会計事務所・税理士法人は、一般事業会社と違って公開情報が少ないため、どのような志望動機が良いのか困っている方は少なくありません。今回は、税理士補助として働きたい方向けに「なぜその事務所を選んだのか」納得感のある志望動機の作り方を一緒に考えていきましょう。
会計事務所・税理士法人の志望動機は、一般事業会社とは異なり、業界・事業内容ならではの陥りやすいポイントがあります。
会計事務所・税理士法人は全国に3万以上もあります。志望動機を聞くのは「なぜ、うちで働きたいのですか?」ということです。
税理士補助をやりたいだけなら、隣町にも、同じ最寄り駅でも他にもありますよね?と。
志望する側から見ると、例えば、自宅から近い、待遇が良いというのは重要な志望理由なのですが、事務所側から見るとそれではあえてお金を払って雇いたいという理由になりません。
例えば、Aさんは容姿、Bさんは給与がイマイチなので、比較検討した結果、あなたにしますと言われても嬉しくないのと同じです。
まず、求人票やWEBサイトなどで「どういう事務所なのか」ということを確認するとともに、他の事務所と差別化できる点がないか探します。働き方や、所長の挨拶、クライアント企業などもわかるようでしたらチェックします。
もし、事務所に知り合いがいれば、どんな事務所なのかを尋ねておきましょう。地元であれば「◯◯さんの知り合いなら」というのはかなり有利です。「紹介」は立派な志望理由の一つともなります。転職エージェントの紹介も同様です。
会計事務所・税理士法人は、よほど大手でもない限り人数が少ないため、公開情報が少ないという特徴があります。
例えば、一般事業会社であれば、その会社が作っている製品や提供するサービスが独自化されているため、製品やサービスのファンであるといったような切り口が使えます。
しかし、会計事務所・税理士法人は、提供しているサービスは税務相談や申告など、基本的に一律なので「この事務所ならでは」という点を見つけづらいのです。
もちろん、M&Aや事業継承など専門分野に特化した事務所はあります。ただ、そういう務所を志望する場合は、やりたいことがハッキリしている分、志望動機は書きやすいでしょう。
税理士の業界では、基本的に業務が似ているところが多いです。そのため「なぜ他の事務所ではなく、この事務所に入りたいのか?」と、志望動機を求められても、志望者としては困ってしまいます。
例えば、前段でも述べたように、専門分野に特化しているとか、これからを睨んでクラウド会計を活用して全国から集客しているとか、コロナ禍のような影響にも対応できるように、IT化を推進して在宅で仕事ができるとか、業務内容や勤務体系に特徴があれば志望動機も書きやすいのですが……
そうなると何を書くかとなった場合、「簿記の知識があります」「税理士試験の勉強をしている」「経験を積みたい」となってしまうのです。おそらく8~9割は志望動機を書かせるのは無駄?というくらい同じような志望動機になりがちなのが、会計事務所・税理士法人の志望動機の困った点です。
それでは、書きづらいという前提を踏まえて、税理士補助の志望動機を書くための準備をしていきましょう。
会計事務所・税理士法人では、仕事への意欲と能力(ポテンシャル含む)がある人材を採用したいと考えています。
そしてあなたは、税理士補助という仕事が「自分に合っている、やれる」と考える理由があるから応募するわけです。
この両者の求めるものをマッチングさせるために、まずは自分が税理士補助を目指す理由をハッキリさせる必要があります。
自分に対して客観的な視点で問いかけ、その答えを考えてみましょう。
自分の希望からいったん離れて、「税理士補助」という仕事、そして志望先の事務所について考えてみるのです。
ここでまず「税理士補助」という仕事について、志望先の事務所について、自分の考えをハッキリさせます。
会計事務所・税理士法人の志望動機を作成するときに陥りがちなポイントがわかったところで、ここからどうすれば良いかを見ていきましょう。
新しい仕事へのチャレンジの場合、一番難しいのは、まだやっていないことについて、経験していないのにイメージして書かなければならないということです。
採用担当者の方は「なぜ税理士補助に興味を?」という理由を知りたいだけでなく「会計事務所・税理士法人を志望するなら業界研究くらいやっててしかるべき」と考えています。未経験者可という求人だったとしてもです。
そのため、まずは新聞や雑誌、ネットの記事などで「会計事務所・税理士法人」について調べ、実際に勤めている方に話を聞くところからはじめましょう。
例えば、会計事務所の数は全国に3万もありますが、その大部分は零細事務所。さらに税理士試験の受験者数は年々減少していることなども、調べればわかることです。
志望する人は全員志望動機があります。ですが、具体的に実感を持って志望動機を書くためには、未経験者の場合は「調べる」ことが特に重要。条件と仕事内容だけでは、仮に入所したとしても楽しく仕事することはできません。
業界や仕事内容を調べることでまず「税理士補助をやりたい」という気持ちを膨らませましょう。
応募したい会計事務所・税理士法人の情報が少なかったとしても、まずチェックして深掘りできる材料、それは「求人票」です。
求人票には、会計事務所・税理士法人が求めている条件が必ず書いてあります。例えば以下のようなものです。
求人票を確認し、仕事内容と条件、求める人物像を把握した上で、前項で掘り下げた「税理士補助と自分」を絡め、「自分は、税理士補助としてこの点で貢献できると考えた」と展開していくのです。
税理士・会計事務所の求人票には必ずといっていいほど「簿記」について書いてある項目があります。「簿記◯級以上(歓迎)」などですね。
考えてみれば、税理士補助の求人に応募している時点で「簿記」に興味があったり資格を取っているのはある意味当たり前です。
そのため、簿記以外のことでも志望動機を作るのがより重要といえます。
前職がまったく畑違いの業種であったとしても、
・前職が営業だったので、得意先回りなどで中小企業のクライアント様とお付き合いが多かった。中小企業の代表者の方とも良い関係でお付き合いできていた。貴事務所の顧問先と業種も似ているため、その経験を役立てたい。
・ITのサポートセンターにいた。これからクラウド会計を推進しようとしている貴事務所の顧問先への導入やサポートについて、前職の経験を生かしたいと考えた。
「このような人材を募集していますが、私は◯◯であり、私を税理士補助として採用することでこんなメリットがありますよ」と自分の特性だけでなく、採用後の周りのメリットについても言及するのです。
特に、中途採用の場合は、これまでの経験を生かして貢献するという視点が重要です。
税理士補助の仕事や、採用先事務所の「求める条件」を見ると
・単なる書類仕事ではない
・顧問先とのコミュニケーションが求められる
というような傾向が見えてきます。
自分のこれまでの経歴が、どのように生かせるかは、その事務所の求人内容にもよるので照らし合わせて考えてみましょう。
それでは、ここまでの内容を踏まえ、どのような要件を盛り込んで志望動機を作るべきかを見てみましょう。
志望動機については、これまで述べてきた通り、以下の内容を盛り込むのが望ましいです。
順番については変更しても問題ありません。他にも思いつくポイントがあれば、それを加えてみましょう。
税理士業界は現在どうなっているか?問題点はあるか?それは何か?今後の変化にどのように対応すべきか?
なぜ志望先の事務所を選んだのか?理念?志望理由について
税理士補助とはどんな仕事だと自分は考えているか?
自分のどのような経験・能力・資質が生かせそうか?
採用されたらどんな貢献ができるか?
会計事務所は全国ですでに3万以上の事業所があり、過当競争だと言われます。
近い将来税理士の仕事がAIに奪われるという説もありますが、おそらくそれは、記帳作業などの単純作業だと私は思います。AIに仕事を任せることができる分、税理士事業の本質である企業の経営課題の改善については、より高いサービスを提供できるようになるはずです。
また、昨今のコロナ禍や会計のクラウドサービスにより、これからのクライアントは遠隔地でのリモート対応でも十分対応が可能になるのではないでしょうか。
そうなると、税理士事務所だけでなく、クライアントにおいてもいかに早くIT化を進め、DXをはかるかが重要な課題だと考えます。
私は、前職でITサポート業務を行っていました。データ入力や資料作成などにおけるスキルは高い方だと自負しています。また、作業も正確だと評価されていました。
部内での経理業務を担当するうちに、経理や税務にも興味を持つようになり、◯月に日商簿記検定3級を取得、現在は2級の取得に向けて勉強中です。
また、私が貴事務所のお役に立てるのではないかと考えているのは、クライアント向けのITサポート業務です。例えば、税理士の先生と一緒にクライアント先に訪問し、先生は税務相談を、私はクラウドシステムやIT関連のサポートを行うなど、新たなサービスの提供についても貢献したいと考えています。
貴事務所では、クライアント企業に向けて税務相談だけでなく、クラウド化の積極的な推進を図り、新しい働き方をも含めてコンサルテーションされていることについて「未来の会計事務所だ」と強く共感いたしました。
以上の理由から、私は貴事務所で働くことを強く希望いたします。