日商簿記試験2級は近年難化傾向にあります。従来、日商簿記試験1級の試験範囲であった連結会計が2級の試験範囲に含まれるようになってからは、その難しさがSNSなどで取り沙汰されるほどです。この記事では、そんな日商簿記試験2級に効率的に合格するための対策ポイントを詳しく解説していきます。
日商簿記検定は年3回の実施。企業や商店の商取引を帳簿上でまとめる能力を測る試験で経営や経理に携わる人から学生まで幅広く受験している試験です。これまでも、日商簿記の試験範囲は、例年、少しずつ変更が加えられてきました。
繰り返されてきた試験範囲の変更のなかでも、近年大幅な試験範囲の変更が行われています。その変更とは、日商簿記試験2級の試験範囲に「連結会計」が含まれるようになったことです。
この変更について、日商簿記試験を開催している日本商工会議所は
「連結重視のディスクロージャーの制度になってからもう20年近く経過して定着しています。また、税法などでも企業集団を対象とした制度の整備が進んでいることに加えて、企業経営自体、グループ全体を視野に入れた経営判断を行う連結経営が加速していますので、連結会計に対するニーズは大企業のみならず中小企業においても高まってきています。こうした実社会での流れに合わせて、2級の段階でもある程度の連結会計について習熟しておくことが望ましいと判断」しました
と説明しています。しかし、詳しくあとで説明をしますが、この連結会計が含まれたことにより、日商簿記試験2級の難易度はかなりあがりました。
日本商工会議所は、「連結会計については、2級の学習者にとって学習時間を要する論点であることに加えて、平成 29 年度の試験範囲に対応したテキストや問題集などが刊行されるのが平成 29 年3月頃になることが予想され」ることから、「学習者だけでなく、指導者にとっても時間的な余裕が乏しくなるかと思われます」として、「連結会計に関しては、平成29年11月施行の第147回検定試験以降に出題する」と決定しています。
連結会計の他にも、同時期に、リース会計や課税所得の算定、圧縮記帳および外貨建取引などについても試験範囲の変更が行わましたが、こちらは平成29年度の当初から出題範囲に含められています。
日本商工会議所は、日商簿記試験2級のレベルについて「高校(商業高校)において修得を期待するレベル」とホームページで紹介しています。しかしながら、2017年11月に連結会計が2級で出題されるようになっています。連結会計は、それまでは日商簿記試験1級の範囲に含まれていたものでした。
連結会計の導入に伴い、日商簿記試験2級は大幅に難化しました。連結会計の問題であまりに難しい問題が出題されるようになり、Twitterや掲示板などでその難しさがトレンド入りするほどです。SNSで批判が広がり、問題を作成した日本商工会議所が見解をホームページ(HP)に掲載するまでに至ったこともありました。
受験対策を指導する予備校の講師たちは、インターネット上の解説動画の中で、驚きと怒りをあらわにするなど、実際に、日商簿記試験2級を指導している人たちからも苦言を呈されるほど、現在の日商簿記試験2級は難化傾向にあります。
すでに説明したように、日商簿記2級は難化傾向にあります。難化傾向にある2級を突破するために押さえておきたいポイントを絞って、以下では解説していきます。
日商簿記試験2級では、とにかく連結会計が難しく手も足も出ないという人も少なくありません。
連結会計は個別の論点を終えたうえでないと勉強しはじめることができないことから、多くの受験者が後回しにしてしまい、十分な対策を行うことができない状態で受験しているのが現状です。その結果、連結会計が出題されて、手も足も出ないという状態になってしまいます。
第3問で0点という人も少なくありません。第3問で得点できない場合、他の設問できちんと得点しておく必要があります。近年では、問題そのものは易しくとも、解答に至るまでのプロセスで時間がかかる出題も多いため、第3問で時間が足りなくなってしまうという人も少なくありません。
したがって、日商簿記試験2級では、まず第1問、第2問、第4問、第5問の順に解いていって、最期に第3問を解答し、部分点を狙うというのが一番良く用いられています。
日商簿記試験2級において、第3問が難化傾向にあることは間違いありませんが、その分、第4問・第5問についてはこれまでの試験傾向と変化はありません。
試験傾向に変化がないということは、これまで出題されてきた過去問が豊富にあるということを意味しており、きちんと過去問を使って解法のパターンを理解しておけば、かなり高得点が期待できます。
第4問・第5問については満点を狙える部分であるため、この部分をどれだけ得点できるかによって、合格ラインにのるためにどれだけ他の部分で得点しなければならないのかが変わってきます。
したがって、第4問・第5問については、可能な限り多くの過去問を入手して、解答パターンを頭に入れておくことが大切です。
難化傾向にある日商簿記試験2級もきちんと対策をすれば効率的に合格ラインを超えることができます。そこでここからは、日商簿記試験2級で合格ラインに到達するために大切なことを説明していきます。
すでに説明したように、第4問・第5問では確実に得点をすることが求められます。そのため、過去問をきちんと解いて、高得点を狙わなければなりません。逆に言えば、ここで得点できないと、日商簿記試験2級には合格できないと言っても過言ではありません。
第4問・第5問の工業簿記については、2級から試験範囲に加わるということもあって苦手とする人も多く、多くの人が不十分な勉強時間しか確保できない状態で試験に臨んでいます。その結果、思うように得点することができず、試験に落ちてしまっているのが現状です。
2級の工業簿記は基本的なところからしか出題されませんし、出題のパターンはすでにで尽くしています。したがって、過去問を多く解いて、確実に得点できるように準備しておきましょう。
日商簿記試験2級では、第1問において必ず「仕訳問題」が出題されます。仕訳問題はどれも難しい問題ではなく、できれば満点、少なくとも1問間違い程度で突破したいところです。
第1問の対策として特別な対策は必要ありません。普段活用している教科書や問題集の基礎問題レベルの仕訳を理解しているだけで、十分高得点が狙える範囲です。したがって、第1問対策としては、テキストの例題や問題集に掲載されている問題を確実に仕訳できるようにしておくという対策が有効です。
簿記の基本はすべて仕訳から始まります。第1問は日々の基礎的な練習である仕訳ができているかどうかで大きく得点差が開くことになるので注意しましょう。
日商簿記試験第2問は新傾向の問題が出題される可能性がありますが、それでも難易度は高くありません。有価証券の時価評価や株主資本変動計算書など、比較的新しく出題範囲に入った論点が出題されやすいところです。税効果会計なども狙われやすいため注意しなければなりません。
第2問も、第4問・第5問と同じく、まずは解法パターンをきちんと理解しておくことが大切です。
第1問の対策として基本的な仕訳の方法を理解したうえで、仕訳後の転記や計算書類の作成が第2問の重要な論点として出題されます。一つの問題として完結した独立型の総合問題として出題される可能性が高いので、計算書類の書き方など、普段時間がかかってなかなか手を付けられない分野ほど出題されます。
そのため、対策問題集を購入して、その問題を時間通りに解けるかどうかの練習を繰り返し行っておきましょう。
日商簿記試験2級の第3問では、連結会計に関する問題が出題されることが多くなっています。連結会計が出題されるようになってから、第3問はかなり難化しています。すでに説明したように、難化した結果として、受験者や指導者が困惑するほどです。
これを受けて、日本商工会議所は、試験後にホームページで公表している講評において、繰り返し「2級の試験範囲に即して問題を出題している」「連結会計の実務では実際に行われている」といった理由を述べています。
したがって、受験者が連結会計を勉強する際には、まずは連結会計の理論的な背景を踏まえておくことが必要です。連結会計は難易度が高いことから、とにかく手を動かして問題を解けるようにと準備する受験生が多いものの、日本商工会議所としては、そのような勉強方法を望んではいないようです。
だから、連結会計の実務を踏まえたうえで、まだ出題していない出題方法でも積極的に出題することが予想されます。
そのため、第3問では満点を狙うことはハナから諦めて、部分点を着実に得点していくという勉強方法が有効です。応用的な論点については諦め、連結会計の基礎的な手続きを理解しておくことが大切です。
連結会計の理論的な部分については、市販のテキストなどでは十分に説明されていないことも多いところです。したがって、大学教授や会計士などが執筆した財務会計の本などを一冊参考にして、基本的な連結会計の原理原則を理解しておきましょう。
そのうえで、基礎的な問題だけでも解けるようにしておけば、連結会計が第3問で出題されたとしても、部分点で合格ラインまで到達することができます。
もちろん、これは他の第1問、第2問、第4問、第5問できちんと得点することが前提条件です。これらの問題で得点できていないと、合格ラインに到達することができないので注意が必要です。
日商簿記試験2級は現在かなり難易度が高くなっています。そのため、合格ラインにのせるためにはきちんと戦略を練っておかなければなりません。特に、連結会計は何度が高い、新傾向の問題が出題される可能性もあり、多くの受験者が全く得点できないことも少なくありません。
しかし、工業簿記(第4問・第5問)については出題傾向もほとんど変わっていません。したがって、合格ラインに効率的に到達したい人は、まずは第4問・第5問対策として、工業簿記を完璧にして、その後、商業簿記の全範囲をきちんと勉強しておく戦略が有効です。
第3問以外の得点がかなり高ければ、仮に第3問がほとんど解けていなくとも、合格ラインにのせることができます。日商簿記試験2級では、このように、問題ごとにメリハリをつけて対策をすることが大切です。