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管理者と管理監督者は違う?管理監督者の要件と管理者との違いを解説!

HUPRO 編集部
管理者と管理監督者は違う?管理監督者の要件と管理者との違いを解説!

平成20年1月東京地裁判決のいわゆる「日本マクドナルド事件」では、「名ばかり管理職」の存在が話題となりました。管理職として実体のない店長を管理監督者として取り扱い、残業代を支払わなかっとことが問題視されました。

今回は、管理監督者の要件や判断基準、管理監督者として認められないケースについて解説します。

管理監督者とは

管理監督者とは、労働基準法第41条第2号に規定されている「事業の種類にかかわらず監督もしくは管理の地位にある者」のことです。

労働基準法第41条では、管理監督者などには労働基準法で定める「労働時間」「休憩」「休日」に関する規定は適用しないとされています。
(労働基準法で定める労働時間などの規定)

労働時間 1日8時間、1週40時間(休憩時間を除く)
休憩 1日の労働時間が6時間を超える場合は45分以上、
8時間を超える場合は60分以上
休日 1週間に1日以上、または4週間に4日以上

ただし、管理監督者であっても「年次有給休暇」と「深夜労働」に関する規定は適用されます。
(年次有給休暇と深夜労働)

年次有給休暇 入社から6か月間、8割以上出勤していれば10日の有給が付与。
以後1年ごとに付与され、付与日数は最大20日まで増加。
深夜労働 午後10時から午前5時までの労働に対し、25%の割増賃金

管理監督者の要件

管理監督者に労働基準法の労働時間に関する規定が適用されない理由は、管理監督者は「労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有している」と認められるからです。

管理監督者の判断基準となる「重要な職務を有している」とは、下記の3要件を満たしている状態をいいます。

● 経営者と一体的な立場で仕事をしていること
● 出社・退社や勤務時間について厳格な制限を受けていないこと
● 管理監督者としての地位にふさわしい待遇を受けていること

経営者と一体的な立場で仕事をしていること

経営者と一体的な立場で仕事をしているかどうかは、「職務内容」と「責任・権限」で判断できます。

● 職務内容:会社(または担当部署)の業務運営や予算など経営に関わる仕事をしている
● 責任・権限:会社(または担当部署)の責任者として部下の労務管理(採用・人事評価・解雇など)に関する権限を持っている

「課長」や「店長」という肩書があっても、上記に関する実質的な権限がなく担当部署の取りまとめが主な職務である場合は、管理監督者にはなりません。

出社・退社や勤務時間について厳格な制限を受けていないこと

「労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容」を行うことが前提なので、当然、勤務時間については一定の裁量権を持つ人が対象となります。

労働時間が一般の従業員と変わらず、厳格に管理されているのであれば、管理監督者とは言えないでしょう。

管理監督者としての地位にふさわしい待遇を受けていること

重要な職務内容を行う対価として、給与などの待遇も一般の従業員と比較して相当の待遇が必要です。

労働時間に関する規定が適用されないということは残業代も出ないということなので、基本給や役職手当などが一定の水準に達しないと、管理監督者になっても収入が変わらない、という事態も考えられます。

管理監督者としての地位にふさわしい待遇を受けていること

「名ばかり管理職」の問題

「日本マクドナルド事件」で違法とされた「名ばかり管理職」が問題となるのは、企業が管理監督者の要件を満たさない従業員を管理職とすることで、労働基準法の労働時間に関する規定を不当に免れることです。

たとえば、コンビニの店長を「管理監督者」にすることで、企業は店長の長時間労働で人手不足をカバーし、残業代を支払わないことでコストカットを図る、というこ。

チェーン店などの管理監督者に対する通達

「日本マクドナルド事件」をきっかけに、厚生労働省は「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」通達を出しました

通達の対象は小売業(コンビニなど)や飲食業のチェーン店などで、下記の3点について「管理監督者性を否定する判断要素」を列挙しています。

● 「職務内容、責任と権限」についての判断要素
● 「勤務態様」についての判断要素
● 「賃金等の待遇」についての判断要素

「職務内容、責任と権限」について

「職務内容、責任と権限」についての管理監督者性を否定する判断要素は次の通りです。

 
採用 アルバイトなどの採用に関する責任と権限が実質的にない場合。
解雇 アルバイトなどの解雇に関する 責任と権限が実質的にない場合。
人事考課 部下の人事考課に関する事項が職務内容になく、実質的にもこれに関与しない場合。
労働時間の管理 勤務割の作成や残業命令を行う責任と権限が実質的にない場合。

「勤務態様」について

「勤務態様」についての管理監督者性を否定する判断要素は次の通りです。

遅刻、早退 遅刻、早退により減給など不利益な取扱いがされる場合。
労働時間 長時間労働を余儀なくされるなど、労働時間に関する裁量がほとんどないと認められる場合。
部下との相違 労働時間の規制を受ける部下と同様の勤務態様が労働時間の大半を占めている場合。

「賃金等の待遇」について

「賃金等の待遇」についての管理監督者性を否定する判断要素は次の通りです。

基本給、役職手当等 基本給、役職手当等の優遇措置が十分でなく、当該労働者の保護に欠けるおそれがあると認められる場合。
賃金の総額 一年間に支払われた賃金の総額が、一般労働者の賃金総額と同程度以下である場合。
時間単価 長時間労働の結果、時間単価の賃金額がアルバイト・パート等の賃金額に満たない場合。特に、時間単価が最低賃金額に満たない場合は、管理監督者性を否定する極めて重要な要素。

まとめ

管理監督者は、労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有している人です。

管理監督者の要件を満たすかどうかの判断基準は、厚生労働省の通達で具体的に列挙されており、管理職の人も要件を満たさなければ、管理監督者ではありません。

要件に満たない人を管理監督者として、長時間労働させたり残業代を支払わない行為は、社会的批判を受けるリスクが高く、労働基準法に違反することを理解しましょう。

この記事を書いたライター

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