税理士と名乗るためには税理士となる資格をもった人が税理士登録をする必要があります。税理士登録をしてない人は税理士業務を行なうことはできず、もし税理士業務を行なうと税理士法違反となります。それでは、どのように税理士登録をしたら良いでしょうか?この記事では税理士登録の一連の流れについて詳しく解説します。
税理士は、公共的使命を担う者であり、委嘱者たる納税義務者の援助にあたっては、 納税義務者あるいは税務当局のいずれにも偏しない独立した公正な立場で、税務に関する専門家としての良識に基づき行動しなければなりません。
税理士が独立した公正な立場で税理士の業務をまっとうすることができるように、税理士業務を行うためには登録が必要となっています。登録していない税理士は、税理士として名乗ることは認められず、税理士業務を行なうことができません。
たとえ、税理士試験を突破したとしても、すぐに税理士として活躍できるわけではないことに注意が必要です。「税理士となる資格を有する者」であることと、「税理士」として登録していることとは全く異なることで、「税理士」 となるためには、税理士名簿に「登録」 する必要があります。登録が完了していない場合、税理士業務を行なうことはできません。登録していないにも関わらず税理士業務を行った場合には、税理士法違反となります。
それでは、税理士になるためにどこに登録したら良いのでしょうか?結論から言えば、日本税理士会連合会に申請書類を提出して税理士として登録することになります。
日本税理士会連合会は、税理士会及びその会員に対する指導、連絡及び監督に関する事務を行い、並びに税理士の登録に関する事務を行うことを目的として、税理士法で設立が義務づけられている法人です。全国15の税理士会で構成されています。この日本税理士会連合会が税理士の登録手続き等に関して、「税理士登録の手引」を公表しています。
この手引をみれば、税理士登録の一連の流れを知ることができます。
2021年5月における、全国の税理士登録者数は計79,280人です。地方ごとの集計では東京が最も多く23,603人、次いで近畿地方が15,048人となっています。逆に少ないのが沖縄の446人で、他の地域はそれほど大きな差はないようです。
税理士として登録するためには、まずは税理士となる資格を有することが条件となります。税理士となる資格を有する人(者)に該当するのは次のような人です。
公認会計士は、公認会計士法第 16 条第1項に規定する実務補習団体等が実施する研修のうち 、財務省令で定め る税法 に関する研修を修了した公認会計士をいいます
ただし、①及び②の者については、租税に関する事務又は会計に関する事務で政令で定めるものに従事した期間(実務経験が)通算して2年以上あることを必要とします 。
なお、税理士登録完了後に上記に該当しなくなった場合は、登録が抹消されることとなります。
税理士試験を突破したあと、すぐに税理士登録ができるわけではありません。原則として、2年以上の実務経験が必要です。2年間の実務経験の詳細については、以下の記事を参照してください。
申請書類を提出してから、申請が完了するまでおよそ2、3ヶ月程度の時間が必要です。申請書類に不備があった場合には、さらに1ヶ月程度の時間が必要となります。申請が必要となる書類は、人によって異なりますので、まずはどんな書類の提出が必要かをきちんと整理しておかなければなりません。
税理士登録するために必要な期間については以下の記事で解説しています。
税理士となる資格を有する人が、税理上となるには、日本税理上会連合会に備える税理士名簿に、財務省令で定めるところにより、氏名、生年月日、事務所の名称及び所在地その他の事項の登録を受ける必要があります(税理士法第18条)。税理士登録を受けようとする者は、日本税理士会連合会所定の税理士登録申請書(以下「登録申請書」)に必要事項を記入し、登録を受けようとする税理士事務所又は税理士法人の所属事務所の所在地を含む区域に設立されている税理士会を経由して、日本税理士会連合会に提出します。
次に示す書類は、税理士登録を受けようとする全申請者が提出を要する書類等です。
なお、これらの書類等以外にも、その他必要に応じて提出しなければならない書類があります。
税理士登録申請に必要な書類については、以下の記事で詳細に解説されています。
税理士登録のための登録料が50,000円、登録免許税が60,000円と、合わせて110,000円かります。
税理士登録をしたら、次は、所属する税理士会への入会費と年会費、さらに所属する支部の年会費も必要になってきます。
例えば、東京税理士会に入会する場合は、
入会金が40,000円、年会費が81,000円、そして会館建設費として20,000円が必要です。
(年会費は6,750円×月数で計算されます。)
東京税理士会より
さらに、事務所の所在地によって、所属支部が決まり、そちらでも年会費が必要です。
税理士会と支部会の会費は、登録料などと違って全国一律ではなく、会と支部によって数万円もの差があります。
例えば渋谷支部では36,000円、葛飾支部だと65,000円といった具合です。
こうして見ると、税理士にかかる登録費用は、初年度で約300,000円、次年度以降でも約100,000~150,000円程度が年会費としてかかってくることになります。
税理士登録申請に必要な登録料や年会費については、以下の記事で詳細に解説されています。
税理士には、そもそも税理士法上に「税理士は、所属税理士会及び日本税理士会連合会が行う研修を受け、その資質の向上を図るように努めなければならない。」(税理士法第39条の2)と記載がある通り、研修を受け、自分自身の能力を向上させないといけないといった努力義務があります。税理士試験を突破したからといって、様々な実務上のケースに対応が出来る訳ではありません。お客様に迷惑をかけないためにも、常に自己研鑽は必要です。
登録時研修については以下の記事を参照してください。
税理士資格に合格をするなどして有資格者となった段階で実務経験を2年積み始め、税理士登録をするという流れがこれまでは一般的だったのですが、この税理士登録をしない人が増えているといいます。
税理士資格を保有できても、実務経験が足りていない、または税理士としての登録をしていない場合は、税理士ではありません。そして未登録税理士などといった立場も本来であればないのですが、最近では、税理士事務所の求人に「税理士(未登録可)」といった言葉を見かけることも多くなりました。それだけ税理士登録をしていないが、税理士資格には合格しているという人が増えている証拠だといえます。
税理士登録をしない人が増えている理由としては、以下のようなことが考えられます。
・税理士として独立する人が減少している
・税理士法人に勤務する人が増加している
・税理士登録には費用がかかる
税理士登録をするかしないかは、個人の選択に委ねられています。では、税理士登録をすることによって得られるメリットにはどのようなものがあるのでしょう。
税理士試験を受けて合格をしただけでは、たとえ知識があったとしても税理士とはいえません。税理士登録をして初めて税理士であると名乗ることが可能になるのです。そして、税務申告や税務相談を受けることもできるようになります。また、税理士登録をすれば独立をして働くことも可能ですので、将来の選択肢も広がります。
税理士登録をすれば、地域の税理士会に入会することができます。活躍している先輩の税理士と知り合えるチャンスも増えますし、情報も入手しやすくなります。そして、自分自身の税理士としての経験や知識を積んでいくこともできるでしょう。
勤務している会社の規則にもよりますが、税理士登録を税理士となったことで、資格手当が支給される場合があります。基本給が上がり、キャリアの面で優遇を受けられるといったようなことがあるかもしれません。
ところが、なかには税理士試験に合格をしても税理士登録をしない人もいます。税理士登録をすることのデメリットには、どのようなことが挙げられるのでしょうか。
税理士登録をする際には書類のほかに登録手数料が必要だとお話しました。その費用が大きいために、あえて税理士登録をしない人がいるのです。必要とされる費用の詳細は入会する税理士会によって異なりますが、登録時に30万ほど、年会費として翌年から10万円ほど必要です。税理士として独立をするといったような明確な将来のビジョンがあれば必要経費と割り切ることができますが、そうではない場合は、少し負担となる金額といえるでしょう。
税理士会に入会すれば得られるものも多いのですが、税務相談などの要請を受けることも多くなります。今の仕事で手一杯だといったような場合には、税理士会の活動が重荷に感じられるかもしれません。
税理士となる資格を有する者が、税理士となるには、自己が行う業務形態に応じて社員税理士、所属税理士、開業税理士のうち、いずれか一つの区分を選択し、税理士名簿への登録を受ける必要があります。この節では、それぞれの登録区分について解説していきます。
税理士法人(税理士業務を組織的に行うことを目的として2名以上の税理士が共同して設立する法人)の業務執行者として税理士業務等を行う税理士のことをいい、納税者からの委嘱はすべて税理士法人で行います。また、社員税理士は自己もしくは第三者のために税理士法人の業務の範囲に属する業務を行うことはできないことから、自らの税理士事務所を設置することはできません。
税理士事務所または税理士法人の補助者として税理士業務等に従事する税理士のことをいい(税理士法施行規則第 8 条)、納税者からの委嘱は勤務する税理士事務所または税理士法人で行います。ただし使用者である税理士又は税理士法人の書面による承諾を得ることにより、所属税理士が他人の求めに応じ自ら委嘱を受けて税理士業務等に従事することができます。自らの税理士事務所を設置することはできません。いずれの場合も申告書等への署名押印は、勤務する事務所の名称の記載が必要で、直接受任である場合はその旨の付記も必要となります。なお、勤務する税理士事務所又は税理士法人以外の補助者として従事することはできません。
社員税理士及び所属税理士以外の税理士で、納税者から直接委嘱を受けて税理士業務等を行う人のことをいい、自らの税理士事務所を設置しなければなりません。
登録区分ごとに提出しなければならない申告書類の種類が異なるので注意が必要です。登録する場合、いずれか一つの区分を選択して登録しなければなりません。
税理士登録申請が行われると、その申請書はまず税理士会が受け取ります。税理士会は申請書の副本を税務署や都道府県の長などに送付し、税理士登録の手続きが開始されます。この節では、税理士登録申請後の流れについて解説していきます。
登録申請書を受理した税理士会は、当該申請書の副本を住所地を管轄する税務署長、都道府県の長、市区町村の長に対して1 通ずつ送付します。申請書類のなかで複数枚の書類の提出が求められているのは、税理士会が様々な組織に書類を送付するためです。
登録申請書の正本を税理士会の支部等に回付し、支部等の登録調査員による登録調査(面接調査を含む)を行い、登録調査員からの調査結果を踏まえ、税理士会の登録調査委員会にて登録調査を行い、登録の適当、不適当を判断したうえで、日本税理士会連合会に当該申請書を進達します。なお、税理士会によっては、支部ではなく税理士会の登録調査委員会が直接面接等の調査を行うことがあります。
面接は書類内容を主に確認するために行われるもので、試験のように面接の結果が悪かったから登録できないということはありません。
当該申請書の進達を受けた日税連は、登録調査部会で改めて調査を行い、その調査 結果を登録審査会に付議し、登録審査会において登録の適否が決定されます。
なお、税理士登録申請をしたあとで、面接をしなければなりません。面接ではどのようなことをするのかについては以下の記事を参照してください。
提出された登録申請書は、各税理士会での調査を経たのち、日本税理士会連合会に進達されます。その後、日本税理士会連合会では、登録申請者が税理士となる資格を有し、かつ、登録拒否事由に該当しない者であると認めたときは、税理士名簿に登録するとともに、その氏名及び登録番号を官報をもって公告されます。また、登録申請者には、税理士名簿に登録されたことを通知し、登録申請書を提出した税理士会を経由して税理士証票が交付されることになります。これで、税理士登録は完了です。
たとえ登録申請があったとしても、税理士として登録できない場合があります。
次に掲げる事由のいずれかに該当する人については、税理士となる資格を有していても、税理士法第24条(登録拒否事由)の規定により、税理士の登録を受けることができません。この節では、登録を拒否されるのはどのような場合かについて詳しく解説していきます。
上記のような人については、税理士登録申請をしても、税理士として登録することができません。
税理士登録をする際に全員が留意しておくべきポイントについて最後に解説します。
まず、税金の未納がある人については、税理士法第24 条7号「税理士の信用又は品位を害するおそれがある者」に該当する疑いが生じることから、税理士登録を申請する前に完納しておかなければなりません。
さらに、税理士の登録申請中は税理士と名乗ることはできません。登録申請書を提出してから登録が決定するまでには、おおむね2月~3月の期間を要しますが、
この登録が決定されるまでの間は「税理士」ではないので、下記の点に注意が必要です。
(1)〜(4)で挙げられている行為は、税理士法第52 条(税理士業務の制限)又は第53 条(名称の使用制限)違反となるおそれがあることから充分な注意が必要です。
税理士となる資格がある人であっても、税理士として登録できるかどうかは全く別の問題です。税理士となる資格がある人が税理士として登録してはじめて税理士として名乗ることができます。税理士として登録するためには、税理士会に申請書類を提出しなければなりません。提出された申請書類に基づいて、申請書類に不備がないかどうか確認されます。書類内容に間違いないかどうかを確認するために、申請後には面接も実施されることになります。税理士として登録すると同時に開業する場合には、別途、新しい事務所での面談も実施されることになります。