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新型コロナでどうなる?期中の役員報酬の減額について

HUPRO 編集部
新型コロナでどうなる?期中の役員報酬の減額について

コロナ禍の中、役員報酬を見直したいという企業が増えています。損金計上している役員報酬は期中に変更できないという原則がありますが「やむを得ない事情」であれば、減額が可能です。今回は、期中の役員報酬減額ができる事由について見ていきましょう。

新型コロナにより役員報酬の減額が増えている

新型コロナウイルス感染症の影響で、経営状況が悪化し、役員報酬の自主返上や減額などが相次いでいます。

例:

三菱ロジスネクスト株式会社「役員報酬の減額に関するお知らせ 」

株式会社トーホー「役員報酬の減額に関するお知らせ 」

株式会社AOKIホールディングス「役員報酬等の減額に関するお知らせ 」

役員の報酬については、「定期同額給与」(毎月給与のように支給する者)を採用している会社ほとんどです。

定期同額給与を損金計上するためには、変更にあたって「期首から3か月以内の株主総会等の決議が必要」というルールがもうけられ、その年の業績によって不当に増やすことができないように定められています。

しかし、今回の新型コロナウイルス感染症の影響のように経営状態が悪化してしまった結果、報酬そのものを出すことが経営的に厳しい状況については、「やむを得ない事情」(臨時改定事由)として期中変更と損金計上が認められるケースがあります。 次項から具体的に見ていきましょう。

通常改定以外での役員報酬の減額

会社法上、役員報酬は定款又は株主総会の決議によって決定することになっています。これを通常改定と言います。
通常改定以外で、期中に定期同額給与を変更するには以下の場合でなければなりません。

臨時改定事由

まず、臨時改定事由です。国税庁WEBサイトによると、期中で役員報酬を変更できる場合は、「その事業年度においてその法人の役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情」と定められています。

例えば、期中に以下のような変更がなされた場合です。
・役員の地位が変更(代表取締役→取締役など)
・職務内容の変更(役員としての地位は同じままで他の職務も兼務するなど)

業績悪化改定事由

業績悪化改定事由

次に、業績悪化改定事由です。
国税庁WEBサイトによると、「その事業年度においてその法人の経営状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」と定められています。

今回のコロナ禍のように、業種によっては営業停止や営業時間短縮によって売上が激減したようなケースはこちらに該当する可能性が高いです。

「経営状況が著しく悪化」とは?これから悪化予想でも減額できる?

しかし「著しく悪化したこと」という観点が気になりますよね。

どのくらい業績が悪化すれば「著しく」になるのか、という点については、国税庁が平成24年4月に改定した「役員給与に関するQ&A 」「会社の経営上、役員給与を減額せざるを得ない客観的な事情があるかどうかにより判定することとなります」という考え方が示されています。

まず、すでに業績にマイナスが生じている場合です。
役員報酬を減額して、その分を経営に回さないと倒産や返済ができないような場合はもちろん該当するでしょう。
新たな融資のために事業計画を作成し、役員報酬の減額は盛り込まないと信用を得られないような場合もあります。
また、株式を発行している場合は、業績悪化しているのに役員報酬がそのままだと株価にも影響しそうです。

次に、現在はまだ良いとしてもこれから悪化が避けられないような状況です。
例えば、新型コロナウイルス感染症の影響で、取引先が倒産した、イベントが開催できないため売上が上がらないなどといった状況で、これから自社に影響が及ぶことは必至という会社も多いのではないでしょうか。
これについても、役員給与の減額などの経営改善策を講じなければ、業績悪化することが不可避と認められますので、業績悪化改定事由による改定に該当するものと考えられます。

なお、国税庁では新型コロナウイルス感染症の影響による役員報酬の減額対象で「イベント業」と「観光業」をあげていますが、「自社がこのケースに該当するのかわからない」という場合は、事前に担当税理士へ相談するほうが良いでしょう。

出典:国税庁WEBサイト:新型コロナウイルス感染症に関連する税務上の取扱い関係

役員報酬を減額した後で業績が回復したら?

国税庁「役員給与に関するQ&A 」によると、例えば、経営状況悪化に伴って役員報酬を減額、その後、経営計画が成功したり、状況の改善によって、役員報酬減額以降に業績悪化を防ぐことができた場合も、業績悪化改定事由に該当します。
ただし期中に減額した役員報酬を、同じ期中に業績が回復したからといって元に戻すことができるかというと、「臨時改定事由」に該当するかどうかが問われます。
役員報酬は会社経営にとって、金額的にも税金的にも大きな影響があります。コロナ禍を乗り切るために役員報酬の減額を考えている会社は、まずは一度税理士へ相談してみましょう。

この記事を書いたライター

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