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【決算解決シリーズ】富士フィルムHDがゼロックス社を完全子会社化、新体制富士フィルムの今後をIR資料から徹底解説!

HUPRO 編集部
富士フィルムホールディングス株式会社のIR情報を読み解く

富士フィルムHDの全事業の説明をしたのちに、近年のトピックであるゼロックスコーポレーションとの訴訟問題やゼロックスコーポレーションの業績等にも触れていきます。最後に、2020年8月に公表された第1四半期の業績と2021年3月期の決算予測について解説をしていきますので、是非最後まで読んでみてください。

富士フィルムHDの全事業の概要とセグメント情報について

1.富士フィルムHDの全事業概要

富士フィルムは、元々は写真用フィルムが主たる製品の会社でしたが、デジタル化の波を受けて2000年をピークに写真用フィルムの需要が激減しました。そのような状況下で、写真事業で培った高度な技術を生かして、事業の多角化を実施しました。

その一例として、2006年には、化粧品事業に参入、2007年には「アスタリフト」という、大ヒットスキンケア化粧品を発売しています。これは、写真フィルムに用いるコラーゲン技術を応用して開発された化粧品です。

この化粧品事業から、現在ではヘルスケア事業、高機能材料事業、記録メディア、ドキュメント事業、デジタルカメラ事業など幅広く事業を展開している会社に変貌をとげました。

2.セグメント情報について

富士フィルムHDは、開示用セグメントとして以下の3つに分類をしております。

イメージング ソリューション 

このセグメントは、主にデジタルカメラやチェキシリーズなどが主力の製品になります。従来の写真フィルム事業を扱っていた会社にとっては馴染み深いセグメントであると言えます。

ヘルスケア&マテリアルズ ソリューション

こちらについては,大きくわけて3つの事業があります。
①ヘルスケア
人の健康に関わる「診断」、「治療」、「予防」の幅広い領域にビジネスを拡大している。特に、業界トップの抗体産生技術等を有するバイオCDMO事業については、2019年度までに年平均20%の成長率を誇る事業に成長しています

②高機能材料
ディスプレイ材料や、産業機材、電子材料、ファインケミカルなどを生産している事業になります。これらの材料については、富士フィルムの高い技術力によって生産されるもので、高付加価値で利益率が高い商品となっています。

③記録メディア、グラフィックシステム、インクジェット
記録メディア分野では、独自技術である「バリウムフェライト磁性体」を採用したデータ・ストレージ用の磁気テープが主な商品となっており、それ以外には印刷で必要な材料を販売しているセグメントとなります。

ドキュメント ソリューション

こちらのセグメントについては、大きくわけて3つの事業があります。
① オフィス向けのデジタル複合機、プリンターの販売
② 商業用印刷機の販売
③ 業務プロセスのデジタル化の促進による経営課題の解決提案事業
そして、当該セグメントについては、子会社である富士ゼロックス株式会社が事業の担い手となっています。

2018年3月期~2020年3月期の業績について

1.連結損益計算書について

連結損益計算書について

2018年3月期からの3年間の業績の推移について見ていきたいと思います。
2020年3月期第3四半期時点における、決算の着地見込は、過去最高益を達成するものでありました。しかし、2020年1月以降の世界的な新型コロナウィルスの流行に伴い、消費の落ちこみなどの影響を受けて、最終的には2019年を下回る結果となりました。

一方で、投資キャッシュ・フローが近年増加傾向にあります。これは、近年積極的に事業買収を行っており、既存事業とのシナジー効果発揮し、事業拡大を進められるような買収を行っています。今後行われる予定としては、日立製作所の画像診断関連事業など買収予定です。(現時点ではコロナウィルスの影響により完了時期は未定)

最後に、財務活動によるCFのキャッシュアウトが増加している要因は、富士ゼロックスの株式を追加取得したことにより、非支配持分との資本取引による支出等が増加したからです。

2.セグメント別売上高、営業利益について

セグメント別売上高

セグメント別売上高

セグメント別の売上高を確認すると、ヘルスケア&マテリアルズセグメントが売上高及び営業利益にて企業の中心事業となっていることが上記の図からわかります。
富士フィルムと言えば、カメラの印象が強いですが、イメージングセグメントの事業規模としては会社全体でみれば大きくないと言えます。

ヘルスケア&マテリアズでは、メディカルシステムや再生医療分野での売上が近年は好調な傾向であることがわかります。

最後に、ドキュメントセグメントは、オフィス向けのプリンターなどの中国向けが景気減退により販売数が落ちていることや、欧州向けの輸出減少し、更にコロナウィルスの影響も受けて売上自体は減少しています。また、市場としてもペーパレスの動きなどによりコピー機の需要が低下傾向にあり、売上規模も縮小傾向にあります。そのような自体を見越して、2017年度第三四半期で、ドキュメントセグメントの中心企業である富士ゼロックスの構造改革を立ち上げています。

セグメント別営業利益

セグメント別営業利益

主な施策としては、国内外10,000人の人員削減や営業体制の再編、生産拠点の統廃合などが含まれています。これにより、2018年3月期の構造改革費として700億円が計上されているため、利益としては低くなっていますが、その後の2019年、2020年はコスト削減の効果などにより利益が増加しています。

3.連結貸借対照表について

連結貸借対照表について

2019年度に富士ゼロックス株式会社の株式25%と富士ゼロックスの合弁会社でXerox International Partnersの持分51%をゼロックスコーポレーションから取得していますが、固定資産の増加等には大きな影響は与えていません(主な増加理由は、リースの使用権資産の計上と固定資産の投資による増加)。

その理由については、富士ゼロックスは子会社であり、すでに連結対象であったため、今回の完全子会社化しても連結貸借対照表に大きな影響はありません。2020年3月について、流動資産が大きく減少しているのは、現金及び現金同等物が、258百万円減少していることが主な要因です。

連結CFを分析すると、事業買収及び株式の追加取得にかかる現金のキャッシュアウトが増えたことが主な要因となります。最後に、固定負債が増加している要因は、社債及び長期借入金の増加とリースの使用権資産の計上に伴うリース負債の計上による増加です。

コロナウィルスが流行し、営業規模も拡大できませんので、運転資金と投資資金をどのように両立させるか気になる状況と言えます。

富士フィルムHDとゼロックスコーポレーションの経営統合に関する訴訟

1.ゼロックスコーポレーションの近年の業績

ゼロックスコーポレーションの近年の業績

ゼロックスコーポレーションは、印刷機器の製造販売を行うアメリカ合衆国の会社です。プリンター、複合機、複写機、デジタル印刷機、および関連サービスを提供しており、創業地はニューヨーク州ロチェスターです。

ゼロックスコーポレーションの富士フィルムとの繋がりは、1962年にランクゼロックス社(現ゼロックスコーポレーション)との合弁により富士ゼロックスを設立したときからあります。

なお、近年は世界的なペーパレス化の流れによりコピー機の需要が低下していることから、富士ゼロックスと同様に業績が低下しています。特に売上規模としては、2015年は11,465百万ドル程度あったが、5年後には、9,066百万ドルと約20%減少しています。

ランクゼロックス社(現ゼロックスコーポレーション)

上記は、総収入の内訳になります。機械販売収入は、前述の通り、ペーパレス化の動きもあり、オフィス関連の製品の販売が減少傾向にあります。販売後収入等とは、メンテナンスや消耗備品などの売上であります。こちらも、製品自体の販売台数が減少傾向にあることから、同様に減少傾向にあります。

なお、近年ゼロックスコーポレーションも富士ゼロックス同様に構造改革を行っており、一部本社機能をシェアードサービス化することで人員を5,400人削減するなどの経費の削減を行っており、売上の減少はしていますが、経費削減効果により利益が改善しています。

2019年に利益が他の年度に比べて多額となっていますが、これは富士ゼロックスの間接持分25%とゼロックスインターナショナル持分(51%)を売却したことによる売却益になります。

近年、市場環境が悪化していく状態で、ゼロックスコーポレーションと合併することで経営の効率化を計るために、2018年1月に富士ゼロックスとゼロックスコーポレーションの合併を計画したと考えられます。しかし、この合併計画について、ゼロックスコーポレーションの大株主から批判を浴びることになり、最終的には訴訟問題までに発展していくことになります。

2.訴訟の背景~買収スキーム

この買収スキームは、富士フィルムHDが現金を支出しない買収手法であることや、ゼロックスコーポレーションの時価総額(合併発表当時は約90億ドル)と比較すると、買収額61.8億ドル(6,710億円)+特別配当の金額25億ドル(2,700億円)は過小評価しているとの批判を大株主から受けました。

そして、ゼロックスとゼロックスの大株主は対立することになりますが、2018年5月に和解し、富士フィルムとの契約合意を一方的に破棄しました。それに対して、富士フィルムHDは一方的な破棄だとして、ゼロックスコーポレーションに対して、10億ドル超の支払を求める訴訟を起こします

3.訴訟問題の解決~富士ゼロックスの100%子会社化

2019年11月に、ゼロックスコーポレーションの買収計画を断念することを発表すると同時に、富士ゼロックスの完全子会社化を発表しました。この発表により、ゼロックスコーポレーションに対して行っていた訴訟についても取り下げることになり、訴訟問題は決着することとなりました。

なお、2020年1月に、ゼロックスコーポレーションとの技術/ブランドライセンスや販売テリトリー(アジア・パシフィック地域)などを規定した技術契約を2021年3月に終了することが発表され、富士フィルムブランドでのグローバルな事業展開が可能になりました。また、ゼロックスブランドの移行期間を2年間に延長し、ゼロックスブランドの使用料として総額100百万米ドルの支払いを行うことも決定したため、すぐにはゼロックスブランドが使用できなくなるわけではありません。 

富士ゼロックスは、2021年4月に「富士フィルムビジネスイノベーション」として社名を変更することになり、今後はゼロックスブランドではなく、富士フィルムブランドをグローバルに展開し、また既存の富士フィルムの事業とのシナジー効果も最大限に発揮できるように企業運営をしていくと考えられます。

富士フィルムHDの2021年3月期1Q決算について

1.業績と着地見込について

業績と着地見込について

最後に直近の決算である、2021年3月期第1四半期の状況を確認したいと思います。
決算説明資料によると、2021年3月期第1四半期は、新型コロナウィルスの流行により、経済活動及び消費活動が停滞したことにより売上高が大きく減少したことにより、営業利益についても前年同期比でマイナスとなっています。一方で、持分証券評価益を計上したことや、富士ゼロックスの完全子会社化で非支配持分帰属損益を改善したことにより、株主帰属四半期純利益は前年比87.6%のプラス成長となりました。

着地見込みとしては、新型コロナウィルスの影響も引き続き受けると予想されることから、前年比で減少を見込んでいます。また、それ以外にも富士ゼロックスの社名変更などの体制を変更することにより、250億円の一時費用を見込んでいることも減益を見込む要因となっていると言えます。

まとめ

今回は、富士フィルムHDについて富士ゼロックスの買収を中心に取り上げました。この会社を分析してみて感じたことは、イノベーションを持続的に行うことで成長してきた企業であると感じました。この新型コロナウィルスが流行する世の中においても、変わることを恐れずに変わり続け、更に大きな企業へと成長する兆しが見えるそんな企業であると感じました。

オフィスでよく見る富士ゼロックス製のコピー機がなくなってしまうかもしれないので、少しさみしい気もしますが、新しい富士ブランドのオフィス製品も楽しみですよね。これからの富士フィルムHDの成長に是非注目していきましょう。

この記事を書いたライター

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