連結決算とは親会社、子会社、関連会社をまとめてひとつの企業グループとみなして一緒に決算を行うことですが、子会社と関連会社では企業グループ全体に与える影響が違います。影響の違いがあるため、連結決算の方法も子会社は連結法、関連会社は持分法という違う決算方法が用いられます。今回は全部連結と持分法についてわかりやすく解説します。
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全部連結とは、その名の通り親会社と対象となる子会社の財務諸表を100%全部合算してから、少数株主持分を控除する決算方法です。子会社の財務諸表を100%全部合算するので、子会社の財務諸表がダイレクトに親会社の財務諸表に反映されます。
全部連結の対象となる子会社は、親会社が50%以上の株式を保有している子会社、親会社が40%以上の株式を保有しているかつ親会社の役員または従業員が取締役会の過半数を占めている子会社など、実質的に親会社が意思決定権を持つ子会社となります。
また、実質的に親会社が意思決定権を持っている子会社であったとしても、資産や売上高を考慮して重要性に乏しいと判断した小規模子会社は連結の範囲から外すことができます。重要性を決定する資産や売上高に関しては、企業グルーブ全体の資産や売上高に対する子会社の資産や売上高の割合で決定します。実際には割合について一律に何%という規定はなく、各社で社内規定において一定の割合を設定し、その割合を超えるかどうかを毎期確認することで連結範囲の妥当性を判断しています。
海外の子会社を連結する場合は、日本円に換算して合算する必要があります。その際に使用される換算レートは損益計算書と貸借対照表で異なります。損益計算書は1年間の費用や収益を集計したものですから、為替レートは期中平均レートが用いられます。貸借対照表では決算日時点の資産と負債の状況を集計するものですから、決算日の為替レートが用いられます。
全部連結の決算作業では、子会社の単体財務諸表を親会社のものと合算し、親会社の投資と子会社の資本の相殺消去、債権と債務の消去、内部取引の消去などグループ内でのやり取りを調整する必要があります。これらの作業は文字にしてみると簡単なように見えますが、実際にはかなり煩雑かつ手間のかかるもので、経理担当者には作業負担がかかります。
持分法とは、投資会社が被投資会社の損益を持ち株比率に応じて、決算日に投資額の補正により帰属させる決算方法です。つまり持分法では全部連結のように関連会社の単体財務諸表を親会社の財務諸表に取り込むことはありません。投資額の補正という一本の仕分けで被投資会社の損益を投資会社の財務諸表に反映させるため、一行連結と呼ばれることもあります。
持分法の対象となる企業は、持ち株比率が20%以上50%未満、もしくは15%以上20%未満のうち、取締役会の構成員となっているなど、経営上の影響力を行使することができる企業です。全部連結の対象と比べると意思決定権を持つまでには至らないものの、影響力を及ぼすことができるというのが持分法の対象となっています。
持分法の決算作業では、持ち株比率に応じて関連会社の当期純利益(損失)の金額を営業外収益(費用)で処理し、関連会社株式の簿価を増減させるだけとなります。全部連結のように合算や相殺消去の作業を行う必要がなく、決算作業は簡易化されたものとなります。
上記のような違いのある全部連結と持分法ですが、どちらで処理したとしても損益計算書の当期純利益、貸借対照表の資本勘定は同じになります。最終的な当期純利益と資本勘定は同じになりますが、そこに至るまでの計算過程や資産、負債勘定への影響は大きく異なります。
全部連結と持分法で違いが出てくる点としては、持分法では最初から持ち株比率に応じた金額だけを加算しますが、全部連結では少数株主に帰属する金額も含めたものも一旦加算されます。少数株主損益は当期純利益の直前で調整されるため、営業利益や経常利益の段階では少数株主に帰属する金額を含めたものとなります。その結果、全部連結の場合の営業利益や経常利益は、子会社の業績が実際の持ち株比率以上に反映されている状態となります。
これは、業績のよい子会社を全部連結していれば連結の決算内容は実際以上によいものとなり、業績の悪い子会社を全部連結していれば連結の決算内容が実際以上に悪いものになるということです。
企業分析を行う際には経常利益を確認したり、流動資産と流動負債を用いて流動比率という指標を算出し、経営の安全性を確認することがあります。こういった指標の算出において、全部連結を行う場合と持分法を行う場合とでは値が変わってきますから、最終的な当期純利益、資本勘定が同じになるとはいえ、どちらの決算方法を行うかは企業にとって重要なことです。
今回は連結決算における持分法と全部連結について解説しました。経理担当者はもちろんですが、それ以外の部署の方も会社の経営状況に関わる大切なことですから、どのような違いがあるかぐらいは認識しておくことが必要でしょう。