有価証券担保とは、株式や債権といった有価証券を担保にして融資を受ける方法をいいます。ゴルフ会員権などを担保にできるケースもあります。この記事では、有価証券担保の法律上の意味について解説するとともに、実務上の扱いについて簡単にわかりやすく解説いたします。ぜひ参考にしてみてください。
有価証券担保とは、「お金を借りるときに、有価証券を担保として差し出すこと」をいいます。
「担保に差し出す」とは、簡単に言えば「もしお金を返済できないときには、この有価証券の所有権を譲ります」と約束することです。
お金を貸す側(金融機関など)としては、万が一返済が滞ることがあれば、担保として差し出されたものを売却して返済に当てることができます。
そのため、担保として有価証券の評価額の範囲内であれば、低い貸付利率で融資を実行してくれる可能性が高くなるでしょう。
ここでいう有価証券とは、上場株式や国債といったものだけでなく、手形やゴルフ会員権といったようなものも含まれます。
仕組みとしては住宅ローン(不動産に担保権を設定してお金を借りる)と同様ですが、有価証券は不動産とは違って価値が上下しやすいという特徴があることに注意が必要です。
担保価値が融資金額を大幅に下回ってしまったような場合には、融資の一部返済を求められたり、追加の担保提供を求められたりと入ったことが生じることを理解しておかなくてはなりません。
有価証券担保には、法律上どのような特徴があるのかを理解しておきましょう。
法律問題を考える上で、重要なポイントとしては以下のようなことが挙げられます。
・担保設定の方法
・取引当事者以外(第三者)への対抗要件
それぞれのポイントについて、順番に解説していきます。
不動産の場合には抵当権が用いられるのが一般的ですが、有価証券担保の担保設定の方法は、質権や譲渡担保といった方法が選択されることが多いです。
質権とは、担保物の所有権は債務者に残したまま、占有権だけを債権者に移転させる方法です。有価証券の権利を表象する物を債権者に渡すものの、その所有者は債務者のままであるというかたちをとります。
譲渡担保とは、担保物は債務者が占有したまま、所有権をいったん債権者に移転させ、債務返済を条件として債務者に所有権を返還するというかたちです。
譲渡担保を使えば、不動産担保融資における抵当権設定と同じように、債務者が担保物を手元においたまま融資を受けることが可能になりますが、債権者の側から見るとややリスクが大きくなります。
一般的には、質権設定のかたちで有価証券担保が行われるケースが多いでしょう。
ただし、上場株式などは権利を表象する株券の発行は行わないのが原則ですから、証券会社の口座残高の移動だけで質権を設定し、同じく証券会社の口座残高に預金を充当する形で融資を実行する形が一般的になっています。
法律上、取引当事者以外の人(第三者)に、当事者間で担保権が設定されていることを主張することを、「対抗要件を備える」といった言い方をします。
不動産の担保融資の場合は、法務局で登記を行うことが対抗要件になりますが、有価証券担保は、不動産担保などと違って登記という対抗要件を備えることができません。
そのため、担保対象物の占有をもって第三者への対抗要件とする必要があります。
例えば、ゴルフ会員権を担保とする融資なら、そのゴルフ会員権を債権者が現に占有していることをもって、第三者に対して質権設定の事実を主張することになります。
有価証券担保は、証券会社がローン申し込みの窓口になっていることが多いです。
以下では、有価証券担保を利用して資金調達を行う際の、実務上の扱いについてみておきましょう。
融資の担保として差し出した有価証券の評価額は常に変動する可能性があります。
そのため、「担保である有価証券の評価額<融資金額」となってしまった場合には、債権者側から融資金の一部返済や、別の担保を差し出すよう求められる可能性があります。
例えば、日本証券金融の有価証券担保(証券担保ローン・セレクト)では、担保とした有価証券の評価額が借入れ金額の70%を下回ってしまった場合には、一部返済または追加の担保提供が必要という扱いになっています。
質権の設定によって有価証券担保を行った場合には、その有価証券の所有権者は債務者ということになります。
そのため、株式から得られる配当金や議決権行使の権限は、そのまま債務者が行うことが認められます。
今回は、有価証券担保の意味や実務上の取り扱いのポイントについて解説いたしました。
有価証券担保を使えば、保有する株式や国債、ゴルフ会員権といった資産を活用して資金調達を行うことが可能になります。
その一方で、担保とする有価証券の評価額は変化しやすく、基本的には短期間での融資返済を前提とせざるを得ないというデメリットがあります。
有価証券担保の利用を検討する際には、担保価値の低下によって融資金の一部返済を求められたり、追加の担保提供を求められたりといった事態が生じることもあらかじめ理解しておく必要があるでしょう。