ライフイベントによって働き方を考えなくてはならない女性にとって、一生モノの職は非常に重要です。仕事のスキルを身につけるだけでなく、プライベートの充実も大事にしたい方におすすめしたいのが経理職。今回は、経理のキャリアプランとともに、経理が女性向きである理由についても解説します。
経理職としてのキャリアプランを考えるにあたって、そもそも経理がどんな仕事をしているのかを確認していきましょう。
経理職は、その企業の経済活動に関わるお金と取引の流れを記録・管理する役割を果たしています。日々の売上や費用を処理して記帳するところが最も基本的な日次業務であり、月次決算や年次決算がより専門性の高い業務にあたります。さらに、監査対応や開示業務など社内だけでなく社外にも影響を与える業務を担当するケースもあります。
経理のキャリアプランを考えるにあたって、今の会社で勤め上げるか、他の企業に転職するか、独立するかのいずれかを選ぶことになります。
そしてその中でどんな役割を果たしたいのかによって、それまでの過程も変わってきます。上述した働き方による3分類ごとに紹介していきます。
経理として働いている勤務先でキャリアを積んでいきたいという方は、その企業において経理業務の経験を積むのは勿論ですが、その上で経理ゼネラリストや経理スペシャリストを目指していくのが一般的なキャリアプランです。
経理ゼネラリストは経理だけにとどまらず、人事や総務、営業、マーケティングなど幅広い分野のキャリアや知識を持っている人のことを指します。経営部長やIR担当やCFOなど、会社の心臓部としての活躍をすることができます。
ご説明したように、様々な分野での経験が必要なので、長期的に就業しようとしている人のキャリアプランとしてマッチしています。ただし、幅広い経験を積むには希望の部署に配属してもらえるように、それぞれの部署で結果を残す必要があります。ここでは経理ゼネラリストとして目指せる職種を、いくつか紹介します。
年次決算までこなし、経営にまつわる数字が扱えるようになることで、会社の経営企画部門に参画する道も開けてきます。
会社経営のための事業計画を立案する部門のため、予算編成には会計・経理の知識だけでなくマーケティング分析などの能力や、会社によっては英語力が求められる場合もあるでしょう。
投資家向けの情報を作成するIR(Investor Relations:インベスター・リレーションズ)は、株主や投資家向けに経営状態や財務状況などを広報したり、株主運営に携わる職種です。
会社によっては、総務部や広報部や経理部など、部門が異なることも多いです。
会社のステークホルダーの方たちと関わる職種なだけに、会計知識に加えて高いコミュニケーション能力が求められます。
経理担当の「あがり」ともいえるポジションでしょう。
経理担当から経理部門の管理職へ、そして財務担当役員からCFO(最高財務責任者)というのが王道のキャリアアップです。
一度CFOを経験すれば、次の転職でもCFOであることが多く、少しずつ企業をランクアップしていくことで、役員報酬もぐんとアップできるでしょう。
経理スペシャリストはその名の通り、経理業務の専門性を極めた人のことを指します。ご紹介するキャリアプランの中では、これを目指すのが最も王道のプランと言えるでしょう。
同じ会社の経理部門で昇格していくことで、管理職を狙うことも十分可能です。また1社で働き続けることで、継続的な昇給も見込めますので、将来的には高年収も見込めます。
他のキャリアプランを目指すにしても、幅広い経理知識を身につけることは基本です。簿記検定などスキルアップのための資格も取得しておくことで、その後のキャリアの幅も広がるでしょう。
経理はどの企業でも必要な業務なので、他の企業に転職しようとしても十分にニーズがあります。転職先として人気なのは、大規模な企業や外資系企業ですので、それぞれを目指すキャリアプランを紹介していきます。
後述しますが、経理は企業の規模感によって関われる業務が変わってきます。もちろん中小企業でしかできない仕事もありますが、大企業ならではの業務や、責任感の大きさに魅力を感じる方も多くいらっしゃいます。また、一般的には規模感が大きい企業は年収水準が高い傾向にありますので、年収アップを目指して大企業に転職するキャリアプランを描く方もいます。
大企業に転職するとしても基本となる業務は共通していますので、今の職場で着実に経理のスキルを磨いていくことがキャリアプランの実現に繋がるでしょう。
経理職としてグローバルに活躍したいという方に人気の外資系企業は、実力ベースの評価なので年齢関係なく高い役職を目指すことができます。
ただし実力がなければ淘汰されるリスクと隣り合わせでもあります。また、英語力を高め、BATICやIFRS検定などの国際会計基準に関する資格を取得することも採用に繋がりやすいでしょう。
外資系企業には、経営幹部の配下にFP&A(財務計画・分析)とよばれる部門があり、重要なポジションと位置付けられています。
FP&A部門を経験すると、CFOへのキャリアパスにも繋がります。
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先述した経理スペシャリストになるなど経理の実務経験を積み、その経験を活かして独立するという選択肢もあります。もちろん経理代行などをフリーランスで行うこともできますが、公認会計士や税理士など、税務・会計業務に活かせる資格を取得して、会計事務所などを開業する方もいらっしゃいます。
経理業務との関連性が高いとはいえ、難関資格ではあるので、かなりの勉強時間が必要です。働きながら取得を目指す方は、仕事のキャリアパスだけでなく、資格取得に向けた勉強スケジュールも数年単位で策定しなければなりません。
経理は会社の規模によって携われる業務がある程度決まってきます。今働いている企業の規模感と照らし合わすのはもちろん、転職を考えている場合はその転職先の規模感も意識しておく必要があるでしょう。
中小企業は、経理担当が他の業務を兼任していることが多く、経理の他にも総務や人事等の仕事に携わることも多いです。
専門分野に特化するよりも、様々なスキルを身につけ多分野で活躍したい方にとっては、中小企業での出世を目指すキャリアがおすすめです。
ベンチャー企業では会社の急速な成長とともに短い期間でスキルアップを図ることができる上、上場準備の経験など成熟した企業では経験しづらい業務に携わることができる可能性が高いです。
ベンチャー企業で実務経験を積み自身の市場価値を上げた上で、その経験が活かせる企業へ転職するということも考えられるでしょう。
大手上場企業の場合、社内での昇進を目指すことが一般的となります。
経理スタッフから主任、課長、部長へと段階を踏んでいき、最終的にCFOを目指す道があります。
もちろん、入社すれば自動的に出世できるわけではないので努力と実行力が必要となります。
中小企業より大企業が良いとは一概には言い切れませんが、経理としての業務の幅を広げるために中小企業で実務経験を身につけ大企業に転職するということもできます。
経理に必要な商業簿記の知識を測る資格試験です。経理の募集上でよく求められるスキル水準としては日商簿記2級以上となります。2級では原価計算という製造業等で必要な簿記の知識が出題範囲に含まれています。そのため、決算処理等でより実務に近い内容を網羅しているという理由から、最低限のスキルとして2級レベルを求める企業は多いです。
※日商簿記検定と似た資格に「全国商業高校協会主催の簿記実務検定視点(全商簿記)」があります。この場合、全商簿記1級が日商簿記2級と同程度のレベルにあり、企業側からは評価されます。
税理士の仕事は税金に関する業務です。国家資格ですのでハードルはありますが、税務のスペシャリストとしての仕事もプラスαで行うことができます。企業内経理では、税務書類の作成(税務官公署に対して各種申告書、申請書、請求書、そして不服王仕立てなどの提出書類等を作成すること)等を行うことがあります。特に企業規模が大きくなればなるほど税務業務は複雑化します。社内に税理士がいれば、経理業務に限らず税務に関する業務全般をお任せすることができるため、事業会社で税理士というポジションもひとつの資格優位があります。
公認会計士試験も税理士同様に国家資格ですが、税理士以上に難関な資格です。ただし、税理士と比較して会計業務(上場等における複雑な会計や監査業務)を独占的に行うことができるため、規模の大きい企業や今後上場を目指す企業にとっては、公認会計士が経理業にも携わってくれるのは、とてもニーズがあります。
経済産業省の経理・財務部門の人材育成事業によってはじまった検定試験です。事件内容としては「債権・債務の管理、連結決算(本社・子会社等を合わせた決算)」「税務申告業務」など、より実践的な知識を問う内容になります。資金管理等財務分野も試験範囲に含まれているため、実務経験がない方でも、実務経験に匹敵する知識レベルはあると証明することができます。
公認会計士として必要な会計能力、財務、税務の能力があるという事を証明するための資格です。主催は米国公認会計士協会ですが、アメリカの資格でありながら日本でも受験ができるようになったことから、日本での人気が高い資格です。
英語での会計能力を測る試験が国際会計検定(BATIC)です。
外資系企業に転職したいと考えている方は必ず持っておかなければならない資格と言っていいでしょう。
こちらは合否判定ではなく、TOEICのようにスコアで結果が出るため、継続してスキルアップ
さて、ここで経理はどうして女性に向いていると言われるかを改めて振り返ってみましょう。
経理部は比較的女性が多い職場で、4~5割程度女性というところがほとんどです。
ルーティンワークも多いので、派遣・契約社員が多くいる傾向があることから、社員数の比率としては少ないかもしれません。しかし、女性の数が多いと言うことは、女性にとって働きやすい環境が作りやすいということなのです。
「経理の人は怖い」「女性ばかりでギスギスしてそう」というのは偏見です。
人間関係の良くない職場は部門に限りません。また、経理部は中に入ってみると、担当業務が区分けされていることが多いため、他の人に煩わされることは意外と少ないのです。
みんなでワイワイという形ではないため、仕事は黙って静かにしたい人には居心地の良い職場でしょう。
新型コロナウイルス感染症の影響で、在宅勤務が認められることが多くなりましたが、経理は在宅でもやりやすい職種に該当します。
ほとんどの会社ではすでに経理業務はシステム化され、ネット環境があればシステムにアクセスできるからです。
ただし、会社によっては、紙の書類を経理処理に使っていたり、経理情報は重要機密のためセキュリティの関係で在宅勤務ができないということもあります。
しかし、バックオフィス業務が在宅勤務に移行するのは時間の問題ではないでしょうか。
経理部は繁忙期が決まっていますので、年間スケジュールの立てやすい職種です。
また、自分に割り当てられた仕事を期日までに終わらせられるかどうかが重要なので、業務のコントロールがしやすいという特徴があります。
そのため、有休が取りやすいことはもちろん、子供の急な発熱などで仕事を中断してお迎えに行かないといけなくなっても、次の日にカバーも可能です。
繁忙期には配偶者や両親などに事前にヘルプやフォローをお願いしておくこともできます。
また、女性が多い職場は、産休・育休が取りやすいですし、周りに同じ状況の人がいたりするので、復帰後も何かと心強い環境です。
経理部では、ぜひ専門スキルを身につけてランクアップできるように業務の幅を広げておきましょう。
税制改革やシステム化があっても、決算における根本的な方法は変わりません。
出産前までに専門知識を身につける機会に恵まれれば、出産後に時短勤務を経てからフルタイムに戻ったときも、いわゆるマミートラック(出世コースからはずれた働き方をさせられること)を最短期間に抑えることができます。
また、専門スキルを身につけておくことで、家族の事情などで退職せざるを得ないときなども転職や復帰もやりやすいです。
最近であれば、自宅でクラウド環境で経理をするという働き方もあります。
いずれにしても、専門性が高い経理業務のスキルを身につけておくことは、自分の働き方の可能性を広げることになるのです。
人生のターニングポイントにおいて選択を迫られることが多い女性には、「手に職」という意味でぜひ身につけておいてほしいスキルといえます。
女性向けキャリアという意味で、とてもおすすめの経理職ですが、どんな職種にも向き不向きがあります。ここでは「経理職の適性があると思われる人」について解説しますので「私大丈夫かも」と思われたら、ぜひ経理職を目指してみてくださいね。
経理職は基本的に外出しません。ずっと屋内でPC画面とにらめっこであることが多いです。社内ミーティングが時折あるくらいです。それ以外はあまり話す事もありません。
外出するのが好きだったり、出張がしたい、人と話したいというタイプの人には辛いと思われます。反対に、仕事は集中して静かな環境でしたいという人にはむいている業種です。
経理は、業務の勉強もそうですが、資格があるとよりキャリアプランを形成しやすくなります。一番のおすすめは簿記検定ですが、2級の難しさはうなぎ登りで、かなりしっかり勉強しないと合格できません。
また、経理のプロを目指すならぜひ取得したい簿記1級も、合格率は10%未満という超難関資格。勉強が好きな人じゃないと難しいでしょう。
経理はどの会社にもある非常に重要な仕事です。経理がいない会社は存続できません。そのぶん責任重大です。
決められた業務を期日までにミスなく正確にやり遂げる必要があります。責任感が強く、自分が引き受けたことはしっかりと最後までやり抜く人、経理がむいているのはそういう人であるといえるでしょう。
経理のキャリアプランを考える際、いくつか気をつけておくべきことがあります。以下でご紹介しますので、これから作ろうとしている方はご留意ください。
キャリアプランとはあくまで理想であり、最もスムーズにキャリアを形成できた時のモデルケースです。なので、想定通りのポジションに配属されなかったり、取りたい資格を予定通りに取得できないといったケースは常に起こり得ます。
これらをイレギュラーとして悲観することなく、ある程度ストレッチを利かせたプランに変更するなど、柔軟に対応するのが良いでしょう。
経理のスキルをある程度積んだら、ゼネラリストとスペシャリストのどちらになりたいかを決める必要があります。どちらがよいというものはありませんが、各々で積むべきキャリアが異なってきます。
ですのでこの決断をするにあたって向いているかどうかや、やりがいに感じるかどうかなどを踏まえて後悔しない判断をしなくてはなりません。
ご紹介したように、経理職はメリットが多く幅広いキャリアを展開できる職種ですが、ルーティンワークが多いことや、営業のように明確な数字で評価されないことなどに対して、ネガティブに感じる方も少なくありません。
そのような方は無理矢理に経理職のキャリアプランを考えずに、他の職種にキャリアチェンジするのもよいでしょう。数字に強いという特徴が、転職活動においてもある程度、有利に働く可能性も高いです。
今回は経理のキャリアプランについて解説しました。地味な仕事と思われがちな経理ですが、実は非常に重要で、働きがいもキャリアの広げがいもある職種です。
専門スキルを身につけることで、ライフイベントに応じて働き方を変えたり、雇用だけじゃなく独立も目指すことができます。
様々なキャリアプランを実現させるためには、まずは目の前の業務にしっかりと取り組んで、経理職としてのステップアップを積むことが重要。業務が固定されてしまい、どうしても自分の希望職種に就けない場合は、転職なども視野に入れて考えてみましょう。