税理士事務所は、税金の計算や税務相談など専門家としての役割を求められます。しかし税理士資格がなくても、税理士補助として働くことが可能です。今回は、そんな税理士補助の役割や具体的な仕事内容、そして転職を目指すにあたって気になる年収や向いている人の特徴、働くメリットなどについて詳しく解説します。
税理士補助とは、税理士事務所などにおいて税務代理や税務書類の作成、税務相談などの税理士の仕事を補助する、いわゆる税理士のサポート役です。
税理士資格を有していない限り、税理士補助は税理士だけが行える独占業務を行えません。ただ、税理士事務所では多様な業務を行わなければならないため、税理士だけでは仕事が回らないことも多いです。そんな中で税理士の監督下で、独占業務のサポートや独占業務以外の業務を行い税理士の負担を軽減するのが、税理士補助の役割です。
税理士の独占業務については、税理士法第2条1項各号において、以下の3つが規定されています。
税理士の独占業務については、以下の記事で詳しく紹介しています。
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税理士補助の仕事は様々ありますが、主に次の4つが大半を占めます。
経理事務代行とは、クライアント企業の経理処理の代行のことです。現在は経理業務をアウトソーシングしてコストカットする志向が強いので、そのような企業の経理業務を担当します。例えば、請求書・領収書・現金出納の仕訳業務を行ったり、会計ソフトへの伝票入力、勘定元帳の作成を行ったりします。また、決算書の作成まで一任されるケースも少なくありません。
総務業務サポートとは、クライアント企業の人事・総務業務の代行のことです。クライアント企業の勤怠管理や給与計算、各種社会保険手続きなども業務範囲となるため、非常に広範囲な業務を任されることになります。
巡回訪問とは、クライアント企業の帳簿などをチェックしたうえで、経営者・経理担当者と日常的に折衝することです。例えば、経理事務や総務業務を代行する場合でも、クライアント企業にも担当者がいるケースもあります。このような場合には、当該担当者と意見や方向性をすり合わせる必要がありますし、経理担当者が入力した会計データを原始資料とチェックし、残高試算表など、会社の財政状態や経営成績がわかる資料を作成した上で、経営者・経理担当者に説明することは欠かせません。
ここから発展して、顧問先の役員や経理担当者に税務や会計について、税務相談にならない範囲でアドバイス等を行うこともあります。
会計事務所での事務作業も税理士補助が担当することが少なくありません。クライアント企業に対する請求書発行業務や、税理士のスケジュール管理、来客対応など、日常的に求められる仕事は臨機応変に対応することが求められます。
税理士補助は主に以下の4つの特徴があると向いているといえます。全て当てはまるに越したことはありませんが、最低1つでも当てはまっていれば就業を検討してみましょう。
税理士補助は、税理士を目指す人にとって最適な職種といえます。学んだ知識を生かし実践することが可能なだけでなく、税理士補助として働くことで直接税理士からアドバイスをもらうことができたり、中には試験を配慮した有給休暇や費用の補助といった資格取得支援制度が存在するなど、メリットが多いことが最大の理由です。
税理士補助として仕事をする以上、専門性の高い業務を処理しなければいけません。したがって、自分から意欲的に知識を習得する姿勢を維持しましょう。税理士試験にチャレンジするのはもちろんのこと、必要であれば国際税務などのより高度な知識にも触れておけば、将来的に自分が税理士として仕事をする際の幅が広がるでしょう。
求める人材として、「人の役に立つ仕事がしたい人」や「人と話すのが好きな人」をあげる税理士事務所も増えています。そうした事務所が求める人材は、明るく前向きでコミュニケーション能力が高い人です。税理士事務所の職員は日常的にクライアントである中小企業の経営者とやりとりをすることが多くなります。そのため、様々なタイプの人たちと円滑にコミュニケーションを取れる人が求められます。
税理士補助は企業や個人のお金に関する数値を扱う仕事です。一つのミスがクライアントの納める税金の金額を誤りに導いてしまうケースがあります。不正申告が発覚するとクライアントに大きなダメージを与えることになるので、集中して極力ミスがないように業務にあたることができる人に向いています。
税理士補助として働くメリットがある一方で、気をつけなくてはならないポイントもあります。それぞれ見ていきましょう。
税理士補助以外で働きながら、もしくは働かずに試験勉強をすることももちろん可能です。ただ、いざ税理士試験に合格しても2年以上の実務経験をしないと税理士として登録できません。一方で税理士補助として試験合格前に実務経験しておくとすぐに登録することができるので、その後のキャリアプランをスムーズに実現できます。また、資格取得前から実務に慣れておきスキルとして身に着けておくことで、転職市場での市場価値を上げることができます。
税理士事務所の中には税理士補助の採用を進めるべく、受験勉強の時間を確保しやすい働き方やスクール代の費用補助など、資格取得のための勉強の支援環境を整えていることも多いです。税理士を目指すにはこれ以上ない職種であると言われているゆえんの一つでもあります。
先述した通り、税理士補助は資格取得によって年収が上がっていくケースがあります。税理士補助は税理士試験科目が給料に最も反映されやすい職種といえるので、税理士補助として働きながら税理士試験科目に合格していけば、実務を学べるだけではなく年収増も期待できます。
税理士補助には繁忙期があるので、仕事に専念しなければいけない時期があることを覚悟しましょう。上述のように、会計事務所では11月~5月までの半年間が繁忙期です。転職する会計事務所の規模にかかわらず多忙な時期になるので、経験は積めるものの体力的にも精神的にもハードです。繁忙期が長いと、税理士試験の受験勉強が思うように進まないリスクもあります。
個人経営の税理士事務所が多いことから、社会保険に未加入だったり、健康診断を行わないなどの税理士事務所も存在します。退職金制度が無い事務所も少なくありません。希望の福利厚生がある場合、その分応募できる求人が減ってしまうという面では、デメリットとも捉えられるでしょう。
未経験かつ資格なしであっても、税理士補助として税理士業界でのキャリアにチャレンジすることは可能です。
業界全体で人手不足が続いている中で、未経験者や資格のない方への募集を行っている事務所が増えているのが理由です。
もし、ご自身の経験や資格に自信がなくて転職に消極的になっている方も、心配する必要はありません!
ここで、士業・管理部門特化の転職エージェントである当社ヒュープロで、実際に税理士補助への転職を支援させていただいた事例をご紹介します。
別業界で働いていたものの「手に職をつけたい」と一念発起し、大学で学んだことと関係のある税理士業界への転職を目指したYさんですが、業界への志望動機がやや漠然としており、資格も取っていなかったことから、「本当にこの業界で働く覚悟があるのか」という部分がネックとなり、転職活動に苦戦されていました。
当社の担当キャリアアドバイザーは、そんなYさんの業界への志望理由を深堀した上で、未経験とはいえ前職の金融業界での経験はお金を扱う業務やその責任の重さに慣れているというアピールができるという点もお伝えしました。このポイントを重視して面接に臨むようになった結果、計2社からの内定を獲得。うち1社へのご承諾を、無事決められました。
このYさんをはじめとして、ヒュープロでは税理士補助への転職を支援した実績が多くございます。転職を検討されている方は、是非ご相談いただけますと幸いです。
ヒュープロでは、未経験歓迎の税理士法人、税理士事務所の求人を多数掲載しております。税理士業界に詳しい専任のキャリアアドバイザーが転職活動のサポートをさせていただきますので、ぜひご利用ください。
ここで、そんな未経験者が安心して働ける充実の教育体制が整ったオススメの転職先として、イクス会計事務所をご紹介します。
イクス会計事務所は東京都千代田区にあり、香港にも拠点を展開する会計事務所で、税務顧問のほか、確定申告業務、相続税申告業務、経理支援業務、創業支援業務、税務調査の立ち会いなどの業務を展開しています。
未経験からでも安心して働けるような教育環境やサポート体制が充実しており、入力業務については各種ツール・RPAにより最小限にしているため、成長につながる業務に集中できる環境といえます。
また、相続税や香港・上海進出を中心とした国際税務など幅広い業務が経験できるのも、税理士業界でキャリアを積んでいくにあたってのメリットといえます。
イクス会計事務所について、詳しい情報を確認されたい方は、以下より事務所様のサイトをご覧ください。
イクス会計事務所│HP
今回は税理士補助の役割働くや仕事内容、向いてる人の特徴、働くメリット・デメリットについて解説しました。
最後に、税理士補助に関するよくある質問に回答していきます。
税理士事務所への転職を考えているのであれば、簿記の資格取得を目指すことをおすすめします。特に日商簿記2級は必須資格として設定している事務所が多いです。一般企業の経理を担当した経験があり、日商簿記2級以上を取得している方などは即戦力として採用されやすい傾向があります。
また、税理士試験科目を1科目でも合格していれば、より有利となる傾向があります。税理士の資格取得を目指して、しっかりと勉強を始めていることをアピールできるからです。ただし、簿記検定に比べて難易度が高いので、無理に転職活動前に取得する必要はありません。
他にも、FP、不動産鑑定士や宅地建物鑑定士などは簿記や税理士試験科目ほどではありませんが有利に働きますので、履歴書などには漏らさず記載するようにしましょう。
結論から申しますと、税理士を目指さなくても税理士補助として働くことができます。
税理士補助は税理士を目指す人が就業する主要な職種ではありますが、かといって必ずしも税理士を目指さなければならないわけではありません。また、ルーティンワークが多いため休職しても仕事についていけないということがなく、子育てや育児からの復職がしやすいことから、女性の就職先もしくはパート先として魅力的であると言えます。
さらに、近年では税理士を目指す人が少なくなっており、税理士を目指しながら税理士補助として働く人材も不足しているようです。また、税理士になった税理士補助の人については、独立開業するケースがほとんどで、多くが長期的な就業が見込めるわけではありません。ですので、税理士を目指す人よりも継続的に長期間働いてくれて、役職や年収も一定の税理士補助の方が雇用するメリットが大きいと考える事務所も多いのです。
一般的な税理士補助の正社員の年収は、一般的な事務職の水準と同等か少し上回る程度が多いようです。具体的には大体年収300万円~500万円で未経験の場合は300万円程度が一般的です。税理士補助には正社員以外にも、派遣社員やパートといった働き方もあるため、それぞれの雇用条件等によって変動する点はご留意ください。
年収アップを成功させるには、資格を取るか評価されるスキルをつけるのが最も有効です。
税理士補助の年収は、資格手当という資格取得によって加算される福利厚生が採用されていることがあります。例えば、「1科目合格するごとに〇〇万円アップ」、「簿記1級に合格すれば資格手当加算」という形です。
資格がなくても業務の経験やスキルをつけていき、任される業務量を増やしたり業務レベルを向上させると評価が上がり、年収増につながります。
単価の高い案件を扱う特定の分野に専門特化している事務所で働くことで、ベースの給与を上げるのもよいでしょう。
また、転職市場でも高い評価となり、高年収を提示されやすくなります。
特に未経験者については、まずはじめに税理士事務所へ転職したいのはなぜかについて考えましょう。それまでは違う領域での仕事をしていたのにも関わらず、未経験で税理士事務所を志望するということは、それなりの理由や経緯があるはずです。どうして税理士業界に進もうと思ったのか、他の業界では成し得ないことを書けるとよいでしょう。
その上で、複数社応募している場合は各事務所へなぜ応募したか、を考えます。当然、「求人票に書かれている年収が高かったから」とか「家から近いから」といった理由であったとしたらそのまま伝えてはなりません。事務所のホームページや採用ページなどで事前に情報を集めておき、熱意が伝わる内容にしましょう。
そして、ご自身のアピールポイントも忘れず記載しましょう。特に未経験からの転職の場合は、実務経験のアピールができないため自己PRが難しいと思うかもしれません。
しかしご紹介したように、実務経験だけではなく所有資格や社会人経験、コミュニケーション能力といったこともアピールポイントになります。
しっかりと自己分析をして、税理士補助として生かすことのできるポイントを見つけてみてください。
例文などをより詳細に確認されたい方は、以下の記事をご参照ください。
志望動機を自分一人では作りきれないという方も、ヒュープロのキャリアアドバイザーにご相談していただければ、サポートさせていただきます!