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黒字倒産とは一体?黒字でも会社が倒産するってどういうこと?

HUPRO 編集部
黒字倒産とは一体?黒字でも会社が倒産するってどういうこと?

会社が倒産すると聞いたとき、多くの方がイメージするのが、会社の収支が悪化して赤字となり倒産するというものだと思います。しかし、実際には会社が倒産するのは赤字の場合に限られません。今回は、会社が黒字の場合に倒産する、いわゆる黒字倒産について解説します。

黒字倒産とは

黒字倒産は、会社の帳簿上の収支は黒字であるにもかかわらず、会社が現金を有していないために、銀行や取引先に支払いをすることできず倒産する場合のことをいいます。

黒字であるにもかかわらず、倒産するというのは違和感があるかもしれませんが、会社が倒産するのは、赤字だからという理由だけではなく、外部へ支払いができなくなってしまった場合、つまり支払不能に陥った場合に倒産します

そのため、逆を返せば、赤字の会社でも担保によって銀行から融資を受けたり、増資により資金調達が行われれば、一旦は支払不能にはならないため、すぐに倒産するということにはなりません。しかし、赤字が続けば、会社の資産を支払いに充てる必要があるため、会社の資産は減少していきますから、最終的には支払不能となって倒産する可能性が高いです。勘違いしないように気をつけるべきは、この場合でも会社が倒産するのは、あくまで支払不能となったからであり、赤字だからではありません。

黒字倒産する場合

では、黒字倒産はどのようにして起きるのでしょうか。その理由は、会社間の取引が信用取引によってなされているところに由来します。会社間の取引では、取引ごとに現金による決済を行うことはなく、月末などに1か月分の代金をまとめて後で支払うか、手形による支払いを受けるというのが一般的です。

このような取引を信用取引といいますが、信用取引が行われている場合は取引から現金収入が得られるまでの期間にタイムラグが生じます。そのため、売上げが上がっていたとしても、自社の支払いの期限までに現金収入が得られていない場合には現金が手元にないため、必要に応じた支払いができないといった場合が生じるのです。

例えば、1月に3,000万円分の商品を3月末日に支払う約束で仕入れたとします。その商品を2月に4,000万円で4月末日に代金を受け取る約束で売った場合、3月末日の時点で販売した商品の代金を受け取れていないため、仕入れ先に支払う現金がありません。この場合、会社の収支は黒字ですが、仕入れ先へ仕入れ代金を支払うことができなくなっているため倒産となってしまう可能性があります。

黒字倒産の原因

黒字倒産は手元に現金がないため、支払不能になってしまい、生じることを見てきましたが、ではどのようにして手元に現金がなくなることが多いのでしょうか。一般的には次のような場合があげられます。

・売り上げに比べて仕入れが多くなった場合
・所得税や法人税の納税を行った場合
・銀行からの借入金の返済に充てた場合
・取引先の倒産により売上が回収できなくなった場合

売上げに比べて仕入れが多くなってしまった場合には、その分支払いが多くなるため、手元の現金は減っていきます。また、所得税や法人税のようにまとまった金額が手元から出ていくときも、黒字倒産にならないよう注意を払うことが必要な時期といえるでしょう。会社の収支はどんなに黒字であっても、以上のような場合には、手元にある現金が出て行ってしまうため、自社が支払いを行う場面で現金が不足しているといった事態になってしまいます。倒産のリスクは黒字であっても、手元に現金がない場合には常に付きまとうことになることがわかります。

黒字倒産の原因

黒字倒産を避けるためには

黒字倒産を避けるための対策としては、以下のような対策が考えられます。

①入金と支払いの時期を調整する
②在庫管理を徹底する
③大口の案件は着手金や前金をもらう
④与信管理を行う

①入金と支払いの時期を調整する

黒字倒産が生じるのは、自社への入金の時期が、支払の時期より後に来るために起きることは見てきました。そこで、入金の時期を可能な限り早くなるようにし、自社の支払いを後に回せるよう調整できれば黒字倒産を回避しやすくなります。取引先と交渉する必要がありますが、黒字倒産の回避に効果的といえます。

②在庫管理を徹底する

在庫が売り上げに比べて多くなれば、仕入れに必要な支払いの分だけ、手元にある現金が出ていくことになります。そこで、在庫管理を徹底し、過剰在庫がある場合には在庫を減らすなどすることで、仕入れに要する支払いを減らすことにつながります。

③大口の案件は着手金や前金をもらう

①ともつながりますが、大口の案件ほど入金の時期が後になりやすい傾向にあるため、自社の支払いの時期までに現金が得られないといった事態になりやすいと言えます。入金の時期を早めることができるのが理想ですが、それが難しいようであれば、着手金や前金といった形をとり、早い段階で現金収入を得ておくことで支払い用の現金を確保することができます。

④与信管理を行う

与信管理とは取引先の信用情報を調べ経済状態を把握することです。取引先からの売上支払いを想定して仕入れをしたのに、取引先が債務不履行となり倒産した場合、売上代金の回収ができずに、自社も倒産のリスクとなってしまいます。そういったことにならないよう、事前にこうした与信情報を得ておくことで、信用取引をどの程度まで行えるかを把握し、その範囲内での取引に収めることでリスクを最小限に減らすことができます。

黒字倒産を防ぐために重要な評価指標

会社の経営者あるいは経理財務責任者として、自社の黒字倒産を防ぐためには、以下の2つの決算書の特徴を捉えておくことが重要だと言えます。

損益計算書

損益計算書とは、会社の利益を知るための決算書類です。英語では「Profit and Loss Statement」であり、頭文字をとってPLとも呼ばれます。損益計算書には収益・費用・利益が示されており、決算時に収益から費用を差し引いてどのくらいの利益が出たのかがわかるようになっています。そのため、企業が何に費用を使い、どれほどの売り上げ・利益が出たのかを可視化することができます。

また、損益計算書の変動費と固定費を分けることで、黒字と赤字の分岐点である「損益分岐点」を把握することが可能になります。損益分岐点は、黒字の会社なら売上がどの程度まで低下すると赤字になってしまうのか、赤字の会社であれば黒字にするためにはどれほど売り上げを増加させる必要があるのかを見極めるための指標となります。

キャッシュフロー計算書

キャッシュフロー計算書は、会社のキャッシュの増減を一期間で示したものです。「営業キャッシュフロー」「財務キャッシュフロー」「投資キャッシュフロー」の3つに分かれています。
これによって会社が営業活動でどれほどの資金を獲得し、その資金をどのように使用したのかを読み取ることができます。どれだけ売り上げをあげようとも、その回収に時間がかかってキャッシュがなくなると、借入金の返済や、商品の仕入代金を支払うための資金調達を行わなければならず、黒字倒産になる可能性があります。キャッシュフロー計算書を正確に読み取ることで、このような黒字倒産の回避につながります。

まとめ

以上、黒字倒産について解説しました。会社が倒産をするのはどういうときなのかというのは、経理財務担当はもちろんですが、営業マン含め、ビジネスマンであれば、みんな知っておくべきです。自社が黒字倒産にならないように、常に取引の際には、売上回収までの期間も気にして、契約締結まで進めるようにしましょう。

この記事を書いたライター

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