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シェアードサービスとは?BPOとの違いやメリット・デメリットも解説!

HUPRO 編集部
シェアードサービスとは?運用方法やメリット・デメリットも解説!

新型コロナウイルスの影響で社会構造全体が大きな変革を問われる今、個々人の働き方だけではなく、企業の在り方自体が多くの課題に直面しています。

テレワーク・リモートなどの方法は各ビジネスシーンの在り方を変えるものです。しかし、新たな時代のなかで企業が期待される役割を果たしながら成果を上げていくためには、企業全体の組織構造自体を時代に適合させるための戦略を積極的に推進していくことが求められるのではないでしょうか。

今回紹介する”シェアードサービス”とは、グループ企業などにおける業務効率化を目的とした手法のこと。主に人事・総務・経理・会計・情報システムなどの間接部門を集約して、コストカット・効率性の上昇・品質の改善を目指すものです。

シェアードサービスの導入によってどのようなベネフィットがもたらされるのか、生じる弊害について施すべき対処法・運用方法などを含め、シェアードサービスについて詳しく解説します。あわせて、企業での導入事例も紹介するので、あわせて参考にしてください。

シェアードサービスとは

シェアードサービスとは、グループ企業の一部の部署をひとつにまとめることで、コストの削減や業務の効率化、品質の改善をおこなう仕組みのことです。一般的に、シェアードサービスの対象部門は、人事・総務・経理・情報システムなどの間接部門が中心となっています。各グループ企業でおこなわれている業務をひとつの組織でまとめておこなうことにより、設備や業務内容を標準化するという意義がもたらされます。

たとえば、企業が海外進出を計画する場合の人事的側面について考えてみましょう。もし企業が積極的な努力をしなければ、日本人従業員と現地の従業員の待遇や評価に差が出ることが問題になります。国内外支店ごとに独自の判断基準をもって査定等を行う以上、地域ごとに人事評価に差が出るのは致し方のないことでしょう。これに対して、シェアードサービスを導入することにより人事部門が一本化できれば、従業員の待遇や評価が同じ基準でおこなわれることになり、不公平感は解消されます。

また、経営戦略や成果分析などの専門的な知識が必要とされる部署では、各グループ企業で人材の確保が難しくなっています。経営戦略や成果分析などの専門的な業務を集約化して担当することが実現すれば、当該部門において専門的知見を醸成しながら人材育成を期待できるため、企業にとって有力なスキルを獲得した人材を確保できます。そして、結果としてグループ企業全体における業務効率化が進むので、コスト削減・業務品質の標準化が可能です。

シェアードサービスの導入事例

シェアードサービスを始めて導入したのは、米国のゼネラル・エレクトリック社と言われています。各部門でおこなわれていた経理業務をひとつの部門でまとめておこなうことで、各部門の業務の負担を減らすことを目的として始められています。

その後、米国の大企業などがシェアードサービスを導入したことをきっかけに活用されるようになりました。日本ではバブル崩壊による不況を背景に、コスト削減を目的として導入する企業が増えています。実際、以下の企業ではシェアードサービスを導入して成果を挙げています。

・P&G:業務移行と標準化を同時に推し進める
・花王株式会社:経理システムを4ヶ月で移管
・株式会社NTTデータ:人事・財務・総務・購買の間接部門業務のシェアードサービスを導入
・サッポロホールディングス株式会社:サポート業務のシェアードサービスを導入
・株式会社LIXIL:会計システムのシェアードサービスを導入

シェアードサービスを導入した多くの企業では、間接部門の一部の業務を集約しコスト削減に成功しています。さらに、各グループ企業からシェアードサービスへ担当社員を出向させることで業務のノウハウを蓄積し、アウトソーシング事業にまで拡大したケースも。その一方で、当初予定していた規模でのシェアードサービスを断念して、一部の標準化のみに限定した事例も散見されます。

したがって、企業の現状において停滞・非効率的な業務内容を見極め、どの機能をシェアードサービスによって統合するかについて適切な判断が求められると言えるでしょう。

なお、シェアードサービスの導入によって成果を上げている企業の実例については以下のリンク先のコラムにて詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。

シェアードサービスとBPOの違い

BPO(bussiness procese outsourcing)とは、間接部門でおこなわれる業務のすべてを「外部の企業に委託」する仕組みです。シェアードサービスと同様にコスト削減や業務の効率化を目的として導入されています。

シェアードサービスとBPOの違いは、業務を集約する企業がグループ企業内にあるか外部にあるかという点。自社内で業務を分散させるシェアードサービスとは異なり、BPOではアウトソースが前提となるため、企業のボリュームを減らすことによって効率化を目指すというイメージです。

したがって、シェアードサービスとBPOの最大の違いはアウトソーシングか否かという点。「自社内で業務ノウハウ・情報を蓄積できるか」という意味において大きな差が生じることになります。

アウトソーシングの場合は、企業内の一部の業務を委託するので業務のノウハウや情報は蓄積されません。これに対して、シェアードサービスではグループ企業内で業務がおこなわれるので業務のノウハウや情報が企業に蓄積されることになります。

つまり、シェアードサービスかBPOかの判断を迫られたときには、次のポイントを考慮するべきでしょう。

①シェアードサービス導入のためのコスト
②BPOによる外注コスト
③集約化予定(アウトソーシング予定)の業務について「自社で専門的知見・ノウハウを蓄積することに関する将来的価値」

①②は簡単に机の上で計算できるもの。しかし③は数値化が難しい見えないメリットです。ただ、ノウハウ・技術・情報を自社内で確保できるということにどこまでの価値を見出せるかが企業の成長可能性を左右すると言っても過言ではありません。

アウトソーシングによる効率性向上は一見利用しやすく飛びつきがちな手法ですが、企業の独力での成長可能性を阻害するリスクがあるという点にご留意ください。

シェアードサービスの運用方法

各グループでおこなわれている業務をまとめておこなう方法としては、本社に集約する方法と子会社を設立する方法の2種類があります。

本社に集約する方法

シェアードサービスの運用方法としては、グループ企業の本社で業務をまとめておこなう方法があります。本社の部署を拡大することで、グループ会社でおこなわれている業務を受け持つことができるようにします。本社の目が届く範囲でおこないたい場合にとられる方法です。

子会社を設立する方法

子会社を設立してシェアードサービスを運用する方法もあります。独立した企業としてシェアードサービスをおこなうため、グループ企業の業務だけではなく他の企業の業務も受け持つことができます。

子会社を設立する

シェアードサービスを導入するポイント

シェアードサービスを導入するためのポイントは以下の3点です。

対象となる業務を選択する
目的を明確にして達成度を検証する
業務の標準化とシステム変更

まずは選択。シェアードサービスを導入する場合には、人事・総務・経理・情報システムといった間接部門を対象にすることが多いです。企業の現状を正確に分析したうえで、コストカットの必要性・率先して集約化すべき業務・部門を見つけ出す必要があります。

達成度の検証。シェアードサービスの目的は、コストの削減や業務の効率化、品質の改善。シェアードサービスを導入することで目的がどのくらい達成できたのか、どのように改善していくべきかを検証しながら運用することが重要です。

最後に標準化。シェアードサービスを導入するためには、各グループ企業でおこなわれている業務を標準化しなければいけません。情報システムの構築や変更をおこなうことで、効率よく標準化を進めることができる場合もあるので、「効率的に標準化を進める」ことも意識して体制の変革を進めましょう。

シェアードサービスのメリット・デメリット

それでは、シェアードサービスのメリット・デメリットについてそれぞれ解説します。

シェアードサービスを導入するということは、グループ企業全体の在り方が大きく変貌を遂げるということ。大規模な変革が求められる以上、事前に長所・短所を明確に評価しておかなければ、グループ企業全体にとって本当に効果をもたらすものかを判断することができません。

シェアードサービス導入によって生じる価値を正確に分析するための指標としてお役立てください。

シェアードサービスのメリット

シェアードサービスを導入するメリットは以下の3点です。

コスト削減 企業における業務効率化のツールとして利用できる
業務の品質改善 業務効率化が進めば品質の向上も期待できる
専門的知識やノウハウの蓄積 ひとつの部門に業務を集約できるので、当該部門において専門的知見・ノウハウを蓄積できる

シェアードサービスの導入を検討している企業はコスト削減を主な目的としている場合がほとんどですが、これに関連する形で、業務の品質が改善・専門的知識やノウハウを蓄積できるという付随的なベネフィットも得られることがほとんどです。

つまり、本来、間接部門はそれ自体では収益を上げるのが難しい業務ですが、シェアードサービスによる一連の効果によって、間接部門でも企業全体の収益性向上を図ることができるというのが最大の魅力と考えられるでしょう。

シェアードサービスのデメリット

シェアードサービスを導入するデメリットには以下の4点が挙げられます。

初期投資が必要 業務効率化のツールとして成立させるために再編成プロセスが不可欠。業務統合のために一定のコスト投下は避けられない。
品質が低下する コスト削減ツールとしてのシェアードサービスの側面だけを重視し過ぎると作業の内容・質が低下するリスクがある。
従業員のモチベーションの低下 業務が集約化されることによって人件費の削減が目指される。つまり、社員にとってはリストラリスクに晒されることになるため慢性的な不安感が漂いかねないので、適切な管理が必要。
担当者が不在になる 集約される事業の担当者がシェアードサービスに出向することによって本来の部署に専門的知見を有する人が不在になる。

したがって、シェアードサービスを導入する前にどのようなデメリットが発生するのかを把握し、問題が発生しないような対策・問題が発生した場合の戦略を事前に練っておくことが重要だと考えられます。

なお、シェアードサービスが失敗する理由や問題点については以下のリンク先において詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。

シェアードサービス会社への転職・就職を目指すための課題

以上のように、シェアードサービス会社は収益を最大化することが目的ではなく、複数の子会社等の間接部門(経理・総務・人事)の効率化を目指すための組織です。そして、各子会社が取り扱う業種には関連性が認められない場合もあるので、シェアードサービス会社は必然的に幅広い業種に触れることになります。

つまり、シェアードサービス会社から能力の発揮を期待される人材とは、特定分野の業界だけに精通している人ではなく、「幅広い分野における経営状況に精通している人材」・「深い知識のない業種へも意欲的なチャレンジが期待できる人」などが挙げられます。

したがって、シェアードサービス会社での採用を希望する人は、経理・総務・人事などのシェアードサービス会社におけるコア業務に関するスキルを定着させることはもちろんのこと、時間をかけてでも課題に取り組んでいける意欲的・主体的な姿勢などを採用面接においてアピールしていきましょう。

なお、以下のリンク先のコラムにおいて、シェアードサービス会社への転職を希望する人のために、志望動機の書き方や面接時のアピールの方法について詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。

シェアードサービス企業で働けば更なるキャリアアップを目指せる

今回ご紹介したように、シェアードサービス導入によって、コストの削減・業務の効率化・品質の改善を目指せます。これらを実現するために、多くの企業がシェアードサービスを積極的に取り入れ、ビジネスシーンが日ごとに多様化しているのが現状です。

そして、これから経理部門への転職を目指している人が押さえておきたいポイントが、シェアードサービス企業で働くことによってさらなるキャリアアップを目指せるということ。仕事を通じて次のようなメリットを得られます。

複数企業の決算に関わることができる
連結決算に触れられる
経理に従事しながら全体的な管理の視点を育成できる

経理・会計分野はスキル次第でどんどんキャリアを形成できる業界です。シェアードサービス企業で働くことによって幅広い業務経験・スキルアップを目指せるので、長期的に経理業界でチャレンジをつづけたいと希望する人におすすめの選択肢と言えるでしょう。

なお、シェアードサービス企業で働くメリットについては以下のリンク先のコラムにて詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。

この記事を書いたライター

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