会計事務所では会計・税務に関わる仕事を行うことになるので、会計・税務に関わる専門的な知識が求められます。したがって、会計・税務に関わる専門的な知識を有している証となる資格を持っている方が就職・転職の際には有利です。そこで、この記事では、会計事務所で働く際に持っておくと有利な資格を詳しく解説します。
会計事務所で働くのであれば、会計・税務に関わる資格を持っていた方が、就職・転職に有利になります。特に、簿記に関わる資格は、会計事務所で働くのであれば必ず求められる知識と言えるでしょう。逆に言えば、簿記の資格を持っていないと、会計事務所で働くのは非常に困難であると言えます。
というのも、会計事務所の規模が大きくなればなるほど、監査に関わる機会も多くなり、より専門的な知識が必要となります。一方で、規模の小さな会計事務所であれば、中小企業の記帳代行業務を請け負うことが多いので、正確に経理を行えるだけの知識が必要となります。
したがって、売上規模が大きな会計事務所であれ、小さな会計事務所であれ、簿記は必須の資格となります。
そこで、以下では、会計事務所で働くなら持っておいた方が有利になる資格を難易度順(難→易)に8個紹介していきます。今後のキャリアを見据えた上で、挑戦したい資格を見つけましょう!
公認会計士の資格は監査業務が行える唯一の国家資格となります。したがって、会計事務所で監査業務を行えるのは、公認会計士の資格を保有している人だけということになります。
もちろん、会計事務所で働くだけであれば、公認会計士の資格は必須ではありません。ただ、公認会計士の資格を保有していないだけで仕事の幅は大きく狭まることになります。その理由は、監査業務を行うことができないからです。
公認会計士試験は、金融庁の公認会計士・監査審査会が年に1回実施する試験で、会計に関する知識を問う試験の中では最高峰の難易度を誇ります。したがって、公認会計士の資格を有しているだけで、就職・転職には格段に有利になります。会計事務所に就職するのであれば尚更です。
公認会計士試験の勉強方法についてはこちらのコラムでも紹介しています。ぜひ参考にしてください!
米国公認会計士(Certified Public Accountant、USCPA)は、米国各州が認定する公認会計士資格です。この資格を保有していない限り、米国において会計監査業務を行うことはできません。日本の会計士試験の米国版ということになります。
米国での公認会計士資格は、各州ごとで取得・登録されることとされています。資格取得後は「英語+会計」が分かる人材として監査・税務業務をはじめ、多くのフィールドでの活躍が可能です。
会計事務所において、直接米国公認会計士の資格が活かせるということは稀です。しかしながら、日本においてこの資格を有していると、外資系企業を多く手掛けている会計事務所において特に評価されることになります。英語ができる会計士というのは実は多くありません。そのため、英語もできて、会計もできるという人は優遇されます。
米国公認会計士試験の勉強方法等についてはこちらのコラムでも紹介しています。あわせて参考にしてくださいね!
税理士試験は、税務に関して高度な知識を有することを証明する資格試験です。
税理士試験は、会計学に属する科目(簿記論及び財務諸表論)の2科目と税法に属する科目(所得税法、法人税法、相続税法、消費税法又は酒税法、国税徴収法、住民税又は事業税、固定資産税)のうち受験者の選択する3科目(所得税法又は法人税法のいずれか1科目は必ず選択しなければなりません。)について行われます。
税理士は、税の専門家として納税者が自らの所得を計算し、納税額を算出する申告納税制度の推進の役割を担います。大手の会計事務所でもない限り、監査業務を主な収益源とするわけではなく、多くの会計事務所が記帳代行業務や税務申告の代理業務を収益源としています。
これらの業務は、会計士よりも税理士の方が得意とする業務です。会計士でも、税理士の業務を行うことはできますが、監査業務を行わないような大手ではない会計事務所においては、税理士の資格を有する人の方が優遇される傾向にあります。
税理士試験の勉強方法についてはこちらのコラムでも紹介しています。ぜひ参考にしてください!
日商簿記試験とは、日本商工会議所および各地商工会議所が実施する検定試験で、簿記に関する技能を検定する試験です。民間企業に就職するときには、保有していると有利になる資格試験であるとされています。
特に、日商簿記試験1級の試験は、税理試験の登竜門的な位置づけにあり、合格率も10%程度と非常に高い難易度を誇る試験です。これ以上難しい簿記に関する検定資格はないことから、簿記の資格のなかでは最も難易度の高い試験であると言えます。
日商簿記試験のなかでも、3級から1級が、履歴書やエントリーシートなどで評価されます。初級なども新設されていますが、特に、会計事務所のようなところで活躍したいと考えている人は、日商簿記2級程度の知識がないと話にならないというところも少なくありません。
記帳業務を1人でスムーズにこなすだけの能力を求めるのであれば、日商簿記試験1級の知識は必須になると言えます。したがって、日商簿記試験1級を合格していると、会計事務所への就職・転職には非常に有利になります。
日商簿記1級の勉強方法はこちらのコラムにて紹介しています。興味のある方はぜひご参照ください!
日商簿記試験と比べると難易度は劣るものの、全経簿記試験も簿記に関する一定の知識を有することを証明する資格となります。全経簿記試験は、公益社団法人全国経理教育協会が実施する簿記に関する検定試験で、文部科学省の後援を受けています。
全経簿記試験1級の試験が上で説明した日商簿記試験の2級程度、全経簿記試験の2級が上で説明した日商簿記3級程度の難易度となります。
したがって、全経簿記試験よりも、日商簿記試験の方が、一般に就職・転職においては有利になります。全経簿記試験には、3級から1級の難易度の他に、上級という難易度のものがあり、上級は税理士試験の登竜門的な位置づけとなっています。
BATICとは、英語で会計に関する知識を学べる検定試験です。会計基準はIFRS(国際財務報告基準)に則って出題されるので、今後、国際的に活躍されたい人にもおすすめの資格となります。
BATICは、東京商工会議所主催の検定試験です。英語で会計知識を学べるという点や、日商簿記検定試験などの簿記の知識を活かすことができる点、さらには将来的に米国公認会計士(U.S.CPA)の学習の際にも知識が活かせることから、自身のキャリアアップのために取得する人が多い資格試験です。
ビジネスのグローバル化が進む昨今、国際的なビジネスの共通言語である会計を英語で理解することのできる人材は、必要不可欠です。そうしたことから、会計事務所でも、海外の子会社や関連会社で作成された財務諸表を読まなければならない機会も多くなる可能性があります。
日本の会計基準以外の財務諸表の作成ができないとなると、海外に子会社や関連会社を保有する企業からの依頼を受けることができなくなってしまうので、会計事務所にとっても、BATICの資格保有者は貴重な存在です。あまり注目を集めることがない資格試験ではあるものの、会計事務所への転職を考えていたり、外資系企業への転職を考えている人にとっても、非常に有力な資格試験です。
FASS検定は、経済産業省が推進する経理の専門家のための資格試験です。
FASS検定が始まった経緯は以下の通りです。経済産業省は、経理・財務部門の組織・⼈員配置の最適化・⼈材の円滑な移転を促進することを目的として、「経理・財務業務マップ」を2003年に公表しました。翌2004年には、「経理・財務サービス・スキルスタンダード」の開発を⾏って、経理・財務⼈材育成事業を展開してきました。
FASS試験を取り仕切る日本CFO協会は、経済産業省の委託を受けて、2004年以来「経理・財務サービス・スキルスタンダード」の普及促進策の担い手として経理・財務⼈材育成事業に取り組んできています。経理・財務スキル検定(FASS 検定)は、この事業の一環として日本CFO協会が2005年度下期より実施・運営している検定試験です。
この資格を保有していることで、企業経営に欠かせない経理の知識をひと通り身につけることができます。日商簿記試験と同様に、簿記の知識を問う検定試験であるものの、FASS試験の方がより実践的な知識を問われることから、実務の現場において特に評価されている資格試験です。
会計の知識を直接学ぶわけではないものの、社会保険労務士も会計事務所で働くなら持っておきたい資格の一つです。社会保険労務士の試験では、会計の知識が問われるので、一定の会計の知識を身につけることも可能です。社会保険労務士は国家試験の一つであるため、その意味でも一定の評価を受けることができます。
社会保険労務士は、「労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資すること」を目的として、業務を行う者のことを言います。企業における採用から退職までの「労働・社会保険に関する諸問題」や「年金の相談」に応じるための、専門的な知識を身につけることができるので、企業経営において欠かせない人事の専門家として活躍することができます。
そのため、社会保険労務士の資格を有して会計事務所で働くことができれば、会社の経理において欠かせない年金計算や労務の問題と関わることができ、会計だけではなく、より労務によった専門知識を活かすことができるようになります。
では、以上のような資格を取得したとして、どのような方法で転職先の会計事務所を探せば良いのでしょうか?日本には多くの会計事務所があり、多くの事務所がスタッフを募集しています。自分の希望に沿った応募条件を充たす会計事務所を効率的に見つけて転職成功率を上げる方法はあるのでしょうか?
会計事務所への転職活動を効率的に進めるには、転職エージェントや転職サイトを活用するのがおすすめです。特に、会計・経理業界に特化したエージェントが非公開の求人案件を抱えていることも少なくないので、転職エージェントや転職サイトを使う転職活動にはメリットがたくさんです。
転職エージェントや転職サイトは、基本的に無料で登録できます。しかも、担当者が丁寧な面談や希望条件の聞き取りをしてくれて、採用ミスマッチの可能性が減るようにアドバイスをしてくれます。希望の募集案件があれば、エントリーシートの書き方を指導してくれたり、記入内容のチェック、面接の練習も対応してくれるので、転職が成功する可能性はぐっと高まるでしょう。
実績のある転職エージェント等であれば、面接対策や通りやすい職務経歴書の書き方にも慣れています。誰にも頼らずに転職活動をしてしまうと、本格的な転職ステップに進む前にクライアント側からの不評を買うおそれがありますが、転職エージェント等の力を借りれば安心です。効果的に自己アピールできるので、ぜひ利用しましょう!
転職エージェントの活用方法やメリットについてはこちらのコラムをご参照ください!転職活動がはかどります!
20代であれば、若いというだけで転職活動では有利です。ただ、30代、40代と年齢を重ねるにつれて、転職活動では年齢を克服できるだけのアピール準備をしなければいけません。会計事務所側のニーズに自分が適していると思わせなければ、転職成功率は上がりません。
自分がどのような資格の合格者なのか、なぜ転職をしようと思ったのか、なぜこの会計事務所を選んだのか、どのような実績があるのか等、整合性のある内容で誠実にアピールしなければいけません。特に、会計・経理業界未経験の人は、個別のアピールポイントを用意する必要があるので、採用担当者にしっかりと熱意が伝わるように努力しましょう。
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採用面接は転職希望者の雰囲気がチェックされる場でもありますが、同時に、自分が働くことになる職場の雰囲気を知ることができるチャンスでもあります。仕事場の環境状況や所長の雰囲気、スタッフの関係性など、しっかりと確認しておきましょう。
また、面接時には逆質問の機会も与えられるので、気になることは忘れずに確認するのもポイントです。当該会計事務所が担当しているクライアント層や入社後の教育カリキュラム、事務所の特徴や福利厚生制度など、転職希望者にも聞きたいことはあるはずです。
ただし、給料面や退職率など、会計事務所に対して直接は聞きにくいこともあるかもしれません。そのような事情は、転職エージェントを活用しておけば、エージェントが代わりに対応してくれます。このように、転職希望先との折衝をも対応してくれるエージェントを利用すれば、いろいろなメリットを享受できるでしょう。
会計事務所に役立つ資格、そして、転職活動を効率的に進める方法については以上です。まずは、転職時に自分の強みになる専門性のある資格を取得すること、そして、転職エージェント等を活用して第三者のアドバイスを受けながら効率的に転職活動を進めていくことが重要です。
自分ひとりで資格を取得し、自分の希望に沿った会計事務所を見つけて、自分ひとりで転職を成功させるには限界があります。ひとりで調査できる範囲にも限度があるので、頼れるものは頼りましょう。
すべては、自分の想定したキャリアを形成するためです。思い描いたキャリアプランを歩むためにも、地道に努力を継続してください!
会計事務所への転職総論についてはこちらのコラムでも紹介しています。あわせて参考にしてください!