多くの仕事がAIやRPAによって失われていくだろうと予測されています。もちろん、全ての仕事で人の力が必要なくなるというわけではありませんが、経理についてはどのくらい取って代わられるのでしょうか?
今回は経理の仕事の将来性や、今後も働き続けるために求められるスキルについて、解説していきます。
まずは経理がどんな仕事なのかについて解説します。
経理の仕事を一言で表すと、会社のお金全般の管理をすることです。大きく分けると日次業務・月次業務・年次業務の3つに分類でき、それぞれが以下のような業務を行っています。
日次業務 | 会社の毎日のお金の取引を記録・集計する |
月次業務 | 1か月間で発生したお金の流れを記録・管理する |
年次業務 | 1年間のお金の流れを資料としてまとめる |
会社における経理の重要性は高く、会社の意思決定をするための土台となるのはもちろん、会社の所有者である株主に対して企業活動の成果や状況を報告する役割や、一般市場における投資家の投資判断の基礎となる情報を提供する役割もあります。
経理の仕事内容について、詳しくは以下の記事をご参照ください。
上述のように企業で大きな役割を持っているにも関わらず、経理の仕事が「なくなる」と言われているのは、なぜでしょうか?その理由について解説します。
最も大きい要素として、AIやRPAの普及があります。
AIは「人工知能」とも呼ばれ、業務の流れを自動的に学んで仕事をこなしていくものです。決まった業務をこなすことはできますが、トラブルが起きた際に臨機応変に対応をするものや、ある基準を満たしているかどうかといったような業務は苦手とされています。
一方、RPAとは「ロボティック・プロセス・オートメーション」と呼ばれ、AIのように学んでいくというよりも、同じ業務を効率化して行うロボットです。プログラムを入力すれば、ミスなくその通りに動き、365日24時間作動し続けます。経理の業務でいえば、請求書を発行することや事務処理の作業はRPAに任せることができるのです。
このようなAIによる業務効率化やRPAによる業務自動化は、企業の経費節減に大きく貢献します。ある程度の導入費用は掛かるかもしれませんが、中長期的な視点では減らせる人件費の方が多くなっていくからです。
そのため、AIやRPAに経理職の人が取って代わられる可能性を指摘する声が挙がってきているのです。
日本社会全体でDX化の流れが進んでいるのも要因の一つです。DX化とは、データやデジタル技術の活用を進めていくことを指します。
DX化によって、経理においては、紙で管理していた企業の資産の流れ(領収書や請求書、発注書など)をデータで管理するペーパーレス化が進みます。
ペーパーレス化することで、人による業務量の低減だけでなく、ミスや紛失のリスクをなくすことにも繋がります。その一方で、手を動かして計算したり紙の保管や管理をする経理担当者は必要なくなります。
そのため、DX化によるペーパーレス化が経理の仕事がなくなる要因の一つとされているのです。
このようなAIやRPA・ペーパーレス化の話をすると、経理の仕事が本当に無くなってしまうように思われるかも知れません。
しかし、経理の仕事の将来性は決して暗いものではありません。なぜなら、経理の全ての仕事が人以外に取って代わられるとは考えにくいからです。
ただし当然ではありますが、一部の業務は自動化されてしまうことでしょう。そこで次の章では、経理業務のうち、将来なくなると考えられる業務と、そうでない業務について解説します。
将来的になくなると考えられる業務の共通点として、一定のルールに基づいた単調な作業であることが挙げられます。具体的には、以下のような業務が挙げられます。
仕訳業務は経理の中でも最も基礎的な業務ですが、その業務量はかなり多いため、AIに処理してもらうことで大幅な業務効率向上が見込めます。そのため、かなり早い段階で仕訳を人が行わなければならない企業は少なくなってくると予測されます。
一方、税務申告や決算業務については経理の中でも高度な仕事であるものの、ルールさえ認識させることができればAIやRPAによる実施が可能になると考えられています。
このように単調であることに加え、何かしらのデータを作成したり処理する業務が無くなる可能性が高いです。
一方で将来的になくならない業務には、データや資料から思考し、何かを判断するような業務が該当します。
特に、データを分析しながら経営者とコミュニケーションをとって管理会計を処理する場合や、会社にとって有利となるように会計処理を議論するといったような業務は、人にしかできない仕事だといえます。
また、財務状況を踏まえた上でどのような資金繰りをするべきかなどといった、様々な要素を複雑に組み合わせて判断する業務については、今後も人が行うべきものでしょう。
経理の仕事に今後も携わるつもりであれば、AIやRPAができない分野のスキルアップをすることが求められます。
まず、M&Aや管理会計といった実務による経験や専門的な知識がさらに高く求められるようになるでしょう。このような専門的な業務は経験できる企業が限られている分、身に付けておくと活躍しやすくなるでしょう。
さらに、意思決定を求められる時に正しく先を見越して判断する能力、また財務諸表と経営者の意志に基づいて適切なアドバイスを提案する能力についても、財務担当として活躍するためには必要になってくるでしょう。
また、近年では日本企業のグローバル化や外資系企業の日本進出が活発になっています。そのような企業の経理職には、高い英語力が求められるため、英語力を武器に働き続けるというのも有効な選択肢といえます。
最後に、DX化やAI・RPAの導入はもちろん、その運用にあたってもITスキルは欠かせません。そのため、ITスキルを有した経理担当者は現時点でもニーズが高く、今後はさらに高まっていくでしょう。
今回は、経理の仕事が将来的に無なくなってしまうのかについて解説しました。
経理業務の一部はAIやRPAに取って代わられ、ペーパレス化によってなくなるものあるでしょう。ただ、経理として働き続けるために重要なのは、それでも残り続ける仕事のスキルを今のうちからつけておくこと、そしてAIやRPAと共存してうまく仕事を進められるようにしておくことです。
「仕事を奪われる」というイメージによって、AIやRPAを毛嫌いする方もいらっしゃるかもしれませんが、社会や会社には大きなメリットを与えるツールです。それらが導入されたら、むしろ活用することで自身の業務の最適化を進めるのがよいでしょう。
スキルが高くITを活用できる経理担当者になればニーズも高く、年収や働き方などの労働条件を向上されることにも繋がりやすいので、決して損することはないのです。