最近はフリーランスだけでなく副業で目にすることも多い「業務委託契約」。業務委託契約ですが、実は法律上は「準委任契約」「請負契約」のどちらかになります。
契約を締結するときはどちらであるのかを事前に確認しておきましょう。今回は、準委任契約について解説します。
業務委託とは、自社の社員ではカバーできない、あるいは予算が折り合わない業務を、別の法人や個人などの第三者に外注することをいいます。
業務委託をおこなう業務は年々広がっており、最近ではWebのコンテンツ作成やシステム開発のプログラマーなどを外注することを多く見られるようになりました。
業務委託は、あくまで業務のみの外注となるため、雇用契約とは異なります。
例えば、上司から命令されて行う指揮命令の権限はなく、あくまで業務のみの受注ですから、依頼元の就業規則などの規制(就業時間や服務規程など)を受けることはありません。
つまり、業務の進め方や労働時間、残業や休日出勤などに関して指示を行えないのが原則です。その代わり、雇用されていないので労働基準法や労働契約法上の保護の対象にならないということが大きな特徴です。
しかし、業務委託契約を締結しているはずなのに、まるで雇用契約のある労働者と同じ扱いとなっていたというトラブルも見受けられます。
業務委託の締結時は、締結内容が実態に即しているか、事前に確認することが重要です。
業務委託契約は、法律上は「請負契約」「準委任契約」のどちらかになります。
準委任契約は、期間中の業務プロセスに対して報酬が生じる契約であり、成果物の完成は必須ではありませんでした。
しかし、2020年4月1日に施行された改正民法では、この基準を見直し、2種類に分けて定義することになりました。
順に見ていきましょう。
改正民法第648条3項に定義されたのが、割合に応じた報酬の「履行割合型」です。
これまでは、委任が中途で終了した場合に報酬が請求できたのは、あくまで「受任者(仕事を受けた側である)の責に帰することができない事由」つまり労働者側の問題ではない理由に限って、すでに履行した部分の割合に応じて報酬を請求することができるとしていました。
しかし、民法の改正によって受任者の帰責事由の有無にかかわらず、責任の有無にかかわらず、履行の割合に応じた報酬を請求できるようになりました。
次に、2020年4月1日より施行された改正民法第648条の2に定義されたのが、「成果の引渡しと同時の報酬支払」「成果報酬を約した場合の割合に応じた報酬」です。
実は準委任契約でも仕事の成果物を納品することで契約完了とする「請負」に類似する契約形態にする場合があります。
しかし、改正前民法では、準委任契約で成果に対して報酬を支払う合意がある場合の規定がなかったのです。
これにより、成果完成型で準委任契約を受けた場合、仕事を受けた側である受任者は、成果の引渡しと同時に報酬を請求することができるようになったとともに、何かしらの理由で途中で契約解除になった場合であっても、既履行部分については報酬を請求できることが定められました。
それでは、準委任契約とともに業務委託契約に使われる「請負」と、よく似ている「派遣」についてそれぞれの違いを見ていきましょう。
準委任契約と混同しやすいのが「請負契約」です。
請負契約は「仕事の完成が契約内容となっている」ところが準委任契約とは大きく異なる点です。つまり、仕事の完成は義務なのです。
例えば請負契約の場合、「セミナー講師を依頼され、受講者が全員試験に合格する」という請負契約だった場合、1人でも不合格者がいたら成果報酬がなしということになってしまいます(極端な例ですが……)
そのため、請負契約は、やるべきことも決まっていない業務や具体的な作業を明文化しにくい業務にはむいていません。
また、基本的に原則として請負契約では再委託が可能ですが、準委任契約では再委託はできない(特約を設けた場合は可能)という違いがあります。もし準委任契約を締結して、自分の手に余る業務を引き受けてしまった場合、他の人にお願いすると言うことができないので注意が必要です。
次に、準委任契約と派遣との違いですが、これは明確に違います。
発注者側に指揮命令権があるのが派遣契約です。労働者の派遣契約では、派遣会社(派遣元)ではなく発注者側(派遣先)に指揮命令権があり、受託者に対し細かい作業指示を行うことができます。
それに対して準委任契約や請負契約の場合は、発注者側には指揮命令権がありません。逆に、業務委託なのに発注側があれこれ指示をしてくると言うのは、偽装請負と呼ばれる違法状態になります。
このあたりの違いを、発注側もよく理解していない場合があります。もし副業や独立してクライアントと業務委託を締結することになった場合、きちんと契約書の内容を確認してから業務に臨むようにしましょう。