立ちます。
評価の高低に関わらず、1科目でも合格しているなら履歴書には必ず記載しましょう。記載方法は上述した税理士資格の各科目の書き方と同様に、科目名と取得年月を記載します。
なお、本人希望欄において、あまりに露骨に試験勉強と実務経験の両立を図りたい旨を記載するのは得策ではありません。そもそも科目合格者が税理士試験の最終合格を目指しながら会計事務所に勤務するのは当たり前の業界の中で、際立てて希望として記載するのは決してプラス評価には繋がりにくいでしょう。資格欄で科目合格者であることを認識して、勉強との両立したいことは重々理解してもらえているので、ご安心ください。
税理士試験では、大学院在籍中に執筆した論文認定制度や、国税勤務歴に応じて税理士試験受験が一部または全部免除されることがあります。このような経緯から税理士事務所に転職を希望する人は、明確にこの旨を記載するようにしてください。
特に、税務署勤務歴については、具体的な職務歴を記載しましょう。税務経験をアピールする絶好の機会です。
なお、大学院の修了で一部科目を免除されている人は、難関税理士試験を合格しているわけではないことから、マイナス評価される可能性があります。したがって、大学院在籍中にどのような分野の研究に励んでいたのかなどを、より深く履歴書内で説得的にアピールすることを心がけましょう。
結論から申し上げますと、マストではありませんが書いた方がよいでしょう。1科目も所持していなくても、2科目所持していて3科目めの勉強中でも、その勉強意欲は税理士になる意思があるというアピールに繋がります。
入社後にどのくらいの戦力になってくれるかを見極める最初のステップである履歴書においてそのようなアピールをしておくのは、他の転職希望者との差別化を図ることに繋がるでしょう。
今回は税理士や税理士試験科目合格者などの履歴書の書き方、および注意点などについて解説しました。
税理士業界に転職を希望するときには、転職活動の入り口である履歴書の作成を怠らないようにしてください。あなたにとっては何度も作成を繰り返して目新しさのないものかもしれませんが、書類選考をする会計事務所にとっては、履歴書だけが転職希望者を表現するものです。
特に税理士業界は、その業務の専門性の高さから信頼できる人材を求める傾向にあります。最終合格者・数年の職務経験がある方、科目合格者など、それぞれの背景をしっかりと的確にアピールできる履歴書を作成して、転職を成功させましょう。
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