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米国公認会計士(USCPA)試験の難易度を合格者が徹底解説!

福永 勇治
米国公認会計士(USCPA)試験の難易度を合格者が徹底解説!

合格すれば監査法人への転職や国内外の会計職でのキャリアアップを大きく後押ししてくれる米国公認会計士(USCPA)試験。働きながら勉強して資格取得が可能と言われており、近年人気が高まっていますが、実際の難易度や合格率はどうなのでしょうか。2019年に米国公認会計士試験に合格した筆者が自らUSCPA試験の実態を徹底解説します。

米国公認会計士(USCPA)とは

米国公認会計士(USCPA)はアメリカの公認会計士の資格です。グローバルに認知されている会計プロフェッショナルの資格であり、アメリカ以外の多くの国々と相互認証制度があることが特徴的です。

具体的には、オーストラリア、カナダ、アイルランド、ニュージーランド、メキシコなどの国々と相互認証制度を持っています。そのため、各国において大学の単位取得や一部の試験に合格などの条件をクリアすることで、アメリカ以外の国でも会計士として働くことができます。

日本の公認会計士の資格が日本国内のみで有効であるのに対して、USCPAは相互承認制度を持つため、試験合格後は国内外を問わず活躍の場を広げることができるというメリットがあります。

米国公認会計士(USCPA)試験の概要

米国公認会計士(USCPA)試験は以下の4科目から構成されています。4科目全てにおいて、100点満点のうち合格点である75点以上を取得することで、USCPA試験合格となります。

AUD(Auditing & Attestation)(監査および諸手続き)
BEC(Business Environment & Concepts)(企業経営環境・経営概念)
FAR(Financial Accounting & Reporting)(財務会計)
REG(Regulation)(諸法規)

試験時間は4時間です。出題形式はAUD、FAR、REGは四択問題が50%、シュミレーション問題と呼ばれる長文穴埋めや計算が必要となる総合問題が50%となっています。BECのみ四択問題が50%、シュミレーション問題が35%、記述式の問題が15%です。

米国公認会計士(USCPA)試験の採点方法

採点方法は相対評価で行われており、難易度が高く受験者の多くが不正解の問題は配点が低くなり、難易度が低く受験者の多くが正解する問題は配点が高くなるという特徴があります。合格点が75点であるということからも、試験範囲全てを完璧にする必要はなく、基礎的なポイントをしっかり抑えて学習すれば合格が可能です。

試験は100点満点ですが、90点以上の高得点で合格する方の大半は英語ネイティブのアメリカ人受験者であり、多くの日本人受験者は75点~80点代で合格しています。

私は4科目全て70点台後半での合格でしたが、転職面接などで合格点を聞かれるようなことはありませんから、合格点さえ満たしていれば問題ありません。重箱の隅をつつくような難問をマスターしてまで高得点を目指す必要はないでしょう。

科目合格制度

米国公認会計士(USCPA)の4科目の試験は1年中好きなタイミングで別々に受験することができます。合格した科目は18カ月間合格のステータスが有効となるので、初めの科目に合格してから18カ月の間に残り3科目全てに合格する必要があります。合格から18カ月が過ぎてしまうと合格のステータスが無効となり、再受験が必要となります。

科目によって試験範囲のボリュームが大きく違うため、試験範囲を網羅するのに時間のかかる科目を1科目目に受験することによって、科目合格の有効期限である18カ月内に全科目合格しやすくなります。一般的には、試験範囲が広く、会計の基礎となる知識を問われる科目でもあるFARを1科目目に受験する方が多いです。

私もFARを1科目目に受験し、その後AUD、REG、BECの順番で受験していきました。後半に試験範囲の広い科目が残っていると、科目合格の有効期限切れのプレッシャーがかかってくるので、FARとREGは早めに受験したほうがいいでしょう。

各科目ごとの難易度については下記のコラムにて詳しく解説しています。

米国公認会計士(USCPA)の難易度

米国公認会計士(USCPA)試験は働きながら合格が可能、合格率50%などと言われていますが、実際のところどうなっているのでしょうか。USCPAの難易度を受験資格手続き、合格率、学習時間、英語力の4点に注目して解説していきます。

時間と労力を使う受験資格手続

米国公認会計士(USCPA)試験を受験するにはアメリカの各州に出願して受験資格を得る必要があります。出願する州は好きに選ぶことができますが、各州により受験資格を得るために必要な学歴要件が違ってきます。日本人受験者に人気の州は、ライセンス取得が可能なワシントン州、グアム州か受験要件が易しいニューヨーク州、アラスカ州です。

学歴要件に必要な大学の単位が不足している場合はUSCPA予備校を通してオンラインでアメリカの提携大学から単位を取得することが可能です。私の場合は大学で会計を専攻していたため、ニューヨーク州とアラスカ州の学歴要件を満たしており、ニューヨーク州で出願しました。大学で商学部や経済学部だった方は既に受験要件を満たしている可能性があるので、USCPA予備校等のサービスを活用し確認したほうがいいでしょう

当然ですが、全ての受験資格取得手続きは英語で行われます。大学から英文成績証明書を取り寄せて、不足単位があればUSCPA予備校を利用して単位を取得し、アメリカの学歴審査機関で審査を受け、受験要件を満たしているアメリカの州に出願するという一連の受験資格取得手続きには時間と労力がかかります。実はUSCPA試験は受験までたどり着かずにUSCPAをあきらめる方が多いのも事実です。

私は独学でUSCPA試験に挑戦したため、上記の手続きをすべて自分でやる必要がありました。大学の講義の英文シラバスが必要だったため、大学から取り寄せたシラバスを自分で英訳したり、手続きが一向に進まなかったので国際電話をかけて催促したり、すべての手続きを終えるまでに3カ月ほどかかりました。試験前からなかなか骨の折れる作業でした。

米国公認会計士(USCPA)の難易度

20%前後の合格率

米国公認会計士(USCPA)試験の運営を行うAICPA(American Institute of Certified Public Accountants)が四半期ごとに全受験者の科目合格率を発表しています。期によって多少の変動はありますが、平均して50%以上の合格率となっています。

合格率50%以上と聞くと、割と受かりやすそうな印象を受けたのではないでしょうか?しかし、この合格率は全受験者の合格率です。英語ネイティブのアメリカ人と比較して日本人受験者の合格率はこれより低くなると考えられます。最近はAICPAから日本人受験者の合格率データが発表されなくなってしまいましたが、2014年のデータでは日本人の科目合格率は平均して30%前後です。

さらに科目合格には18カ月の有効期限があるので、日本人受験者の中で最終的に全科目合格までたどり着くのは20%前後となります。合格率10%前後の日本の公認会計士試験と比べると受かりやすいと言えますが、簡単に合格できる試験ではありません。

2,000時間の学習

米国公認会計士(USCPA)試験の合格に必要な学習時間は1,000時間と言われることもありますが、実際には1,000時間で合格できるのは既に日本の公認会計士試験に合格している方や帰国子女の方などといったケースに限られるでしょう。実際には早くても1,500時間程度で、2,000時間以上かかる方も多いです。

私の場合、大学で会計学を専攻し、TOEICも860点と、ある程度会計と英語のバックグラウンドのあった状態でしたが、合格までに2,000時間以上の勉強が必要でした。また、働きながらこの勉強時間を確保することは非常に難しいです。1年半で2,000時間勉強するには毎日3.6時間勉強する必要があります。

会社員の場合、平日は仕事で8時間働くうえに3.6時間の勉強時間を捻出するのは至難の業と言えるでしょう。私は結局、専業で試験勉強だけに集中することで、なんとか1年半で合格することが出来ました。

TOEIC800点の英語力

試験の問題文、回答の選択肢はすべて英語ですから、英語を読む力が求められます。更にBECでは記述式の問題が15%出題されますから、英文ライティングの力も必要といえるでしょう。英語を聞きとる、話す能力はUSCPA試験には必要ありません。

私の場合、USCPAの勉強開始時点でTOEIC860点ありました。USCPA試験の文章自体は短文が多く、会計の専門用語も勉強中に自然と覚えられる程度の量なのでそこまで苦労しませんでした。

しかし、試験時間4時間の間に四択問題66問と長文問題8問を解き終えるには、英文を読むスピードが非常に重要であると感じました。実際に初めて受けたFARでは問題を最後まで解き終えることができず59点で不合格となってしまいました。英文を素早く読んで回答する力をつけると同時に試験中のペース配分には十分気を付けたほうがよいでしょう。

BECの英文ライティングに関しては、会計士やコンサルタントとしてEメールを使って、実際に予想されるクライアントとのやり取りを行う問題がよく出題されます。基本的な英文メールの作成能力に加えて、会計処理の方法等について端的に回答もしくは意見を述べられる程度の英文作成能力が必要です。自分の言葉で説明する必要があるため、四択で答える問題より深い理解が求められます。

参考までに、USCPA受験者の英語力の目安として、USCPAの勉強を開始する時点でTOEIC800点以上取得している方が50%以上を占めています。USCPA予備校の教材は日本語で解説されているのでUSCPAの勉強自体はTOEIC600点前後でも可能ですが、合格するにはTOEIC800点程度の英語力が必要といえるでしょう。

USCPA予備校の利用が一般的

米国公認会計士(USCPA)試験に挑戦するほとんどの人がUSCPA予備校を利用します。
USCPA予備校を利用するメリットは以下の2点です。

・USCPA受験資格手続きのサポートが受けられる
・最新の試験範囲変更に対応した教材を使って学習できる

USCPA受験資格手続きには時間と労力が必要ですが、USCPA予備校のサポートを受ければ迷うことなくスムーズに進められます。また学歴要件に不足している単位がある場合は、提携しているアメリカの大学から必要な単位を取得することも可能です。

また、アメリカの税法に変更があったときなどはUSCPA試験問題にも影響が出てきます。こういった変更に対応した最新の教材を手に入れられることも、USCPA予備校を使う利点です。

少数派ではありますが、一部の人は独学でUSCPA試験に合格することも可能です。実は私も独学で合格したうちの一人です。独学で受験するには受験要件に必要な大学の単位などを既に満たしている必要がありますが、それさえクリアできれば教材はメルカリやはヤフオクなどで手に入れることができるため、独学でUSCPA試験に挑戦することが可能です。

ただ、やはり面倒な受験資格手続きのサポートが受けられること、最新の教材で学習できることのメリットは大きいため、金銭的な余裕があるならばUSCPA予備校を利用するべきでしょう

まとめ

簿記2級の英語版などと言われることのある米国公認会計士(USCPA)資格ですが、上記の理由より確実に簿記2級よりも難易度は高いといえるでしょう。しかしながら日本の公認会計士試験と比べると受かりやすく、国際的な評価も高い資格であるため、会計プロフェッショナルとして国内外で働きたいといった方にはおすすめの資格です。

USCPA予備校を上手に活用し、毎日学習する環境を確保出来れば日本人にも十分合格可能な資格です。みなさんのUSCPA挑戦を応援しています!

この記事を書いたライター

金融ライター兼会社員。ニートから独学で勉強しUSCPA(米国公認会計士)試験に合格。合格を機に東証一部上場企業の経理へと転職を成功させ、海外を含む連結決算業務を経験。ライターとしてはUSCPA試験の合格方法など会計に関する幅広い内容を執筆。
カテゴリ:資格試験

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