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試用期間は企業のリスクヘッジ?本採用見送り(試用期間解雇)の注意点を解説します!

HUPRO 編集部
試用期間は企業のリスクヘッジ?本採用見送り(試用期間解雇)の注意点を解説します!

採用はお見合い結婚に例えられます。正直やってみなければわからない側面があり、数値や規則で割り切れない場面が多いため、企業はリスクヘッジとしてお試し期間を定めます。現法上、一度採用した人財を解雇するのは簡単ではない…。

こういった認識は広まっていますが、試用期間であれば本採用の見送りということで解雇できるのでは?とはだれもが想定することではないでしょうか。今回は試用期間の法的性質、本採用の見送り(試用期間解雇)とその運用の注意点について解説していきます。

試用期間とは

試用期間とは採用後に実際の勤務を通して従業員の適性などを評価し、本採用をするかどうかを判断するために設ける期間を指します。

求人内容の備考欄等に、比較的こっそりと記載されていることが多い試用期間。「期間は定めるけどほぼほぼ継続雇用します」といった、なんとなく儀礼的に設定する傾向がありますが、これも立派な労働契約です。

厳密には「始期付解約権留保付労働契約」と位置付けられ、契約を結ぶのと同時に雇用の効力/責任が伴うものの、企業は期間を決めてその契約の解約権を留保するといった性質の契約形態です。

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試用期間の解雇について

試用期間中に本採用するには至らないと判断する場合、留保していた解約権を行使して、その労働契約を解約する(解雇する)ことが可能になります。

ただし、自由に解雇できるわけではありません。労働者側からすると、試用期間とは言え、その企業に所属しており、実質就職活動はしない状態になります。

言い換えれば、他の企業に就職する機会を放棄している状態です。ゆえに解約権行使(解雇)をするにはお互い納得のいく(認めざるを得ない)理由が必要となります。

ではそういった理由とはどんなものか。程度にもよりけりですが以下の3つのケースが多く見られます。いずれの場合であっても客観的で合理的な判断(誰が見ても納得できる状態)が必要となります。

1.勤務状態が悪い

上司の指示に全く従わない、周りとの調和を著しく乱す(反抗的な姿勢、ハラスメント等)など、職場の雰囲気を壊してしまうようなケースです。

2.規則を遵守しない

企業人としての最低限のルール(遅刻欠勤を繰り返す、アポイントの時間を守らない等)やその企業のルール(就業規則等)が守れていないケースです。正当な理由があったり、後天的な病気によるものであれば猶予はありますが、はた目から見てあまりに度が過ぎていたり、明らかに虚偽だったことが判明した場合は対象となります。

3.経歴詐称

採用選考段階で提出された書面に明らかな虚偽記載(知識がない経験を記載している、所属したことのない企業名が記載している等)がある場合で、リファレンスチェック等を行う企業は特に可能性のあるケースです。そもそもその企業が求められている能力や知識/経験を持っていないことが疑われます。労働者本人が意図的に行っていますので解雇理由としては認められやすくなります。

先にも記載の通り、いずれの場合であっても客観的で合理的な判断が必要となります。例えば、「勤務態度が悪い」と判断する場合、その事象はどの規則のどの規定に反していて、どのような状態を指しているのか、だれが見ても善悪が明らかな状態である判断される基準等が必要となります。

試期間解雇のタイミング

何らかの理由で試用期間解雇を行う場合、対処法は試用期間終了までの残日数によって違ってきます。

試用スタート~14日以内

実は労働法上、「試用期間」に対しての制限は存在しません。労働基準法(第21条)における入社から14日間は解雇予告期間を設けずに即日解雇できる(試みの試用期間)という規定から、試用期間がスタートしてから14日以内に解雇を行う場合は解雇予告なしに解雇を行うことが可能となる解釈が成り立っています。

予告なしとは言え、解雇理由に関しては前述の通り、客観的で合理的な理由は必要となります。

試用スタート~15日以降

上記の「試みの試用期間」規定日数を超えて(試用期間開始から15日以上過ぎて)解雇を行う場合は、その日数が長くても短くても通常の解雇と同様の扱いとなります。30日以上前の解雇予告が必要となり、予告を怠ると解雇予告手当を支払う義務が発生します。

参考:労働基準法|厚生労働省

運用に当たる注意点

運用に当たる注意点

試用期間とは企業が採用した人財に対して自社に適合するかどうかを判断するために設定する制度であり、本採用を行うかどうかを判断することができる期間のことを指します。

企業側に有利な契約である分、労働者側への配慮は重要で、解雇理由でこじれた場合は訴訟に発展するリスクも想定されます。ここでは試用期間解雇を行う際に最低限注意する3点をお伝えします。

期間

試用期間の長さは法律で義務付けられているものではなく、企業によって期間はバラバラです。一般的には3か月から長くて6か月が妥当な範囲内ではないでしょうか。

業務内容の性質上、短い期間では判断しづらかったり、通常解雇より解雇が認められやすい等の理由で長く設定したいと思うのは企業側の心理として理解しますが、労働者の立場から見るとあまりに一方的で不利な条件であることも理解しましょう。

実際過去の労働裁判例でも、必要以上に期間が長かったり、期間延長されたりといった判例では民放90条による公序良俗に反し、無効となるケースが見られます。

規定

試用期間に関する規定をそもそも定めていない、雇用契約書に記載していないケースは決して少なくありません。

試用期間という言葉としての認識や活用意識はあっても、「明文化されていないと効力がない」ことまで理解していない。整備がなされないことによって被害を被るのは企業側です。人財不足の折、とりあえず人員確保を優先しがちですが、まずは自社の受け入れ態勢にほころびはないかを確認/整備を強くお勧めします。

判断基準

自社に合っているか否かを判断する期間として定めているのも関わらず、その判断基準を設けていない企業がほとんどです。

欠員交替のための採用だった場合、経験者だからやっているうちにわかるだろう…といった流れで引継ぎしていると、前任よりパフォーマンスが悪く、勤怠も悪い。結局試用期間解雇となり、教えた期間と給与が丸々損してしまう。

中途採用の場面では特に多く見られるケースです。勤怠に関して一律の基準を設けたり、直属の上司となる従業員に期間内の評価基準を預けて達成度を測ったり、最低限習得する事項を事前に伝えて自己評価も可能な状態にしたり、試用期間終了後のゴールを設定することが重要です。

猶予期間(まとめ)

試用期間には、新しく採用した人財が新しい環境に慣れ、業務に慣れるための猶予期間という側面も持ち合わせており、仮に期間終了を待たずに解雇することになると「企業が従業員に与えるべき試用期間を十分に与えていない」とされ、不当解雇になる可能性もあります。試用期間満了までのゴールを決めて、適切な教育や指導をしていくことが企業、及び採用現場に求められます。

この記事を書いたライター

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