税理士法人への転職を考えるにあたって、Big4税理士法人はほぼ必ず耳にする法人でしょう。該当する4法人はそれぞれに特徴がありますが、その中でも特に気になる方が多いのが、年収のランキングでしょう。今回は、そんなBig4の年収をはじめとして、働き方や規模感など、様々なランキングを紹介していきます。
2人以上の税理士が代表社員を務める法人を指す税理士法人の中でも、特に日本の大手4法人を総称して「Big4税理士法人」もしくは「Big4」と呼びます。
Big4税理士法人に該当する4法人は、以下の通りです。
これらの4法人が税理士法人の中でも高いシェアを占めており、大企業・上場企業のほとんどがBig4のクライアントとなっています。
Big4税理士法人は、いずれも海外に拠点を据える四大監査法人と業務提携を結んでいます。KPMG税理士法人はオランダにあるクリンヴェルド、ピート、マーウィック&ゲルデラー(KPMG)と、EY税理士法人はロンドンにあるアーンスト&ヤング(EY)と、デロイトトーマツ税理士法人はニューヨークにあるデロイト・トウシュ・トーマツ(DTT)と、PwC税理士法人はロンドンにあるプライスウォーターハウスクーパース(PwC)と、それぞれ深いつながりをもっています。そのため、国際税務などの専門的な領域も得意です。
KPMG税理士法人は、KPMGインターナショナルのメンバーファームとして、東京、名古屋、大阪、京都、広島、福岡を主な拠点に約750の人員を擁する国内最大級の税理士法人です。各専門分野に精通した税務専門家チームにより、企業活動におけるさまざまな場面(企業買収、組織再編、海外進出、国際税務、移転価格、BEPS対応、関税/間接税、事業承継等)に対応した的確な税務アドバイス、各種税務申告書の作成、記帳代行および給与計算を、国内企業および外資系企業の日本子会社等に対して提供しています。
PwC税理士法人は日本最大級のタックスアドバイザーとして幅広い分野の税務コンサルティングを提供している税理士法人です。PwC税理士法人は、PwCグローバルネットワークおよびPwC Japanグループのメンバーファームであり、公認会計士、税理士等を有する日本最大級のタックスアドバイザーとして、税務コンサルティングを提供しています。
デロイトトーマツ税理士法人は、全国規模の税理士法人として2002年に設立された税理士法人です。年々拡大している国内ネットワークは、現在では全国16都市に至り、また、一人ひとりの卓越したプロフェッショナルの税理士がその連携により大きな専門家集団を形成して、高品質なプロフェッショナルサービスを提供しています。
デロイトトーマツ税理士法人は、全世界 150カ国・地域を越えるグローバルネットワークを活用することで、現代のクライアントのニーズに合わせた多様かつ総合的な税務サービスを、経務社会の公正を守り、かつ品質を重視し、高度な知議および豊富な経験を備えたプロフェッショナルによって提供しています。
EY税理士法人は、法人税、国際税務、M&A関連の税務、さらには人事、コンプライアンスや当局報告、法務などに関連する税務問題において、豊富な知見や実績を有する税理士法人です。EY税理士法人は、EYメンバーファームとして、国際税務、M&Aや組織再編、移転価格に関する税務サービスなど、税務アドバイザリーおよび税務コンプライアンスの分野でサービスを提供し、クライアントの皆様の継続的な成長をサポートしています。EYメンバーグループ全体としては、日本で7,297名の従業員を擁しています。
Big4税理士法人の年収ランキングを紹介するにあたって、まずは税理士全体の年収から見ていきます。
令和4年賃金構造基本統計調査によると、公認会計士を含めた税理士の年収は約747万円でした。ただし、一般的に公認会計士は税理士よりも年収が高い傾向にありますので、税理士のみを持っている方の年収はもう少し低いということになります。ただし、税理士は年収幅が広いという特徴があり、働き方によっても年収は変わってくるので、どのような要素が年収を左右するかを抑えておくことが大切です。
Big4税理士法人では、多くの税理士が行っている記帳代行や決算業務を行うことはほぼありません。BIG4税理士法人は中規模以上の企業のクライアントがほとんどで、決済業務や税務申告書の作成についてはすでに社内システムが構築されていることから社内で行うことができるため、税務申告書の作成とレビューがメインの仕事となります。
こうした業務には専門的な知識と膨大なリソースが必要となることから、税理士法人に支払われる報酬も非常に高くなり、結果としてBig4で働く税理士の年収は高くなっています(詳しくは後述します)。
税理士でない方も含めたBig4税理士法人の年収ランキングは以下の通りです。
順位 | 法人名 | 平均年収 |
---|---|---|
1位 | PwC税理士法人 | 780万円 |
2位 | KPMG税理士法人 | 767万円 |
3位 | デロイトトーマツ税理士法人 | 756万円 |
4位 | EY税理士法人 | 751万円 |
4法人の平均年収は目安であるため一概には比較できないものの、最小値と最大値の差が29万円とそこまで大きくないことがお分かりいただけると思います。もちろん、他の税理士法人と比較すれば平均年収は高いといえますが、この4法人からどこを転職先に選ぶかを検討するのであれば、他の視点でも見ていく必要があります。
続いては、Big4税理士法人の初任給ランキングについても紹介していきます。同じ税理士法人でも、内定を出す人が税理士資格を持っているか、業務経験があるのかなどによって、大きく年収が左右されます。そのため初任給は幅を持った形での表記になってしまいますが、税理士業界の求人を多くお取り扱いしている当社ヒュープロで掲載している各法人の求人に基づいて、初任給(年収)のランキングをご紹介します。
1位:PwC | 750万円~1,200万円 |
2位:KPMG | 450万円~800万円 |
3位:デロイトトーマツ | 450万円~800万円 |
4位:EY | 500万円~1,000万円 |
ここでは平均年収ランキングと対照的に、PwC税理士法人が最も高い金額でした。しかし、これで初任給が高いからPwC税理士法人が最もよい転職先であると考えるのは尚早です。なぜなら、それぞれの採用している枠が異なるからです。例えば初任給の下限が低いKPMG税理士法人やデロイトトーマツ税理士法人は、税務業務の経験や税理士資格が無くても応募できる求人を掲載しています。一方でPwC税理士法人は、税理士に加えて英語力が求められるポジションがあったりと、高いスキルを求められる求人が多いです。
つまり、同じスキルや年齢の人が応募するにあたっては、Big4のうちどこに応募するにしても、初任給はそこまで大きく変わらないのです。
ここでBig4税理士法人の年収が高い理由について深堀していきます。その理由は、高度に専門的なサービスを提供することができるだけのリソースを有していること、そして、その他の法人を有しているからです。
ご紹介したようにBig4税理士法人いずれも四大監査法人と業務提携を結んでいため、監査法人グループとして他の会社が請け負ってきた仕事を受託することができます。要するに、グループ会社のなかで、高度に専門的なリソースをもった会社に仕事を任せるようになっているのです。
そのため、Big4税理士法人には多くの仕事がまわってきます。しかも、Big4の監査法人のクライアントは、日本を代表するような企業、上場企業ばかりです。そのため、依頼される仕事内容も高度なものとなりますが、それに見合った報酬を要求することができます。
だからこそ、Big4税理士法人で働く税理士には、それだけのサービスを提供しなければならない分、給与も高くなるわけです。
Big4税理士法人で働く税理士の年収は比較的高いことは上記で説明しました。それでは、中小税理士法人で働く税理士の年収は低いのでしょうか?結論から言えば、低いところもあれば高いところもあります。税理士法人で働く税理士の年収に差が出る理由は、税理士法人がどのようなサービスを提供しているかに依存しているからです。
中小税理士法人のなかでも、早期経営改善計画、経営改善計画、経営力向上計画、事業承継、経営助言、助成金・公的支援策の情報提供、金融支援・他士業との連携等の課題解決型サービスを顧客にトータルで提供している税理士法人は、比較的年収は高くなる傾向にあります。その理由は、税理士としての仕事以外にもコンサルティング業務などを請け負っているからです。
お客さんを代理して、確定申告、青色申告の承認申請、税務調査の立会い、税務署の更正・決定に不服がある場合の申立てなどを行う税務代理や、あなたに代わって、確定申告書、相続税申告書、青色申告承認申請書、その他税務署などに提出する書類を作成する税務書類の作成、お客さんが税金のことで困ったとき、わからないとき、知りたいとき、ご相談に応じる税務相談といった業務は、税理士の基本的な業務ではあるものの、この業務だけを行うことで高い年収を維持することは難しくなっています。
税理士の年収事情についてはこちらのコラムでも詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
「規模感」は、一般的に事業所の従業員数で表されます。そんなBig4税理士法人の規模感ランキングは、2024年9月時点で以下のようになっています。
1位:デロイトトーマツ税理士法人 | 1,153名 |
2位:EY税理士法人 | 約1,000名 |
3位:KPMG税理士法人 | 約820名 |
4位:PwC税理士法人 | 約800名 |
デロイトトーマツ税理士法人とEY税理士法人の2法人は、1,000名の大台を超えているということになります。しかし、働く人にとっては従業員数の差はそこまで気にならないようです。理由は、これらの法人が多くの拠点を持っており、拠点ごとで支店のような形で働くのが一般的であるからです。
Big4税理士法人は規模が大きい分、全国各地に拠点を展開しています。2024年9月時点での4法人の拠点数と支店所在地をご紹介します。
順位 | 法人名 | 拠点数 | 所在地 |
---|---|---|---|
1位 | デロイトトーマツ 税理士法人 |
18 | 東京、札幌、仙台、新潟、長野、高崎、さいたま、北陸、静岡、浜松、名古屋、大阪、広島、高松、松山、今治、福岡、鹿児島 |
2位 | KPMG税理士法人 | 6 | 東京、大阪、名古屋、福岡、京都、広島 |
3位 | EY税理士法人 | 5 | 東京、大阪、名古屋、福岡、沖縄 |
4位 | PwC税理士法人 | 4 | 東京、大阪、名古屋、福岡 |
従業員数が最も多いデロイトトーマツ税理士法人が、拠点数に関しても圧倒的に多いことが分かります。沖縄(EY)や札幌(デロイト)など、特定の法人しかない地域で働きたい方であればその法人を選ぶ必要があるでしょう。一方でなるべく都市部で働きたい場合は、主要4都市のみで拠点を展開するPwC税理士法人を選ぶのがよいでしょう。
Big4税理士法人の働き方について、以下の5つのポイントから見ていきます。
フレックス制度やリモートワークは週1回でも利用可能であれば「〇」とします。また、税理士試験勉強の応援環境については、専門学校に通う方の残業時間の調節が可能であったり、試験前休暇が取得可能であれば「〇」とします。
法人名 | 月平均 残業時間 |
年間休日 | フレックス | リモート ワーク |
試験勉強の 応援環境 |
---|---|---|---|---|---|
KPMG | 25時間 | 125日 | 〇 | 〇 | 〇 |
EY | 35時間 | 125日 | 〇 | 〇 | 〇 |
デロイトトーマツ | 35時間 | 120日 | 〇 | 〇 | 〇 |
PwC | 30時間 | 120日 | 〇 | 〇 | 〇 |
強いて挙げれば残業時間が少なく年間休日も多いKPMG税理士法人が最も働きやすい環境であるといえますが、残業時間はあくまでも概算でありそれぞれに大きな差が無いことから、働き方についても各法人で大差ありません。全ての法人がリモートワークやフレックスが利用可能であることから、どこもかなり働きやすい環境であるといえるでしょう。
結論から申し上げますと、Big4税理士法人の転職難易度はほぼ同程度といえます。もちろん、上記のような特徴に加えて社風の違いもありますので、Big4税理士法人のいずれか数社のみ受けるという方もいらっしゃるでしょう。
しかし大多数の方は、Big4にすべて応募していずれかからの内定を目指す、もしくは複数社から内定が出た際に初めてどこを選ぶか考えるという形が一般的です。そのため、応募者の層は基本的に似通ってきます。加えて各社の求める人材も極端に大きくは変わりません。
結果、4法人の転職難易度に関してもほぼ変わらなくなるというわけです。当然ですが、他の法人に比べて圧倒的に倍率が高いため、難易度も高いです。
ここまでのBig4税理士法人の様々なランキングについてご紹介していきましたが、結論としてどの視点でも大きな差はないことがお分かりいただけたかと思います。ですので、大手の税理士法人で様々な経験を積みたい方については、4法人に幅広く応募することをオススメします。
幅広く応募して複数の法人から内定をもらった場合や特定の法人に絞って転職活動を進めていきたい場合は、ご自身が何を大切にして仕事選びをしたいのか問いかけてみてください。それを叶えられる可能性が高い職場を探せば、自ずと選ぶことができるでしょう。
ここではよくあるご希望に沿って、いくつか例を挙げさせていただきます。
勤務地を絞って職場を選びたい場合は、事務所の所在地も重要なポイントとなります。もし、なるべく転勤などは避けたい、あるいは地元で働きたいといった希望がある場合は、拠点によって事務所を選択するということを考慮に入れてみてはいかがでしょうか。
先述した通り、Big4の中で年収に大きな差があるわけではないので、他にも希望条件がある場合はそちらを優先した方が良いでしょう。どちらも平均年収が高いので、全法人にエントリーするというのも手です。
こちらについては数値データや企業のHPだけではほとんど分からない部分ですが、スキルアップをしたい、とかワイワイした雰囲気で働きたいなどの希望があれば当社のような士業・管理部門特化の転職エージェントを活用し、自分にマッチするのか確認してみると良いでしょう。
昔とは違い、税理士の数も多くなって結果として、サービスの売り手(供給側)が多くなっているのに対して、サービスの買い手側(需要側)の数はそれほど増えていません。そのため、税理士法人同士の競争も激化しており、税理士法人同士の価格競争が起こっています。税理士法人がこの競争に勝ち続けていくためには、従来の税理士が行っていた税務代理などのサービスだけではなく、付加価値の高いサービスを提供していかなければなりません。
だからこそ、税理士は、税理士法人を設立することで、専門的で高度なサービスを提供できるようにリソースを集約して生き残りを図っているのです。こうした競争に勝っている税理士法人こそが高い報酬を得ることができるので、そこで働く税理士の年収は高い水準で維持されています。
また、税理士として働いている人は、どうしても周りの年収相場が気になってくるかと思います。今の年収に少しでも不満がある方は、ぜひ下記のページより、どのような最新の求人が出ているのか『HUPRO(ヒュープロ)』のエージェントサービスを活用してチェックしてみてください。