会計事務所を辞める理由は様々です。しかし、一度会計事務所を辞めて実務の現場を離れてしまえば、キャリアを一から考える必要があります。したがって、一度辞める前によく考えなければなりません。この記事では自分には会計事務所で働くのは向いていないと考える人も少し立ち止まって考えて欲しいことを3つ紹介します。
会計事務所という職場は、決して楽な職場ではありません。会計事務所にも様々な事務所があり、個人経営の会計事務所から、法人化されている会計事務所などもあります。特に、個人経営の会計事務所の場合、会計事務所の経営者(所長)の権限が強いことから、経営者の考え方が色濃く反映された職場もあります。そうした職場に合わない人は、会計事務所を辞めたいと思うことも多くなるはずです。会計や税務という仕事そのものは好きで続けたくても、働いている職場環境が嫌で辞めたいと考えている人は、すぐに転職を考えましょう。
会計事務所は日本に数多く存在していますが、そのほとんどが同じような仕事をしています。つまり、会計や税務の仕事は働く場所を問わず求められています。したがって、その会計事務所にこだわり続けなければならないという理由はありません。会計事務所で働いていた経験があれば、一般企業も経理人材として採用しやすく、それまでの経験も考慮されるので、高い給与水準での転職も期待することができます。
会計事務所を辞めたいときは、まずは、自分の市場価値がどれくらいなのかを事前に確認することが大切です。会計事務所の給与水準は決して高い水準にあるわけではありません。そのため、まずは転職エージェントなどを使って、業界内の給与水準を知ることが大切です。その給与水準と照らして、自身の会計事務所の給与水準がどの程度であるのかをきちんと確認してから転職を考えるようにすることが大切です。
「会計事務所を辞めたい」と考える理由として代表的なものを、ご紹介していきます。
一般に会計事務所を辞める理由として多いのが、思ったよりも激務であるということです。多くの会計事務所で仕事に対して税理士の数や会計士の数が不足しており、少ない人数で仕事を回さなければならないので、1人に仕事が集中する傾向にあります。
さらに会計事務所が激務になりやすい要因として、毎期毎期特定の期間に仕事が集中してしまうことも挙げられます。特に3月決算前後である1月~5月は繁忙期とされており、残業時間が他の月よりもかなり増え、休日出勤が発生するケースもあります。この時期のあまりの忙しさに「辞めたい」と考えてしまうことも多いようです。
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会計事務所の仕事そのものが単調で退屈、というのもよくある辞めたい理由の一つです。会計事務所では、記帳代行などといったルールに基づいてデータ入力をする作業が毎日続きます。もちろん、上述の決算業務のような1年に1回しか実施しない業務もありますが、ベースは毎日同じ業務の繰り返しです。
任されている業務の範囲によっては中々スキルアップをすることができず、辞めたいという感情に傾いていくようです。
会計事務所の平均年収について、直近で正確な統計データは発表されていないものの、平成16年に総務省が行ったサービス産業動向調査によると、約361万円でした。現在の最低賃金の上昇率などを踏まえると、現在の会計事務所の平均年収は450万円程度とみるのが妥当でしょう。この年収は令和4年の全給与所得者の平均年収である458万円とそこまで大きな乖離はありません。
ただし、会計事務所の仕事である税務顧問や巡回監査は専門性が高く、税理士の独占業務を行うには難易度の高い税理士試験に合格しなければならないため、仕事に対して割に合っていないと感じる人も多いのです。
また、会計事務所の約9割を占める従業員5人以下の零細会計事務所では、評価や昇給の基準が明確に定められていないことが多くいのも、納得のいかない給料を受け取ることに繋がりやすいでしょう。
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上記のような零細会計事務所では、代表の税理士の意思決定権が強く、社員はその税理士と相性が重要になってきます。なぜなら代表の性格と事務所全体の雰囲気がリンクしている可能性が非常に高いからです。
比較的閉鎖的な環境になってしまうため、雰囲気に馴染めずに辞めたいと感じる人も一定数いらっしゃいます。
上記だと比較的ネガティブな理由が多いようにも見受けられますが、「会計事務所で十分な経験を積めたから、独立開業のために辞めたい」という当人としてはポジティブな理由であることもあります。
税理士として独立するためには、税理士試験の合格に加えて2年以上の実務経験を積む必要があります。そのため、税理士を目指す多くの人が会計事務所で働き、税理士登録後に独立することが多いのです。
近年は税理士試験勉強をしながらの就業や、将来的な独立前提での就業を容認する会計事務所も増えているので、この理由の場合は円満に退職できるケースが多いです。
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このように、会計事務所を辞めたいと思う理由は様々です。
「辞めたいと思ったらすぐに辞める」という決断が必要なこともあるかもしれませんが、いわゆるジョブホッパーのようになると、転職回数が増えるたびに次の職場の選択肢が減ってしまうのも事実です。
まずは「辞めたい」と思う理由を解消できる手段が無いか、考えてみましょう。
専門性が高く、経営数値の管理を行うためミスが許されない会計事務所での仕事を担当できるようになるためには、スキルの習得が欠かせません。税法などの勉強が継続的に必要なため、つらさを感じることもあるかもしれません。
会計事務所で働く限り勉強を続けなければならないことは変わりありませんが、スキルアップや知識が付くことをモチベーションにできれば、前向きに仕事ができるでしょう。
例えば、「スキルアップしたらより高度な業務を任せられるかも」、「この仕事ができるようになれば収入が上がるかもしれない」といったモチベーションの作り方が可能になってきます。
とはいえ、現実問題として仕事にモチベーションを作れる人はそこまで多いとは思えません。そのような場合でも、休日や勤務時間外の時間を使ってできることにモチベーションを作るのもオススメです。
近年、「無趣味」の人や、休日をSNSや動画配信サービスの閲覧に費やす人が増えているとのニュースを目にする機会もあります。一方で、「推し活」やコロナ禍の反動で旅行する人も増えています。
もし趣味が無く、休日も無気力に過ごしてしまっているのであれば、趣味を見つけることで仕事以外の時間が充実し、仕事のやる気も上がりやすくなるでしょう。
上述したように会計事務所での仕事には繁忙期がありますが、その一方で閑散期と呼ばれる業務量の少ない時期もあります。そのような時期で月末を避ければ、長期休暇も取得しやすく、海外旅行などでリフレッシュすることもできるでしょう。
一人一人の「辞めたい」理由をそれぞれ見てみると、より繊細で多様なはずです。そんな悩みを解決する方法は、同じ職場で働く同僚が最も知っているでしょう。
同じ悩みを乗り越えた経験がある人もいるかも知れませんので、気心の知れた同僚に相談するのが、最も有効な解決策になる可能性もあるのです。
会計事務所を辞めたいと思っても、すぐに辞めてはいけません。会計事務所で働いた経験は、あなたのキャリアにとって無駄になることはないからです。会計事務所で働いていた経験は、高い専門性を持っていると評価されます。別の会計事務所に転職する場合でも、一般企業に転職する場合でも、仮に会計や税務と関わりのない違う職種に就くとしても、会計事務所で働いて得た経理や税務の知識は決して無駄になりません。
そのため、まずは会計事務所を辞める前に、自分の市場価値をチェックするようにしましょう。自分で自分の市場価値を見極めることは大変むずかしいことから、転職エージェントなどを利用するのがおすすめです。転職エージェントを利用すれば、様々な仕事を提示してもらうこともできますし、給与水準の高い仕事にジョブチェンジすることができる可能性もあります。したがって、辞める前にまずは自分の市場価値を確認して、転職の準備を始めるようにしましょう。
会計事務所を辞めることを決意する前に、あるいは、会計事務所から転職する前に次のことについては必ずチェックしておきましょう。これらが転職を考えるときの重要なポイントとなります。
まずは自身のキャリアについて考える必要があります。会計事務所で働いていた経験は、あなたのキャリアとなります。経理事務ができる。税務申告の補佐ができるなど、その能力は、別の会計事務所はもちろん、一般の会社でも活かすことができるものです。したがって、会計事務所を辞めるときには、自分のキャリアを考えて転職活動を考えることが大切です。今あるキャリアや能力をできるだけ活かせるように転職活動をした方が、今よりもよい職場環境のところで働ける可能性が高くなります。
会計事務所で働いていて辞める決意をしたということは、何かしらの理由があるはずです。その理由をきちんと明確にしておく必要があります。これは転職活動をする際にも重要です。なぜなら、転職を考えたときに必ず採用担当者が質問する内容であるからです。辞めた理由が曖昧だと、新しい職場でも「曖昧な理由で辞めてしまうのではないか?」と勘ぐられてしまい、転職活動が上手く行かないということも珍しくありません。したがって、なぜ会計事務所を辞めるのか、その理由を明確にしておく必要があります。
理由を明確にした際に、会計や税務という仕事そのものを嫌いになったわけでないならば、他の会計事務所に転職するというのも手段の一つです。たとえば、同じ会計事務所の同僚と馬が合わずに辞めたということであれば、別の会計事務所で働くときに、現在の職場の経験が自身のキャリアとして活かせるはずです。職場環境が問題で辞めていることを、転職先の採用担当者も悪く評価することはありません。
転職を考える際には、きちんと業界を明確にすることが大切です。なぜなら、業界によってそこで実際に行われている実務には大きく異なるからです。同じ業務であっても、業界が異なれば定着している実務が異なることもあります。したがって、なぜ自分はその業界に行くのかをきちんと明確にするようにしましょう。転職前にきちんと業界について理解しておけば、転職後も即戦力として活躍することができるようになります。自分に合っている業界、不向きの業界というのもあるでしょう。したがって、転職活動を始める前に、自分の行きたい業界についてきちんと調べておくことが大切です。
どんなに喧嘩別れのように今の職場を辞めることになったとしても、いきなり辞表を叩きつけるようなことをしてはいけません。もし自分が同じ業界への転職を考えているなら尚更です。会計事務所の業界は思っている以上に狭い業界なので、別の会計事務所の事情なども筒抜けとなっていることも多く、自分の転職に不利に働く可能性があるからです。
ここでは、そんな会計事務所を辞めると決心した際に円満に進められる流れについて、ご紹介します。
「退職願」は会社へ退職を申し出るための書類です。
口頭で申請することも可能ですが、確実に証拠として残すためにも、退職願を提出することがオススメです。企業によってフォーマットがあることもありますが、もし無いとしても「○○年〇月〇日をもって退職いたしたく」と退職希望の日にちと共に退職の意向を記載する必要があります。具体的な日にちについてはここに記載しても変更は可能ですので、まずは希望を出したうえで事務所側と調整しましょう。
法律上は「退職希望日の2週間前までに退職の意志を伝えれば問題ない」とされています。ですので、辞める予定日の2週間前までに退職願を提出するようにしましょう。ただし、業務の引き継ぎなども発生するケースがありますので、可能であれば1か月前までに伝えられるとベストです。
円満に退職するために、業務の次の担当者への引き継ぎや同僚・代表先生への挨拶は必ずするようにしましょう。また、クライアントの担当をしている場合は、そのクライアントへの挨拶も忘れないようにしましょう。挨拶をせずに急に担当者が変わると所属していた会計事務所との関係悪化へと繋がり、さらにそのことであなた自身の業界内でも評判も落ちてしまう可能性があるからです。
先でも少し触れたように会計事務所でのキャリアは幅広い職場で活かすことができます。会計事務所以外だと一般企業の経理職との親和性が高いです。なぜなら、大まかに言うと経理職が行うべき仕事を会計事務所が代行しているからです。他にもコンサルティングファームやM&A仲介会社などの転職先が代表的といえます。
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会計事務所を辞めることをためらう必要はありません。しかし、辞める前にきちんと戦略を練って転職活動をすることが大切です。以前の職場での経験は、あなたのキャリアの一部です。したがって、どんなに嫌であなたがその会計事務所を辞めていても、それを下積みにして次のステップに進んでいくことになります。だからこそ、会計事務所を辞める場合には、よく事前に考えるようにすべきなのです。
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