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【決算解説シリーズ】ソニーの業績とソニーフィナンシャルホールディングスの完全子会社化を詳しく解説!

HUPRO 編集部
【決算解説シリーズ】ソニーの業績とソニーフィナンシャルホールディングスの完全子会社化を詳しく解説!

ソニー株式会社については、大手家電メーカーというイメージがある方はたくさんいらっしゃると思いますが、現在では映画、音楽、金融と様々分野に事業を拡大している企業になります。
近年の業績推移を解説していきながら、2020年5月に発表されたソニーフィナンシャルホールディングス株式会社について完全子会社化を行った背景などやその意図について解説していきたいと思います。

ソニー株式会社の事業セグメントの紹介

ソニー株式会社の業績を解説するにあたり、ソニー株式会社が有価証券報告書で開示している事業セグメントを紹介していきたいと思います。事業セグメントを理解することで、ソニー株式会社がどんな会社なのかがよく分かると思います。

ソニー株式会社の事業セグメントの紹介

2020年3月末現在で、子会社の数は1,529社、関連会社は155社あります。
そのうち、連結子会社としては1,490社、持分法適用会社は140社あります。
また、事業拠点は世界各国に存在するグローバル企業となっており、日本を代表する企業と言えます。

直近3年間の業績の推移についての紹介

次に直近3年間の業績について紹介していきたいと思います。主に紹介するのは、3点になります。

1,連結経営指標等
2,セグメント別売上高及び営業収入
3,セグメント別の損益

期間については、2018年3月期~2020年3月期になります。

①連結経営指標等

①連結経営指標等

各年度の売上及び利益の解説については、このあとのセグメント別のセクションで解説をさせて頂きます。

ソニー株式会社については、2012年には、株価が一時期801円の最安値をつけるなどの経営危機がありました。そこから、V字回復を遂げて、見事復活した会社です。
近年では、デジタルカメラ、スマートフォンのカメラなどに使われるイメージセンサーのシェアが世界で高いシェアを誇っており、ソニーの躍進につながっていると言えます。
投資活動によるCFが増えているのも、そういった最新の技術に絶えず投資を行っていることも要因と言えるでしょう。

②セグメント別売上高及び営業収入

②セグメント別売上高及び営業収入

まず、セグメントの集計単位ですが、2018年3月期セグメント区分は有価証券報告書上で2019年3月期以降に合わせるように、筆者の方で、数字を置き換えていますので、ご留意ください。

上記の表でわかるように、ソニー株式会社の主力事業はプレイステーションを代表するようなゲーム&ネットワークサービス事業とテレビ、オーディオ、スマホなどの家電事業である、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション事業であると言えます。
近年の推移を売上高及び営業収入の推移を見れば、大きな下落は無く推移していると言えます。その中でも、イメージング&センシングの成長はめざましく、スマートフォンのカメラ・レンズも多眼化するなどまだまだ成長していく分野の事業と言えます。続いて、セグメント別の損益について見ていきたいと思います。

③セグメント別の損益

 ③セグメント別の損益

さきほど主力事業は、ゲーム&ネットワークサービス事業とエレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション事業であると述べましたが、それは売上規模で考えた場合です。

利益率でみれば、イメージセンサーを開発する、イメージング&センシングソリューション事業の利益率は、2020年3月期では約20%を超えており、ソニー株式会社を支える事業になっています。一方でみなさんが知っている家電事業であるエレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション事業の利益率は、約4%とあまり、利益を稼ぎだせていない事業と言えます。家電事業は中国、台湾の成長により近年では競争が激しいため、利益率も減少方向にあることがわかります。
ソニーとしても、イメージセンサー以外にも利益を稼ぐ柱の事業を作り上げる必要があります。その経営改革の一つに、2020年5月に発表があった、ソニーフィナンシャルサービス株式会社の完全子会社化があると言えます

ソニーフィナンシャルホールディングス株式会社の完全子会社化の背景とその意図とは

ソニーは、2020年5月19日に「ソニーグループの経営機構改革について」というニュースリリースをしています。その中で以下のような文書を発表しています。

・金融事業は、エレクトロニクス、エンタテインメントと並ぶコア事業であり、長期的な成長戦略の一翼を担う事業です。この事業については、成長に向けた資金調達の柔軟性などの観点から子会社上場を維持してきましたが、今般、上場子会社という一定の制約のもとに独自の資金調達手段を保持させるよりも、迅速かつ柔軟な経営判断を優先し、個々の事業に即した戦略の実施やグループシナジーの追求にさらに取り組むべきと考え、今回の完全子会社化に向けて公開買付けを実施することを決定しました。
・当社はソニーフィナンシャルホールディングス株式会社の新しい経営体制と連携して、中核事業である生命保険事業のコアバリューとも言えるライフプランナーの価値向上に向けた施策などを実施するとともに、ソニーのテクノロジーの活用などさらなるシナジーの実現を目指します。

このように、ソニーはソニーフィナンシャルホールディングスが担っている金融事業を完全子会社化することで、経営の意思決定を早く行い、他の事業とのシナジー効果を得ることで、多くの収益を生み出すことを目的としています。収益を多く生み出すことで株価は上昇し、企業価値は上昇すると言えます。

また、ニュースリリースの一部にもあるように、完全子会社化することで、上場が廃止されることになります。
以前までは、親会社と子会社が上場するいわゆる親子上場をしていたわけですが、一般的に親子上場には子会社も資金調達を市場からできるというメリットがありますが、一方でデメリットもあります。そのデメリットについて解説をしていきたいと思います。

親子上場の利益相反の問題

親子上場をすると、親会社の利益と子会社の株主の利益の相反する状態が起こりかねないのです。親会社は子会社の株式を過半数保有しているため、子会社の財務及び事業の方針について決定を支配しています。したがって、親会社と子会社との取引で親会社に有利な取引を行うことができるのです。その場合には、子会社側で損失が生じるため、結果として子会社の少数株主への利益が損なわれることになります

2020年1月に経済産業省から公表された「上場子会社に関するガバナンスの在り方」という資料の中では、日本で親子上場している会社で不当に利益を搾取しているような可能性は低いとされていますが、親子上場がされている限り、利益相反の問題はゼロにはならないのです。

したがって、今回のソニーフィナンシャルホールディングスを完全子会社化することで、ソニーが100%の株式を保有することで少数株主がいなくなりますので、この利益相反の問題が解消されることになります。
以上のことが、親子上場の利益相反問題とその解決ということになりますが、完全子会社化を行うとメリットがもう一つあります。そのメリットについて解説していきます。

完全子会社化で、少数株主への利益計上、配当を行う必要がなくなる

ソニーフィナンシャルホールディングス株式会社の株主構成として、約65%が親会社であるソニーが保有し、残りの約35%がその他の株主が保有していました。したがって、配当を行うときに、グループ外の株主に対して、利益を分配する必要がありますので、100%保有している場合と比べるとグループ外に利益が流失していることになります

また、連結会計上当期純利益のうち、少数株主に対応する利益については、非支配持分に帰属する当期純利益として当期純利益から控除され、その差引された当社株主に帰属する当期純利益が最終的に純資産に取り込める金額になります。つまり、最終利益から65%しか親会社は利益を取り込めていませんでした。

経営方針の説明会のQ&Aにて、過去3年平均でおよそ400億円程度がこの非支配持分による純利益の流出があったと説明されています。当該純利益を今後取り込めることが言えるため、利益の改善につながると考えられています。また、今後連結納税等を行うことにより、税務上のメリットも享受することも可能との説明があり、年間400億円から500億円の純利益の増加になると説明がされています。

以上のことから、経営の効率化で、他の事業とのシナジー効果も得られる側面もありますが、会計上、税務上のメリットもあるといえます。

これからのソニー株式会社の展望について

ソニーの2020年の経営方針説明会の資料にて、ソニーの事業ポートフォリオの中心は、「人」であると説明されております。「人の心を動かす」、「人と人を繋ぐ」、「人を支える」というテーマで各事業取り組んでいます。これまでソニーの製品やサービスは常に我々日本人に驚きと感動を与えてきたものと思います。ソニーが提供する最新テクノロジーにより、世界中人々をより夢中にすることができる会社になっていくと思います。

この記事を書いたライター

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