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「税務デューデリジェンス」とは?具体例も合わせて税務デューデリジェンスを解説します!

HUPRO 編集部
「税務デューデリジェンス」とは?具体例も合わせて税務デューデリジェンスを解説します!

聞き慣れない言葉である「税務デューデリジェンス」。デューデリジェンスとは、合併・買収に際して相手企業を特定の観点から評価する一連のプロセスです。したがって、税務デューデリジェンスは税務の観点から相手企業を評価することを意味します。今回はそんな税務デューデリジェンスについて詳しく解説します。

税務デューデリジェンスとはなにか?

デューデリジェンスとは、M&A(企業の合併・買収)に際して対象会社の実態を把握するために行われる手続きのことを言います。したがって、税務デューデリジェンスとは、M&A(企業の合併・買収)に際して対象会社の税務の実態を把握することを言います。M&Aに向けて障害となる問題の有無などを調査検討するのが、税務デューデリジェンスで必要な必要とされる手続きです。

たとえば、財務監査(財務デューディリジェンス)では、財務諸表を分析素材に、対象企業(連結子会社、連結決算上持分(もちぶん)法が適用される持分法適用会社を含む)の健全性を評価することになります。

一方で、税務デューデリジェンスでは、被買収企業のタックスプランニングなどを検討し、税務プロセスの健全性を評価することになります。法令遵守状況や法的リスク(係争案件の有無や潜在的なリスク)などがチェックされるというわけです。

税務デューデリジェンスの必要性

近年では、会社の合併や買収が日本に限らず世界中で行われるようになっています。日本の会社が海外の会社を買収したり、合併したりすることも頻繁に行われるようになりました。海外への進出が広がりをみせるなかで、当然、様々な国の税務当局と関与しなければならないことになります。

税制度は国ごとに異なっているので、海外の子会社を増やせば、現地にどれくらい法人税を始めとする税金を仕払わなければならないかを予め見積もってかなければなりません。特に新興国の税務当局は、外資系企業に対する課税強化を行うインセンティブを持っているため、合併・買収の前にどの程度税金を納めることになるのかを見積もっておかないと、思わぬ税務リスクを抱え込むことになりかねません。

海外子会社との取引量の増加に伴って、日本および現地税務当局の税務プロセスに対する関心は高まっています。海外取引・グループ 会社間取引等に対して想定外の課税・二重課税を受けるリスクも増加しています。

それぞれの国の税制をきちんと把握していなければ、思わぬ損失や税務リスクを抱えむこととなりかねません。さらに、海外子会社の権限や機能の変化、新たな取引スキームの発生等を機会とした、税務当局によるグループ会社間の費用収益の負担の妥当性への疑念などもあがっています。

税務デューデリジェンスの必要性

もし、税務リスク対応の重要性を経営層・現業部門が十分に理解しておらず、合併・買収前における国際税務リスクの検証やタックスプランニングが不十分であれば、高い税務リスクを抱え込むことになります。この税務リスクが顕在化すれば、大きなコストを支払わなければらないことになります。したがって、この意味でも、税務デューデリジェンスは欠かすことはできない手続きであると言えます。

また、税務リスクに対応する社内の責任者・担当者が明らかになっておらず、税務リスクへの組織的・計画的な対応が困難となっているような場合も、税務リスクが高くなります。そのため、事前に税務デューデリジェンスを行って、その税務リスクがどれくらいあるかを評価しなければなりません。特に税務に対して専任で対応する人員が不足しているような場合には、税務リスクも高くなってしまいがちです。

さらに、本社とグループ会社とのコミュニケーションが不十分であり、また報告・相談・承認事項が不明確てであるような場合も、税務リスクを伴う取引の情報や進出先各国の税制の動向を本社や関連部門が検知することができないことから、必要な取組みを十分に行うことができず、税務リスクが高くなってしまいます。

ここまで説明したきたように、企業の合併・買収にあたっては、財務諸表の分析をして財務デューデリジェンスをするだけでは不十分であり、企業の合併・買収に際して、どの程度の税務リスクがあるのかについても予め見積もっておく必要があるというわけです。

税務デューデリジェンスで行われる手続き

上で説明したような税務リスクを回避するためには、税務デューデリジェンスが欠かせません。合併・買収後に無用な税務リスクを回避することを目的として、グループ会社や事業部門等における国際税務リスクの管理ルールの整備状況や、 税務業務へのリソース(能力・人数)の配置状況、税務専門家の活用状況等の確認を行い、対応が不十分なグループ会社等を明らかにしていきます。これが税務デューデリジェンスで行われることの概要です。

グループ会社や事業部門から本社所管部門に対して、たとえば、所属組織における国際税務リスクの管理状況や現地税務当局の動向、税制の改正状況といった国際税務リスクに係る報告を義務付け、情報収集が行われていないことが税務デューデリジェンスの結果わかったとすれば、合併・買収する税務リスクは非常に高いと評価することができます。

本社が置かれた国が違う会社が抱える税務リスクは、顕在化した際の金額的な影響も大きくなりがちです。また、税務リスクの回避は、その特殊性や専門性の高さや、事業のバリューチェーン全体を巻き込んだ複雑な問題であることから、個々の会社でそれぞれ対応することは非常に困難です。

したがって、経営トップの認識と理解を踏まえて、グループ会社全体の観点からのノウハウの集積や、グループ全体での方針の策定と展開等が不可欠となります。そのためにも、合併・買収前の税務デューデリジェンスという手続きは欠かせません。

この記事を書いたライター

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