資格取得難易度が高く、高収入のイメージの税理士。働きながら税理士試験を目指す方が多く、合格者の平均年齢は他の国家資格に比べ高い傾向にあります。
そして、無事に試験合格して税理士として転職する際、年齢はかなり気になってくると思います。未経験者から税理士になる方も、すでに税理士としてキャリアのある方も、転職はさらなるキャリアアップとして大きな意味を持ちます。今回は、税理士の年齢別の転職難易度や転職事情について説明します。
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結論から申し上げますと、税理士の転職では年齢に上限はありません。
雇う側が求めるスキルや経験をもっている場合には年齢にかかわらず採用されるでしょう。
下記の通り、税理士は平均年齢が非常に高い業界です。税理士は合格して税理士として登録する年齢が比較的高いため、転職者の平均年齢もおのずと高くなる点からも、「何歳だから転職できない」ということはほとんどないといえるでしょう。
ただ、詳細については後述しますが、年齢に合わせて転職で問われる条件が異なる点には注意が必要です。
税理士に限らず、転職の世界では「35歳限界説」という言葉があります。20代の若手と呼ばれる時期を過ぎた30代、40代以降は転職をするのが難しいというものです。
しかし、上述の通り、税理士の場合は年齢の上限なく転職が可能です。理由としては以下の2点が挙げられます。
税理士の資格取得には時間がかかります。
税理士になるためにはまず税理士試験に合格する必要があり、合計5科目を受験します。一般的に全て合格して資格を取得できるまでには、合計4,000時間の勉強が必要と言われており、取得までに時間がかかる資格であるといえます。
ただ、この試験は一度に5科目合格する必要はなく、科目合格制度というものを使い、1科目ずつ合格を重ねていくことも可能です。そのため、働きながらでも勉強して合格を目指すことが可能であり、最終合格までに年単位の時間がかかる場合もあります。
このように、資格取得が長期化しやすいため、税理士の平均年齢は必然的に上がりやすく、30代、40代、さらにはそれ以上の年齢で転職することも税理士業界では一般的なのです。
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税理士業務においては、年齢より税務に関する知識や経験値が重視されます。税制の改正に対応しながら豊富な知見を持つことはもちろん、それを実際の業務において活かして対応することができる経験やスキルをが求められます。また、顧客対応によってはコミュニケーション能力なども求められ、会社に合っているかその相性についても見られます。
これらの必要な経験やスキルを有していれば、年齢が高くても転職市場で高い評価を受ける傾向にあります。
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以上の理由から、税理士の転職では35歳の限界はないと言えるでしょう。
一方、税理士の仕事は単純な知識力だけではなく、経験によって厚みが出やすい業務の性質を持っています。そのため、若手のうちに仕事の基礎力や経験を得られなかった場合に転職は難しいというのは事実でしょう。
上述の通り、税理士の転職に年齢の上限はありませんが、年齢が上がるにつれ求められるスキルや経験は異なります。
ここからは、年齢別の転職事情とそれぞれの年代で求められるものについてみていきましょう。
20代では転職は比較的難しくないと言えるでしょう。採用する会社や事務所側もポテンシャルを見ているので、実力は入社してから鍛えるものと考えています。税理士試験の科目にひとつでも合格していれば、未経験でも採用の可能性はかなり高いと考えていいでしょう。
〝若さ〟が、そのまま採用の決め手となることも珍しくありません。
もちろん、一定規模の会社の年次決算書作成経験や税務申告書の作成経験があれば、即戦力として採用が決まりやすくなります。
また、税理士事務所への転職だけでなく、仮に税理士事務所勤務であっても、20代であれば一般の事業会社への転職も比較的スムーズです。
30代になると、一通りの業務において責任ある仕事が任されはじめ、経験もそれなりについてきます。日頃の業務にて、年次決算書や税務申告書の作成はもちろん、場合によっては管理会計・連結決算書作成経験といった比較的高度な経験を求められるケースが増えてきます。
20代がポテンシャルで採用されるのに比べて、30代での採用は経歴を重視される傾向が強まります。そのため、特に30代後半にもなってくると、年齢に見合った実績がないと転職難易度は高くなってきます。
未経験の場合はなおさら難易度が高くなり、税理士試験に合格していない人は合格見込みがあるレベルに達していることや、前職での成果を明確に伝え、それを転職先で十分に生かせるかどうかを判断されると考えられます。最低でも科目合格レベルは必要となってくるでしょう。
40代は責任ある仕事は当たり前にこなせる必要があり、多くのケースではマネジメントの能力も問われてきます。面接では、具体的に何名のメンバーを指導してきたのか。どのような指導を行ってきたのか。上に立つ人間としての心構えなど、リーダーシップを深く掘り下げて、人柄を注意深く見られる傾向があります。
すでに税理士としてのキャリアがある人は、前職での実績が転職先でどのように利益になるのかを説明することで、採用される可能性は十分にありますし、経験を活かして一般企業やコンサルティングファームなどに転職ができれば大きなキャリアップも十分に可能です。
また、未経験で資格もない場合、現状は人手不足で売り手市場となっているので、全く不可能ということではないですが、税理士法人や事務所に転職することはかなり厳しいと見ていいでしょう。
実際に40代になってから試験勉強を始めて合格する人もたくさんいますので、本当に税理士法人で働く覚悟があるなら、まず数年試験勉強に専念して、税理士資格取得を目指すことも一つでしょう。もしくはアルバイトやパートとして勉強時間を確保しつつ、とりあえず業務経験を数年積んでから、いくつか科目合格をした後に正社員としての転職を狙うというのも一つの手です。
50代になれば、一般事業会社での採用は初めから高いポジションでない限り、一般的には難しいでしょう。その場合、税理士法人・税理士事務所のほうが採用の可能性は高いです。中小企業診断士・社会保険労務士などの業務に関連する資格を取得しておくと、税理士法人・税理士事務所での採用が有利に働くでしょう。
税理士法人や税理士事務所では、企業の人事部機能もアウトソーシング先として引き受けていることも少なくないため、社会保険労務士の知識や経験を活かせる場面が増えてきます。
また、所長の高齢化により事業承継など、一昔前でも見られなかった50代での税理士募集案件も多くなっているのが最近の傾向と言えます。特に50代以上の場合、事務所経営まで任せられるという税理士への需要は高いです。そうした背景から、50代の税理士にも一定の採用ニーズがあると言えます。
〈参考記事〉
厚生労働省が平成27年に発表している税理士と公認会計士をあわせた平均年収は700万円程度となっています。
しかし、ひとえに税理士と行っても収入には大きな幅があり、個人の税理士事務所など比較的規模の小さい事務所で雇われている税理士は年収300万円を下回るケースもあります。
一方で大手税理士法人や、独立開業して成功している人、コンサルティングファームなどで税理士として働いている人は、年収にして1,000万円を優に超えているなど、高年収なケースもあります。
年齢ごとの年収推移としては、大手税理士法人に勤める一般的な税理士の方で20代が500万円~900万円、30代で900万円~1,200万円、40代で1,200万円~1,500万円、50代以降で1,500万円~となっており、普通の会社員の平均と比較するとやはり高収入を得られることがわかります。
転職により年収アップを目指す場合には、上記の年齢ごとの年収の目安と現在の年収を考慮することが重要です。
〈参考記事〉
ここからは、年齢に関係なく、税理士の転職で求められるスキルについて解説していきます。企業が求めるスキルを理解していないと、他の求職者との比較で不合格になる場合もあるので、求められるスキルについて十分に理解し、積極的にアピールすることが重要です。
上述の通り、税理士はクライアントと密にかかわりながら仕事を行うため、コミュニケーション能力は必要不可欠です。
例えば、税務相談や税金に対するアドバイスをする際にも、相手に分かりやすく説明する力が必要であり、うまく伝えることができなければ業務が進まず、場合によっては契約破棄のリスクもあります。さらに、クライアントによっては経営者や上層部を相手にすることもあるため、社会人としてのビジネスマナーを心得たコミュニケーション能力は年齢にかかわらず求められるでしょう。
税理士として、基本的な税務業務ができるのはもちろん、近年ではプラスアルファのスキルや知識がある税理士が特に求められる傾向があります。そしてプラスアルファのスキルの中でも需要が高まっているのが、相続税とM&A業務、そして国際税務です。その背景としては、高齢化による中小企業の後継者不足問題や、日本企業の海外進出などの要因が挙げられます。
このように、今後ともニーズの高い業務において豊富な知見や知識を持ち、専門性を出すことができれば、転職市場でも高く評価されるでしょう。
近年では、海外進出する企業の増加や外資系企業の増加、また国際会計基準を導入する企業の増加など、企業のグローバル化により、税理士にも英語力が求められる場合があります。
こうした需要から、英語力を持っていると国際税務を行うBig4などの大手税理士事務所やグローバル展開する一般事業会社などへの転職を有利に進めることができるでしょう。
〈参考記事〉
では、実際に税理士の転職を成功させるには何をしたらよいのでしょうか?
20代の場合、上述の通り、業界全体で見ても希少な存在のため、無資格未経験であってもポテンシャル採用として転職活動を有利に進めることができるでしょう。
20代で転職してどういうキャリアパスを描きたいのか明確にしたうえで、アピールポイントと志望動機を整理し、面接対策も欠かさずに行うことが重要です。
30代では若手より経験を問われる立場であるため、複数の科目合格や事務所での勤務経験をアピールすると良いでしょう。ただ、税理士業界では経験やスキルが重視されるものの、年齢が上がるにつれ求められるレベルが上がるため、早めに転職することをおすすめします。
40代の場合、上述の通り、専門職である税理士の中でも管理職になる人材が必要とされます。そのため、前職での業務経験はもちろん、人材マネジメント経験が求められます。年間スケジュールをきちんと管理し、遅滞なく遂行されるようチーム管理ができるような責任感をアピールするエピソードを面接では用意しておくといいでしょう。
またどの年代においても、自身の年齢を考慮した転職活動を行うことが重要です。採用においては年齢により求められることが異なるため、自身の年齢に合わせて最善の方法を考える必要があります。
そこでおすすめなのが、業界専門の転職エージェントを利用することです。
税理士は士業に数えられる職業であるので、専門性の高い職業です。その専門性の高さを活かせる職場で働かなければ、税理士としてのスキルを活かすことができなくなってしまうだけでなく、給料まで下がってしまいかねず、転職は失敗に終わってしまいます。
そうした専門性の高い仕事は、一般の求人サイトには掲載されていないことも多いです。掲載されていたとしても、税理士としての専門性を活かせない可能性が高いです。そのため、税理士の転職に特化した転職エージェントを活用するのがポイントです。
税理士の転職に特化した転職エージェントには、税理士の高い専門性を求めている企業の求人が数多くあります。採用企業側としても、税理士としての高い専門性を求めているわけですから、普通の転職サイトに求人を出しません。基本的に、税理士の高い専門性を仕事に活かせる人材を求めている企業であればあるほど、転職エージェントを活用しています。
ただし、税理士の転職に特化した転職エージェントは数多くあるので、目的に応じて最適な転職エージェントを選ぶ必要があります。
転職の成功確率をあげるためには、すでに数多くの転職を成功させてきた実績のある転職エージェントであるヒュープロがおすすめです。
記事をご覧になっている方の中には、35歳以上の税理士の転職成功事例を知りたい方も多いのではないでしょうか。
以下では、弊社でご支援した税理士の転職成功事例をご紹介します。ぜひご参考になさってください。
中堅税理士法人で7年程働かれたIさんは、社内での働き方や待遇について事務所とポリシーが食い違うようになり、転職を考えられていました。
そこで弊社キャリアアドバイザーは、業界特化ならではの求人の中から初回の電話面談でお伺いしたIさんのご希望の条件に合わせて提案させていただきました。
その中から2つに絞り、所長の人柄やポリシー、サービス提供のスタンスなどを弊社の企業担当者からしっかりご説明させていただき、納得できる事務所を見極めたうえの応募で内定獲得に至りました。
上述の通り、専門性の高い税理士法人などの求人は一般の求人サイトには掲載されていないことも多いですが、税理士に特化した転職エージェントであるヒュープロだからこそ、Iさんのご希望に応じた最適な求人をご提案できました。
中堅税理士法人に20年ほど勤務された40代前半のTさんは、勤務先で退職者が相次いだことで業務負担が増加し、家族と過ごす時間が減ったことからご転職を考えられていました。
この方は弊社のキャリアアドバイザーとの選考対策をしっかり行ったことが、転職成功の大きな要因といえます。
Tさんのこれまでの豊富な経験をアピールするための書類選考対策や面接対策を行いながら、応募先の事務所で求められるスキルとなぜそれらが求められるかといった背景まで丁寧にお伝えしました。この面接対策により、Tさん自身の強みや応募先とのマッチをしっかり答えることができ、この過程がとても役に立ったとおっしゃってくださいました。
最終的に、複数の法人から内定を頂き、その中でも休みの取り方の自由度が高いというTさんの転職の軸と合った事務所への転職を成功され、年収アップも実現されました。
ここからは、転職を考えている税理士の方から多く寄せられる疑問についてご紹介します。
結論から申し上げますと、税理士は何歳になっても働くことが可能となっています。一般企業でサラリーマンをしている場合、60歳から65歳までの間に定年を迎え、退職することになります。一方で税理士には定年がなく、心身健康であれば何歳でも現役で働き続けられます。
また、税理士の平均年齢は60歳以上といわれています。その理由として定年がないことが挙げられるのですが、そのほかにも、業務上長期的に続けやすいという特徴があります。税理士は法人税や所得税といった各種の税金における納税のアドバイスをはじめ、申告書の作成や提出などの業務を行います。そのため、依頼する企業側からしても、自身の企業内の状況を深く把握している税理士に業務を委託したいため、顧客との関係が途切れにくく、60代でも70代でも仕事の依頼が届くのです。
〈参考記事〉
未経験の場合、年齢によって資格の有無が転職の成功に影響を与えるでしょう。
上述の通り、20代の転職の場合は、未経験であっても税理士試験の科目にひとつでも合格していればポテンシャル採用される可能性はあるでしょう。
また、30代の転職は経歴が重視されるため、未経験の場合には税理士試験に合格見込みがあるレベルに達しており、さらに前職での成果を活かせるかというのも見られます。そのため、30代で未経験の場合にも転職は可能ですが、非常に難易度は高いといえるでしょう。
40代以上で未経験の場合は資格なしに転職することはかなり厳しいため、働きながら勉強時間を確保しつつ、まずは税理士資格取得を目指すことをおすすめします。もしくは、アルバイトやパートとして勉強時間を確保しつつ、とりあえず業務経験を数年積んでから、いくつか科目合格をした後に正社員としての転職を狙うというのも一つの手です。
いかがだったでしょうか。一昔前までは35歳までと言われていた税理士の転職の年齢ですが、今の時代は、スキルと経験があれば、40代以降でも転職に成功している人はたくさんいるため、あまり気にしなくてもいいでしょう。他の税理士との差別化に成功すれば、いまや、40代、50代になっても転職が可能な時代です。
もちろん、20代、30代で若い方が転職で有利になることはありますが、企業側が求める実務はもちろんのこと、コミュニケーション力やマネジメント力をアピールできれば、年齢の枠を超えて市場価値の高い税理士になれます。
自分がどのようにキャリアアップしたのか、また自分の今までの経験をどう活かせるかを明確にして、そこに合う会社や転職先を探してみましょう。