新型コロナウイルスの影響により、人材配置は大きな転換点を迎えています。アフターコロナには確実に必要となる職種でも、現時点では仕事ができず「人材ロス」となってしまうケースがあるからです。今回は、社内の人材を他部署で有効活用することができ、スキルアップにもつながる「社内副業」について解説します。
社内副業とは、現在所属する会社の中で、自分の所属とは異なる部署の業務を引き受けることを言います。
部署を横断するような大規模プロジェクトなどは、比較的規模の大きな企業であれば、以前からありましたが、社内副業という形式では、そこまで大がかりなものではありません。
社内副業としては、例えば、以下のような例があります。
・スポット的にその部署で人が足りなくなったものを別の部署の社員が引き受ける
・通常業務以外のプロジェクトやサービス・商品の仕事を就業時間外で対応する
・これまで外注に出していた案件を社内で回す
社内とはいえ、これまでとは違う業務に従事することで、従業員側としては人事異動を伴わずに経験を積むことができ、スキルアップができることや、試験的に業務をやらせてみることで適材適所への人材配置を探ったり、外注費を削減するという目的があります。
社内副業では、給与は発生するのかどうか?これは、その会社によります。
社内副業で給与が発生しない会社においては、実務時間のある一定割合までを社内副業に当てることができるというルール作りをしていることも多いです。
ただし、いずれにおいても規定の就業時間を超える場合については残業代の対象になります。
社内副業については、以下のようなメリット・デメリットがあります。導入を検討される際は社内の実情に合わせて考えてみましょう。
まずはメリットです。従業員側、会社側それぞれにおけるメリットがあります。
自分の部署とは異なる業務をすることで、他部門での仕事の流れや業務の進め方などを知ることができ、これまでよりも全社的な視点で業務に取りくむことができるようになります。
また、企業の規模が大きいほど、部署が異なると違う会社のように文化が異なることもあります。違った環境の業務に携わることで、新たな人間関係からイノベーションが創出される効果も期待できます。
アメリカの3M Companyのポストイットは、就業時間のうち15%を本業務以外の時間に使うことができる「15%ルール」と呼ばれる制度から生まれたそうです。
社内副業の受け入れ側も、新しい人が入ることでその人に向けてどのように業務を割り振るか、もし人手が足りない場合どのように協力体制を作るか考えるきっかけになります。
結果的に業務の属人化を防ぎ、急な退職や休職に備える準備ができるようになるのです。
会社が企画するプロジェクトの人材アサインの場合は、人事が把握している人材情報の範囲内でしか対応できません。社内副業として気軽に応募できるようになることで、これまで想定していなかった人材が志願し、結果として成長・活躍してくれるという効果も期待できます。
社員が希望する業務につくまで、人事ローテーションを辛抱強く待ってくれるとは限りません。会社側がニーズを把握できずに黙って転職されてしまうこともあるのです。また、社員側も自分が経験したい専門性のある部署に今いない場合、人事異動を待つよりも、社内副業で経験を積むということもできます。
これまで派遣社員に任せていたり、外注していたような案件を社内で別部門の社員が行うことで、質の向上を図ることができます。
また、依頼先が同じ社内であれば、採用やそれにまつわる受け入れ準備も必要最小限で済むほか、外注先選定の際の与信チェックも不要になり、依頼先選定までのスピードも短縮が可能です。
いいことばかりに思える社内副業ですが、もちろんデメリットもあります。
社内副業では、あらかじめ元々の業務があります。ある程度時間で決められる作業的な部分を請け負うなら、一定割合の時間割り当てでも大丈夫かもしれませんが、クリエイティブなプロジェクトなどとなると、必然的に時間は不足しがちです。
それぞれの部門におけるスケジュール管理や、業務の調整能力が鍛えられるという良い点もありますが、社内副業の負荷が高くなる場合は、本業との業務時間の調整などを行う必要が出てきてしまうかもしれません、
社内副業はあくまで「副業」であるため、人事規定や人事部門でのフォローがない場合は、本業への点数が辛くなり、副業での評価がされづらくなる傾向にあります。
社内副業制度を作る場合は、人事考課をどのようにするのか、副業先での部門評価をどのように行うのか、ということも含めて準備を行うようにしましょう。