経理の実務において、簿記検定のように電卓を片手に帳簿の作成や決算の処理を行うことはまずありません。導入された経理・会計ソフトを使って経理業務を行うため、会計知識がない状態からでも業務ができるのです。今回は、経理・会計ソフトの機能と、代表的な人気売れ筋ソフトをご紹介します。
経理・会計ソフトとは、それまで紙管理だった売掛、買掛、入金、出金、振替、といったお金の動きをシステム上で自動集計することで、簿記の知識がない方でも、入力さえ正確であれば決算までの業務がこなせるように開発されたソフトです。
それまでの経理業務は、各種台帳をそろえ、それぞれへの転記や、電卓などで計算が伴う作業が必要でした。個人事業主や小規模な企業でも経理知識がある人、もしくは会計事務所への委託が不可欠だったのです。
経理・会計ソフトの開発により、経営者自ら、また他の業務と経理業務に携わる方、そして経理業務の初心者でも経理業務がぐっと身近になりました。
入金と出金履歴を勘定科目を選んで仕訳しておけば、決算書や試算表も自動で集計されますので、会社の財務状況を好きなときに確認できます。
また、近年はサブスクのクラウドサービスも登場し、導入へのハードルも下がっただけでなく、コロナ禍におけるテレワークにも大いに活躍しているのです。
具体的に経理・会計ソフトでどのようなことができるのか、主な機能を見ていきましょう。ソフトごとに機能が違う場合もありますので、導入時にはよく確認してくださいね。
会計ソフトの根本的な機能です。各種帳簿・台帳に連携し、最終的に決算データともなる伝票入力を効率的に入力できる仕組みが備わっています。
勘定科目についても、学習機能があるものが多いため、最初に
最近では、金融機関やクレジットカード、電子マネーの情報と連携したり、レシートや領収証を撮影することで、数字の入力すら不要のソフトもあります。
さまざまな種類や目的ごとに存在する会計帳簿。手書きの時代は、それぞれの帳簿を手書きで転記していましたし、Excelの場合でもコピペなどの作業が必要でした。しかし、経理・会計ソフトの場合は、最初に入力した仕訳帳から連動して、それぞれの帳簿のフォーマットに合わせて自動的に記載・作成されるので、転記ミスなども生じません。
また、入力が日付順にならない場合でも、システムで自動的に日付順にソートして更新してくれます。
経理の帳簿をつけるのは、最終的には決算のため。会計ソフトを導入している場合は、貸借対照表や、損益計算書などの財務諸表についても帳簿の数字から自動的に作成してくれます。
経理業務は会社のお金にまつわる業務全てに渡ります。例えば従業員の給与を支払う元となる、勤怠管理や給与支払、年末調整、経費精算などのシステムについても、会計ソフトと連携が可能であれば、より業務をスムーズにおこなうことが可能です。
会計システムを使うことで、各種帳簿を自動作成できるため、確認したい時点で予算消化状況や経営分析などをおこなうことが可能です。
経理処理を行い、決算を終えたら納税の対応です。納税に必要な書式があらかじめ搭載されているため、申告もスムーズにおこなうことができます。
会計ソフトを使う大きな代表的なメリットとしてあげられるのが法改正の対応です。会計ソフトでは、法改正があり次第、アップデートによって税率や金額など自動で対応してくれます。仮にExcelなどで入力していたら、関数などの手作業での対応が必要ですし、ミスをするリスクが高いです。
他にも、e-Taxによる申告(電子申告)や電子帳簿保存法への対応なども、最適な形でアップデートしてくれます。
会計ソフト導入時に悩むのが、クラウド型かインストール(オンプレミス)型かということです。最近では、クラウド型がシェアを大きく伸ばしていますが、それぞれにメリット・デメリットがあります。特徴を踏まえた上で選ぶようにしましょう。
クラウド型の会計ソフトは、インストール不要です。インターネットを介してブラウザなどから利用できます。
クラウド型のソフトはサブスクリプション方式で、使用する間、月額料金で利用料を払うというプランです。初期費用がほとんど発生せず、月々の負担が平準化されるというメリットがあります。
また、無料体験などを用意しているソフトもあるので、使い勝手を確認してから導入できます。
クラウド型のポイントとしては、自前サーバーやセキュリティを用意する必要がないので、その分のコストも削減できます。
インターネット経由でのアクセスのため、IDさえ発行すれば、複数人で同時に、様々なデバイスからアクセスできるため、業務も効率化できます。
テレワークへの移行もしやすいこともあり、働き方改革とともにコロナ禍におけるテレワーク推進の時流に乗ってシェアを伸ばしています。
インストール型の会計ソフトは、PCもしくはサーバーにインストールして使うタイプのものです。購入時の初期費用はかかりますが、インストールしてしまえば、月額料金はかかりません。
気をつけたいのは、法改正対応において、バージョンアップを無償で行ってくれる場合と、有償で対応の場合があることです。
自前のPCやサーバーにインストールして使うことができるため、インターネット回線の有無や速度に関係なく処理ができるというメリットがあります。
外部回線を使わず、自社内のLANのみで作業を完結させたいという企業ニーズはまだ大きく、自社開発を含め、インストール型の会計ソフトを使う企業は依然高い割合で存在するため、経理業務のテレワークかが進まない一因となっているのです。
確かにセキュリティを考えると外部ネット環境を通すのはリスクがあるというのは一理あるのですが、インストール型のテレワークの場合、会計ソフトを導入したノートPCの持ち運びが必要となるため、それも物理的にリスクともいえます。
それでは、経理・会計ソフトの中で人気のソフトを紹介しましょう。一口に「会計ソフト」といっても、そのソフトでできる範囲の業務が異なります。(例えば請求書発行まで対応可能なソフトもあれば、オプションや別ソフトで提供しているソフトもあるなど)詳しくは各ソフトのWEBサイトを確認してみてくださいね。
出典:Money Forward クラウド会計|マネーフォワード
クラウド型の会計ソフトです。
特徴としては、銀行、クレジットカード、電子マネー、POSレジなどのデータを金融機関やカード情報と連携することで自動取り込み。また仕訳もAIを活用して自動仕訳を行ってくれます。
企業規模によってプランを選ぶことができ、年額35,760(月額2,980円)円~ではじめることが可能。1か月おためしの無料プランもあり、より複雑な会計についてはエンタープライズプランでカスタマイズ(要問い合わせ)もできます。
会計業務だけでなく、請求業務・経費精算・給与計算・勤怠管理・マイナンバー管理のシステムを展開。あわせて導入することでよりバックオフィス業務を効率化できます。
個人~中小企業向けに好評の「freee」。
簿記や経理の知識がなくても わかりやすくてすぐ使えるというのがコンセプトです。直感的なデザインとわかりやすい語句を使用することで、勘定科目などの知識がなくても仕訳を可能にしました。給与計算・マイナンバー管理などの機能連携もできます。
法人向けでは、ミニマムプラン1,980円/月~から利用可能です。お試しプランもあり、利用したいプランを無料で30日間お試しできます。「自動で経理」機能で人工科目が勘定科目を推測して入力してくれます。
出典:弥生会計|弥生
個人事業主~中小企業むけに幅広く導入されている「弥生会計」シリーズを展開しています。オンラインでクラウド対応しているほか、ソフトウェアをパッケージ販売もしているため、どちらで導入したい方のニーズにも対応が可能。
弥生会計のプランは、オンラインでお試しが1年間可能な「セルフプラン」(次年度は26,000円(税抜))や、初年度半額の「ベーシックプラン」(初年度15,000円/次年度30,000円)、インストールタイプでも44,000円(弥生会計21スタンダード ベーシックプラン付き)~と、お手頃感がある料金設定も魅力。
同シリーズでは、給与計算だけでなく、販売管理、顧客管理など営業向けのソフトもそろっているため、オフィス全体のシステムを弥生シリーズにしているという企業も少なくありません。
勘定奉行も弥生会計と同じく、以前より親しまれている会計ソフトウェアです。もとはパッケージ販売でしたが、クラウド型のソフトも契約できるようになりました。
経理初心者というよりは、経理のことをある程度わかっている経験者に向けて使い勝手を良くしています。もともとオンプレミスがメインであり、プロ向けに作り込んだシステムをクラウドにも導入しているのが売りです。
無料体験やライセンス体系・価格を確認したい場合は、相談フォームからの問い合わせとなっています。
会計ソフトはいち早くシステム化が進んだ分野であることから、いろいろなユーザーのニーズに合わせてソフトウェアが開発されています。
しかし、人気の会計ソフトだからといって自分にとって使い勝手が良いかというと、そうとは限りません。
会計ソフト導入前には、以下の点も考えて選ぶようにしましょう。