証券会社に入社後、税理士法人や投資顧問会社などに勤務した税理士の竹田清香さん。フルタイムで働きつつ、子育てをしながら難関の税理士試験を突破しました。現在も税理士法人で活躍中の竹田清香さんに、ママさんとして税理士試験を突破した秘訣やキャリアプランニング、働き方、今後の展望などについて伺いました。
【ご経歴】
2005年 | 日本福祉大学卒業 |
2005年 | 都市銀行系証券会社へ入社 |
2010年 | 税理士試験の勉強を開始 |
2013年 | 税理士法人へ転職 |
2014年 | 投資顧問会社へ転職 |
2018年 | 税理士法人アイユーコンサルティングへ転職 |
2019年 | 税理士試験合格 |
―学生時代のことについて教えてください。
もともとは社会福祉士を目指していたので、日本福祉大学に入学しました。そこでは障がいを持つ子どもたちの親御さんとお話をする機会が多かったのですが、自分が亡くなったあとのお金のことや、今後の経済面での悩みを抱えていることが非常に多いことに気づきました。そういった問題を解決するためには、介護の仕事よりも、お金の相談に乗るなど経済面でのサポートを行ったほうが役立つのではという思いが芽生え、将来は資産運用に関わる仕事をしたいと考えるようになりました。そこで大学2年生の時にFP2級を取得し、その他に簿記などの勉強を始めました。
―卒業後は銀行系の証券会社に就職されます。そのときの動機はどのようなものだったのでしょう?
経済面でのライフプランニングに関わりたいと就職活動を行った結果、銀行と証券会社から内定を頂くことができました。どちらにしようかと考えたとき、証券会社の方がリスク商品を扱う面で、より難易度が高い内容の業務に触れることができると思い、証券会社に入社を決めました。
―証券会社ではどのような業務を担当されましたか?
最初は支店営業で、その後本部に異動になり、プライベートウエルスマネジメントとして資産家への資産運用業務を行いました。主なお客様は、個人の方と中小企業の社長さんです。
その中のプライベートバンキング業務において、中堅企業オーナーへの事業承継対策などの業務に携わったり、総合型の税理士法人と一緒に仕事をする機会があり、クライアントに直接喜んでもらえるという点で税理士という仕事に興味を持つようになりました。
―証券会社から税理士法人、そして投資顧問会社にご転職。ここではどのような経緯があったのでしょうか。
税理士を目指そうと考えたとき、勉強に打ち込むために新卒で入社した証券会社を退職することに決めました。5年間勤務して満足感もあり、悩むことはなかったです。試験勉強に専念して勉強をする中で、当時予備校で事務所見学会というものがありました。そこで所長先生の話や事業内容を伺い魅力を感じ、簿記論と財務諸表論の2科目を合格した後に、最初の税理士法人への入社を決めました。そこでは、法人税法と消費税法の勉強を続けながら働いていました。
その後、より専門性を磨きたいと考えていたときに、転職エージェントから紹介を受けたのが投資顧問会社でした。SPC(特定目的会社)を数多く保有している会社で、高度な税務や難易度の高い仕事ができるということが魅力でした。
事業会社の経理業務は初めての経験だったのですが、税理士法人での経験を活かすこともできました。そこでは財務経理を担当していました。
税理士法人で働いていたときは、出来上がった数字の確認が多く、実際のお金の動きに対して判断することは少なかったです。しかし、財務の仕事の場合はそういったお金の動きに関する判断機会に触れることが多く、全く違いました。その会社では、6億から10億程度の不動産の売買を行う場合でも、不動産購入前に、どのSPCで買うかといった検討を行うのですが、そういったものに関われるのもいい経験になりました。また、入社したときは知らなかったのですが、その会社が実は上場直前期で、実際に入社半年後に上場するなど様々な経験をすることができました。
―投資顧問会社で働いていたときも税理士試験の勉強は続けていらっしゃったのですか?
はい、継続して勉強を続けていました。ただ、実はそのときは結婚、出産など、私自身のライフステージが大きく変化した場面でもありました。仕事もフルタイムで、税理士試験の勉強だけでなく、入社したばかりで仕事の勉強もしなければならないし、家事や育児のための時間を確保する必要もありました。
―そういった大変な状況の中で、どのように試験勉強を進められたのでしょうか?
平日は朝4時に起床して、手帳にその日のタスクを列挙して、終わったら消す。朝は夫に子どもを保育園に連れて行ってもらい、自分は朝4時半には自転車を漕いで会社に向かい、日が昇る前ぐらいから会社で勉強していました。夜は子供が寝てから勉強の時間ですが、基本的に朝に全てやるスタンスだったので、夜は問題集を解くというよりも、その日の反省と、朝やったものを見返すといった復習が中心でした。夜は10時や11時には寝てしまうので、睡眠時間が足らないと感じることはありませんでした。
あとは、移動中とか入浴中も勉強の時間にあてました。テキストを読めないときでも時間が空けば理論を思い出しながら、一人で呟いていたり。
あと、重要なのは専門学校の模擬試験の点数が悪くても落ち込まない、気にしすぎないといったことですね。最後は自分を信じることが合格につながったと思います。
家事や育児は自分だけで抱え込まずに夫婦でコミュニケーションを取りながら、ただ、私はあまり苦労を感じない人間なので、大変と思うことは少なかったように思います。
(夫の協力のお陰かも知れませんが。)
―税理士試験の科目選択はどのように決めましたか?
判断の基準は、実務に使えるかどうかということでした。証券会社を退職後、2年ほど専念をして、簿記論と財務諸表論を取りました。その後、勤務していた税理士法人が個人よりも企業がお客様だったということもあり、法人税法と消費税を勉強しました。
所得税法と法人税法では、対企業という意味で法人税法を選ぶ人が多いと思います。法人税法を勉強したあと、そのままの流れで所得税法を取る人もいらっしゃいますが、これらの科目はボリュームが多い分、丸暗記ではなく、理解することが必要です。逆に、丸暗記しなければならない科目よりも、やった分だけ結果は出るし、実務でも役立つと思います。
―税理士受験生に向けて一言お願いします!
税理士試験というものは、科目合格が認められる試験です。試験に挑戦する中で、ライフステージの変化というものがあるかもしれませんが、そんな中でもあきらめず、続けていればいつかは必ず結果が出るものだと思います。
誰もが自分の人生の経営者です。税理士になると決めたのであれば、決めたときの想いを忘れずに目標に突き進んで欲しいと思います。
―現在は税理士法人アイユーコンサルティングで活躍しておられます。入社の経緯を教えてください。
税理士試験の勉強をしながら投資顧問会社で働いていたのですが、エンドユーザーの顔が見えないと思ったことが税理士法人への入社を考えるきっかけのひとつになりました。
投資顧問会社の場合、どうしても対企業か対投資家、あるいは会社の中の話になってしまいがちで、仕事で会える人が限定的になってしまいます。もともと、税理士になって、人の喜びのために働きたいと思っていたのですが、会社の財務経理を行っていると、そういった方々の喜びを実感する仕事はできないので、その部分に物足りなさや寂しさを感じていました。
そこで、大学院にいたときの友人の紹介で現職の税理士法人アイユーコンサルティングに入社を決めました。2013年創業の事務所で、まだまだこれから成長を目指していくという点も魅力に感じました。
税理士法人アイユーコンサルティングオフィス風景①
―アイユーコンサルティングでの業務内容や事務所の特徴、強みはどのような部分でしょうか。
資産税総合事務所として、高付加価値サービスの創造・提供を理念とし400社を超える中小企業の事業承継のサポートを提案実行しています。最大の強みは相続・事業継承の分野です。
資産税案件のプロとして、お客様の大切な財産を承継し永続させるお手伝いを行うことはもちろん、財務改善など、財務コンサルタント的な立場で、通常の顧問業務より付加価値を高めるとともに、承継後の成長支援業務にも力を入れています。
―担当している業務や、1日のスケジュールはどのようなものでしょうか?
現在、私が担当しているのは相続税申告や事業継承における自社株対策などの資産税業務が6割、顧問の法人先への訪問や月次決算等の業務が4割といった感じです。担当企業は全部で15社程度ですね。
繁忙期か閑散期かなどによっても異なりますが、一日の平均的なスケジュールは、まず9時に出社。その日の予定やメールを確認します。その後、アポイントがあるときには2時間程度お客さんのところを訪問して面談を行い、それから会社に戻って顧問先の問い合わせ対応や、手掛けている案件についてのデータをチェック。子どものお迎えの時間がありますので、18時には退社します。
―子育てをしながらフルタイムで働くのは大変なことが多いと思いますが、どのような働き方の工夫をされているのでしょうか?
案件の管理をしっかりすれば、小さい子供がいても支障なく業務を行うことができると思います。特に、案件が期日に間に合わない可能性があればサポートを依頼するなど、周囲とのコミュニケーションをしっかり取りつつ、業務を可視化していくことが重要ですね。
現在は、テレワークやフレックス勤務など柔軟な働き方が認められている時代なので、やるべきことをしっかりやれば、家庭と仕事の両立は可能だと考えています。現在勤務している税理士法人は時短勤務やフレックス勤務もあるので、私だけでなく子育て中の方もいらっしゃいます。
―今後はどんな税理士になりたいかなど、将来のビジョンについて教えてください。また、これからはどのような税理士が活躍するとお考えでしょうか?
クライアントの課題解決の一翼を担い、自分と関わる人が幸せになれるような税理士になりたいと思います。私は「税理士として必要とされる人」というよりも、どちらかといえば「コンサルタントとして必要で、その人が税理士だった」という立ち位置でいたいですね。税理士になるというのはあくまでも目的ではなく手段。税理士であることが重要なのではなく、税理士として何ができるかということが重要だと考えています。
現在は税理士業もIT化が進み、いずれ衰退していく産業であると揶揄されることもあります。確かに、今までのような通常の税理士業務は減少する部分もありますが、その状況を逆手に取ることが必要です。ITを活用し、専門家でしかできないコンサルティングや課題解決力を武器に、クラアントから頼られる税理士はより一層、活躍していくのではないでしょうか。
税理士法人アイユーコンサルティングオフィス風景②
―竹田さんが考える仕事のやりがいや、目標を教えてください。
私自身は目の前にある課題や問題を解決していく過程に対して、仕事のやりがいや面白さを感じます。
相続や遺産整理でも、解決しなければならない問題や資料がたくさんあって、困っているお客様がいらっしゃるとすれば、問題をひとつずつ解決して、混乱している状況を修復して整えることが必要です。そういった状態にできるまで、コンサルティングをすることに対し、やりがいを感じます。
もちろん、無事に問題が解決して、お客様から感謝でいただくことも仕事の喜びのひとつではあります。しかし、言い方を変えれば、与えられた仕事をきっちりと遂行することはプロフェッショナルとしては当然のことです。感謝を対価にはしたくないという気持ちがありますね。
また、相続問題で悩む人を少しでも減らしたいというのも考えています。相続という場面では、相続人同士が争いになることもしばしばです。例えば、遺産分割で揉めて、分割したら利用価値がなくなってしまいそうな土地でも、最終的には2つに分けて解決しなければならないという状況も起こり得ます。
ただ、そういう争いになる前に、遺言書や第三者に入ってもらうなど、争いを避けて解決する対策はいくらでもあります。その対策のひとつとなるのが遺言書です。なので「遺言書」というものを、もっと当たり前のものにしていきたいです。
―本日はお話を聞かせていただきありがとうございました。
今回インタビューさせていただいた税理士竹田清香さんの
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