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働き方改革には労務監査が必須!令和に話題の労務監査について解説します!

HUPRO 編集部
働き方改革には労務監査が必須!令和に話題の労務監査について解説します!

労務監査とは会計監査と異なり、企業に法律上義務付けられるものではありません。よって、範囲や基準も統一されているものではありませんが、年々必要性が注目されています。そして、時代と共に労務監査を行う企業も増えています。
今回は、労務監査にフォーカスをあて解説してまいります。

労務監査の歴史的な背景

労務監査の歴史的な背景として、1990年代までは業務命令が下部組織まで誤解がなく徹底出来ているかに主眼が置かれていました。特に高度経済成長期を支えたメンバーシップ型雇用の場合、トップダウンでの指揮命令系統が多くを占め、上層部の意思が下部組織に適切に伝達されることは組織運営において重要な意味を持っていました。

そして、2000年代に入り、企業の不祥事が社会問題として取り上げられる時代となりました。そこではガバナンスのあり方が重要視され、問題が起こった場合の対応に留まらずそもそも問題が起きない組織運営が重要視されてきました。

労務監査の目的の変化

また、他の目的として上場するにあたって労務監査を行う場合や、企業内で働く労働者のワークエンゲイジメントを高めるために行うなど、視点が企業上層部から労働者まで降りてきたと言えます。

特に近年では労働関係法令が目まぐるしく改正されています。そこで、現行の法令のアップデートを始め、外部の専門家に依頼する動きも活況となっています。

例えば会社が自主的に労働関係法令の専門家である社会保険労務士に依頼する場合や監査法人から労務監査を受けることを進言されるケースもあり、労務監査の社会的な認識及び価値が向上していると考えられます。

また、具体的にどのような項目が労務監査の対象となるのかを確認しましょう。

就業規則

労働者を常時10人以上雇用する場合、就業規則の作成及び届出の義務が生じます。また、就業規則は会社の憲法とも目され、会社を運営していくにあたってのルールが記載されています。

また、就業規則は絶対的必要記載事項、相対的必要記載事項など区分が分かれており、絶対的必要記載事項(始業及び終業の時刻など)は必ず記載しなければならない項目であり、相対的必要記載事項(休職に関する定めなど)は会社として定める場合は記載しなければならない項目です。

就業規則

36協定

本来、労働者には1日8時間、1週間で40時間を超えて働かせてはなりません。しかし、合理的な内容が記載されている就業規則に根拠規定が記載され、かつ36協定を所轄労働基準監督署に届出することで当該時間を超えて働かせても違法とはならなくなります。ゆえに、36協定が未締結のままでは時間外労働を行わせること自体が違法となりますので、重要な届出ということです。

賃金の支払い

賃金の支払いについては、賃金支払い5原則が定められており、通貨払い、直接払い、全額払い、毎月1回払い、一定期日払いの要件を満たさなければなりません。それぞれの原則には例外が設けられていますが、未払い賃金が放置されている場合は、重要な労務リスクとなります。

また、令和2年4月1日以降に支払日が到来する賃金については、現行の時効2年が3年へ延長されました。よって、発覚した場合の遡り額も旧来より多額となることが多いでしょう。

帳簿書類

労働基準法上では帳簿書類の保存期間は改正後の賃金時効と同じく3年となっています。必ずしも紙ベースでの保存が義務付けられているわけではありませんが、PC端末上でも必要な場合はすぐに確認出来る状態が求められます。特に人事台帳、出勤簿、賃金台帳は法定三帳簿とされ、整備することは必須となります。また、適正な労務管理に留まらず、企業を助ける助成金申請の際にも法定三帳簿の整備は必須条件です。

健康診断およびストレスチェック

根拠規定は労働安全衛生法となり、昭和47年に労働基準法から分離独立した法律であり、労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする法律です。

ここでは、健康診断やストレスチェックの実施結果の保存義務が労働基準法の3年より長い5年であることに注意しなければなりません。

近年は同僚や直属の上司であっても容易には判別し難い精神面での疾患が増加傾向にあります。職場として法令で義務付けられている健康診断やストレスチェックを行えていない、または結果を保存できていないとなると、コンプライアンス上も非常に危険な状態です。

また、ストレスチェックは人事権を行使できる者に労働者の同意なしに情報提供することはできません。これは、プラスの面(例えば労働者の健康問題に配慮した配置移動)に働けば良いものの、必ずしもそうとは限りません。マイナスの面(例えば精神疾患が表沙汰になる前に退職勧奨を行う)に働いてしまう可能性も否定できないためです。

まとめ

労務監査は行政機関からの調査に毅然として対応できるために予め行うこともありますが、それ以上に今働く労働者にとって生産性の高い職場環境を提供する意味でも重要です。今後も人手不足の状況が続くことが予想され、労務監査を契機としてよりよい職場環境を築いていくために機能してほしいと考えます。

この記事を書いたライター

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